ミコラスが語る、YouTube発ヒット曲「Lalalalalalalalalala」の制作舞台裏
Rolling Stone Japan / 2023年12月19日 18時15分
2018年、母国チェコ代表としてユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、6位入賞を果たし、一躍脚光を浴びたシンガーソングライター/プロデューサー、ミコラス。2023年夏、ラテンやEDM等、様々なジャンルがミックスされた楽曲「Deliah」が3000万ストリーミングに迫る勢いでヒット。ここ日本では、一般リスナーがYouTubeにアップした「Lalalalalalalalalala」の日本語訳動画がが約2年前からバズり、日本での1年間のストリーミング再生が500万回再生を超えた。瞬時に歌えるキャッチーなコーラスや失恋を痛快なほど強気に綴ったリリック等、いくつものフックがある「Lalala~」の異国でのヒットに対し、ミコラスは「これが魔法でないとしたら、何が魔法のなのかわからない」とコメントしている。日本のメディアとして初めてのインタビューを掲載する。
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ーYouTubeの日本語訳動画をきっかけに、「Lalala~」が約2年前から日本でバズっています。この曲はどんな風に生まれたのでしょう?
ミコラス:まず、日本でヒットしたことに対して感謝の気持ちがいっぱいです。僕は日本に行ったことがないのですが、こうやって初めて日本のメディアに取材してもらえてすごく嬉しいです。「Lalala~」は2019年に約3カ月間かけて作った曲です。ポップなのかトラップなのか、未だに自分でも何のジャンルかわからない曲です。当時は恋人と感情的な時期で、その時の僕の気持ちがサウンドに表われてると思います。
ーどの部分に苦労したんでしょう?
ミコラス:いつもはコーラスが序盤にできることが多いんですが、「Lalala~」はコーラスがなかなか決まらなかった。「リリースできないんじゃないか」って思って、しばらく放置していました。2ヶ月ぐらい経ってたまたま他の曲のメロディを作っている時に、今の音源に入ってるコーラスが浮かんだんです。スタッフに聞かせたら「これだね!」と言ってもらえました。つまり、結果的にたくさんの人を惹きつけてくれたコーラス部分が一番苦労したんですよね。でも、本当にこんなにヒットするとは思いませんでした。シングルとしてリリースすることも想定していなかったので、プレッシャーもなくかなり自由に作りました。それで、私生活の出来事で生まれた感情をそのまま曲にぶつけた。僕にとって曲作りはセラピーとしての意味合いもあります。
ー未練を感じさせながらも、「もうどうでもいいよ」という強気なリリックもあります。どんな感情を描いた曲だと思っていますか?
ミコラス:自分の気持ちを相手に直接電話で伝える方法もありましたが、僕は全部曲にすることを選びました。だからとてもストレートな歌詞になっていますよね。「Lalala~」はアコースティックバージョンもあるんですが、オリジナルバージョンと比べてじわじわと悲しみがにじみ出ているように聞こえます。でもオリジナルは「うんざりだ」とか「どうでもいい」っていう気持ちが前面に出ている。バージョンによって醸し出される感情が違うのが、人間の感情の多面性を表してる気がして面白いと思っています。
ー様々な国でヒットしたことをどう分析していますか?
ミコラス:作り手側にとっても、その曲がどう受け取られるかわからないところが音楽の興味深さでもあり、怖い点でもあります。だから本当になぜヒットしたかわからないんです(笑)。「Lalala~」は最初イタリアでヒットしました。全く予想してなかったので、その時点で満足感はありました。その直後に世界的なパンデミックになり、クラブも営業が停止し、音楽シーンは止まってしまいました。プロモーションもできなくなり、すごく悲しかった。でもその後、なぜか日本でヒットしました。近いうちに日本でライブがしたいです。
Photo by Harriet Marshal
曲作りはセラピーの一種
ー「Boys Don't Cry」の歌詞に「涙は自分の中に隠せるようになったから振ればいい」という描写があったり、「Never Get Over You」の歌詞に「認めたくないけど君のことが忘れられない」という描写があったり、「Delilah」には「毎朝起きると君の亡霊がいる」という描写があったり、あなたの楽曲にも「Lalala~」にも通じる未練を感じさせる失恋ソングが多くあります。それはどうしてだと思いますか?
ミコラス:さっきもお話ししたように、曲作りはセラピーの一種なんですよね。何かが起きた時に、曲を書くことで自分の感情のひとつの章に区切りを付けられる。僕は曲を作ることができるからこそ、ちゃんと人生を送ることができているんじゃないかって思ってます。もちろん仕事でもあるんですが、曲を作っていなかったら気が変になっていた気がします(笑)。
ーそうなんですね(笑)。曲を作る時に大事にしていることは?
ミコラス:最初にコードを決めることが多いです。コードが決まったら、曲のコンセプトを考え始め、メロディを考え、コーラスが生まれて、バースを作って最後はブリッジ。「Lalala~」は3ヵ月かかりましたが、「Delilah」は完成するまで3年かかりました。曲と向き合う度に新たな扉が開くような感覚があって、別のアイディアがどんどん生まれてきたんです。「Delilah」は納期の2日前に8割書き直しました。
ーOK/NGのジャッジポイントはどういうものなんでしょう?
ミコラス:曲はいくらでも改善できると思ってるので、僕の気持ちの上では100%の完成はありません。「まだ作ってていいよ」と言われたら、いくらでも作り続けたいんです。2017年から書き始めて、未だに完成していない曲もあります。だからフィーリングで「もうOKかな」と思ったところで完成にする。例えば、ライブでアレンジを変えるアーティストも多いですよね。あれはそこでまた新たなアイディアが出てくるからだと思うんですが、それにも通じるのかもしれません。
ー「Delilah」はラテンやEDMからの影響が感じられますが、どんな音楽やアーティストが好きなんでしょう?
ミコラス:「Delilah」はおっしゃる通り、様々なジャンルをミックスした実験的な曲です。様々なジャンルが掛け合わさることで生まれる新しさに僕も興奮したし、聞いた人にも興奮してもらえたんじゃないかと思っています。僕が作る楽曲には、その時々の僕がハマっているサウンドがヴィヴィッドに反映されます。昔からずっと好きなのは、クイーンやフィル・コリンズ、TOTO、マーヴィン・ゲイなどです。比較的新しいアーティストだと、スクリレックス、DJのフレッド・アゲイン、ストームジー。ストームジーの今年のグラストンベリーのライブはとてもかっこよかったです。ストームジーと最近「Witness Me」でコラボしたジェイコブ・コリアーとショーン・メンデスも好きです。「Witness Me」はどこかクインシー・ジョーンズ的な雰囲気があって最高だと思いました。ジョングクも好きです。最近リリースした「Standing Next to You」はクインシー・ジョーンズっぽさがありながら、ブルーノ・マーズ的なベースラインが入っていて素晴らしいと思いました。
ー2024年3月22日にデビューアルバムのリリースが予定されています。どんなアルバムになりそうですか?
ミコラス:僕は曲作りに時間がかかることもあって、ようやくアルバムが出せることに興奮してます。このデビューアルバムに向けて、これまで活動を積み重ねてきたと思えるほど、嬉しさを感じる作品です。やはりいろいろなジャンルが混ざっていて、そういう面ではクイーンやポスト・マローンを思わせるところがあるかもしれません。現時点での僕にとってベストな作品になっていることは間違いないので、皆さんに早く聴いてもらってリアクションが欲しいですね。
Photo by Harriet Marshal
<INFORMATION>
「Lalalalalalalalalala」
ミコラス
配信中
https://avex.lnk.to/lalalalalalalalalala
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