THE LAST ROCKSTARS、互いを刺激し合いながら魅力を高め合う「孤高」のスターたち
Rolling Stone Japan / 2023年12月20日 12時0分
2023年11月21日から23日まで、THE LAST ROCKSTARSが、二度目となるツアー「THE LAST ROCKSTARS The 2nd Tour 2023”PSYCHO LOVE”」を東京・有明アリーナで開催した。YOSHIKI(Dr, Piano / X JAPAN)、HYDE(Vo / L'Arc-en-Ciel、VAMPS)、SUGIZO(Gt, Violin / LUNA SEA、X JAPAN)、MIYAVI(Gt)という、数多くのバンドキッズとファンが一度は妄想したことがあるであろう、最強の布陣を成すモンスターバンド。日本に収まりきることなく、世界にも飛び出して輝き続けるスターたちへの期待の大きさは、開演前の会場周辺や内部の熱気からも十分に伝わっており、中国語圏や英語圏のファンも多く、世界で活躍するメンバーの人気ぶりが伺えた。ここでは22日のレポートをお届けする。
【写真をすべて見る】THE LAST ROCKSTARSのステージ
定刻を20分ほど過ぎると場内が暗転し、神々しい雰囲気のオープニングの中でメンバーが登場してステージが幕を開けた。オープニングナンバーはツアータイトルでもある「PSYCHO LOVE」からスタート。エレクトロなリズムとYOSHIKIの激しいドラミングプレイの土台の上で、MIYAVIのキレとグルーヴが全開のギターサウンド、そしてSUGIZOの悲鳴のように切り裂く独特のギターサウンドが混ざり合った、壮大かつ踊らせるナンバーであり、序盤から会場はもちろん、HYDE含めたステージ上のフロントマン3人も躍らずにはいられず、ステージを所狭しと走り回る。火柱が立て続けに上がる豪華なステージングも相まって、バンドのスケールの大きさをまざまざと見せつけるような立ち上がりとなった。「Tokyo!! We are THE LAST ROCKSTARS!!」とHYDEが叫ぶように挨拶をかますと、続けて「6or9」、「Heres The Love」ではオーディエンスとの掛け合いでさらに盛り上がりを見せ、ステージ上でもフロントマン同士の絡みが生まれ、メンバーの公演へのテンションの高まりを感じさせた。
曲間にはHYDEのMCで「今日は何の日か知ってる? 知らないの? YOSHIKIさんの誕生日の次の次の日だよ! ややこしいから、誕生日ってことでお祝いしませんか!」と笑いを誘いつつ、会場から「おめでとう」の声を誘い、和やかに一体感を生み出していく。続けて、MIYAVI作の新曲「Tonight, The World Is Mine」を会場へプレゼント。それまでのナンバーよりも疾走感が溢れる爽やかな曲に、HYDEも会場も手を左右に振って軽やかにノっていく。それぞれのキャリアから考えると、まだTHE LAST ROCKSTARSは結成から日が浅いため、発表する曲が全て新鮮さを伴っており、次はどんな曲を世に送り出すのかと次はどんな曲を演奏するのかと楽しみにさせられていく。
MCでは、YOSHIKIが「僕はファンの皆、そしてMIYAVI、SUGIZO、HYDEになんと感謝したらいいんだろうと思うくらい精神的に救われています。僕らはステージに立たせてもらっているけど、立たせてもらっているからにはこの身を粉々にしてでも皆と音楽をシェアしたいと思っています。次の曲は、元々SUGIZOが作って来たんだけど、僕らが垣根を越えて集まれる、壁を壊してロックスターたちが集まれる原点になっている曲です」とS.K.I.NからX JAPAN、そしてTHE LAST ROCKSTARSへと引き継がれるナンバー「Beneath The Skin」を披露。YOSHIKIのピアノアレンジから、緩急を盛り込んだ重厚感のあるロックサウンドへの展開を白と青に照らされるステージでドラマチックに彩り、前半戦は終了した。
