デフ・レパードが語る、モトリー・クルーとのジョイントツアー、ライブ・バンドとしての誇り
Rolling Stone Japan / 2023年10月20日 17時30分
2018年以来5年ぶりとなるデフ・レパードの日本上陸が迫ってきた。しかも今回の来日公演はモトリー・クルーとのジョイントという特別な形で、開業まもない話題の大型会場、Kアリーナ横浜にて開催される。その機会を楽しみにしているのはファンばかりではなく、当のバンド・メンバーたちにとっても同じことだ。今回は、ツアー日程の狭間の貴重なオフ期間を過ごしていたフィル・コリン(Gt)をキャッチすることに成功。彼はこのツアーに向けての想いや近況のみならず、ときおり家庭人としての素顔ものぞかせながら、たっぷりと語ってくれた。
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―8月18日のテキサス州エルパソ公演をもって北米ツアーが終了後、11月の日本公演までしばらく時間が空いています。今現在はこの大規模なワールド・ツアー中の小休止のタイミングといったところでしょうか?
フィル・コリン:そういうこと。先週はナッシュヴィルで曲作りをしたり、現地のソングライターたちと交流したりしていたんだ。あと、東海岸と西海岸に住んでいる娘たちに会いに行ったりとかね。そして今は、まさに息子を歯医者に連れて行っていたところ(笑)。なかなか忙しい一日だよ。東海岸に住んでいる娘のサヴァンナは14歳になるんだけど、これまで日本を訪れたことがないんで、今回一緒に行くことになっているんだ。すごく楽しみにしているようだよ。
―ナッシュヴィルで曲作りを、という言葉がありましたが、もしやすでに次作に向けての作曲活動を始めているんですか?
フィル:もちろん。『Diamond Star Halos』以降、俺たちが曲作りの手を休めたことなんてないよ。『Drastic Symphonies』を間に挟みつつも、作曲はずっと続けている。1人で書く場合もあれば、ジョー(・エリオット:Vo)と一緒に作ることも、他の誰かと作業することもある。こうして絶えず書き続けるというのは、とてもいいことだと思うな。
―今回のインタビューは当然ながら、11月の日本公演を楽しみにしている人たちに読んでもらうためのものです。デフ・レパードのジャパン・ツアーは、おそらく11回目ということになるはずなんですが……。
フィル:11回目になるとは知らなかった! ということは俺にとっては12回目のジャパン・ツアーということになるかな。ここに加わる前にガールでも行っているからね。俺は日本に行くこと自体が大好きだし、今回もとても楽しみだよ。俺たちにはマイク・コバヤシという日系ハーフのマネージャーがいるんだけど、彼と一緒に他のメンバーたちよりも早くそっちに行くかもしれない。そのほうが日本滞在をたっぷり楽しめるし、娘のサヴァンナにもいろんなところを見せて回りたいんでね。
―素敵なプランですね。今回の来日公演はモトリー・クルーとのカップリングによるツアーの一環としてのものですが、まさかこの顔合わせが日本でも観られることになるとは思っていなかったファンも多いはずです。実際、その実現にあたってはご苦労も多かったのでは?
フィル:確かにいろいろと調整が大変だったはずだとは思うけど、それは俺たちの管轄ではないし、プロモーターやマネージャーの仕事だからね(笑)。俺たちは「日本に行きたいかい? オファーがあるんだけど」と言われて「YES!」と答えればいい(笑)。世界中のどこでプレイするんであれ、面倒な手配をするのは俺たち自身ではない。バンドとしては、どこだろうとプレイできる場所ならそこへ行って演奏するだけだ。
モトリー・クルーとの関係
―そもそもモトリー・クルー側とは以前から親しい間柄だったのでしょうか?
フィル:1983年当時から付き合いがあるよ。俺自身、ニッキー・シックスとは何度もプレイしてきたし、ずっと連絡を取り合ってきた。お互い似たような経験をしてきた部分もあるしね。ツアー自体、以前も一緒にやったことがある。1983年もそうだったし、2011年にはUKツアーを一緒にやっている。すごく気が合うんだ。学校で友達とつるむみたいな感じでね。本当に素晴らしいよ。
モトリー・クルー(Photo by Ross Halfin)
―あるインタビューであなたの「モトリー・クルーはヴィーガン仲間だ」という発言を目にした記憶があります。あなたがヴィーガンなのは知っていましたが、彼らもそうなんですか?
フィル:いや、それは違うな。ただ、彼らは彼らで気を遣っているよ。ニッキーとトミー(・リー)はいつだってそうだ。もはや20代ではない人間がああいったツアーをやる際には、健康にはいっそう気を遣わなければならない。倒れないようにしないとね(笑)。だから今回のツアーにも、全員が真面目に取り組んでいるよ。
―あなた方のツアーでは、ケータリングには常にヴィーガン食が用意されているわけですか?
