ルイス・コールとジェネヴィーヴが今こそ語る「KNOWER」という奇跡的コンビの化学反応
Rolling Stone Japan / 2023年12月18日 17時45分
ルイス・コールとジェネヴィーヴ・アルターディによるLA発のユニット、ノウワー(KNOWER)が前作『Life』から実に7年ぶりとなる最新アルバム『KNOWER FOREVER』をリリースした。共にブレインフィーダーに所属しながら充実したソロ活動を送ってきた二人だが、ここからはその意味深なタイトル通り、ノウワーというユニットでしか生まれえない何かが確実に聴こえてくる。
今回、11月に「なぜか」来日していた二人に話を聞く機会を得たので、この機会にノウワーについてゼロから掘り下げることにした。お互いのことをどう見ていて、一緒に活動するうえでどんなことを考えているのか。現在の活躍ぶりを考えたら今更な質問をしているように思われるかもしれないが、二人とも7年前とは立ち位置がすっかり変わっているわけだし、僕(柳樂光隆)自身も個別に取材したことはあるが、ノウワーについては「そういえばよくわかってなかったな」と改めて調べながら気づいたのだ。
そういった質問を重ねたことで、ノウワーというプロジェクトの本質がようやくわかった気がする。二人は取材中も息がぴったりだったし、お互いのセンスやバックグラウンドを何もかも共有できているようにも映った。2024年3月に東京・大阪で開催される来日ツアーを前に、このコンビの奇跡的な相性を再認識できるインタビューになったと思う。
―最初に聞いておくと、ルイスは何しに日本へ来たんですか?
ジェネヴィーヴ:(笑)。
ルイス:ただのバケーションだよ。セブンイレブンで鯖の塩焼きを買って食べたところ(笑)。
―そうですか(笑)。ノウワーとはどういったプロジェクトなのか、そもそもの話から聞いてもいいですか?
ルイス:2009年にジェネヴィーヴから、プロデュースをしてほしいって数曲送られてきたんだ。それが最初だった。
ジェネヴィーヴ:実は彼から最初に受け取った曲は、すごくつまらなかった。「申し訳ないけど、すごくつまらない」と伝えたら、彼は私がそういうのを望んでるって勘違いしていたみたい。私はクレイジーさを求めてたから。そこからは「今までにないクレイジーな音楽を生み出そう」って感じで一緒に制作している。
―最初の曲はどんな感じだったんでしょうか?
ルイス:「The Mystery Of A Burning Fire」だった。
ジェネヴィーヴ:「Like A Storm」もじゃない?
ルイス:ああ。それから……。
ジェネヴィーヴ:「From Two Sides」も?
―ノウワーとして最初のアルバム『Louis Cole and Genevieve Artadi』(2010年)に収録されている曲ですね。
ルイス:うん。それに「From the Height of Accusation」もそうだね。
ジェネヴィーヴ:それは一度も……。
ルイス:うん、まだ一度も公表していない。ヴァイオリンとチェロを持ってきて、すべてのストリームセッションをレコーディングしたんだ。まだ曲にしてない。
ジェネヴィーヴ:曲にしなきゃ!
ルイス:ああ。
―ノウワーという名前の由来は?
ルイス:スイスにいた時、友人の車に乗せてもらってる間に名前を考えてたんだ。なかなか決まらなくてさ。道中で、運転手に「このあたりで美味しいドーナツ屋ない?」って聞いたら、彼は「知らない。僕はドーナツ・ノウワー(Knower)じゃないんだ」って言ったんだよ。
ジェネヴィーヴ:「ノウワー!? ねえ、今の聞いた!?」って、そんな感じだったよね(笑)。
ルイス:ああ。まさにぴったりだと思ったんだ。たぶん正しい英語なんだと思うけど。
ジェネヴィーヴ:きっと正しいけど、誰も使わない。
―そこから二人でどういう音楽をやろうと考えたんですか?
