1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

She Her Her HersとThe fin.が語る、アジアでの音楽活動、静かな監視社会で感じたこと

Rolling Stone Japan / 2023年12月8日 18時15分

左からShe Her Her Hers(©BUBBLING BOILING MUSIC ARTS FES)、The fin.(Photo by renzo / レンゾ)

.コロナ禍が収束して日本からも多くのアーティストが海外でライブを行うようになった2023年において、特に中国で大きな実績を残したのがShe Her Her HersとThe fin.だ。

【写真を見る】She Her Her Hers/The fin.

The fin.のYuto UchinoがShe Her Her Hersの作品でエンジニアを手掛けたり、She Her Her Hersの松浦大樹がThe fin.のサポートを務めたりと、盟友と言っていいこの2組。最初に世界に飛び出したのはすでに欧米圏でも名前が知られているThe fin.で、今年は一年間に2度の中国ツアーを行い、現地での人気の高さを改めて印象付けた。一方のShe Her Her Hersは2019年に3rdアルバム『location』を中国のWeary Bird recordsからリリースし、同年にツアーも行っているが、コロナ禍に入ってから中国版のTikTokである抖音(ドウイン)で人気が過熱し、特に「Episod 33」は月間で1000万回再生を記録したこともあったという。僕は5月にこの2組が参加した深圳での「Strawberry Music Festival」を現地で体験したのだが、ライブでの熱気は中国での確かな人気を感じさせるものだった。そこで今回はこの2組による対談を実施。2023年の活動を振り返りながら、バンドの過去・現在・未来について語ってもらった。

―今年のShe Her Her Hers(以下、シーハーズ)はコンスタントに中国や台湾でライブを行い、12月からはアジアツアーが控えているわけですが、まずは今年を振り返っていただけますか?

タカハシヒロヤス(Vo&Gt, Syn):5月の上海のライブがすごく印象的でした。僕らはコロナ前の2019年に中国でツアーをしてるんですけど、曲がたくさん聴かれ始めたのはその後で、熱は人づてに聞いてたんですけど、いまいち実感できてなくて。でも4年ぶりに中国に行って、5月18日の上海のライブではステージに出たときの歓声からしてすごく熱があるのを感じたんです。いままでやってきたことが間違ってなかったと思ったし、このままブラッシュアップしていけたら、もっといい景色が見られるんじゃないかと思いました。

松浦大樹(Dr&Cho):5月18日のライブはタイのHYBSと一緒で、彼らが初めて中国に進出するタイミングで、僕らも普通に聴いてたバンドだったりして。

タカハシ:自分たちが普通に聴いてたバンドと海外だったら同じ目線で同じステージに立てるっていうのも、一個士気が上がることだったというか。日本で活動していて、なかなか居場所がなかったところもあったけど、こういうところにバンドの居場所があるんだなと思って、よりギアを1個入れるきっかけになりましたね。

とまそん(Ba&Cho):フェスもよかったんですけど、10月に出た広州のライブハウスもすごく覚えてます。やっぱりフェスよりもライブハウスの方が自分たちを見に来てるお客さんが多かったし、より一層すごい熱量を感じるライブだったので。12月のツアーでもライブハウスを回るので、ちょっとその感じがイメージできて、今からすごく楽しみです。

松浦:やっぱり熱量は行ってみないとわからないところがあったけど、コロナによって弓を引く振り幅が大きくなっていたというか、お客さんの盛り上がろうとする熱量もその分すごく大きくなってるのを感じました。まず2月に台湾に行って、多分日本のアーティストの中でもわりと早く海外に行ったと思うんですけど、ひさしぶりに大きな歓声を聴いて、あの熱量は忘れられないですね。前にThe fin.のサポートで海外に行かせてもらったときに感じたあの熱量を、自分のバンドでも感じられたのは本当に幸せでした。