フィル:俺たちには専属のシェフがいるんだ。俺とリック・アレンはヴィーガンだし、ヴィヴィアン・キャンベルはペスクタリアン(魚菜食主義者)、ジョーだって肉をほとんど食べない。サヴ(リック・サヴェージ)も今ではペスクタリアンだ。みんな、ヘルシーな食生活を送っている。俺自身は1983年に肉を食べなくなったんで、もう40年にもなる。興味深いことだよ。年齢を重ねるにしたがって、健康に気を遣うようになるんだ。ミック・ジャガーを見てごらん。80歳なのにすごいじゃないか。いまだに走り回れているし、頭も切れる。あれは本当にすごいことだと思う。
―ええ。あなた方は2008年には日本でホワイトスネイクとのジョイント・ツアーをやっていますし、欧米ではこれまでジャーニーやREOスピードワゴン、KISSといったさまざまなバンドと共にダブル・ヘッドライナー的なツアーを実施してきました。そうした形式のツアーのあり方についてはどう感じていますか?
フィル:確かにいろいろなバンドと廻ってきたけど、俺は今回のモトリー・クルーとのツアーをとても気に入っているよ。文字通り世界中を廻ってきたからね。北米ばかりじゃなく、ヨーロッパや南米の大半の地域でもプレイしてきた。そしてこれから日本へも行く。行き先は素晴らしい場所ばかりだし、観光客としても最高の気分だよ(笑)。しかも両バンドの関係はすごく上手くいっている。バックステージでも仲がいいんだ。南米を廻った時は、馬鹿デカい飛行機に双方のバンド、クルー、機材を全て乗せて移動したんだよ。あれはとても楽しい経験だった。
―もしもあなたの独断で次回のツアーの共演相手を決められるとしたら、誰と廻ってみたいですか?
フィル:クールなバンドなら誰でもいいよ。俺たちは多様性が好きだから、誰とでもツアーするし、誰とでも仲良くなれる。つまり「来るもの拒まず」という感じかな(笑)。
今回のツアーのセットリストについて
―今回のワールド・ツアーでは、随所に『Diamond Star Halos』の楽曲を配しながら、ヒット曲満載で出し惜しみのないセットリストで演奏されてきましたよね。日本公演でも同傾向の演奏内容になるのでしょうか?
フィル:日本ではまだ今回のツアーでの曲たちをプレイしていないわけだから、今変えてしまったら日本に対してアンフェアになってしまう。実際、ツアー中のセットリストについても少しずつアップデートされていて、やっていくうちにどんどん良くなってきたんだ。だから多分、ウェンブリー・スタジアムとかでやった時に近い曲目になるんじゃないかな。
―デフ・レパードには「この曲をやらないとファンが納得しない」というマスト・チューンがとても多いですし、だからこそセットリストに変化を付けにくいところもあるはずです。そこでの難しさ、不自由さを感じることはありませんか?
フィル:いや、そんなことはないよ。たとえばラスヴェガスでレジデンシー公演(=同一会場での連続的公演)をやるとする。そういった場合はたいがい2時間半のショウをやれるから、「White Lightning」みたいな隠れた名曲をやれる余地があるんだ。でもツアーの時は、来場者たちが聴きたいと思うはずの曲をプレイしないといけない。俺だって、好きなバンドを観に行った時に、絶対聴けるはずだと思っていた曲が聴けなかったらガッカリするもの。だからそこは慎重にやらないといけない。もちろん新曲はやるさ。仮にほとんどの観客がその曲を知らなかったとしても、だんだん馴染んでくる。そして、やらないわけにいかない曲というのがある。「Pour Some Sugar On Me」とか「Love Bites」「Photograph」「Rock Of Ages」「Lets Get Rocked」といったあたりは絶対外せないし、そうなってくると他の曲を入れられる時間はあまり長くない。そこでいろんなものをちょっとずつ披露できるよう工夫しているんだ。
―ちなみにセットリストは主に誰が作成しているんですか?
フィル:リック・サヴェージはその作業が好きなんで、彼が書きだすことが多い。ただ、やるべきことはかなり歴然としているし、それこそ『Hysteria』からは絶対に何曲かやらないといけないから、新曲は3曲までといったことになってくる。それ以上盛り込むとバランス的に多すぎるからね。あとはそういった曲をどこに配置するかという問題になってくるだけだ。だからさほど難しい作業ではないし、誰にだって出来るさ。何が必要かさえわかっていればね。
―日本では『Diamond Star Halos』のツアーが実現していませんし、オーケストラとの共演作である『Drastic Symphonies』の曲を今回やるのにはちょっと無理がありますよね。この先、この2作品に重きを置いたツアーを改めて実施する可能性はありますか?
