つばきファクトリー、山岸理子・岸本ゆめの卒業公演を観て「強く、しなやかに、未来へ」
Rolling Stone Japan / 2023年11月13日 19時40分
11月6日、つばきファクトリー・山岸理子と岸本ゆめのの卒業公演『つばきファクトリー コンサートツアー 2023秋 可惜夜〜山岸理子・岸本ゆめの 卒業スッぺシャル〜暁』が日本武道館にて開催された。このレポートでは、本サイトに掲載されるつばきファクトリーのインタビューには必ず登場していただき、毎回大変お世話になった岸本ゆめのを中心に、取材時のエピソードを交えながら公演を振り返っていきたい。
【写真まとめ】『つばきファクトリー コンサートツアー 2023秋 可惜夜〜山岸理子・岸本ゆめの 卒業スッぺシャル〜暁』
自分がつばきファクトリーの単独ライブを初めて観たのはかなり遅く、2021年10月18日に日本武道館で開催された「CAMELLIA ~日本武道館スッペシャル~」だった。
それまで特定のメンバーを意識して見ることはなかったが、この公演で気になった……というか、自分の視界にグイグイ入ってきたのが岸本ゆめのだった。この頃はまだ黒髪だった彼女のパフォーマンスは、歌もダンスもいい意味で枠からはみ出ていつつも、要所々々で見せる凛々しい立ち姿に一気に引き込まれたことを今でも覚えている。
その後、本サイトで初めてつばきファクトリーの取材をすることが決まったとき、参加メンバーとして最初に指名したのは岸本だった。インタビュー中の彼女はこちらの質問の意図を正確に読み取り、即座に自分の内から湧き出る言葉を紡ぐ。たまに変化球を投げてもしっかり対応してくれ、正直、非常に助かった。
つばきファクトリーのインタビューは今年春にも行われ、そのときに会った印象は初回とまったく変わらなかった。ただ、当時卒業を目前に控えていた浅倉樹々の話題になったとき、浅倉の卒業後にグループの先頭に立つのは自分ではないという趣旨の発言をしていたのが少々意外だった。それからしばらくして岸本と山岸の卒業が発表されたとき、非常に残念でありながらもなんとなく納得できる部分もあった。
そして今月6日、『つばきファクトリー コンサートツアー 2023秋 可惜夜〜山岸理子・岸本ゆめの 卒業スッぺシャル〜暁』の日を迎えた。まず、オープニングは最新シングル「妄想だけならフリーダム」「最上級Story」「三回目のデート神話」で畳み掛けたのだが、冒頭で魅せた豫風瑠乃とのフェイクからすでに鳥肌モノ。パワー系ではあるが、決して独りよがりではないボーカルはハロプロ屈指だと再認識。これがつばきで今後聴けなくなるのかと思うと残念すぎる。最初のMCでは「11人でそろってステージに立てていることが本当に幸せに思います」という山岸理子とは対象的に、岸本は「いつもどおり」を強調した。
とはいえこの日、岸本のパフォーマンスはずっと笑顔とともにあった。以前のインタビューで、自分は岸本のパフォーマンスについて「顔で歌うし、顔で踊る」と本人に伝えたことがある。それに対して彼女は、「私が普段見てるアーティストにそういう方が多いからなのかもしれない。私は生き様を晒したい、みたいなところがあって」と答えていたが、その言葉のとおりだとすると、この日岸本が終始絶やさなかった笑顔は、彼女の心の在りようをそのまま反映させたものだったのだろう。
岸本ゆめの
山岸理子
「今後も決して立ち止まらない」という意思表明
一方、卒業コンサートとしては意外に感じる場面がいくつかあった。まずは、ファーストMCのあとの展開だ。まず、山岸が他のメンバーとともに「Love take it all」など彼女が憧れていた℃-ute楽曲を中心としたメドレーを披露し、岸本も山岸と同じくずっとその背中を追いかけていたBerryz工房楽曲を中心としたメドレーで魅せ、最後は岸本と山岸ふたりでBerryz工房と℃-uteによるコラボ曲「超HAPPY SONG」を歌唱したのである。これはふたりがつばきファクトリーとして活動をはじめるよりも以前の足跡を尊重した演出で、スクリーンに映し出されたハロプロ研修生時代からの映像と相まって、自分のような比較的新規のリスナーにとっても感動的な時間となった。ふたり同時の卒業公演は寂しいが、岸本のパワーと山岸のしなやかさという対象的なキャラクターや2人の長年にわたる活躍が、この日の様々な演出を可能にしていたと言える。
もうひとつ意外だったのは、残されるメンバーから2人へのメッセージの伝え方だ。まず、幕間映像としてメンバー全員が参加したフェアウェルパーティーの模様がスクリーンに映し出される。その映像を受けて、「足りないもの埋めてゆく旅」のトラックをバックにメンバーが2人にメッセージを伝えていき、最後のメンバーがメッセージを伝え終えた直後に全員でサビを歌い出すという絶妙な流れだったのだ。メッセージはいきなり泣き出す豫風瑠乃からはじまり、各メンバーが一番伝えたいことをぎゅっと凝縮して2人に次々と伝えていった。こういったスタイルはかなり斬新で、従来の卒業公演のイメージを覆した。さらにその直後、感傷的な空気を振り切るかのようにアッパーチューン「アドレナリン・ダメ」へと繋げる展開は、過剰に湿っぽくはしたくないという彼女たちの主張のようでもあった。
そう、グループ結成時からのリーダーと歌唱面でグループを牽引してきたメンバーが同時に卒業するというのは、普通に考えればかなり厳しい。しかし、上記のこと以外にも、「勇気Its my life!」という最新曲をラストに披露したことと、本編終盤に「アタシリズム」という初披露の新曲を持ってきたことは、今後も決して立ち止まらないというつばきファクトリーの意思表明のように思えた。特に、「アタシリズム」は作詞:児玉雨子、作曲:星部ショウによるパワフルなディスコチューンで、ストリングスを効果的に使ったかなりキャッチーな名曲だ。11人でのパフォーマンスはこの日が最初で最後というのはあまりに惜しいが、つばきファクトリーを明るい未来へと導く力強さにあふれていた。
グループ卒業後、山岸は女優業を志し、岸本はソロとして歌を続けるという。ソロとして作品を世に送り出す際には、我々にまた力強い言葉を聞かせてほしい。それと同時に、つばきファクトリーの今後にも注目していきたい。
今年春に行ったインタビューで「つばきファクトリーらしさ」について尋ねた際、豫風はメンバー3人ずつに分かれて開催したファンクラブイベントを引き合いに出してこう語った。「3人になってもちゃんとつばきらしいって思ったから、どんな組み合わせでもつばきらしさは残るのかなって思います」そんな豫風の言葉を受けて、岸本はうれしそうに言うのだった。「1人でも欠けたらそのグループではなくなる、みたいな言い方ってよくあるじゃないですか。でも、一人ひとりがちゃんとつばきファクトリーを背負ってやれてるっていうのは、なんかすごく素敵だね」
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