ジェネヴィーヴ:アルバムのコンセプトについては、よく話し合ってた。大抵の場合、私が彼のところに曲を持っていってたんだけど、当時の曲は、その時に私たちが熱中していたものがダイレクトに反映されていたと思う。例えば、『Let Go』(2013年)や『Life』(2016年)を制作していた時、ルイスはエレクトロニック・ミュージックの作品をたくさん作っていたから、そのアルバムもエレクトロニック寄りのサウンドになった。『Let Go』のライブアルバムをやろうって決めたのも、「Overtime」と「Time Traveler」のライブセッションをやっていた時だったんだ。サウンドもすごくポップな感じにしようって。その時々の自分たちに従ってる感じかな。
ルイス:たしかに。僕らのアルバムにはそれぞれコンセプトがある。『Think Thoughts』(2011年)では、ファンクのアルバムを作りたかったんだ。
ジェネヴィーヴ:そう、ジャズっぽい感じの。
ルイス:『Let Go』(2013年)や『Life』(2016年)では、エレクトロニック・アルバムを作りたかったし、最新作の『KNOWER FOREVER』はライブ・アルバムにしたかった。
ジェネヴィーヴ:次は、メタルっぽいのを作ろうかって考えてる。
―マジっすか(笑)。
ジェネヴィーヴ:そのうちジャンルを制覇できそうだよね(笑)。
Let Go KNOWER
―エレクトロニックなところに向かったきっかけは?
ジェネヴィーヴ:スクリレックスを観たんだよね。
ルイス:ああ。2011年のスクリレックス……最高だったよ。
ジェネヴィーヴ:サンフランシスコでね。ルイスと彼のライブに行ったんだけど、インストゥルメンテーションは無限大で、何もかもが楽器になっていて……最高のパフォーマンスで、すごく刺激された。彼(スクリレックス)はそういった表現がすごく得意だよね。
ルイス:フォーマティブでクール。ダブステップが理解できるようになったのも彼の音楽と出会ってからだ。ライブでのベースサウンドは信じられなかったな……ジェットコースターを音楽で表現したんだなって思ったよ。巨大なPAスピーカーを使うことが前提になっていて、サウンドは文句なしに最高。ボーカルもピアノもない。(声を震わせながら)「アアアアア……」ってただ振動を浴び続けるんだ。
ジェネヴィーヴ:(笑)。
ルイス:友達と話す暇なんかない。ただ音を浴び続ける……最高だよ。
―ということは『Life』を作った頃には、フェスにあるようなパワーのあるスピーカーから音を出す想定で作っていたんでですか?
ルイス:ああ、そういう場所でやりたいと思っていた。
ジェネヴィーヴ:ときどき、アリーナで音響の人がスピーカーのテストをする時、私たちの音楽を使うことがあって、そのビデオを送ってくれる。それを聴くたびにアガるよね。
ルイス:そういった場所でライブをする機会は、今まであまりなかったんだよなぁ。
ジェネヴィーヴ:フェスで数回やったくらいじゃない?
―なるほど。デカい音が出せるフェスでパフォーマンスをした時は、自分たちがやりたかったことを実現できたという感じでしたか?
ジェネヴィーヴ:「Second Sky」(ポーター・ロビンソン主催の音楽フェス、ノウワーは2021年に出演)でやった時、ヴィジュアルが巨大なスクリーンに映し出された時は嬉しかったよね!