―The fin.も今年4年ぶりの中国ツアーを開催して、しかも1年に2回ツアーを行いました。

Yuto Uchino:1回目のツアーは2019年に行ったところをもう一度回るみたいな感じで、ちょっとサイズアップはしつつ、大体同じような感じだったんですけど、2回目はその拡張版というか、今まで行ったことない、メインの街からそれたところに行けたんですよね。それが結構自分的には面白くて、メインの都市にもそれぞれ特色があるけど、若者が一定数いて、エンタメを消費する層がちゃんといて、そこに俺たちが行くのとは全然意味合いが違うなと思ったんですよね。そもそも田舎にはあんまり若者がいないみたいで、多分日本で言うと、「香川にいきなりアメリカのバンドが来る」みたいなことで、香川の高校生がいきなりアメリカのバンドを目撃するような体験ってなかなか届けられないじゃないですか。それができたというか、お客さんから「衝撃的に良かった」とか、「人生が変わるようなライブだったよ」みたいな声をすごいたくさんもらったんですよね。海外のバンドとして、普段そういうことが行われないような街に行って、そこにいる若者たちに今の自分たちの空気感みたいなものを持っていけたっていうのは、すごく自分にとって意味があったと思います。


The fin.(Photo by renzo / レンゾ)

―シーハーズは2019年の中国ツアー以降に曲がたくさん聴かれるようになったという話がありましたが、コロナ禍の最中に中国版のTikTok、抖音で曲がかなり使われて、特に「Episode 33」は月間1000万回再生されたこともあったとか。



タカハシ:でも正直日本で生活してたら情報は全然入ってこないんですよ。

とまそん:だからちょっと他人ごとみたいな感じ。

松浦:「Episode 33」はレッドレンジャーになりたい真夜中の弱い人間の歌なんだけど、「中国の人みんなレッドレンジャーになりてえんだな」みたいな、冗談言うくらいしかできないっていうか(笑)。だから「一過性になんねえように」って、結構ビビリながら、視野を広げてプロモーションはしてたんですけど。

タカハシ:最近中国の人たちのSNS、小紅書(レッド)とかを見ると、アルバム(2019年リリースの『location』。「Episode 33」を収録)のジャケットと曲の親和性がめちゃくちゃあったのかなって。あの自然な雰囲気と曲の絡みが良かったのか、あれをセットで楽しんでくれてる感じがあって、マジックみたいなものがあったのかなと思います。

とまそん:実際中国のファンの人とコミュニケーションすると、歌詞のこともすごくよく考えてくれてて、日本語が母国語じゃない人のところにも伝わるのってすごく嬉しいなと思って。海外に出て行きたい気持ちは前からあって、「英語の方がいいのかな?」みたいな発想もあったんです。でも英語は母国語じゃないから、そんな自由には使えないし、やっぱり日本語の方が細かいニュアンスを表現できるから、自分たちの作品には日本語の良さを乗せて作ってきて。それがちゃんと海外の人にも届いたのは、自分たちのやり方を信じてよかったなと思ったし、どんどん風穴を開けていきたい気持ちになりました。


She Her Her Hers(©BUBBLING BOILING MUSIC ARTS FES)



言葉とサウンドの関係

―The fin.は英語で歌って世界で聴かれるようになって、台湾のSunset Rollercoasterとかもそうだったわけですけど、でも今は日本語の曲でも徐々に世界で聴かれるようになってきていて。もちろん、楽曲が聴かれる背景はそれぞれだと思うけど、シーハーズの日本語曲が中国でたくさんの人に聴かれたのも時代感を感じます。

Yuto:俺たちはほんまに初期からずっと英語でやってて、やっぱり英語でやってるとダイレクトに届く感じはするんですよね。最初にSoundCloudに曲をあげたときから、コメントは英語やったし。ただ俺にとっては英語に切り替えたことによる音楽性の享受の方が大きかったかな。英語にしたことで自分の表現の幅が広がって、自分がやりたい音楽ができるようになった。一番最初は日本語でやってたけど、でも出てくるメロディと日本語の整合性が取れなくて、英語にしたらそれがきれいになったっていう。

―それで言うとシーハーズは日本語だけどサウンド感やリズムをすごく意識している印象で、だからこそ日本語が母国語ではない国でも聴かれた部分は大きいと思うんですけど、そのあたりはいかがですか?

