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キティー・デイジー&ルイス、ロックンロール3兄弟が振り返るデビュー15年の歩み

Rolling Stone Japan / 2023年11月2日 17時45分

Photo by Yukitaka Amemiya

10月22日に出演した「朝霧JAM」と、翌23日の渋谷クラブクアトロにおける単独公演。5年振りに来日したキティー・デイジー&ルイス(Kitty Daisy & Lewis)は、その両方で最高のステージを見せてくれた。

彼らが日本のオーディエンスの前で初めて演奏したのは2008年の朝霧JAM。ちょうどデビューアルバムの国内盤が出たタイミングで、3人ともまだ10代(デイジーが18歳、ルイスが17歳、キティーは15歳!)だった。あれから15年が経ち、ひとりひとりもバンドとしてもすっかり成長したわけだが、しかし芯の部分は何も変わっていなくて、今も自分たちの「好き」を追い求めながら楽しんで演奏しているのが本当に素晴らしいと思った。また朝霧より50分ほど尺の長かったクアトロ単独公演では各自の長めのソロやジャム的な場面も多く盛り込まれ、それぞれプレイヤーとしての能力の向上も見て取ることができた。と同時に、日本のオーディエンスとバンドとの間に確かな信頼関係が築かれていることも、大きな盛り上がりを見せたその単独公演からはっきり伝わってきたのだった。

そんな来日公演に合わせた形で、これまでのシングル曲をまとめたオールタイムベスト的な『Singles Collection』が日本だけで発売。同時にこれまでの4作のオリジナルアルバムもカラーヴァイナルとなって日本でのみ発売された。ということで、朝霧JAM翌日の昼間に行なったインタビューでは、ざっくりとこれまでを振り返ってもらうことにした。

【写真を見る】来日撮り下ろし&最新ライブ写真(全10点、記事未掲載カットあり)


渋谷クラブクアトロ単独公演のライブ写真(Photo by Masashi Yukimoto)

―朝霧JAMのステージ、最高でした。天気もよくて、3人ともとても気持ちよさそうに演奏していましたね。

キティー:すごく楽しかった。私たちが日本で初めて演奏したのが朝霧JAMだったので、そのときのことを思い出したりもしたし。

―2008年の朝霧JAMですよね。自分もあのときのことを思い出していました。3人ともまだ10代で、なのに1曲ごとに楽器を持ち替えながらブルーズやジャンプミュージックをクールに演奏しているのを観て驚いたものでしたよ。あの頃はまだフェスで演奏する経験もほとんどなかったんじゃないですか?

キティー:うん。だから特別な感じがしたのを覚えている。

デイジー:あのあと(2009年)、コールドプレイのUSツアーをサポートして大きな会場で演奏する経験を積むこともできたけど、デビューアルバムを作った頃はフェスに出るとかアメリカの大きな会場で演奏するようになるなんて想定外だったし、ましてや日本で私たちの音楽を気に入ってくれる人がいるなんて思ってもみなかったので、オーディエンスの反応のよさに驚いたし、嬉しかった。

ルイス:英語で歌っているから伝わらないんじゃないかなんて心配もしたけど、全然そんなことなくて。言語を超えたところで僕らの音楽を感じ取って楽しんでくれていることがはっきりわかったから、あれ以降、日本で演奏するのが楽しみになったんだ。




「朝霧JAM」出演時のライブ写真(Photo by Taio Konishi)

―今回の来日公演は5年振りですよね。ツアー自体、再開したのは今年の春で、それまでしばらく活動を休んでいたようですが。

キティー:フェスとか単独のショーとかいろいろブッキングされていたんだけど、ロックダウンがあったから全部キャンセルになっちゃって。それでしばらく休むことにして、ようやく今年4月のドイツのツアーからまたいろんなところに行くようになったの。

デイジー:というか、ロックダウンの前に私がふたりめの子供を産んだから。子育てに専念する意味でも少しバンドを休もうということになって。

ルイス:そうだったね。でもロックダウンの間にYouTubeとかで僕らを発見してくれた人がたくさんいたのはよかったよ。活動は休止していたけど、新しいファンベースを築けたところもあって。ツアーを再開したら以前よりも多くの人がライブに足を運んでくれるようになった。やっぱりみんな音楽に飢えていたところがあったんじゃないかな。

―デビューから15年が経ちましたが、「もう15年」という感じがしますか? それとも「まだ15年」という感じですか?