ルイス:ああ、「ついに!」って思ったな。
―『Life』の頃に作っていたのは、普通のライブハウスというよりは、クラブなどでパフォーマンスした方がふさわしい音楽だったのかもしれないですね。
ルイス:無意識的には、そういった場所にふさわしい音楽を作っていたんだと思う。ただ、あのアルバムを作っていた頃の僕らはそこまでビッグじゃなかったから、比較的小さい場所でプレイすることになるだろうとも思っていた。凝縮された音楽体験ができるライブハウスもすごく楽しいよ。でも、君が言うように、そういった場所を想定してたんだろうね。
ジェネヴィーヴ:私たちの音楽にはたくさんのコードが入ってるから、エレクトロニックシーンの人たちには「ジャズっぽすぎる」って思われることもある。実際、ジャズフェスに出たこともあるし。でも、「Second Sky」は好きにさせてくれたから自由にやったんだよね。
お互いへの深い理解とリスペクト
―話は戻りますが、お二人のソロとノウワーのサウンドには、もちろん共通する部分もあれば異なる部分もありますよね。それぞれお聞きしたいです。
ジェネヴィーヴ:ソロ活動では個人的な関心にフォーカスしていて、テーマも違えば作曲の方法も違う。全体的にフェミニンな要素があるっていえばいいのかな。それに、私は「不完全さ」を許容している。時間をかけてよく練り上げられたアイディアもあれば、パッと思い浮かんだようなアイディアも大事にしている。一方で、ノウワーでは、二人でテーマのアイディアをシェアして、大きなキャンバスを一緒に描いている。メロディや歌詞を一緒に書いて、たくさんのアイディアを出し合った中からどれがいいかを選ぶんだよね。「これはいい」「もっとアイディアが必要」とか言い合いながら進めている。(最新作に収録された)「Crash The Car」を制作していた時は、曲に強さがほしかったから、すごく時間をかけたのを覚えてる。
ルイス:1フレーズのために、100個くらいのアイディアを出したんだ。ノウワーの音楽はインテンシティもエネルギーも、普通の基準を上回ってるから。
―延々とフレーズを出し続けるのはしんどそうですね。そういった意味では、ルイス・コールはかなり厳しいプロデューサーだと思いますが、実際はどうでしょうか?
ジェネヴィーヴ:かなり、かなり、かなり、厳しいプロデューサーだね。
ルイス:(笑)。
ジェネヴィーヴ:それに彼はすごくたくさんのアイディアを出してきて、そのどれもが素晴らしい。その中から1つを選ばなきゃいけない。とてもいいことだけど、一方ですごく大変でもあるんだよね(笑)。
―きっとルイスさんは、自分のソロを作る時も自分自身に対して同様に厳しくしているってことですよね。
ルイス:ああ。でも、「厳しい」という言葉で表現するのは、少し意味が違うかな。「厳しい」って言うと、偶然とか思いつきとか、そういったものに対してオープンじゃない感じがするけど、予想を上回るものが偶然できたとしたら、それを取り入れることは全然あるから。僕は、自分を驚かせるものを求めているんだ。それが生まれない限り、探し続けるしかない。自分に驚かされ続けたい、それだけだよ。その過程は大変だし、すごく難しいけどね。
―ノウワーの音楽がここまでキャッチーで響いているのは、そのくらいシビアに音楽を作っていることが関係していると思いますか?
ルイス:それがキャッチーな理由だとは思わない。抽象的な言い方だけど、僕らは「流れる水のようなメロディではなく槍のようなメロディ」を作ろうとしてるんだ。ダイレクトでコードやリズムにフィットする、そういったメロディのことを、みんなは「キャッチー」って表現しているんだろうけど。
ルイスとジェネヴィーヴは、各自のソロでもお互いの作品/ライブに参加し合っている
―ソロとノウワーの「違い」について教えてもらいましたが、逆に近い部分はどういったところですか?
ジェネヴィーヴ:ソロの音楽を作っている時にも、彼のドラミングが頭に浮かんでくる。それにソロの制作でも、自分が納得できるまで試行錯誤を繰り返すようにしている。私は、自分の音楽を「ポップミュージック」だと思ってる。たとえ、いわゆる「ポップ」からかけ離れてるとしても。だから、キャッチーで強いサウンドを作ろうとしている。
ルイス:ノウワーの曲を書いている時に一番考えているのは、ジェネヴィーヴの声だよ。それから、彼女がどんなサウンドを望んでいるかということ。ジェネヴィーヴは、すごく速くてクレイジーでインテンスなサウンドを好んでいる。もちろん、僕も好きだけど、彼女の好みにダイアルを合わせているね。
ジェネヴィーヴ:ノウワーとソロ活動に共通することは?