松浦:それはあると思いますね。俺は途中でバンドに入りましたけど、元からとまそんの歌詞はすごくて、母音と子音をすごく意識して、母国語じゃなくても「言いたくなる言葉」なんですよね。だからあえて英語もカタカナにしたりして。

とまそん:英語と日本人が使うカタカナの言葉は全然意味が違うから、俺カタカナの言葉って結構肝だと思ってて。元は英語だけどもはや日本語で、でもやっぱりサウンドは英語由来だから、メロディに乗せやすかったりするんですよね。曲の作り方としては、ヒロヤスがメロディとアレンジをある程度作って、すでに世界観があるところに歌詞を乗せていくので、まずはサウンドとしての聴き心地を優先して、かつ意味がちゃんと通るものを考えます。

タカハシ:とまそんの歌詞は本当に、もらったやつをそのまま歌ったらそのままメロディに乗っかる、みたいな感じで。とまそんが前のバンドで松本隆さんに歌詞を書いてもらったことがあって、ボーカルの子が歌ったらそのままスムーズに歌えたって聞いて、そんな感覚に近いのかなって。大樹には大樹のスタイルがあるし、2人のスタイルが一個形としてできてるので、どんなメロディでも気持ちよく歌詞を乗っけてくれるだろうなと思ってます。

Yuto:昔ライブで「一緒に歌おうよ」みたいになって、リハに行ったんですよ。そのときにすごく気持ちいいところに言葉がハマってるというか、それこそ松本隆が書いてる歌詞の気持ちよさを感じて、「めっちゃ気持ちいいな」って思ったのはすごい覚えてる。

Kaoru Nakazawa:俺普段日本語の曲って全然聴かないんですけど、シーハーズは普通に道を歩いてるときとかにアルバムをフル尺で流したりするんですよ。日本語の表現の柔らかさもあったりして、それで穏やかな日常にもはまるんじゃないかなと思います。

―大樹くんはシーハーズの言葉とサウンドの関係をどう感じてますか?

松浦:言葉と音の馴染みが良すぎて、インストゥルメンタルにも聴こえるというか。あとヒロヤスの作る曲で印象的なのはイントロとかテーマとか、歌じゃないところもサビに聴こえることで、俺はそれすごいヒロヤスのストロングポイントだと思ってて。

タカハシ:『location』を作ったときに思ってたのは、日本のABサビみたいな仕組みじゃなく聴かれる曲を作りたいってことで。テーマをシンガロングできるような、ホワイト・ストライプスの「Seven Nation Army」みたいに、サッカー場でみんなそのテーマをずっと歌ってるみたいな、ああいう感覚で作りたいと思ってたんですよね。実際リスナーがどこを聴いてるのかはわからないですけど、でもあの作品から中国でも曲が広がった感じはして。



―「Episode 33」もテーマが印象的だし、今ライブだとあのメロディはヴァイオリンで弾かれてて、オリエンタルな雰囲気を出してるのもちょっと中国っぽいなと思ったりして。

Yuto:チャイナっぽいよね。もはや二胡みたいに聴こえる。

タカハシ:全く狙ってはないんですけど、ヴァイオリンが乗ったらそう聴こえますよね。ライブ映像を見直すと、ヴァイオリンの百恵実ちゃんが何かの曲でパッと照明が当たったときに、結構歓声があって。サポートメンバーだけどちゃんとメンバーみたいな感じで見られてるし、やっぱりヴァイオリンって、心をくすぐる何かがあるのかなって。

―この2組は英語と日本語という違いはありつつ、サウンド感では通じる部分もあるし、中国でも両方のバンドのファンっていうお客さんも多いんですかね?

Yuto:いると思います。前に「シーハーズが」みたいなこと言ってるお客さんいたし。

タカハシ:いま僕らの活動が広がっていってるのは絶対にThe fin.の影響というか、The fin.が風穴を開けてくれたおかげで、日本のインディシーンが中国に入りやすくなったのは間違いなくあると思うので、The fin.が歩いてる後ろをちょっとずつ、マラソンの2位みたいな感じで、風をあんまり感じずに走れてるというか(笑)。

―でもシーハーズが抖音で使われたりっていうのは、きっとこれまでThe fin.のリスナーではなかった層にも届いてる感じがしますよね。

Yuto:同一の現象というわけではないと思いますね。同じ日本っていうルーツを持ってて、たまたま友達やったから、一緒のようにも見えるけど、現象としてはちょっと違うというか……ほんまにね、ただの偶然っていうのが俺は一番大きい気がしてて。The fin.もほんまにそうやし、成功に理由はないんじゃないかなって。

