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「朝霧JAM」体験記 新人ライターが人気キャンプフェス初参加、リアルな感想をレポート

Rolling Stone Japan / 2023年11月2日 20時0分

Photo by 宇宙大使☆スター

「朝霧JAM」が10月21日(土)、22(日)に朝霧アリーナ・ふもとっぱらにて開催された。20回目の開催を祝福するように好天に恵まれ、大人から子どもまで約1万人のオーディエンスが来場。絶景のなかで最高のライブがいくつも繰り広げられた。フェスの歴史を次世代へと継承するべく、今回が初参加となる1999年生まれの新人ライター・もこみの体験レポートをお届けする。来年以降の参加を検討している方は、ぜひとも参考にしてほしい。

数ある野外音楽フェスの中でも屈指のロケーションを誇る「朝霧JAM」。昼は富士山を間近に一望しながら様々な音楽を楽しみつつ、夜は満点の星空の下でキャンプを楽しむことができる人気イベントだ。フジロックと同じくスマッシュが主催しており、会場の雰囲気もどこか似ている(もともと朝霧高原はフジロックの開催候補地だったという)。「キャンプをしながら音楽を楽しむ」ことに重きを置いた兄弟フェスとも位置付けられるだろう。



筆者は現在大学院生で、この夏にボランティアスタッフとして初めてフジロックに参加したが、音楽フェスもキャンプ経験もほとんどない初心者だ。そのためキャンプが前提となっている朝霧JAMはハードルが高いように感じていた。

結論から言えば、そんな人でも快適に楽しめるのが朝霧JAMだと断言できる。自分のようなビギナーでも気軽に楽しめるように、至れり尽くせりのプランが用意されているからだ。

今回は「都市発着バスプラン」というオフィシャルツアーに参加させてもらった。これは全国7都市からツアーバスで会場に直行するプランである。神奈川県在住の筆者は新宿・都庁前から出発するバスを選択した。バスは予定通り土曜の朝7時に出発したので、寝坊には気をつけたい。

車内では寝不足を補うように昏々と眠り続けたこともあり、あっという間に会場に到着。11時30分着の予定だったが、渋滞に巻き込まれながらも11時前には朝霧入りすることができた。燦々と輝く太陽とどこまでも続くかのような山脈と大草原に、無数に連なる錐状のテント。その景色が窓越しに見えた時点で思わずガッツポーズしそうになる。


ツアーバスで会場に。7時ちょうどに都心前を出発、サービスエリア休憩を一度挟んで10時50分頃に到着(Photo by Toshiya Oguma)


会場の様子。RAINBOW STAGE(写真・中央右)の向かい、CAMP SITE Aには色とりどりのテントが並ぶ。富士山と自然の美しさに観客も出演者も見入っていた(Photo by 宇宙大使☆スター)

ツアーバス利用者には、便利なレンタルテントプランも用意されている。設営済みのLOGOS製テントを借りることができるうえに、返却や撤収もなしでそのまま帰ることの出来る嬉しいプランだ。さらに今回は、キャンプ用品セットを現地に手配してくれる「hinataレンタル」のサービスも活用させてもらった。バスツアー参加者なら、シャトルバス乗降場すぐそばの宅急便受付所で受け取り/返却できるので非常にスムーズだ。キャンプ用品を持ってない筆者のような人はもちろん、荷物を極力減らしたい人にとっても便利だろう。今回はマット・寝袋・コットの3点をレンタルさせてもらった。

これらの諸々の手続きを終え、メインステージであるRAINBOW STAGE前に位置するCAMP SITE Aのテントヘ移動。同行したRolling Stone Japanの編集者(37歳・初参加)と筆者の大人2人でも十分にのびのびと過ごせる広さだ。 会場への移動と寝床の確保をストレスなく行えたおかげで、そのあともフレッシュな状態で最高の音楽とロケーションを満喫することができた。バスプランが提供しているのは、この心地よい体験そのものなのだ。


ツアーバスを降りてすぐ、宅急便受付所でマット・寝袋・コットを受け取る(返却もこちらで)。「hinataレンタル」はソロ参加用のセットから焚き火/料理ツール、便利なアイテムまで幅広い品揃え(Photo by Toshiya Oguma)


ライター・もこみと編集・小熊も泊まったLOGOS製テント(防水マット、ランタン付き)。レンタル料金は1名~2名用テントが10,000円、3~4名用が15,000円(いずれも税込)。便利さを考えたらリーズナブルな印象(Photo by 宇宙大使☆スター)