ルイス:速いグルーヴのコードかな。それからヘヴィなドラムも。そういった曲は最新曲にも数曲入っている。ノウワーにも使えるって思ったからね。
―お二人が一緒に作ることで生まれる特別な何かがあるとして、そのマジックについて説明することはできますか?
ルイス:そうだな……僕らには共通点が多いんだ。同じ音楽が好きで、ジョークが通じ合って。つまり、似た者どうしなんだよ。精神的な面でも同じ方向を向いているから、お互いを強化し合えているんだと思う。
ジェネヴィーヴ:それに、音楽制作において一切妥協しないこともね。
―共通している部分が、違う部分よりも大きいってことですかね。
ジェネヴィーヴ:私たちは息の合うコンビだから。アイディアも音楽も、お互いをリスペクトしてるし、意見が合わなかったとしても、話し合ってお互いを尊重し合うようにしてる。
ルイス:信頼しているからね。
ジェネヴィーヴ:ええ。もし彼が賛成しなかったとしても「私が正しい」って意志を貫くことだってもちろんある。ただ、それで怒ったりしないし、喧嘩になったりもしない。
2017年、レッチリのオープニングアクトを務めた時の映像
―お二人を個別にインタビューさせてもらったとき、影響を受けたアーティストを尋ねたらお互いの名前を挙げていました。最も影響を受けた部分はどんなところですか?
ルイス:恐れを知らないところだね。彼女の音楽は「ワイルドなものを作りたい」で一貫している。それも、ただバカみたいにワイルドっていうんじゃない。ワイルドでハイクオリティ、ワイルドで美しい。クレイジーだけど、すごく丁寧に作られた音楽だから惹かれるんだ。
ジェネヴィーヴ:1つ目は、アイディアを追求する姿勢。2つ目は、私が思いつかないような組み合わせをすること。それが彼のオリジナリティを形成していると思う。ジャンルの枠に囚われず、周りの目を気にせずに音楽を作っているところかな。
―相手に教えてもらったことから好きになった音楽で、特に印象に残っているものは?
ジェネヴィーヴ:ルイスは、私ほどマイケル・ジャクソンは好きじゃないよね?
ルイス:そうだね。
ジェネヴィーヴ:彼にはアース・ウィンド・アンド・ファイアーを教えてもらったかな。
ルイス:それからトーキング・ヘッズ。ステレオ面でかなり影響を受けた。
ジェネヴィーヴ:ええ。他にはジャズ関連かな。
ルイス:トニー・ウィリアムス?
ジェネヴィーヴ:キース・ジャレットの音楽をたくさん教えてくれたよね。
ルイス:ああ、キース・ジャレットとマイルス・デイヴィスの作品。
ジェネヴィーヴ:私たちは、マイルスとギル・エヴァンスが好きだよね。
ルイス:そうだね。エレクトロニック関連ではボーズ・オブ・カナダ。
ジェネヴィーヴ:あと、ティム・ルフェーヴルとジム・ブラックを教えてくれた。
―めちゃくちゃシェアしてるんですね。
ルイス:そうだよ!
―あとは二人とも、ビートルズのことをよく話していますよね。
ジェネヴィーヴ:ええ、ビートルズは大好き!
ルイス:彼女が僕にビートルズの魅力を熱弁する前は、あまり好きじゃなかったんだ。でも、彼らはすごく強度のある曲を作ってきた。セクションの絶妙さ、 メロディとコードの完璧な調和、力強いコード進行……要塞を思わせるような非の打ち所の無さ。それに、シンプルで馴染みやすい音楽。キャリアの後期では、実験的なこともしながら自分たちの音楽を追求していた。いつ聴いても良い曲だと思えるなんて、すごい強度だよ。
ジェネヴィーヴ:彼らの曲はすごくストレートでとても明確。そして無限大なんだ。自分たちの進むべき方向へ突き進んでいけるパワーを持ってる。歌い方もストレートだよね。
ルイス:そのとおり。
―ノウワーをビートルズのメンバーに例えると?
ルイス:二人ともジョン・レノンじゃない?
