竹野内豊が語る、山田孝之との11年ぶりの共演と制作秘話
Rolling Stone Japan / 2023年10月25日 18時0分
映画『イチケイのカラス』、『シン・仮面ライダー』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、Netflixシリーズ『THE DAYS』と2023年も出演作の公開が相次ぐ竹野内豊。10月27日(金)には、山田孝之とダブル主演を務めた『唄う六人の女』が劇場公開を迎える。
疎遠だった父が亡くなり、遺品整理のために故郷の山奥を久々に訪れた写真家・萱島(竹野内豊)。父が所有していた山を購入しようとやってきた東京の開発業者・宇和島(山田孝之)と車で走行中、道の真ん中に立っていた怪しげな女(水川あさみ)を目撃する。その直後、落石していた巨岩に激突してしまい、気を失った二人が目覚めるとそこは謎めいた女たちが暮らす村で――。
謎だらけの怪しげな世界観、極限状態のサバイバル、観る者に訴える深いメッセージと一言では説明しきれないオリジナリティあふれる本作。京都府の原生林・芦生の森で行われた撮影は、想像力を問われる日々だったという。竹野内にその舞台裏を聞いた。
Photo=Mitsuru Nishimura
――『唄う六人の女』は石橋義正監督の作家性が際立った作品ですが、竹野内さんの近年の出演作には『シン・ゴジラ』『孤狼の血』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』等、エッジの効いたものが並んでいます。惹かれる作品の特徴はありますか?
竹野内:脚本をいただいたときに「なぜ今、この作品を世に送り出したいのか」ということは、すごく考えます。今作だと、自分にとってのキーワードは「自然」でした。子どもの頃に山の中で遊んだり、川で泳いだり、沼でザリガニ釣りをしたり、自然の中で遊ぶ機会が多かったのですが、大人になったら仕事ばかりで自然と触れ合う機会が少なくなってしまって。そんなときに『唄う六人の女』の脚本を読んで、感じ入る部分がありました。
石橋監督はこの作品を通して「人間社会だけでなく、生命そのものに焦点を当てたい」とおっしゃっていました。そのうえで怒りや愛情、人間の弱さを映し出し、共進化の道を考えてゆきたいと。監督のビジョンに自分自身が共鳴したところが、大きかったように思います。一言でいうなら「原点回帰」でしょうか。
©2023「唄う六人の女」製作委員会
コロナ禍以降、多くの方が自分自身と向き合う時間が増えたと思いますが、この先の未来を明確に描ける人は少ないですよね。わからないことがあればすぐ調べて答えを出せる情報過多の時代なのに、すぐ先の未来の予想がつかない。その背景には、自分自身も含めて人間が私利私欲を追求しすぎてしまった結果、自然とのバランスを壊してしまった事実があるのかなと思います。この先の未来を見据えるためにも、原点に立ち返ってちゃんと考える必要があるのではないか――こうした視点で考えると、この映画をいま作る意義があると感じました。この作品を通して、石橋監督が作品に込めた何かを多くの方々にも感じていただけたら嬉しいです。
――竹野内さんは本作で、故郷から離れて都会で活動する写真家の萱島を演じられています。どのような準備をして、撮影に臨まれたのでしょう。
竹野内:撮影前は、石橋組の世界観にどう自分が融合していったらいいのか、本当にできるのかと悶々としていました。作家性の強い脚本ですし、台本に描かれた活字の中だけではなかなか想像がつかないシーンも多くありました。例えば「沼で女に水中に引きずり込まれ気づいたら川岸に倒れていた」であったり、「女の手をつかんだと思ったら木の枝だった」という描写は、読んでいるときは想像の世界で面白くとも、いざ現場で実際に演じてみるとなるとイメージがリアルに浮かばないので、できる限りその場で感じた気持ちを大事にして取り組むようにしていました。
Photo=Mitsuru Nishimura
――共に謎の村に迷い込む宇和島役の山田孝之さんとは『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』以来11年ぶりの共演となります。
