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ブリンク182の軌跡、ポップ・パンクを「時代の音楽」として表現してきた3人

Rolling Stone Japan / 2023年10月20日 20時0分

ブリンク182:左からトラヴィス・バーカー(Dr)、トム・デロング(Vo、Gt)、マーク・ホッパス(Vo、Ba)

トム・デロング(Vo、Gt)、マーク・ホッパス(Vo、Ba)、トラヴィス・バーカー(Dr)の3人が再び集結して、見事にカムバックを果たしたブリンク182。Y2Kリバイバル、ポップ・パンク・リバイバルの今という絶妙なタイミングで、ブリンク182はキャリア史上最大規模となるワールド・ツアーに続いて、この3人としては実に12年振りとなるニュー・アルバム『One More Time...』を10月20日にリリースした。

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まるで時代が一巡したかのようだ。ブリンク182のトム・デロング、マーク・ホッパス、トラヴィス・バーカーの3人が再び集結して、見事にカムバックを果たしただけでなく、今の時代が再び彼らを熱狂的に求めるムードになっているからである。

1992年に結成されたブリンク182は、1999年の『Enema of the State』、2001年の『Take Off Your Pants and Jacket』といったアルバムでバンドの黄金時代を迎えている。90年代の新世代パンク・バンドたちの大ブレイクに続いた彼らは、音楽的にはシンプルなアプローチと卓越したメロディ・センス、リリック的にはより聴き手に寄り添った等身大のリアルで、後にポップ・パンクと言われる、新しい時代のパンク・ロック・スタイルを打ち出した。基本はカリフォルニアのパンクを継承しつつも、ニュー・ウェイブやオルタナティヴ、ポストハードコアもバックグラウンドにあるし、ビートルズやビーチ・ボーイズのようなメロディ感覚も持っているし、ジャンルの異なるヒップホップ、ドラムンベース、エレクトロニック・ミュージックも追求していったから、ブリンク182の音楽はキャリアを通じてどんどん進化していくことになる。





バンドが最初に無期限の休止を発表したのは2005年のことで、トムはバンドを脱退して、バンドでありマルチメディア・プロジェクトであるAngels & Airwavesの活動をスタート。マークとトラヴィスは新バンドの+44を始動して、アルバムをリリースする。それが2008年9月にトラヴィスがDJ AMとともに、4人の死亡者を出した飛行機事故に巻き込まれたことで事態が変わっていく。事故で生き残ったのは二人だけで、DJ AMは1年後に薬物のオーバードーズで亡くなってしまうが、トラヴィスは怪我とストレス障害で生死をさまよい、この出来事がきっかけとなって、10月にトムとマークは会うこととなり、それがバンドの再始動につながっていく。2009年からはリユニオン・ツアーが始まり、2011年にはアルバム『Neighborhood』、2012年にはEP『Dogs Eating Dogs』をリリース。活動は順調に見えたが、2015年になるとトムが再びバンドを脱退。理由は音楽以外の活動に時間を割くためとのことだった。当時トムが熱を入れていたのは、UFO、宇宙人の研究であり、To The Starsという会社を作って本格的な活動も行っていた。トムの二度目の脱退を受けて、マークとトラヴィスはバンドを続行することを選び、トムの後任としてアルカライン・トリオのマット・スキバを加入させる。新ラインナップによる2016年のアルバム『California』は、ビルボード200でバンドにとっての二度目の1位に輝き、イギリスでも初の1位を獲得するほど、大成功を収めることとなり、初めてグラミー賞にもノミネートされた。続く2019年のアルバム『Nine』では、ポップ・パンクに今の時代のヒップホップのプロダクションを取り入れた意欲作となり、ビルボード200では初登場3位を記録している。

トムの後任を務めたマット・スキバはファンにもかなり好評ではあったが、コロナ禍の2020年に入ると、アルバム『Nine』のツアーはキャンセルとなり、コロナ禍の状況を曲にしたシングル「Quarantine」にはマットは参加しておらず、ギターを弾いていたのはマークであった。


マークがSNSで癌を公表、トムの電撃復帰

再び流れが変わったのは2021年に入ってからだ。6月にマークがSNSで癌を公表、過去3カ月間秘密裏に治療を受けていたことも明かした。マークの癌はその後完治したと発表されるのだが、この間トム、マーク、トラヴィスの3人は集まって、過去の問題も含めていろいろな話をしたようだ。この辺りからトムのブリンク182復帰の噂は出始め、2022年10月11日になると、突如ブリンク182はトムの復帰、ツアーの開催、新曲のリリースを発表することとなる。

トムの電撃復帰とも言えるこの発表は大きな話題となった。2022年になると、ポップ・カルチャーの世界ではY2Kリバイバルが大きな現象となっており、音楽の世界ではポップ・パンクが新たなトレンドとして再び注目されるようになっていた。トラヴィスにしても、長い間ロックとヒップホップとのクロスオーバーを、自身のソロ・プロジェクトやDJ AMとのコンビ、ランシドのティム・アームストロングと組んだトランスプランツなどで表現してきたが、この数年は新世代ヒップホップ・アーティストとのコラボや彼らのプロデュースで、プロデューサーとしての名前をどんどん上げていった。その背景には、XXXTentacion、JuiceWRLD以降、ヒップホップの側からロックを取り入れる逆クロスオーバーが始まっていて、そこからポップパンク、エモが再び注目を集めるという現象が生まれていたのだ。2020年9月にトラヴィスがプロデュースを手がけた、マシン・ガン・ケリーのアルバム『Tickets to My Downfall』がビルボード200で1位になったことも大きい。トラヴィスはレーベルのDTA Recordsも主宰し、jxdn、Caspr、アヴリル・ラヴィーンといったアーティストと契約し、新旧世代のポップパンクもどんどん盛り上げていく。新世代アーティストたちにとって、トラヴィスは一番コラボをしたい、今最も旬なドラマー/プロデューサーとなったのだ。