とまそん:でも常にボールを投げてるっていうか、それはあるじゃん。

Yuto:そうそう。俺たちは行ってるし、シーハーズも行ってるし。

とまそん:そこが違うんだと思う。

Yuto:ほとんどの人は行かないもんね。勝手に行けないって思っちゃったり。頑張ってるとしたらそこやね。「行ってる」っていう(笑)。

とまそん:抖音で聴かれるようになったのも、その前にどうなるかわからない状態で中国ツアーに行った後だし、The fin.もアメリカでツアーをやったり、イギリスに住んだり、そういうのを見ててすごくいいなってずっと思ってて。それこそ出会ったのは7〜8年前とかで、シーハーズが新しいCDを出すタイミングだったんだけど、国内に一緒にやりたいアーティストがいなくて。でもThe fin.が関西のラジオで流れたのをたまたま聴いて、めちゃくちゃいいと思って、スケジュールを見たらツアーの予定があったから、「ここに入れないですか?」って連絡して、そこからすごい仲良くなって。

Yuto:俺らもすぐ「めっちゃいい」ってなったもんな。

とまそん:でも結局そこからあんまり友達は増えなかったんですけど(笑)。

Yuto:俺もそれすごい思ってて、The fin.ってずっと1人なんですよ。英語でやり始めたけど、それに続く人がいない。海外に行ったけど、それに続く人がいない。でも今回初めて中国っていうストーリーの中で、シーハーズが続いてくれた。科学でも何でも再現性が大事やから、1回何かが起こって、もう1回起こって、もう1回起こったときに何かがちゃんとできるんですよね。だから、あともう1バンド誰か続いてくれたら、ちゃんとしたルートができると思う。だから俺らとシーハーズが頑張って、もっと盛り上げて、あともう1バンド、俺たちをガンッて乗り越えるようなバンドが出てきたときに、アジアの音楽シーンが大きく変わるんじゃないかなって。だから……みんなチャンスだぞって思いますね。




The fin.(Photo by renzo / レンゾ)



「危うい社会の中で危うい人たちが生きてて、いろんなことに一喜一憂してる」

―シーハーズの新作『Diffusion of Responsibility』についても聞かせてください。やはり印象的だったのが「Bystanderds」と「CHELSEA」という冒頭の2曲で、エレクトロハウスというか、よりダンスミュージック的な側面を強めていることが、現在のシーハーズを象徴しているように思いました。

タカハシ:アルバムに着手し始めたのが4月以降だったので、台湾でのライブを経て、中国のライブも決まり始めた段階で、ライブでの対お客さんっていうのをすごく考えるようになってた時期だったので、お客さんと一体になれるというか、自然と体が動くような曲をもう少し増やしたいなっていうのがあって。Tychoを聴いたり、「CHELSEA」はKAYTRANADAをめちゃくちゃ意識しました。フェスで一緒になったFKJもそうですけど、シンプルで、気持ちよく乗れたり、踊れるたりするような、それは意識しながら作っていきました。



―「Bystanderds」では〈血を沸かせ いずれ血を沸かす〉と歌われていて、歌詞からもライブの熱量が伝わるような印象を受けました。

松浦:今って「個性の時代」とか「多様性」とか言いながら、結局無個性時代に突入してる気が俺はしてて、SNSのトンマナとかえぐいし、それで疲れちゃったりもして。それを壊したいってわけじゃないけど、自分の個性がつぶれない社会って何なんだろうって考えたときに、せめて音楽を聴いてる間だけは自分が主人公だと思えるような曲にしたくて、この曲のテーマはそのためのチャイムに聴こえるというか。だから「Bystanders=傍観者たちになるなよ、このチャイムを聴いたら動き出せ」っていうイメージですね。昔フジロックのフランツ・フェルディナンドのライブでお客さんみんなで戦いにいくみたいな感じになったのをすごく覚えてて、将軍が何か言って、「オー!」みたいに……この曲『キングダム』ですね(笑)。

ー号令をかけるような(笑)。

松浦:傍観者たちっていうのは自分たちでもあり、今の社会構造で鬱屈が溜まったあんたたちにも言ってるよっていうメッセージがあるんですけど、とはいえ歌詞の真意を100%理解してくれなくてもよくて。このチャイムが鳴り出したら、「お前本当はそうじゃねえだろ?」っていう、それをそれぞれ見つけてくれ、みたいな感じ。このテーマのフレーズを聴いたときに、絶対にこれはアルバムのメインになる曲だと思ったし、ツアーのハイライトになるのも想像できたから、ちょっと強めの歌詞にしたんです。中国は歌詞の検閲があるから、ビビりつつも結構キワキワを攻めたんですけど、全部通りました。なので、意外と大丈夫っていうのもみんなに伝えたい(笑)。