テントでひとしきり荷物の確認を済ませたあと、リハーサル中のRAINBOW STAGEへ歩いてみる。ざっと見渡した限り、観客の年齢層は30代〜40代前後が中心といったところか。午前中からビールを飲む人や、犬を連れた人々、小さな子どもの姿なども見られた。家族連れの多さが特に印象的で、親子で遊べるKIDS LAND、聴覚保護用イヤーマフの無料貸出/会場販売など、子ども向けのアクティビティやサービスも充実していた。


キャンプエリアからライブを楽しむのも至福のひととき。RAINBOW STAGE(写真・中央)〜MOONSHINE STAGEという2つのステージ間の移動距離は10分程度(Photo by 宇宙大使☆スター)


KIDS LANDの様子。お子様連れのファミリーでも参加しやすい、ピースフルで緩やかな雰囲気が魅力的(Photo by Daiki Miura)

さて、いよいよ音楽が始まる。トップバッターを務めたのは大注目の新人バンドCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN。1stアルバム『tradition』が大きな話題となった東京発の3人組だが、この日は7人編成の大所帯バンドとしてステージに現れた。電子音と生演奏を組み合わせた独特のムードとグルーヴィな楽曲は個性抜群だ。美空ひばり「リンゴ追分」のエキゾチックなカバーも面白い。


CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、大きなタコが目印のMOONSHINE STAGEに登場(Photo by Daiki Miura)


CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINのベーシスト、Yuta(Photo by Daiki Miura)

toeなど初日から見どころ満載、大自然にも感動

次は、今や世界的アーティストとなった青葉市子のステージ。ストリングスを迎えた6人編成による、上品で豊穣な響きが朝霧高原の豊かな自然環境と調和していた。どこからともなくシャボン玉が飛び交い、子ども達のはしゃぐ声が音の隙間に入り込む。美味しい空気を吸って自然そのものを全身で感じる喜びは忘れがたい。草原なので地べたに座っても非常に気持ちいいし、実際後方では寝転んでいる人々の姿も見られた。

その後も、冥丁のダンスミュージックとアンビエントの境目をざらっとした電子音で漂うようなプレイは衝撃的だったし、折坂悠太は緩急つけたセットで夕暮れ時の会場を彩り、多くの人が引き込まれていた。今こそ観たい注目の新人から経験豊富な実力派まで、素晴らしいアーティストがバランスよくブッキングされている。そして、フジロックと同様に海外勢も充実している。


冥丁(Photo by Daiki Miura)


折坂悠太(Photo by Taio Konishi)

米テキサス州からやってきたインディーバンド、ハウディ(Hovvdy)は音源の印象よりも鋭いオルタナティブロックで、からっとしたサウンドが最高に心地良い。雲に覆われていた富士山が姿を見せると、それを見たメンバーは「beautiful!」と感嘆し、まじまじと見つめながら「ピースフルなフェスだね」と絶賛。「テキサスに帰りたくない!」とまで言い出すという終始ご機嫌な様子で、終始ハッピーな雰囲気が充満していた。


ハウディ(Photo by Taio Konishi)


日中のRAINBOW STAGEに集まったオーディエンス(Photo by 宇宙大使☆スター)

夕方5時頃になるとお腹が減ってくる。夏より気温が低いとはいえ、野外フェスは体力を使うのだろう。飲食店はどこも並んでいたが、少し待てば注文口までたどり着くため、食事に苦労することはなかった。昼頃にもカレーやラーメンを食べたが、このときは無料でご飯を大盛りにできる豚丼を美味しく頂いた。

食べ終わった食器は、丁寧に分別を案内してくれるスタッフの指示通りゴミ箱へ。「世界一クリーンなフェス」を謳うフジロック以上にゴミが落ちていなかった印象だ。ゴミ袋を無料で配っているのもありがたい。


その頃、編集・小熊は朝霧食堂へ。ぐるぐるウインナー、富士宮やきそば、ミルク味噌ラーメンといった名物フードがずらり(Photo by Toshiya Oguma)


ミルク味噌ラーメン。朝霧牛乳をたっぷり使用したクリーミーな味わい(Photo by トゥッティーニ)

午前から昼過ぎにかけては風が吹くと肌寒いものの、日光が出てくると暖かいため、Tシャツにフリースという調節しやすい格好はちょうどよかった。しかし、日没後は別世界のように冷え込む。あまりに寒いのでトレーナーを重ね着したが、それでも夜は猛烈な寒さだった(編注:例年より2週間開催が遅かったこともあり、最低気温は4度ほど)。防寒対策が不十分だったのは反省点だ。寒さに震えながらも、この日の個人的な目玉でもあるカッサ・オーバーオールに備えてRAINBOW STAGEに向かう。