そういうタイミングでのブリンク182の再結成だから、熱狂的な歓迎をもって受け入れられたのも当然だと言える。10月11日には翌2023年にラスベガスで開催されるポップ・パンク/エモのフェス「When We Were Young」に、グリーン・デイとともにヘッドライナーを務めることも発表。そして新曲の方も、10月14日に「Edging」がリリースとなり、この曲はトム、マーク、トラヴィスの3人が10年振りに一緒にレコーディングを行ったものが形となった。この曲はビルボードのAlternative Airplayで1位、Hot 100で61位を記録。バンドのキャリア史上最大規模となるワールド・ツアーも発表され、2023年3月11日のメキシコ公演を皮切りに、北米、南米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドと、2024年まで続く予定が発表された。





ところが2023年3月11日、トラヴィスがリハーサル中に左手の薬指を脱臼し、靱帯が切れたため、手術が必要となり、ワールド・ツアーは延期となる。そして4月14日、カリフォルニアで開催されたコーチェラ(コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル 2023)の1週目の初日、ブリンク182はサハラ・ステージにサプライズで出演。トム、マーク、トラヴィスの3人によるライブは8年半振りのものとなった。さらにコーチェラの2週目の4月23日、キャンセルとなったフランク・オーシャンの代わりに、メイン・ステージのヘッドライナーとして登場する。非常に盛り上がったこの日のライブは、昔からのファンを熱狂させただけでなく、再びブリンク182の時代が到来したことを強烈に伝えることにもなった。

そして、9月18日、ニュー・アルバムのタイトルが『One More Time...』であること、リリースが10月20日になることを発表。トム、マーク、トラヴィスの3人によるアルバムは『Neighborhoods』以来12年振りである。アルバムからの先行リリースは、現時点では、「EDGING」「ONE MORE TIME」「MORE THAN YOU KNOW」「DANCE WITH ME」「FELL IN LOVE」「YOU DONT KNOW WHAT YOUVE GOT」が発表されており、アルバム全体としては全17曲が収録される予定だ。







トラヴィスのプロデュース力、曲ごとの制作体制

今のこの絶妙なタイミングで、ブリンク182はどういうアルバムを出してくるのだろうか。前作『Nine』でトライしたヒップホップ的なプロダクションは、今回は実は味付け程度で、基本は3人のギター、ベース、ドラムスの演奏と歌で正攻法なアプローチをしている。おなじみブリンク182のポップパンクではあるのだが、歌のメロディ、ビート感がアップデートされていて、今の時代の音を鳴らしているという感じがスゴくする。歌の方では、新たな出発、若い頃の思い出、上手くいかない恋愛、喪失などがテーマになっており、キッズの気持ちのまま変わらないブリンク182が、少しだけ成長している感じがするのもいい。ダイナミックなドラムのビートチェンジやブレイクのカッコ良さも突き抜けているし、曲展開の面白さも聴きどころになっている。そこは今回、トラヴィスがプロデュースを務めているのが大きいのかもしれない。加えて、前作『Nine』以上に、曲ごとに共同プロデューサー、楽曲の共作者を迎えることで、1曲1曲の精度を上げて突き詰めている感じもする。Angels & Airwavesやマシン・ガン・ケリーなどの制作で、3人がこれまで個々に仕事をしてきた共同制作者もいるし、ポップ・ミュージック畑からの起用もある。ランシドのティム・アームストロングが制作と歌で参加している曲もあるし、トラヴィスのソロやトランスプランツでも制作の右腕だった、ジ・インタラプターズのケヴィン・ビヴォナも参加している。また、前作のアートワークを手がけたRISKに続いて、今回のアートワークでもHAZEのようなグラフィティ界のレジェンドを起用していて、ストリート・カルチャーへのこだわりも強く感じさせる。





ブリンク182は常にゲームチェンジャーであったと思うし、ポップ・パンクを今という時代のリアルな音楽として表現してきたバンドだと思う。それが2023年、今一度、時代とブリンク182の音楽が再び蜜月を迎えているような気がしてならない。

<INFORMATION>


『One More Time... | ワン・モア・タイム』
BLINK-182 | ブリンク182
ソニーミュージック・インターナショナル
発売中

配信リンク:
https://smji.lnk.to/blink182ONEMORETIMERS

01. ANTHEM PART 3/アンセム・パート・3
02. DANCE WITH ME/ダンス・ウィズ・ミー
03. FELL IN LOVE/フェル・イン・ラヴ
04. TERRIFIED/テリファイド
05. ONE MORE TIME/ワン・モア・タイム
06. MORE THAN YOU KNOW/モア・ザン・ユー・ノウ
07. TURN THIS OFF!/ ターン・ディス・オフ
08. WHEN WE WERE YOUNG/ホウェン・ウィ・ワー・ヤング
09. EDGING/エッジング
10. YOU DONT KNOW WHAT YOUVE GOT/ユー・ドント・ノウ・ホワット・ユー・ガット
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