―「CHELSEA」の歌詞はとまそんくんですね。

とまそん:僕は今中国語を勉強してて、ライブの後に僕だけ上海に1週間ぐらい滞在したことがあるんですけど、夜若者たちが行くようなバーに行って、いろんな人と話したりすると、日本と社会の仕組みが本当に違ってて、中でも顕著なのはやっぱり監視社会なんですよね。できることできないこと、やっていいことやっちゃいけないこと、言っていいこと言っちゃいけないことがめちゃくちゃはっきりしてて、でもその中でも楽しめることを探してるし、ライブで盛り上がることが生きがいの人もいる。あと、そういう監視社会みたいな守り方をしないと、国として成り立ってられないような不安定な状況もだんだんわかってきて。その危うい社会の中で危うい人たちが生きてて、いろんなことに一喜一憂してるのを感じて、めちゃくちゃエモい気持ちになったんです。



ー「Bystanders」ともちょっとリンクする部分がありますね。

とまそん:大樹と示し合わせたわけではないんですけどね。「CHELSEA」では社会のシステムのことを「夜」と表現して、夜からは自分のことが丸見えだし、夜がそこにあるのはわかるけど、でも何だかわからない存在として常に自分のことを見られてるっていう、そういう世界観で書いた歌詞で。そういう心境にいるときのドキドキする気持ちは音楽の中にもあるから、共有できるんじゃないかなと思ったし、直接的な表現をするよりも、イメージを膨らませられる余白があった方が、意外と共有できるものがいっぱいあるなって。それは日本語でもそうですけど、海外の人に向けても同じでいいんだなっていうのは、これまでやってきて自信がついた部分だったので、それを信じて書きました。

―「TROUGH」はヴァイオリンの旋律が非常に印象的です。



タカハシ:やっぱりヴァイオリンを入れる曲は何かしら欲しくて、効果音的に散りばめた曲もあるんですけど、ある程度フィーチャーできるような曲も作ろうと思って作りました。

Yuto:これからは二胡になってくんじゃない? 日本と中国の融合みたいなのって、サウンド的にも面白そうやけどね。俺が小学校6年生くらいのときにBzのTak Matsumotoがインストのアルバム(『華』)を出したんですよ。それが全編チャイナ風で、二胡とか入ってて、俺それちっちゃいときずっと聴いてて。ギターソロの後に二胡のソロが来んねんけど、Tak Matsumoto負けてて、「二胡すげえ!」みたいな(笑)。


She Her Her Hers(©BUBBLING BOILING MUSIC ARTS FES)



「国外での活動を日本の人にも知ってほしいし、ほかのバンドにも続いてほしい」

―これまでは中国やアジアを意識していたわけではなくて、どちらかと言えば、欧米の音楽から影響を受けて自分たちの音楽を作ってきたと思うんですけど、これから先でさっきの二胡の話みたいに、中国やアジアをより意識して曲を作る可能性もあると思いますか? 例えば、とまそんくんが中国語で歌詞を書いてみるとか。

とまそん:書いてはみたいけど……でも歌うのはヒロヤスなので(笑)。

タカハシ:中国のMandarinっていうアーティストが好きで、「朝」っていう曲は日本語で歌ってるんですね。それは本人が曲を作ったときに、日本語が合うのを感じて、日本語が書ける友達に書いてもらったそうなんです。そういう柔軟な考え方はめちゃくちゃいいなと思うんですけど、曲自体に関しては、どこに向けて作ろうみたいなのは正直そんなに変えないようにはしたくて。「聴かれるところにライブをしに行く」みたいな感覚がめちゃくちゃ大事だなと思ってるので、下手に自分がイメージして、「ここに響くだろう」みたいに作って、そうじゃなかったときに気持ちがついてこない気もするし。今は中国にたくさん聴いてくれてる人がいるんですけど、12月からのツアーはもうちょっとアジア全体に広げてやるので、曲は好きに作って、それが響いたところにライブをしに行くっていう、そのスタンスは今後も変えないと思います。