デイジー:15年……。もっと経っている気がする。実際、私たちは子供の頃から一緒に演奏しているので、ずいぶん長く音楽をやっているなぁって。

ルイス:初めてのギグから数えると、20年くらいステージに立っているんじゃないかな。でもライブをする上での気持ちはそこまで大きく変わってない。僕らは本当に若い頃から人前で演奏してきていて、どこに行っても同世代の子より年上の人たちと話す機会のほうが圧倒的に多かった。大人たちのなかに放り込まれた子供たちって感じで、その状態がけっこう普通のことだったんだ。それに「バンドをやるのはクールだ、バンドを始めよう」って始めたわけじゃなくて、子供の頃から当たり前のように音楽をやる環境が家にあって、自然に楽器を鳴らしていたから。ただ自分たちが楽しむためにやっていただけっていう。

キティー:それは今でもそうだよね。今も自分たちを楽しませるためにやっている。その延長線上でやっているというのはまったく変わっていなくて。


Photo by Yukitaka Amemiya

―それは観ていてわかります。でもデビューアルバムを聴いたときはやっぱり驚きましたよ。10代の3人がキャンド・ヒートやマディ・ウォーターズ、ルイ・ジョーダンなんかの曲を楽しそうにカヴァーしているんですから。

デイジー:子供の頃から家で父がギターを弾いて歌ってくれていて、それに合わせて私たちも歌っていたから。そもそもそのへんの曲はどれも父の歌う曲として親しんでいて、オリジナルを聴いたことがなかったの。だからオリジナルを初めて聴いたときはヘンな感じがした。「へえ~、キャンド・ヒートの『Going Up The Country』って、こんな感じなんだ~?!」みたいな。

ルイス:「I Got My Mojo Working」も「Honolulu Rock-A Roll-A」もそう。僕らが聴いていたのは父の歌声のそれらだったから。あとになってオリジナルを聴いて、「へえ~」って(笑)。




―あのデビューアルバム『Kitty,Daisy&Lewis』(2008年)で既にデジタルを排除して全編アナログ・レコーディングをしていましたよね。ヴィンテージのマイクや8トラックのテープレコーダーを使って録っていたわけですが、そうした機材はもとから家に揃っていて、お父さんから使い方を習ったんですか?

ルイス:(マスタリング・エンジニアの)父が電子楽器や機材の類をいろいろ触っているのを見て自分も好きになったんだけど、どういうふうにレコーディングしたらいいのかといった知識はなかったので、ミキサーの組み立て方とかそういうのをひとつずつ覚えて、コツコツやっていった感じだね。自分たちがレコーディングで最も重きを置いているのは、その瞬間のエネルギーをいかにキャプチャーしてレコードに封じ込めることができるかということ。昔のいいレコードを聴くと、必ずミュージシャンがそれをプレイしたときにしか出せないエネルギーがしっかり捉えられている。だから、どうしたらそうすることができるかってことを考えながら少しずつ機材を揃えていったんだ。

デイジー:レコーディングしているときの部屋の空気感みたいなものが大事だよね。

ルイス:うん。例えば祖母が掃除機をかけていたら、その音も入っちゃうわけだけど、それはまさしくそのとき起きていることなんだから残してもいいと思うんだよ。ラップトップを使って録ったら、そういう空気感は絶対に出せないよね。

2nd〜4thアルバムを振り返る、次回作の展望

―1stアルバムの大半がカバーだったのに対し、2ndアルバム『Smoking In Heaven』(2011年)は全てオリジナル曲で、スカやカリプソの要素も入ってきたりしてグッと多様になりました。もっと自分たちの音楽性を広げようと意識してのことだったんですか?

キティー:1stアルバムはそれまで自分たちが聴いてきた音楽を自分たちなりの解釈でやったものだった。それはあのアルバムで十分やりきれたと感じたし、同じことを繰り返すのもつまらないから、2ndアルバムでそれまで自分たちが書き溜めてきた曲を表に出すのはいいチャンスだと思ったの。それで、それまでギグでやってきたことをスタジオに持ち込むような感じで録音した。あのアルバムにはそれぞれがいろんなところで受けた音楽的な影響がたくさん詰まっている。R&Bやブルーズだけじゃなくて、ジャマイカの音楽とかもね。ある意味、3人の個性が最も濃く出た作品とも言えるかも。

デイジー:3人3様のバイブスがうまくミックスされたレコードだよね。でもそれは自然にそうなった感じで、初めから3人のバイブスを混ぜようと話してそうなったわけではなかった。





―続く3rdアルバム『The Third』(2015年)は、ミック・ジョーンズ(ザ・クラッシュ~ビッグ・オーディオ・ダイナマイト)をプロデューサーに迎えて作られたものでした。彼と一緒に作った経験を、いまはどう捉えていますか?

キティー:ミックは2カ月くらい毎日私たちのスタジオに来てくれて、レコーディングが始まる前からまるで一緒に住んでいるみたいに親しくなった。彼は私たちのアルバムで演奏するわけでもないのに、ギターコードや歌を覚えたいと言って、一緒にプレイして楽しい時間を過ごしたの。だからレコーディングが始まるときには私たちの曲を熟知していた。一緒にいろんな話をしたなぁ。多方面に詳しい人だから、映画の話、本の話、あと陰謀論についてとかいろいろ話してくれたりして(笑)。音楽の話はほとんどしなかった。一緒に近所に買い物に行ったときには、彼が大好物のパイとブルーベリーを買って、「ブルーベリーは脳にいいんだよ」って教えてくれたり。本当に楽しい時間だった。

デイジー:ミックはすごくポジティブなエネルギーを持った人なので、作品にもそれが反映されていると思う。自分たちと違う彼の耳があって、客観的な視点がそこに加わったのもよかった。





―そして現段階では最新作となる4作目『Superscope』(2017年)でセルフ・プロデュースに戻しました。戻したというか、家族もまったく関与しなかった初めての完全セルフ・プロデュース作だったわけですよね。音像・音響的な面も含め、相当進化したなぁという印象を受けたものでしたが。

デイジー:自分たちで新しいことにどんどん挑戦していかないと進歩しないし、同じようなアルバムを繰り返し作ってもしょうがないから。あのアルバムで新しいサウンドに挑戦したという意識はかなりある。実験的なことをいろいろやったアルバムだった。とはいえ、やっぱり一番大切なのは初期衝動であって、さっきルイスが言ったように、そのときのエネルギーをキャプチャーしてレコードに封じ込めるっていうところは変わってないし、これからもそこは変わらないと思う。

キティー:ソングライティングに関してもだいぶ進歩が感じられるアルバムだったかな。私自身は、あの当時の出来事を曲に込めていて、聴くと当時の自分を思い出したりもする。まあそれはあのアルバムに限ったことではないけど。振り返ると、1作1作にそのときならではの感覚や経験がリアルに反映されているなって。だから次のアルバムもまったく違うものになりそう。





―次のアルバムはもう考えているんですか?

デイジー:今年のライブがひと段落したら曲作りに入ろうと思っているの。私たちは基本的にひとりひとりが曲を書いて、それを持ち寄って3人で練っていくというやり方をいつもしているので、まずは各自で書くことから始めることになるんだけど。

ルイス:なるべく来年の、そんなに遅くない時期のリリースを目指したいね。

3兄弟が選ぶ、お気に入りのシングル曲

―さて今回の来日に合わせ、日本のファンに向けた『Singles Collection』が先頃発売されました。こうしてまとめて聴くと、シングルだけでもなかなか多様な曲があるなぁと感じるわけですが、そもそもどの曲をシングルにするかというのは自分たちで決めているんですか?

ルイス:基本的には自分たちで決めている。「Going Up The Country」のようにレーベル側が決めて出したものもあるけど、レーベルの意向はそんなに意味をなさないと思っているから。まずは自分たちが気に入らないと。

デイジー:そのシングルが成功するどうかは、私たちにはそんなに関係ないことで。自分自身が好きな曲かふたりの好きな曲じゃなかったらシングルにはしたくないし、それをA面にするのが難しかったらB面に収めるようにしている。


Photo by Yukitaka Amemiya

―ちなみに、ここに収めたシングル曲で特に気に入っている曲を選ぶとすると?

ルイス:う~ん、難しいな。

キティー:私は「Mean Son Of A Gun」。自分が初めてライブで歌った曲なので、特別な思い入れがあるの。

―10代前半のときの録音だから、声が若いですよね。

キティー:そうなの。今とはずいぶん違う声でね。「Mean Son Of A Gun」は母がチャリティーショップで古いレコードを買ってきて、そこに入っていた曲で、「これを歌ってみて」と言われて歌ったのを覚えている。ギグではドラムを叩いて何度か歌ったんだけど、叩きながら歌うのが難しくてね。父に「ドラムじゃなくてハーモニカを吹いたらいいじゃないか」と言われ、それで初めてハーモニカを吹いたという思い出もある。この曲はライブで演奏するときに必ず「行くぞ!」って気持ちになるんだよね。徒競走でピストルがバーンと鳴るのを合図に走り出す、あの感じ。ライブの終盤で演奏することも少なくないんだけど、そういうときには、「よし、ここまで辿り着いたぞ」って感じる曲でもある。

―デイジーはどれですか?

デイジー:う~ん、どれかなぁ。私も1曲選ぶなら「Mean Son Of A Gun」かなぁ。

ルイス:僕は「(Baby) Hold Me Tight」。ロッキンな感覚がいい。スウィングを演奏するのが好きなんだ。あと「Going Up The Country」。この曲を演奏するのをオーディエンスが待ち望んでいるのが伝わってきて、演奏を始めたときに気分がいいんだ。

キティー:どの曲にもそれぞれ何かしらの思い出があって、ときどきそれがよみがえってくるのが音楽のよさだったりもする。私が「Mean Son Of A Gun」をレコーディングしたのは確か12歳のときで、その頃に家族みんなで動物園に行ったなぁとか、そういうことも思い出せるのがいいんだよね。

―いつか『SINGLES COLLECTION Vol.2』を出せるように、これからまたいい曲をどんどん作っていってくださいね。

キティー:ありがとう。来年出す予定のアルバムも期待していてね!






キティー・デイジー&ルイス
『Singles Collection』
発売中

シングルでリリースされた全15曲を年代ごとに収録
初CD化「Ride」「Baby Bye Bye (KDL vs. Slimkid3)」追加収録
初回封入特典:ロゴ・ピック
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13666


日本限定カラー・ヴァイナル再発
『Kitty, Daisy & Lewis』:パープル・ヴァイナル
『Smoking In Heaven』:ブルー・スモーク・ヴァイナル
『The Third』:トランス・ブルー・ヴァイナル
『Superscope』:ネオン・ピンク・ヴァイナル
※いずれも300枚限定
詳細:https://www.beatink.com/artists/detail.php?artist_id=394

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