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Awich、日本のヒップホップ史に残したマイルストーン 渡辺志保が考察

Rolling Stone Japan / 2023年11月16日 20時0分

「Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama」

約1万8000人の観客を魅了したAwichのアリーナ単独公演「Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama」。自身最大規模となるライブには、ルーツとなる沖縄への愛情や日本のヒップホップ・シーンにおける連帯など、メッセージ性に溢れた内容に。豪華なゲストたちもさることながら、Awichが持ち得る最大のエネルギーを出し切り喜怒哀楽に溢れた感動のライブとなった。3時間に迫る圧巻の内容をレポートする。

【写真まとめ】Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama

2022年に初の武道館公演を成功させたあと、「次はアリーナ」と早々にその目標をファンたちに伝えてきたAwich。今年の5月には「THE ROAD TO ARENA」と題して全国五か所のZEPP会場を巡るツアーを敢行し、その傍らで故郷・沖縄のラッパーたちを集めた『098RADIO vol.1 Hosted by Awich』や、気鋭の国内女性ラッパーたちが参加した『United Queens』といったコンピレーション作品も続けてリリースし、かつ、TV番組にも意欲的に出演するなど、猛スピードでアリーナ公演への階段を駆け上っていった。前作『Queendom』リリース時から、果敢に「シーンに君臨する女王として何ができるか、どう動くべきか」という点に拘って活動を続けてきたAwichの、一つの到達点が今回のアリーナ公演といえるだろう。Kアリーナ横浜には、Awichのような髪型、メイク、ネイルを施した女性が溢れかえっていた。この一人一人が、Awichの言葉にパワーをもらい、日々の活力にしてきたのだと考えると、こちらも感慨深い気持ちになる。上演前の会場アナウンスはAwichの愛娘であるToyomi(Yomi Jah)が担当し、ライブが始まる前から客席が沸いた。早くも、Awichの演出にしてやられた、と感じた。

いよいよ、伝説が始まる。ステージには静かにスポットライトが当たり、美しい民族衣装を来た琉球舞踊団が登場し、「THE UNION」のコーラスにも参加したKUNIKOによる三線の音色と琉歌が響きわたる。なんとも厳かで神聖な雰囲気に、一気に会場が呑まれていく。Awichが繋いできた沖縄の壮大な歴史とアートが、このアリーナの舞台で再現される演出は、『THE UNION』を謳う今回のライブには打ってつけのオープニングだ。そのままライブの一曲目、「THE UNION」へと繋がり、歌詞中の”叫んでよAwich!”というフレーズをスピットすると、観客席からアリーナが揺れそうなくらいの歓声が沸いた。1万8000人の観客が、この瞬間を待っていたーーそう実感した。今回のテーマになっているものは、彼女の最新アルバムのタイトルにもあるとおり、”UNION=団結、融合”。彼女自身も、ステージ上のMCでは幾度となく「一体感」と口にしていた姿が印象的だった。この日のステージに集結したアーティストは、総勢20組を超える。国内のヒップホップ・アーティストに関しても、単独でアリーナ公演を成功させたものは数少ない。次々とステージへ現れるラッパーたちからもまた、この日のアリーナ公演を歴史的なものにすべく並々ならぬエネルギーを感じた。




Photo by Uran






女性たちの連帯感、沖縄の熱いプライド

ライブ本編は、大きく分けて3つのセクションで構成された。臨戦体制であることを明言するかのように「Guerrilla」を披露した後、最初のパートは、MFSやNENE、LANA、MaRI、そしてCyber Ruiといった女性ラッパーたちが中心にフィーチャーされたステージに。ゆりやんレトリィバァも登場してさらに沸いた「Bad Bitch 美学 Remix」は、やはり圧巻の盛り上がり。「すべてのbad bitchに捧げます。男とか女とか関係ねえからな!」とAwichがシャウトし、MVの衣装を彷彿とさせるワードローブを身に纏った色とりどりの彼女たちは、まさに闘うことを恐れぬ愛の戦士といったところ。この日、会場に駆けつけることが叶わなかったAIはビデオメッセージで参加。「Bad Bith 美学 Remix」の途中、AwichらがAIにエールを送りながら会場を盛り上げていた様子も、女性たちの連帯感を示しているようで心地のいい雰囲気を感じた。





途中、Awichがステージ上を去り、代わりにオーディエンスを盛り上げたのはDJ U-LEE。スキルフルなスクラッチを交え、Awichも所属するクルー、YENTOWNのメガMIXを披露。kZm「DOSHABURI feat. JUMADIBA」やMONYPETZJNKMN「UP IN SMOKE」、DJ TATSUKI「TOKYO KIDS feat. IO & MonyHorse」といったバンガーを次々と繋ぎ合わせていく。同時に、スクリーンにはバックダンサーたちの名前が映し出され、ダンサーたちのソロ・タイムで観客を魅了した。
 
続く2つ目のセクション、アリーナの会場には再び沖縄の風が吹く。「琉球愛歌 Remix」とともにスタートし、RITTO、唾奇、OZworld、CHICO CARLITO、そしてSugLawd Familiarの面々が集合。沖縄が経験してきた痛みや歴史、そこに伝わる愛情や人々の暮らし、伝承。”沖縄とヒップホップ”を体感的に繋ぎ合わせ、Awichならではの感動的な瞬間が続く。RITTOとは敬礼とハグを交わし、RITTOも客席に向けて「愛してるよー!」と呼応する。この日初めてフルメンバーで披露することとなった「RASEN in OKINAWA」では、唾奇からマイクを繋いだOZworldが自分のヴァースの冒頭をアカペラでキック。沖縄民謡からの引用となるリリックをステージ上の全員が歌い、沖縄の熱いプライドが、さらにアリーナを包み込んだ。注目の若手MCで構成されるSugLawd Familiarの「LONGINESS REMIX」ではオーディエンスも大合唱し、この夜の大団円的な見せ場でもあった。