―では最後に改めて、それぞれのバンドの今後の展望について聞かせてください。まずはThe fin.から。

Yuto:俺は今ずっと新作を作ってるんですけど、自分の音楽人生がどんどん広がっていく感覚というか、こんな感覚は自分の音楽人生の中でも初めての感覚で。前作の『Outer Ego』でもともとThe fin.でやりたかったことはもう結構やったなっていうのがあって。そこからもっといろんなことしたいなと思い出して、今年は音楽的にすごい充実したスタジオ生活を送っていて。なので、来年はそれをみんなに聴いてもらえるんじゃないかなと思います。12月13日にも新曲「Swans」が出るので楽しみにしていてください。


「Swans」
The fin.
FRIENDSHIP.
12月13日配信
https://Thefin.lnk.to/Swans

Nakazawa:自分はライブの人間なので、ライブのことばっかりになっちゃうんですけど、ライブの考え方の大前提としては、やっぱり必要とされる、呼ばれるところに行ってやるっていうのがあるので、それがどんどん増えていったらいいなって。そのために自分ができること、ライブのクオリティを上げて、来年も進んでいけたらいいなと思います。


The fin.(Photo by renzo / レンゾ)

―シーハーズはすぐにアジアツアーが控えているわけですが、それも含めてここから先の展望を聞かせてください。

タカハシ:まだどうなるかはわからないですけど、自分たちで会社を作る予定で、だからここからより一つギアが入るというか。来年も海外でちょこちょこイベントが決まりつつあるし、自分が想像してなかった人生に突入していってる感じがするんですけど、楽しんでやっていけば、この先もワクワクする人生が待ってる気がしていて。そのためにも今はとにかく自分のやれることをやるべきだと思っていて、それが自分にとっては曲を作ること。アルバムができて、今はまた新しい曲を作り始めてるんですけど、早くそれを形にして、またたくさんの人に届けられるような活動をしていきたいです。

とまそん:中国はきっかけだと思っていて、そこからアジア圏全体で活躍していけるようにしていきたいです。あとは国外に出ると日本のことも客観的に見えるというか、やっぱり日本の人にも聴いてもらいたいし、国外での活動を日本の人にも知ってほしいし、ほかのバンドにも続いてほしい。自分たちは自分たちとしてやってるけど、それがシーンだったりムーブメントだったり、そういうものになっていったら一番いいなって。自分たちが経験したことで人に提供できるノウハウみたいなものもあるし、それがこの先5年とか10年に繋がっていくのかなと、今漠然と思ってるところですね。

松浦:俺らは1回日本のレーベルに所属して、でもそことは馬が合わずに、自分たちのやりたい音楽やるために泥水飲んででも進む覚悟があるかを考えて、それでこの3人が残ったんです。それから3〜4年やって自分たちの自信がある5曲ができて、その先に2019年の『location』があって、そこから中国での活動に繋がっていったんですよね。それまでは苦しい思いをしてきたけど、今ガッと上がってきて、多分ずっと続けられるバンドだと思うから、これからもツアーをいっぱい回って、一緒に遊びたい。今日本にはかっこいい音楽を作ってる人が上にも下にも腐るほどいるから、そういう人たちが「俺も!」ってなるためにも、俺らはただ未来を走ることが大事だと思うので、とりあえずは12月からのツアーを全力で楽しもうと思います。


She Her Her Hers(©BUBBLING BOILING MUSIC ARTS FES)

<INFORMATION>


『Diffusion of Responsibility』
She Her Her Hers
Conditioner Label
発売中

"Diffusion of Responsibility" Asia Tour 2023-2024

2023/12/10 (sun) Xiamen·WOKESHOW
2023/12/14 (thu) Shanghai·VAS SHANGHAI
2023/12/15 (fri) Shanghai·VAS SHANGHAI
2023/12/16 (sat) Hangzhou·MAO Live House
2023/12/17 (sun) Nanjing·1701 Live House Max
2023/12/19 (tue) Wuhan·VOX Livehouse
2023/12/20 (wed) Changsha·VOX Livehouse
2023/12/22 (fri) Chengdu·AFLAME ART CENTER Hall 1
2023/12/23 (sat) Beijing·LOCAL ACE LIVE
2024/1/5 (fri) Bangkok·Mr.Fox Livehouse
2024/1/7 (sun) Hong Kong·Studio Duplex, Soho House
2024/1/12 (fri) Taipei·THE WALL
2024/1/14 (sun) Seoul·West Bridge Live Hall
2024/1/27 (sat) Tokyo·Daikanyama UNIT

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください