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コールドプレイ来日公演レポ 未来と愛を壮大に描く「音楽」のメッセージ

Rolling Stone Japan / 2023年12月4日 17時15分

コールドプレイ(Photo by Teppei Kishida)

2021年10月にリリースした最新作『Music of the Spheres』に伴うツアー『Music of Spheres World Tour』の一環として、今年デビュー25周年を迎えたコールドプレイが、11月6・7日にソールドアウトの東京公演を敢行。来日は6年ぶり、会場は前回に引き続き東京ドームだ。

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コスタリカのサン・ホセにて22年3月にスタートし、1年半の間に100回以上のスタジアム公演を重ねてきた本ツアーは、同年最大の興行成績を残したのみならず、現時点で歴代5位の興行収入を記録。東京公演のあとも、24年9月までにさらに約50公演(チケットは全公演完売)がラインナップされている。

その初日の模様をお伝えする前に、かねてから大きな注目を集めている、環境負荷を軽減する画期的取り組みに触れておきたい。この問題に強い関心を持つ彼らは4年前に前作『Everyday Life』を発表した当時、「解決策が見つかるまでツアーはやらない」と宣言したほどだが、ここにきて特別な充電式バッテリーを開発し、あらゆる面で再生可能エネルギーやリサイクル或いはサステナブルな素材を使うことで、音楽界で最もサステナブルかつ炭素排出量の少ない(前回の5割減!)ツアーを実現。面白いところでは、オーディエンスが着用するLEDリストバンドにも植物性由来の素材を用い、終演後は回収して再利用。また会場にバッテリーを充電できるパワーバイクを設置するなどしてオーディエンスも巻き込み、それでも発生する負荷は様々な環境保護プロジェクトへの寄付で相殺している。

開演にあたってまずは、ステージの左右に配置された円形のスクリーンにこうした取り組みを説明する映像が投影されたのち、いよいよショウがスタート。映画『ET』のメイン・テーマ曲が響き渡って我々を宇宙空間へと誘い、ステージ上に姿を見せたバンドは『Higher Power』で口火を切って、色彩の洪水で視界を満たす。以下彼らは2時間にわたって、喉が枯れるまでオーディエンスを歌わせ、踊らせて、架空の太陽系”The Spheres”を舞台にしたアルバムに寄り添う四幕構成――「Higher Power」や「Adventure Of A Lifetime」で冒険の始まりを告げる第一幕『PLANETS』、ウィル・チャンピオンのパワフルなパーカッションが彩る「Viva La Vida」や「Hymn For The Weekend」で人生のアップダウンを描く第二幕『MOONS』、4人がザ・チェインスモーカーズとのコラボ曲「Something Just Like This」や「∞」をエイリアンのマスクをかぶってプレイし、東京ドームをダンスフロアに変えて自由と平等を訴えた第三幕『STARS』、ソウルフルにラブを讃えて締め括る第四幕/アンコール『HOME』――のパフォーマンスを披露。セットの核を成すのは『Music of the Spheres』の収録曲だが、もちろん「Clocks」から「Fix You」に「Paradise」まで四半世紀のキャリアの重みを印象付ける大ヒット曲の数々も網羅し、手段を厭わず最高にエキサイティングな演出を施した音楽体験を提供した。幾つものスクリーンに映し出されたカラフルな映像、LEDリストバンドとライティングによる光のインスタレーション、これでもかと打ち上げられるパイロテクニクス、生分解性だという大量の紙吹雪、惑星を象った無数のバルーン……。特筆すべきなのは、サステナブルでありながらもスケールダウンどころか、従来より大幅にスケールアップしているという点だろう。





4人だけで鳴らす音

また特筆すべき点と言えばもうひとつ、ステージに立つパフォーマーはメンバーのみで、サポート・プレイヤーもバッキング・シンガーもいない。4人だけでこれだけのスケールのショウに見合う音を鳴らしているというのも驚くべきことだ。中でもやはりフロントマンのクリス・マーティンが湛える無尽蔵のエネルギーと存在感には、いつものことながら圧倒されるばかり。広いステージの上を縦横に動き回り、終始スマイルを浮かべ、懸命に日本語でMCをこなし、フレンドリーな温もりを醸してオーディエンスとの距離感を縮める彼の動きを追っていると、こちらも微笑まずにいられなくなる。


Photo by Teppei Kishida


Photo by Teppei Kishida

そんな彼ら、亡くなった家族のために歌って欲しいというファンのリクエストに応じて披露した「Everglow」から、一面イエローのライトが瞬く会場にじわじわと染み渡らせた「Yellow」、映像でBTSの参加を得た「My Universe」に至るまで幾つもの見所を用意してくれたが、中でも最大のサプライズは第四幕で待っていた。そう、アリーナ後方にしつらえた小さなステージに移動して「これをやるのは今夜だけかも?」と思わせぶりに紹介したのは、そのBTSのJINのソロ・シングルであり、コールドプレイが共作した「The Astronaut」。発表直後にブエノスアイレス公演でJIN本人と歌ったことがあるものの、今宵は4人だけのアコースティック・バージョンに仕立てて、現在入隊中のJINに捧げた。宇宙飛行士をメタファーにしているだけに、ショウのコンセプトにも合致する曲だ。



その後メイン・ステージに戻って、エンジェル・ムーンなるパペットとデュエットする「Biutyful」でフィナーレを迎えると、誰もいなくなったステージには”BELIEVE IN LOVE”の文字が浮かび上がる。ともするとナイーヴにも聞こえるメッセージだが、未来への希望を維持するのが困難な時代に、アイロニーを排除して屈託ないオプティミズムと喜びとポジティヴィティを提示する、コールドプレイならではの置き土産だと言えるのかもしれない。



またあれは「The Astronaut」の前だったろうか、「これは毎回やっていることなんだけど、世界のどこかに君らの愛を送り届けてもらえないかな。ガザでもアルメニアでもスーダンでもいい。あちこちで悲劇が起きていて、苦しんでいる人がいるから」というクリスの訴えに応えて、誰もがハートの形を手で作って頭上に掲げている美しい光景が広がった。あの瞬間、東京のど真ん中から、何か目に見えないエネルギーが立ち上って世界中に発信されたと信じたい。

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