Photo by Uran


Photo by Uran





その後、GADOROとの「Burn Down」、STUTSとBIMが参加した「Twinkle Stars」と続き、「たくさんの人と一体感を感じられる世界にしたいなと思って作った曲。不安があることを認めれば、前に進める」と切り出して「かくれんぼ」へ。会場もひとしきりエモーショナルな雰囲気に包まれ、再度Awichがステージから去ると、新たにBGMが流れ始める。そこに登場したのは、なんとスパコールの衣装に身を包んだゆりやんレトリィバァ。この衣装、見覚えがあると思ったら、AwichとKEIJUがYouTube上の人気企画「THE FIRST TAKE」にて「Remember」を歌った動画を、ゆりやんがパロディ風に撮影した動画(ややこしい!)と同じもの!?さらにはパロディ動画でKEIJU役を演じたナダルも登場し、二人で見事「Remember」を歌いあげた。コメディアンならではの身体を張ったパフォーマンスに、爆笑を交えてさらに盛り上がる客席。そしてすぐに、AwichとKEIJUによるガチな「Remember」が披露される。Awichをアリーナまで導いてきた人気曲の一つ。フックに合わせてジャンプするオーディエンスをさらに煽りながら、いよいよ最後のセクションへと進んでいく。








Photo by Uran









多面的かつ圧倒的なAwichの魅力

Awichといえば、名実ともに、現在の日本のヒップホップ・シーンを率いる存在。3時間にも及ぶアリーナ公演のピリオドを打つべく、最後のセクションには彼女と共演を重ねてきた、国内のヒップホップ・シーンを盛り上げる屈指のラッパーたちが登場する。¥ellow Bucks、DOGMA、鎮座DOPENESS、そしてANARCHY。行き着く暇もないまま、ありったけのエネルギーを放出するかのようにマイクで攻めまくるAwich。オーディエンスも、気を緩めずに加勢する。「そろそろ終わりに近づいてきました。みんなとこの時間を共有できたこと、このシーンにとって本当に意味があります」と客席に伝え、「SUPER GILA GILA」をキック。ステージの奈落からはJP THE WAVY、そしてYZERRが加わり、熱狂のクライマックスへと進んでいく。


Photo by Uran





最後、ファンの顔を一人一人見るようにして歌ったのは「Love Me Up」。アリーナならではの演出で、どんどん上に昇っていくブランコに乗りながらの歌唱だった。キラめく紙吹雪と、ブランコに吊り下げられたベールに彩られたAwichの表情は、大きな偉業を成し遂げた女王ならではの、なんともいえぬ充足感に満ちたものだった。


Photo by Uran



そして、今回の一大公演においては、全編にわたって母たるAwichのパワーも強く感じた。実際、ステージ上には愛娘のToyomi(Yomi Jah)も参加し、「Call On Me」ではプロのダンサーも顔負けの圧巻のソロ・パフォーマンスをお披露目。かねてから自身もラップで参加していた「TSUBASA」ではラップに加えてダンスも披露し、友人である同世代のダンサーたちも加わって、母世代、子世代の共演も実現した。「Wait For Me」ではToyomiの手を握りながら歌う場面もあり、娘の瞳を見つめる表情はまさに母親の慈愛に満ちたもの。





3時間のステージの中で、多面的かつ圧倒的なAwichの魅力を再認識した。ライブの途中には、海外進出を予告する映像もプレビューし、彼女の翼がどこまで羽ばたいていくのか、さらに期待が高まるところ。いずれにせよ、Awichのキャリア、そして日本のヒップホップ・シーンにおいても大きなマイルストーンとなったこの日のアリーナ公演。いつまでもずっと語り継ぎたくなる歴史的な公演であった。










THE UNION TOUR2024

2024年4月27日(土) Zepp Namba(OSAKA)
open 17:00 / start 18:00 (問)キョードーインフォメーション  0570-200-888

2024年4月28日(日) 広島CLUB QUATTRO
open 17:00 / start 18:00 (問)YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571

2024年5月2日(木) Zepp Sapporo
open 18:00 / start 19:00 (問)WESS 011-614-9999

2024年5月9日(木) Zepp Fukuoka
open 18:00 / start 19:00 (問)キョードー西日本 0570-09-2424

2024年5月11日(土) 仙台PIT
open 17:00 / start 18:00 (問)GIPお問い合わせフォーム https://www.gip-web.co.jp/t/info

2024年5月17日(金) Zepp Nagoya
open 18:00 / start 19:00 (問)サンデーフォークプロモーション  052-320-9100

2024年5月23日(木) Zepp Haneda(TOKYO)
open 18:00 / start 19:00 (問)H.I.P. 03-3475-9999

【料金】

1階スタンディング ¥6,800 (税込・入場時別途ドリンク代・整理番号付き)

2階指定席 ¥7,800 (税込・入場時別途ドリンク代) ※Zepp公演のみ

【チケット先行】

◆FC先行◆

11/5(日)21:00~11/19(日)23:59

「Awich fanclub Asia Wish Children」への入会はこちら▼

https://fc-awich098.com/regist/

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