ソロコーナーではMIYAVIとSUGIZOによる、バトルのような展開から、徐々に背中を預け合うように溶け合っていく熱いギターセッション、そして空間系のエフェクトを巧みに盛り込んだ、SUGIZOという音楽家の原点とも言えるバイオリンのソロ、HYDEを交えての「Folly」、さらにMIYAVIも加えて「Hallelujah」の披露を経て、YOSHIKIによるドラム&ピアノソロセクションへ。怒涛の嵐のようなドラムプレイを終え、ピアノの鍵盤に手を置いたYOSHIKIからX JAPANの名曲「ENDLESS RAIN」が演奏されると、先般のHeath (X JAPAN)の訃報に傷ついた感情をこらえきれない会場から自然と大合唱が巻き起こる。ステージ上のYOSHIKIと自分たちを慰めるような、ファンの思いと皆の心の傷を理解するようなYOSHIKIの思いが演奏に溢れた一場面となった。
感傷に浸る間もなく、続けてYOSHIKIが「まだいけるか? いけるだろ! スクリーム!」と何度も叫ぶ。そして、メンバーをステージに招くとともに、スペシャルゲストのPATA(X JAPAN)をメンバー一同のハグで迎え入れ、会場からは大歓声が上がる。YOSHIKIが「俺たちTHE LAST ROCKSTARSは、バンドの垣根を、全ての壁をぶち壊すために集まった。今日はまたその垣根をぶち壊していく! 気合い入れてくぞ!」と盛り上げ、先ほどまでのムードとは打って変わって激情を激しく渦巻かせるように「Rusty Nail」を披露した。演奏後は、「こんなところに迷い込んじゃってすみません(笑)」とゆるく話すPATAとともに、全員でステージ上の階段に腰掛け、自然な様子でトークへ。それぞれとPATAとの出会いを語り、そんな姿を、前方に移動して眺めたYOSHIKIは「まるでテレビを観ているみたい!」とピュアなコメントを残して笑いを誘う場面もあり、ライブの緩急のギャップが魅力的に映った。
四者四様の「魅せ方」
後半に入り、「UP 'N DOWN」などコールアンドレスポンスで会場を盛り上げつつ、LArc-en-Cielの楽曲「HONEY」、MIYAVIの楽曲「Bang!」などをアレンジ全開に織り交ぜながら披露し、ライブは終盤目掛けてますます熱量を増していく。本編終盤でYOSHIKIは「自分だけじゃないと思うけど、本当に色々なことがたくさんあって。壁を越えれば超えるほど、壊せば壊すほど目の前にはすごい壁が立ちはだかって。またこの壁と戦わないといけないのか、それとももう諦めようか。いつもそんなギリギリのところで頑張ってきているし、皆もそれを超えられてきているから今ここにいるんだと思う。今回も直前まで本当に(ライブが)できないんじゃないかと思って、どこかで半分諦めている自分がいて。(中略)自分に羽根があったとしたらボロボロなんだと思う。骨格さえもないのかなって。でも途中から羽根なんかなくたっていいや、ファンやメンバーが風を送ってくれる。だったら羽根なんかいらねえよ、それでも羽ばたいていく、今こんな気持ちでステージに立っています」、「こんな気持ち皆も味わったことがあると思う。今からそんな皆へ応援と感謝を込めて、この曲をメンバーで演奏しようと思います。皆で血だらけの翼を広げようか」。そう語って、「Red Swan」をフィナーレに披露。紅の衣装に身を包んだYOSHIKIという翼のもとに、ピアノを挟んでHYDEが歩み寄り、顔を突き合わせながら自由に伸び伸びと歌い上げる。真っ赤に灯した会場のペンライトが優しく揺れながら、場内へ風が吹き抜けていくような爽やかさを生み出し、本編は終わりを迎えた。