ジェネヴィーヴ:ジョンがいい。でも、ジョージでもいいかも!
ルイス:ジョンって言っただろ。
ジェネヴィーヴ:ルイスはリンゴだよ!
―(笑)ジョンとポールって答えるかなと思ったんですが。
ジェネヴィーヴ:ポールは二人とも嫌だな(笑)。
DIYを貫くのは「反骨精神の表明」
―最新作『KNOWER FOREVER』は『Life』からサウンドが随分変わりましたよね。先ほどルイスさんから「ライブ・アルバムにしたかった」という話もありましたが、コンセプトについて教えてもらえますか。
ルイス:今回はライブバンドでアルバムを作りたかった。二人だけですべてを完結させるんじゃなくて、多くの人を巻き込んで制作をしたいと思ったんだ。
ジェネヴィーヴ:エピックでDIYな作品を目指したよね。合計で60人くらい参加したんだっけ?
ルイス:シンガーが16〜17人に、ストリングスが24人……それくらいだったはず。
「I'm The President」MVにはサム・ウィルクス(Ba)とジェイコブ・マン(Key)に加えて、総勢50名近いブラス/クワイア/ストリングスの各セクションが参加
―ということは、予算も相当かかっているということですか?
ルイス:……うん(苦笑)。
―クレジットを見た時に、オーケストラの人数にびっくりしましたよ。これは予算がヤバそうだなって。
ルイス:(笑)金銭面でも平等にしたかったし、レコーディングのスケジュール調整も大変だったよね。かなりのお金と時間がかかったよ。
ジェネヴィーヴ:(制作期間が)パンデミックの時期だったから、検査キットとかも用意しなきゃいけなかったのが大変だったね。
―ということは、割と長い時間をかけて作ったアルバムなんですね。
ルイス:ああ、ほとんどのインストゥルメンタルは2019年に作ったんだ。
ジェネヴィーヴ:2020年に録音する予定だったけど、コロナの影響でセッションがキャンセルになっちゃって。
―では、それぞれのソロアルバムがたまたま先にリリースされたということですか?
ルイス:本来は、ノウワーのアルバムが先にリリースされる予定だった。コロナの影響で延期になったから、ソロアルバムの制作をしたんだ。ソロは僕1人で完結するからね。
―先ほどライブバンドという話がありましたが、音作りについて聞かせてもらえますか?
ルイス:ハイファイで壮大でクリーンなサウンドだった前作と対照的に、今回は手持ちの楽器と機材で宅録をしているようなイメージで作った。壮大なスケールで完璧にミックスされたサウンドじゃなく、あえて粗さを残したサウンドを目指したんだ。それが、今回のアルバムにはふさわしいと思った。
ジェネヴィーヴ:ルイスの言う「粗さ」は、ポラロイド写真が持つ美しさに似ていると思う。それぞれが異なる美しさを持っているということ。
―逆に『Life』の頃から変わっていない部分があれば、それがノウワーの音楽の核の部分と言えると思います。何か思い当たりますか?
ルイス:グルーヴの密度かな。
ジェネヴィーヴ:ええ。どのパートにもまったく緩みがない。
ルイス:それにコードとハーモニーの強い主張、密度、そのディープなバランスがとれていること。
―『KNOWER FOREVER』というタイトルの意味は何でしょうか? 最終回っぽいですけども。
ルイス:『バットマン フォーエヴァー』。
ジェネヴィーヴ:ただ響きが良かったから(笑)。
ルイス:なんかかっこいいじゃん(笑)。
Photo by Yukitaka Amemiya
―何年か前にバークリーで留学していた友人から聞いた話ですが、当時のバークリーはノウワー好きの学生が多くて、曲を譜面に起こしつつ演奏していたそうです。でも、ノウワーみたいにかっこよくならないからなぜだろうって。
二人:(頷きながら聞く)
―そこで調べてみたら、和音に理由があると気づいたそうです。ノウワーの楽曲はどこかで音がずれていたり抜いてあったりする箇所があって、バークリーの学生たちはそれを理論的に正しいものに直してしまったから、ノウワーらしい響きが失われていた。その独特の構造が多くのミュージシャンを惹きつけてきたのかなと思うのですが、そういう変わった構造は意図的に作っているものですか? それとも偶然そうなっている?
