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デュラン・デュランが語る名曲の再解釈、アンディ・テイラー復帰の可能性「席は空いている」

Rolling Stone Japan / 2023年11月2日 17時30分

Photo by Stephanie Pistel

デュラン・デュラン(Duran Duran)は先日発表したニューアルバム『Danse Macabre』で、ビリー・アイリッシュやローリング・ストーンズ作品のオリジナリティあふれるカバーバージョンに挑んだ。バンドのフロントマンであるサイモン・ル・ボンが、最新作や元メンバーのアンディ・テイラーの再加入など、バンドの将来構想について語った。


デュラン・デュランのニューアルバムが、悪、ゴシック、不気味をテーマにした理由を、サイモン・ル・ボンに問うのは間違っている。「サイモン・ル・ボン」を直訳すると「善良なサイモン」という意味だからだ。「そんなくだらないアイディアは、絶対に俺のではない」と、イギリスの自宅でZoomを通じたインタビューを受けたサイモン・ル・ボンは、ジョーク混じりに話す。「第一に俺は、ハロウィンを楽しむようなタイプの人間ではない」と彼は続けた。「自分の誕生日の10月27日に近いしな。ハロウィンよりも自分の誕生日を祝う方が大切だ」と話すル・ボンは、俺がデュラン・デュランの中心だと言わんばかりに、しばらく沈黙した。

「ちょっと皮肉が過ぎたかな。俺だって、ハロウィンがどれほど重要かは分かっているよ」。

もちろん、その通りだろう。だからこそ、ニック・ローズ(Key)とジョン・テイラー(Ba)がハロウィンをテーマにしたアルバムを作ろうと提案した時に、ル・ボンも話に乗ったのだ。ニューアルバム『Danse Macabre』は、ル・ボンの65回目の誕生日である10月27日にリリースされた。本作には新曲3つとバンドの隠れた名曲3つのリワークに加え、ビリー・アイリッシュ、ローリング・ストーンズ、スージー・アンド・ザ・バンシーズらの曲を、オリジナリティに満ちたイメージで再解釈したカバーも収録されている。



「カバー曲の一部は、ラスベガスでのコンサート向けに用意したものだった」という。バンドは、2022年にラスベガスでハロウィン・コンサートを行っている。「それが今回のアルバムを作るきっかけに繋がっていると思う」。

アルバムには、多くの著名なゲストも迎えている。まずはル・ボンの提案により、オリジナル・メンバーのアンディ・テイラー(Gt)が参加し、多くの作品でギターを弾いている。さらに、テイラーの後任だったウォーレン・ククルロも数曲に参加した。テイラーとククルロは、タイトルトラックで共演を果たしている。1986年のヒットアルバム『Notorious』を共同プロデュースしたナイル・ロジャースも、新曲「Black Moonlight」で再びデュラン・デュランと組むことになった。トーキング・ヘッズの「Psycho Killer」のカバーには、マネスキンのヴィクトリア・デ・アンジェリスが加わり、曲をファンキーに仕上げている。

『Danse Macabre』が自ら言い出したアイディアかどうかは別にして、ル・ボンは「難なくニューアルバムに取り組む足がかりを掴んだ」とローリングストーン誌に語っている。

ゴス、ハロウィン、ビリー・アイリッシュ

ーサイモン・ル・ボンという人間にゴシック性を見出そうとしましたが、何も思い浮かびませんでした。

サイモン・ル・ボン(以下、LB):正直に言って、俺も否定しない。ニック(・ローズ)はゴスを自認しているし、ハロウィン大好き人間だ。ハロウィンは彼のお気に入りの祝日だ。彼は生まれ変わったら「ニック・”ジ・アンチクライスト”・ローズ」を名乗るだろうね。