定刻通りにカッサがバンドを従えてステージに登場すると、話題の最新作『ANIMALS』から「Ready To Ball」を披露。カッサはジャズドラマーでもありながらプロデューサーでもある、先鋭的で革新的なジャズアーティストだ。さらに、ラッパーとしてもステージを縦横無尽に駆け回る。ドラムを叩いたり、ラップしたり、観客を煽ったりと、メンバー全員が役割や担当パートを目まぐるしく入れ替えながら、分類不能で尖った音楽性を炸裂させる。メンバーのトモキ・サンダースが時折日本語で観客に語りかけるのも盛り上がりに拍車をかけていた。この日イチの盛り上がりだったのではないか。何も知らなくとも楽しいに違いない熱量満点のステージで寒さを吹き飛ばしてくれた。

余韻に浸る間もなく、急いでそのままMOONSHINE STAGEのアルバム・リーフへ。ジミー・ラヴェル率いる熟練のポストロックバンドだ。遠くからでもクリアに聴こえてくる凄まじい低音。そのあまりにも重厚で驚異的なサウンドを浴びながら、カッサとのタイムテーブルの被りを少し恨めしくも思った。


カッサ・オーバーオール(Photo by Taio Konishi)


アルバム・リーフ(Photo by Daiki Miura)

すっかり真っ暗になった夜7時にtoeが登場。clammbonの原田郁子と、音楽プロデューサーでキーボーディストの皆川真人を迎えたスペシャル編成で出演し、RAINBOW STAGEには大勢の観客が集った。その裏で、MOONSHINE STAGEではOGRE YOU ASSHOLEが硬質な人力ループミュージックで強烈な磁場を作り出していたのも圧巻だった。


toe、原田郁子(Photo by Taio Konishi)


OGRE YOU ASSHOLE(Photo by Daiki Miura)

そして、この日のRAINBOW STAGEトリであるカナダのジャズインストバンド、バッドバッドノットグッド(以下BBNG)の出番に向けて待機。リハーサル終わりにサポートメンバーのベーシストが手に息を吹きかけて温めているのが目に入った。さすがに20時を回ると手もかじかんでくる。手袋を着用する人も数人見かけたが、確かにあったら安心だと思った。

スクリーンに映像を投影しつつ、照明演出も少なめにシンプルなステージングで熱い演奏を繰り広げるBBNGだったが、あまりの寒さに耐え切れずテントへ戻る。幸いにも、CAMP SITE Aならテントでくつろぎながら演奏を聴くことができる。こんなふうに、それぞれが思い思いの時間を満喫できるのも朝霧JAMの魅力なのだろう。


バッドバッドノットグッド(Photo by Taio Konishi)

レンタルしたコットを組み立て、寝袋に包まり就寝の準備。BBNGの出番が終わってもまだ22時だったので、キャンプを楽しみに来た人々の楽しそうな声も遠くから聞こえてくる。朝霧JAMはここからが本番だという人も多いに違いない。

テントから顔を出して空を見上げると、そこには満点の星があった。この日はちょうど流星群もピークを迎えていたため、流れ星を見ることもできた。寒さも時間も忘れて見入ってしまう絶景だった。


思わず見入ってしまった夜の景色(Photo by 宇宙大使☆スター)

くるりなど2日目も大充実、初体験の朝霧JAMを振り返って

翌日曜日の最初のアクティビティは朝8時45分からのラジオ体操だ。ポカポカした気持ちの良い陽気のなかで身体を動かし関節を伸ばすのは、根源的な楽しさや満足感がある。体操後は本門寺重須孝行太鼓保存会の和太鼓の演奏だ。人力のドラムンベースとも言える力強さと爽快さで、一気に目が覚めてくるようだった。演奏前にスピーチを読み上げたメンバーの学生が、朝霧高原の自然は地域の酪農家のおかげで保たれているのだと教えてくれた。長年にわたり地域との関わりを深めてきたからこそ、朝霧JAMはこうして20回目の開催を同じ場所で迎えることができているのだと思わされる一幕だった。


2日目の早朝、日の出もまた美しい(Photo by Taio Konishi)


富士山をバックにラジオ体操(Photo by 宇宙大使☆スター)


本門寺重須孝行太鼓保存会(Photo by Taio Konishi)

2日目は環境への慣れもあり、のんびりと過ごしてみた。例えばHelsinki Lambda Clubの演奏を遠くから眺めるように楽しんでもいいし、デュオ編成でやってきたトミー・ゲレロの演奏をぼーっと浴びるだけでも気持ちいい。湘南出身のシンガーソングライター、さらさはMCで、演者はステージから一方的にエネルギーを与えているのではなく、観客からも受け取っていて、この空間はみんなで作っているのだと言っていた。それは心からの言葉に聞こえたし、その理想に最も近い空間が朝霧JAMだと思う。