フィル:ある意味、今回がそうさ! いまだに『Diamond Star Halos』のプロモーションを継続しているし、そもそもこのスタジアム・ツアーを始めたのはそのためだったわけだからね。そして『Drastic Symphonies』のライブをやるにはオーケストラが必要になってくる。それについては今もオファーを待っているけど、これもまたバンド側だけで決められることではない。どこかの国のプロモーターが「是非とも我が国に来てシンフォニー・オーケストラと共演してもらいたい!」と言ってくれないと話が始まらないからね(笑)。もちろん自分たちとしては是非ともやりたいところだ。シドニーのオペラハウス、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール、LAのハリウッド・ボウルで実現出来たら素晴らしいし、日本にもそれをやるのに相応しいシアターがあるはずだ。でも、まず誰かに声をかけてもらえないとね(笑)。
―実現を願っていますよ。ちなみに今回のジャパン・ツアーは横浜での二公演のみという非常にコンパクトなものですが、会場がKアリーナ横浜だというのはひとつのトピックになるはずです。開業まもない大型アリーナで、音響的にも視覚的にも素晴らしいんです。そうした新会場、未知の場所での演奏に臨むというのはどんな気持ちなんでしょうか?
フィル:その質問に対する回答はメンバーによって違うかもしれないけど、俺的にはあまり関係ないかな。スタジアムやアリーナだろうと、シアターやクラブだろうと、そこにファンが居てくれさえすればどこも同じなんだ。毎晩違うのはバンドではなくファンだからね。俺はイヤーモニターを装着して演奏しているから、聴こえてくる音は毎晩ほぼ同じ。演奏と歌が標準レベルに達してさえいれば、すべて上手くいくんだ。ただ、自分が見たことのない新しい会場でプレイするのは好きだよ。いまどきのテクノロジーが活かされた視覚効果とか、建物自体の見栄えが素晴らしい会場もあるからね。ラスヴェガスに新設されたスフィアという会場は知ってる? U2がこけら落としをやったばかりだけど、あそこでのライブというのは、まるで次元の違う新しい体験というべきものらしいよ。そこでもいつかやってみたいし、同じように今回はKアリーナでプレイするのが楽しみだ。
「何をするにしてもやり過ぎないこと」
―その短いジャパン・ツアーの4日後にはオーストラリアでの公演も始まりますし、日本滞在を満喫するためには、やはり公演よりも少し前にこちらに来られるべきでしょうね。空き時間にやりたことというのは何かあるんでしょうか?
フィル:うちの娘は当然のようにショッピングに行きたがっている(笑)。原宿とかに行って、日本のカルチャーを目の当たりにしたいんだろうな。彼女はまだそれを写真とかTikTok、YouTubeでしか見たことがないからね。基本的には特定のどこかに行くというより、ぶらぶら歩きまわるのが好きなんだ。俺たちはどこへ行こうとそうしているよ。6時とかに起きるメンバーも何人かいるから、早起き同士で連れ立って外出することもある。そこがペルーだろうとブラジルだろうとロンドンだろうと、早起きしてぶらぶらと徘徊する。俺はそういうのが好きなんだ。前回日本に行った時もそうしていたよ。あの時は息子のローリーと一緒だったから、彼を連れて歩き回っていた。
―ジョーの場合は貴重音源漁りに繰り出すのが東京滞在時の常のようですが(笑)。
フィル:ジョーはそういうのが好きなんだ。しかも彼は遅い時間にならないと起きてこないんだよ(笑)。睡眠スケジュールはみんなまちまちでね。たとえば今日の俺は朝4時に起きたけど、いつもそうだというわけじゃない。東海岸から西海岸に戻ってきたばかりで、時差の影響もあったからね。通常は6時半に起きるんだ。基本的には、どこにいようとも6時半に起きる。日本でのジョーは11時頃に起きて、レア音源を探しに向かうんだ(笑)。
―あなたは6時半起床が習慣のヴィーガンというわけですね。さきほどミック・ジャガーの話も出ましたが、健康維持のために、他にも何か心掛けていることはありますか?
フィル:今の俺が心掛けているのは、何をするにしてもやり過ぎないことだね。去年、ステージで腕を振り回していたらギターにぶつけて骨折してしまい、靭帯を損傷してしまったんだ。もう大丈夫だし、ちゃんと弾けているけどね。だけど気を付けないといけない。今でも武道のトレーニングはしているし、サンドバッグを蹴ったりして、いい状態を保っている。それは自分にとって、しないといけないことなんだ。なにしろ今の俺たちは、全員がシンガー、プレイヤーとして上達している。いわばベスト・バージョンのデフ・レパードになれているんだ。そこで健康面が損なわれていては何にもならないからね。とにかく今回のショウが素晴らしいものになるのは間違いないから、絶対に観に来るべきだよ。これまでデフ・レパードを観たことがない人たちもね!