ーファンは喜ぶでしょう。

LB:彼は、他人からどう見られようが気にしない。それがニック・ローズだ。

ーあなたとゴスとを無理やり結びつけるとすれば、あなたはかつて”映画『時計じかけのオレンジ』のサントラが人生を変えた”と発言しています。

LB:ゴスではなく、ウェンディ・カルロスに影響を受けたんだ。

ーだからあなたはシンセサイザーを好むようになったのでしょうか。

LB:その通り。シンセサイザーをフィーチャーしたクラシック音楽も好きだ。俺の心に訴えるものがある。

でも、いろいろなアイディアを試してみて、バンドのメンバーの誰かが夢中になれる何かを見つけたら、プロジェクトとしてスタートさせる十分な理由になるだろう。バンドの流れについて行くうちに、自分自身も、これまでとは違った何かに取り組めるチャンスだと気づくのさ。


Photo by Jonas Akerlund 

ーニューアルバムのコンセプトにピンときたのは、どのタイミングでしたか?

LB:俺の場合は「Bury a Friend」(ビリー・アイリッシュ)と「Paint It, Black」(ストーンズ)のカバーからかな。オリジナルとは違った方向性でカバーできるという自信があったからね。

ービリー・アイリッシュの曲の、どこに惹かれたのでしょうか?

LB:ジョン(・テイラー)が持ち込んだ曲だが、聴いてみて衝撃を受けた。パーフェクトだった。「こんなにも華麗なアプローチは、とても真似できない」というのが俺の第一印象だ。でも俺たちのバージョンを形にしていくうちに、ボーカル中心の曲というよりも、明らかにインストゥルメンタル寄りに仕上がっていった。

キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードというバンドを聴いたが、彼らは東方の音階を採り入れていた。調べてみると、ドレミファソラシの2番目の「レ」と6番目の「ラ」の音を半音下げた、ヒジャーズカールという音階があった。この音階を使ってみると、独特のメロディが生まれる。ふと思い付いて「Bury a Friend」のメインメロディにヒジャーズカールを組み合わせてみた。すると曲全体のフレーバーが見事に変わった。この曲が俺たちのものになった、と思えた瞬間だった。



ーあなた自身が選択したカバー曲はありますか?

LB:いや、ない。イーグルスの「Witchy Woman」をやってみたかったんだけどな。

ー却下されたのでしょうか?

LB:採用されなかった。自分のソロアルバムでやるかもしれない。

ーソロアルバムの計画があるのですか?

LB:そうではないが、バンドのメンバーとして活動するのがどういうことかは、君もよく知っているだろう。俺たちは常に、ソロアルバムの制作に取り組んでいるのさ。

名曲の再解釈、マネスキンのヴィクトリアについて

ー「Paint It, Black」に対しては、どのようにアプローチしましたか? あなたとミック・ジャガーとは、かなりかけ離れたタイプのシンガーだと思いますが。

LB:確かにミック・ジャガー・タイプとは言えない。オリジナルを聴いていて、ミックがシタールのリフをなぞって歌っていることに気付いたんだ(と言ってル・ボンは、シタールのメロディラインを歌って聴かせた)。メロディのしつこい繰り返しが、「世の中は全てが酷く、全てがブラックだ」という、やる気のない典型的なティーンエージャーに通じるものがあった。もちろん、今さら10代に戻ることはできない。だから「俺だったらもう少し、明るく元気なバージョンにできるのではないか」と考えた。ヒステリーの一歩手前のバージョンだ。そして、メロディと歌詞にも少し変化が必要だと考えた。

まずはメロディに手を加え、それから歌詞の譜割りを工夫した。歌詞の変更には、オリジナル曲を作ったアーティストに確認を取る必要があるから、しばしば問題にぶつかることがある。しかし俺たちは、許可を得られた。



ーミックが、あなたの書いた新たな歌詞を認めたということですか?