トミー・ゲレロ(Photo by Taio Konishi)

昼過ぎのRAINBOW STAGEに出演したオーストラリアのチェット・フェイカーはアップテンポなダンスミュージックで登場。自分はそのとき屋台に並んでいたが、列に並ぶ人たちも揺れながら聴いていたのは良い光景だった。ちなみに、このとき注文したキーマカレーチーズローストが筆者の朝霧JAMベストフードだ。パンに乗っかる野菜とチーズの具材にカレースパイスが効いた絶品。おすすめです。


チェット・フェイカー(Photo by Taio Konishi)


ライター・もこみ推薦、キーマカレーチーズロースト。編集・小熊は「ちさん屋」のさくらだんごがお気に入り(Photo by mocomi)

この日初めて知ったシアトルの実験的ジャズユニット、sunkingのライブは、浮遊感と共に身体に響く素晴らしい内容だった。こういった新たな出会いもフェスの醍醐味だ。夕方には、キティー・デイジー&ルイスのこだわり抜いたヴィンテージなビジュアルとロックンロールサウンドが胸に突き刺さる。筆者は彼らのライブを、RAINBOW STAGEから遠く離れた後方にある焚き火越しに眺めていた。火の粉が風になびく景色と音楽の組み合わせは何とも言い難い心地良さで、炎の暖かさもじんわりと沁みてくる。

そのあと、CARNIVAL STARというエリアのDJブースにも足を運んでみた。CAMP SITE Bの奥地にあり、ドッグランなども併設された穴場的エリアだ。時間帯もあって空いていたが、それでもみなが思い思いに身体を揺らす良い雰囲気が保たれていた。5年ぶりの復活だったそうで、リピーターから愛されるのも納得の空間だった。


sunking(Photo by Taio Konishi)


キティー・デイジー&ルイス(Photo by Taio Konishi)


グッと冷え込む朝霧JAMの夜に焚き火は欠かせない。薪の燃える音が音楽と溶け合う(Photo by 宇宙大使☆スター)

辺りが暗くなり始めた17時20分、くるりがRAINBOW STAGEに登場。朝霧はなんと17年ぶりの出演とのことだが、この2日間でもっとも多くのオーディエンスを集めていたように思う。出だしは名曲「WORLD'S END SUPERNOVA」で、イントロ1秒で大歓声が巻き起こった。もはや十分ベテランバンドの域だが、リリースしたばかりの最新作『感覚は道標』からも多くの楽曲を披露するなど現役感も冴え渡る。最後は「奇跡」でしっとりと締めた。


くるり(Photo by Taio Konishi)


くるり(Photo by Taio Konishi)

このあともステージは続き、キャンプを楽しみたい人はもう一泊することもできるが、ツアーバスの発車時刻が19時のため、我々はここで帰路に着いた。名残惜しさを感じつつ、「来年も必ず来たい」という思いを胸に朝霧高原を後にする。帰りも予定時刻より早く、22時過ぎには新宿駅付近まで到着。神奈川県在住の筆者でも、日付が変わる頃には自宅の布団で横になることができたので、月曜日から仕事や学校がある人もこのツアーならなんとかなりそうだ。ちなみに、日帰り1日参加するためのバスプランも用意されている。

全くの初心者である筆者が、突然キャンパー憧れの朝霧高原で快適に過ごせたうえに最高の音楽まで楽しめたのだから、感謝というほかない。ただ、正直に難点を挙げるとしたら、スマホの電波が場所によっては全く繋がらなかったのは要注意だ。それと、空き時間がそれなりに多いので、複数人で行くのが理想だとは思う。学生くらいの若い参加者が少ない印象だったが、コロナ禍に学生生活の大半を過ごしたことでそもそものフェス経験が乏しいことも大きいのだろう。でも、仲間を集めて一緒に準備しながら臨めば、ひょっとしたら(時期的にも予算的にも)フジロックより敷居が低いフェスかもしれない。バスツアーも含め、ぜひとも前向きに検討してみて欲しい。 何より、いろんな表情を見せる富士山や美しい星空、開放感に溢れたムードなど、会場に足を運んでこそ味わえる感動がいくつもあった。2日間とも天候に恵まれたことも大きいが、音楽と同等かそれ以上にあの快適で贅沢な空間で過ごした実感が残っている。総合的にみて大満足の体験であった。
夜のRAINBOW STAGEに集まったオーディエンス(Photo by Taio Konishi)

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