ルイス:意識的にやっているよ。正直、僕は音楽のセオリーについて詳しくないんだ。何年も音楽をやってきているから、感覚的には理解しているけど、何を弾いてるかは分かってない。ただ、どの音がどの場所にあるべきかは、はっきりと分かるんだ。ピアノを習ってないことが変わったサウンドを作っている理由の1つだと思う。スタンダードのコードを弾けるほど精通してないから、思い浮かんだ音を弾いてるんだよね。
ジェネヴィーヴ:それに、みんなが習うようなボイシングやコードって、もう何百万回も聴いてるから飽きちゃったっていうのもあるよね。私たちは、自分たちが楽しめるようなサウンドを求めてるってことかな。
―ユニークなコードを意識的に作ることの理由は?
ジェネヴィーヴ:複雑で、味わったことのない感覚を与えてくれるから。私はそれを求めて曲を書いている。
ルイス:予測できないものが生まれて、自分でも驚くような瞬間があるんだ。不協和音から、そういったものが出てくることがあるよ。
―それって自分がイメージしたものを試しながら探して掘り当てていくような作業ですか? それとも頭の中にあるイメージがそのまますぐに鳴っているんですか?
ルイス:イメージが浮かんできて、それを形にしようとすることもあれば、手を動かすことからスタートして、何も意図していないところから良いものが生まれてくることもある。まあ、両方だね。
―先ほど予算がかかったとか「多くの人を巻き込んで制作をしたかった」という話もありましたが、MVはデビュー当初から最新作に至るまでずっと自宅で撮り続けていますよね。ノウワーがDIYであることを大切にしているのはなぜでしょうか?
ジェネヴィーヴ:ただ、自分たちが使えるもので制作しただけだよ。それに、音楽のクオリティよりプロダクション・バリューが高く評価されている現代において、 DIYは私たちの反骨精神を表明している。自分たちを表現するためには、決して立派な機材がなくたっていい。そのことを私たちから多くの人々が学んでくれていると思う。いつもDIYで制作しているのは、すべてをコントロールできるし、思い立った時に制作できるのが大きな理由。他の人と制作すると、大抵ファンシーで洗練されたものになりがちで、アイディアを通すことが難しくなる。私たちは自分たちのアイディアを守りたい。たとえ学生の作品みたいに見えようとも、それが私たちのやり方だから。
ルイス:誰かと一緒に制作するのも、もちろん素晴らしい。でも、限られた予算の中で制作をしなきゃならないっていうことも身に染みて知っている。金がないなら、ベッドのシーツにビルのイラストを印刷したり、身の回りのものを使えばいい。荒々しい部分が残っていて、いかにも洗練されたものにはならないかもしれないけれど、自分たちで作り上げることで多くのスキルを身に付けてきたし、どの側面をとっても、僕らから生まれてきた作品だって言える。純粋な僕らの作品が作れるなんて、最高だと思うよ。
―本当にそのとおりですね。でもお二人はいまや売れっ子ですし、もし豪邸に引っ越したりしたらビデオの雰囲気も変わるんでしょうか。
ルイス:心配しないで、そんな余裕ないから(笑)。
―スティングみたいに城とかで暮らしたら、それはそれで面白いビデオが撮れそうですけどね。
ルイス:お城だったら、すごいリヴァーブが録れるんだろうなぁ。
KNOWER JAPAN TOUR 2024
feat. サム・ウィルクス、ポール・コーニッシュ、チキータ・マジック
SUPPORT ACT:TBC
2024年3月28日(木)東京・LIQUIDROOM
2024年3月29日(金)大阪・umeda TRAD
詳細;https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13826
ノウワー
『KNOWER FOREVER』
発売中
国内盤CD:ボーナストラック「Bonus Track」追加収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13722
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