LB:会社を通じて許可を取ったんだと思う。誰がどう許可を取ったのかは知らないが、とにかくアレンジが認められた。

マスティク島かどこかで休日を過ごすミックとばったり出会って、「僕の”Paint It, Black”の凄まじいバージョンを作ったのは君か。いったい何てことをしてくれたんだ?」なんて言われたら最高だな(ル・ボンは、ここで大笑いが止まらなかった)。

ストーンズは、自分たちの作品を第三者が発展させることにとても寛容なバンドだと思う。俺たちのバージョンがオリジナルを超越するなどとは、一瞬も思わない。完全に別物だ。曲に何か手を加えると、新たな生命が吹き込まれる。俺たちは曲をカバーするにあたって、常にそういうスタンスでやっている。

俺が「Paint It, Black」に持ち込んだのは何かと言うと、パティ・スミスのアティテュードさ。

ーそれは納得が行きます。彼女もまた、ミック・ジャガーの大ファンです。

LB:俺はずっと、パティ・スミスの大ファンだ。いろいろな人から影響を受けたが、パティ・スミスが最高さ。

ーソロアルバムでは、彼女の作品をカバーしたらどうでしょうか。

LB:おぉ、そうだな。「Barefoot Dancing」なんかがカバーできたら最高だね。

ーオリジナル曲に忠実な形でカバーしたことはありますか?

LB:たぶん「Spellbound」は、オリジナルに近いんじゃないかな。俺たちにとっては聖域のようなものだった。

ースージー・スーの「聖域」をカバーしたのはなぜでしょう?

LB:俺から見ると、彼女は天国に近い存在さ(とル・ボンは、言葉を止めて笑った)。彼女が死に近いという意味ではなく、彼女が聖人のような存在だということさ。俺はパンクに大きな影響を受けた。パンクというジャンルの中で、彼女は最高の存在だったし、今でも最高だ。彼女が今なお現役でプレイしてくれているのが、とても嬉しい。「Spellbound」は、素晴らしい曲だ。「魅了され、酔いしれて、踊って、踊って、踊りまくる」って感じさ。




ー「Paint It, Black」と同様に「Super Freak」(リック・ジェームス)にもアレンジを加え、あなた方のアルバム『Rio』に収録された「Lonely in Your Nightmare」と合体させています。

LB:この2つの曲のベースラインには、常々共通点を感じていたんだ(と、下降ベースラインを歌う)。「Lonely in Your Nightmare」と「Super Freak」に共通する要素だ。ちゃんと形にする何年も前から、遊びでやっていたことだ。ジョンは、2つの曲を何とか繋げられないか考えていた。当時はまだライブなどで披露できるレベルではなく、サウンドチェックやスタジオで試していただけだった。今回は、2曲を相互に融合すべく取り組んだ。




ーファンキーなベースと言えば、ヴィクトリア・デ・アンジェリスが「Psycho Killer」に参加した経緯を教えてください。

LB:これは、ベーシストであるジョンのアイディアだった。彼は「ヴィクトリアに意向を聞いてみたい」と言った。すると彼女は了解してくれた。彼女のベースももちろん素晴らしかったが、「アイ、アイ、アイ、アイ、アイ」というコーラス(ル・ボンが歌ってみせる)も、本当に抜群だった。

アンディ・テイラー、ウォーレン・ククルロらとの再会

ーアンディ・テイラーとウォーレン・ククルロも、ニューアルバムに参加しています。2人はどのようにバンドへ復帰したのでしょうか?

LB:アンディ・テイラーが作った曲のストックもたくさんあり、彼が在籍していた頃にレコーディングした作品もある。彼の曲は彼に弾いてもらうのが自然だと考えた。2022年に彼が自身の病状を明らかにしてから、再びデュラン・デュランの一員として、新曲を含むたとえ数曲でも一緒にできることを俺たちは願っていた。

俺はアンディに連絡して、俺たちのアイディアを伝えた。ロックの殿堂入りした時の賞をイビサ島でアンディに渡したのは、俺だ。ただ彼に送り付けるのではなく、メンバーの誰かが直接手渡した方がいいということになり、俺が出かけていったのさ。彼とは、将来的な話もした。でも俺と2人でやるのか、それともバンドとやるのかなど、その時点で具体的な話は出なかった。それからニューアルバムの話が具体化した時に、俺が「アンディも参加に前向きだと思う」とバンドに伝えたのさ。

ー彼を再び加えてのレコーディングはいかがでしたか?