アンコールでは、バンド名を呼ぶファンの声に応えて会場にメンバーが再び現れる。「台風の中」、「洗濯機の中に入っているよう」とメンバーが称するほど多忙の中で生み出された、世界的人気ゲーム「鉄拳」の最新版「TEKKEN8」の公式イメージソングとなる新曲「MASTERY」、会場のスマホライトを雪のように白く灯し、神聖な雰囲気を醸し出した「Shine」を演奏。最後にはバンド名を冠したデビュー曲「THE LAST ROCKSTARS」を披露し、マイクスタンドを振り回すHYDE、会場一人ひとりを見つめながら激しくギターをかき鳴らすMIYAVI、縦横無尽に会場を駆け回りながらプレイで魅せるSUGIZO、会場の歓声を全身で感じながらドラムを叩くYOSHIKIが最後まで駆け抜けてライブは終了となった。エンディングでは、互いを称え合うようにハグしている中、誕生日の次の次の日だというYOSHIKIのためにサプライズで用意された、真っ赤な苺が敷き詰められたバースデーケーキがステージに届けられる。満面の笑顔で、子供のようにはしゃぎながら動画を回し、ファンからも何度も熱心にYOSHIKIへの祝いの歓声を上げる中、幸せなムードに包まれた大団円の終わりを迎えた。
当日のステージを見ていると、メンバーの魅せ方は四者四様だ。YOSHIKIは激しいドラムと繊細なピアノプレイのギャップの中でも笑顔を見せつつ、合間にはフロントに立ってすべて吐き出すように激しく会場を煽る。SUGIZOは妖しく色気を醸し出すようなプレイングで観るものを虜にしていき、MIYAVIはバンドから生み出されるグルーヴを全身で感じながら踊るように楽しみ、HYDEは艶やかな歌声を放ちながら、表情も豊かにステージを軽やかに舞って魅せる。それぞれの魅せ方も力強い個性が表れる四人のスターだが、決して混ざりすぎることなく、互いを刺激し合いながら魅力を高め合っていけるのは、それぞれの長年の経験の中で確立してきた自身のスタイルへの自信と、互いへの尊敬の念があってこそではないかと思う。これらを両立した彼らだからこそ、それぞれの既成バンドの単位を超えた新しい演奏家の形を築くことができており、その後ろ姿で音楽業界とファンを引っ張っていくことができるのは、THE LAST ROCKSTARSだからなのかもしれない。分裂や対立が多く見られる今の時代には、彼らのようなスターが必要だ。そう感じさせる一夜となった。
Photo by Keiko Tanabe
以前、「Rolling Stone Japan vol.22」のカバーストーリーにて、YOSHIKIはインタビューで「(バンド名に)自分としてもこういった名前を付けてしまった、これだけのメンバーを集めてしまったということで、”もう後に引けないな”という気持ちがあった」と、THE LAST ROCKSTARSに背負う覚悟を言葉にしていた。後に引けないという覚悟を持ってTHE LAST ROCKSTARSを始めたYOSHIKIが、これから日本をはじめとする世界に見せていく姿、築いていく新たな伝説に期待せずにいられない。
THE LAST ROCKSTARS
「THE LAST ROCKSTARS The 2nd Tour 2023”PSYCHO LOVE”」日本公演
公演日時:2023年11月22日(水)東京 有明アリーナ
=セットリスト=
1. PSYCHO LOVE
2. 6or9
3. Heres The Love
4. Tonight, The World Is Mine (新曲)
5. Beneath The Skin
-SUGIZO x MIYAVI Guitar Battle
-SUGIZO Violin solo
6. Folly(HYDE×SUGIZO)
-MIYAVI Acoustic Guitar solo
7. Hallelujah((HYDE×SUGIZO×MIYAVI)
YOSHIKI Drum solo
YOSHIKI Piano solo
8. Rusty Nail (w/ PATA)
9. HONEY
10. UP 'N DOWN
11. Bang!
12. GLAMOROUS SKY
13. Red Swan
アンコール
14. MASTERY(新曲)
15. Shine
16. THE LAST ROCKSTARS
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