―デフ・レパードのショウを初体験する人たちに特に着目して欲しいのはどんな点ですか?
フィル:俺たちがホンモノのライブ・ボーカルをやるバンドだということかな。俺たちがやることはすべてリアルなんだ。ポップ・ミュージックやヒップホップの場合、もはやライブ・ボーカルでないものがほとんどだけど、俺たちは敢えてそれをやっている。だからこその違いというのを体感してもらえるはずだよ。
70年代の音楽の「入口」になるアルバム
―実際、あなた方の生のコーラスワークは素晴らしいし、確かにそれは特筆すべき点ですよね。ところで、何年も前から「ロックは死んだ」などと言われてきましたが、あなた自身はどう考えていますか?
フィル:物事には何でも流行り廃りがある。今、アメリカではカントリー・ミュージックの力が強大なんだ。ただ、確かにロックから離れてそっちに向かう人も多いけど、ロック・フェスティバルに出掛けてみると、ロック・ミュージックが健在であることがわかる。俺たち自身、ヨーロッパであちこちのフェスに出てきたし、それを実感してきたんだ。ロックはまだまだ死んでなんかいない。俺たちがやっている音楽は、幸いなことにまだとても人気があるようだよ(笑)。
―たとえば、次代のデフ・レパードやモトリー・クルーになりそうな存在として、あなたの目にとまっている若い世代のバンドはいますか?
フィル:正直なところ、心当たりはない。常に目を光らせてはいるんだけど、圧倒的な何かには久しく出会っていないな。そんな中、最近のバンドですごく可能性があると思えたのはザ・ストラッツだね。彼らはすごくクールだ。問題は、何もかもすでにやり尽くされていることなんだ。歌詞で語るべきことだって出尽くしている。だからこそみんな、新しいタイプの音楽、何かと何かが融合したような音楽に惹かれがちなんだと思う。完全に新しいもの、過去に前例のないフレッシュなものを求めるのは難しいことだと言わざるを得ない。だけどガンズ・アンド・ローゼズがハード・ロックとパンクの要素を兼ね備えていたり、ニルヴァーナに70年代のパンクの要素があったり、エアロスミスとRUN DMCがロックンロールとヒップホップを融合させた例があったりしたように、新鮮な何かというのは出てくるはずさ。テイラー・スウィフトが元々カントリーの領域から出てきたのに、今や絶対的なポップ・アーティストになっているのと同じようなことが、ロック・ミュージックにだって起きるかもしれない。
―なるほど。最後にひとつだけ僕個人の意見を言わせてください。僕が若い音楽ファンにデフ・レパードを聴くことを薦めたい理由のひとつは、ことに『Diamond Star Halos』のようなアルバムを聴き込んでいくと、その背景にある70年代のさまざまな音楽を掘り下げていくことにも自然に繋がっていき、楽しい音楽の旅を楽しむことが出来るところにあるんです。
フィル:君の意見に完全に賛同するよ。あのアルバムでは自分たちのヒーローを讃えているんだ。デヴィッド・ボウイ、クイーン、ピンク・フロイド、そしてエルトン・ジョンの要素も入っている。すべてが詰まっているんだ。もちろんTレックスやローリング・ストーンズもね。そういったすべてのバンドを心に思い浮かべながら作ったものなんだ。そういった要素すべてがここには詰まっているし、その意味でも良い”入口”になり得るアルバムだと自負しているよ。
―その言葉を聞けて、とても嬉しく思います。今日は貴重な時間を割いていただきありがとうございました。
フィル:こちらこそありがとう。日本で会えるのを楽しみにしているよ!
<INFORAMTION>
11月3日(金・祝)Kアリーナ横浜
出演:Mötley Crüe (Closing)/ Def Leppard
OPEN 15:30 / START 17:00
■TICKETS SS席¥24,000・S席¥18,000・A席¥15,000(各税込/全席指定)
11月4日(土)Kアリーナ横浜
出演:Def Leppard (Closing) / Mötley Crüe
OPEN 15:00 / START 16:30
■TICKETS SS席¥24,000・S席¥18,000・A席¥15,000(各税込/全席指定)
※各公演共にGOLD TICKETはSOLD OUTとなっています。
<問>クリエイティブマン 03-3499-6669
公演オフィシャルサイト:https://www.creativeman.co.jp/artist/2023/motleycrue_defleppard/
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