LB:アンディは、類い稀なる最高のギタリストだ。彼は過小評価され過ぎていると思う。彼は万能かつクリエイティブなミュージシャンで、仕事もとても早い。イビサ島に2日間滞在して、7曲分のギターをレコーディングした。たった2日間だ。信じられないよ。彼と一緒にいると、とてもインスパイアされる。「Paint It, Black」へのアプローチ方法のアイディアも、アンディと一緒にやりながら浮かんだ。



ーウォーレン(・ククルロ)とはどのように再会したのでしょうか?

LB:「Love Voodoo」をリワークしようと決めた時、ウォーレン抜きではおかしいだろう、ということになった。彼に電話して、曲を送った。残念ながら同じスタジオでレコーディングすることはできず、彼にはリモートで作業してもらった。彼のレコーディングしたパートを加えると、素晴らしい完成度になった。お気に入りの曲のひとつだ。リワークした曲の中では「Love Voodoo」と「Night Boat」が気に入っている。

ー「Night Boat」を挙げた理由は何ですか?

LB:いつでもオープニングトラックに相応しい曲だった。1stアルバムに収録した曲だったが、当時のコンサートのオープニングには必ずこの曲を選んだ。ハロウィン・コンサートの時も、オープニングは「Night Boat」だった。だから、再びレコーディングしたいと考えていた曲でもあるし、ニックが採用した新たなコード進行が秀逸で、オリジナルとはまた違った味が出ている。とてもエキサイティングだ。



ーナイル・ロジャースとの再会もありました。

LB:ナイルとは別れた後の再会というよりも、関係はずっと継続していた。

ーナイル・ロジャースとデュラン・デュランとは、どこで波長が合うのでしょうか?

LB:たとえ1曲(「Black Moonlight」)だけだったとしても、ナイルは大きなインパクトを与えてくれる。結果的に彼のもたらすエネルギーと熱狂と自信が、アルバム全体に影響する。ナイルと仕事している時は、本当にレベルアップできるんだ。彼はよく「デュラン・デュランは自分のセカンド・バンドだ」と言っている。俺たちはファミリーなのさ。




ーアンディ・テイラーの話に戻りますが、彼がコンサートに復帰する可能性はありますか?

LB:彼が望めば、席は空いている。もちろん、まずは養生することが大事だ。彼とまた一緒にステージに立つのを楽しみにしている。

ーアンディはローリングストーン誌のインタビューで、自分が戻れるかどうかはバンド側次第だと発言しています。

LB:もちろん、俺たち側も調整が必要だ。

ーもう一点彼が望んでいたのは、『Rio』をステージで全曲通してみたい、ということでした。彼のアイディアをどう思いますか?

LB:アルバム全部を? 面白いアイディアだね。素晴らしいと思う。

ーハロウィン・イベントの後は、どのような予定でしょうか? 2006年にアンディがバンドを離れたことでお蔵入りしたアルバム『Reportage』を、アンディを加えて再レコーディングする計画はありませんか?

LB:『Danse Macabre』が完成したから、今度は『Reportage』復活の話が一番に浮上している。「次は何をしようか? これまで通り次のアルバムの制作に取り掛かるか、それとも埋もれているストックを引っ張り出そうか?」という話だ。『Reportage』にも素晴らしい曲がいくつかあるし、素材としては最良だと思う。ここから取り掛かるのも悪くない。実は俺たちの間では、『Reportage』を復活させる計画が既にあるのさ。

【関連記事】アンディ・テイラーが語るデュラン・デュラン復帰の可能性、がん闘病からのカムバック



デュラン・デュラン
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