竹野内:山田さんとは『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』以来、お会いしていなかったので再び共演できて嬉しかったです。近年では監督業やプロデュース業にも積極的に取り組んでいて、本作でも共同プロデューサーを兼任していて多彩ですよね。
僕が演じた萱島と宇和島は、対照的な人物。本編では細かく描かれていませんが、とあるバックボーンがあって宇和島はあそこまで強欲になってしまったのだと思います。でもその一方で、どこか滑稽さも持ち合わせている。山田さん独自の感性で見事に表現されているからこそ、欲に溺れた人間の傍若無人な姿が、横暴なだけでなく、どこか滑稽で愛おしくも見えてくるところが良かったと思います。
©2023「唄う六人の女」製作委員会
――しかし、先ほど竹野内さんがおっしゃったように想像力をフル回転させないといけない現場だったでしょうね。
竹野内:僕たちはよく「撮・照・録」といいますが、活字だけだとなかなか世界観がわからないだろうからと石橋監督から撮影部・照明部・録音部に絵コンテを配ったそうなんです。だから彼らはどういう画でつながっていくかをなんとなくわかっていたようなのですが、俳優部は配られなかったので本当に手探りでした(※出演者の演技を制限しないように絵コンテを共有しない場合も多い)。一ヵ所、どうしてもイメージがつかめないシーンだけ絵コンテを見せていただきました。「もっと早く見せてもらえればよかった!」と思いましたね(笑)。
Photo=Mitsuru Nishimura
また石橋監督の作品では音楽も重要な役割を担っています。今回も一部に音楽劇のような要素が入っていますし、劇中の音楽がどのようなものになるのかは気になっていました。完成版を拝見する際、楽しみにしていた部分のひとつです。
――竹野内さんにとって、音楽はどういう存在ですか?
竹野内:なかなか難しいかと思いますが、可能であれば作品の撮影に入る前に劇中曲を聞けたらいいなと思っています。以前、別の作品で劇中に使う曲の一部を撮影期間中にずっと聴いていた時があるんですが、台本上の中だけでは、どう突破すれば良いのか想像もつかない難関のシーンを演じるうえで、何度か助けられた時があるんです。僕自身も1人で考えたいときや集中したいときに音楽を聴くことはあります。それくらい、音楽には理屈抜きにインスピレーションや想定外のパッションが湧いてくるものだと感じています。
Photo=Mitsuru Nishimura
(※実写の映画づくりのプロセスとして、音楽は撮影終了後の編集段階等で挿入されていく場合が多い。ちなみに『ジョーカー』では例外として劇中曲が完成された状態で撮影を行い、ホアキン・フェニックスは楽曲を聞きながら演じたという)
――宮本浩次さんやトータス松本さん等の音楽に元気をもらえると話されていましたが、竹野内さんの音楽ライフについて教えて下さい。
クラシックからパンクロックまで、幅広く何でも聴きます。学生の頃は早く大人になりたくて、カッコつけて一生懸命R&Bやジャズを聴いていましたが、いまはどちらかというとロックのほうが好きかもしれません。宮本さんやトータスさんの詞はストレートに心に突き刺さって聴いていて気持ちがいいですね。
>>写真をすべて見る(16枚)【フォトギャラリー限定写真あり】
『唄う六人の女』
2023年10月27日(金)より、TOHOシネマズ日比谷他、全国ロードショー
出演:竹野内豊 山田孝之 / 水川あさみ アオイヤマダ 服部樹咲 萩原みのり 桃果 武田玲奈 大⻄信満植木祥平 下京慶子 鈴木聖奈 津田寛治 白川和子 / 竹中直人
監督・脚本・編集:石橋義正 脚本:大谷洋介音楽:加藤 賢二 坂本 秀一
制作プロダクション:クープ コンチネンタルサーカスピクチャーズ 制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ ©2023「唄う六人の女」製作委員会
Photo=Mitsuru Nishimura
Hair and Make-up = Hiroaki Takenouchi
Styling= Rira Shimoda
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