PSYCHIC FEVERが語る、JP THE WAVYとともに切り開いた「ラップ×ボーイズグループ」の新境地
Rolling Stone Japan / 2024年1月23日 17時30分
2022年7月のデビュー以来、タイでの武者修行やイベント出演なども経験し、グローバルに活躍するアーティストとして、着々と成長を遂げてきたPSYCHIC FEVER。デビューからは2年目といえど、2024年の7月にはお披露目から5周年を迎える。
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目まぐるしく過ぎていく日々のなかで、果たして彼らは何を感じて何を得てきたのか。本稿では、2023年の振り返りやPSYCHIC FEVERの音楽性に迫ると共に、1月19日にリリースされたEP『99.9 Psychic Radio』についても語ってもらった。7人の青年がどれだけ音楽と深く向き合い、アーティストとして成熟してきたのか、きっと感じてもらえることだろう。
―まず振り返りから、お伺いさせてください。PSYCHIC FEVERにとって2023年は、どのような年でしたか。
小波津 志:初めての単独ライブツアーもありましたし、たくさんの音楽を通してみなさんに発信できた年になったかなと思います。タイでの単独ツアーなど東南アジアでの活動も増えてきて、グローバルアーティストという目標に向かって進んでいる実感も強くなりました。
WEESA:年末にタイのカウントダウンイベントに出演した際は、タイの人が全員来ているんじゃないかと思うほど大勢の前でパフォーマンスをさせていただいて。また、数々のタイのアーティストさんとコラボレーションして楽曲を出せたことは、僕たちにとっても新しいことですし、日本のアーティストとしても新しいことをできたんじゃないかなと思います。単純にタイと日本では言語が違いますし、言語が違うと音の乗りかたも全然違う。だからこそ、日本の音楽とタイのT-POPが混ざり合うことによって、新しい音楽ができあがっているように思うんです。
―「新しい音楽ができあがっている」とのことですが、みなさんは現在のPSYCHIC FEVERの音楽を、どのようなものだと捉えていますか。
中西椋雅 :R&Bやヒップホップのテイストを大事にしているのはもちろんなんですけど、タイのアーティストさんとコラボレーションすることによって、新しいことができているんじゃないかなと。タイ語も日本語も英語も入っている曲って、なかなかないと思うんですよ。そこを強みにしていけば、もっと面白いことができる気もしています。
JIMMY:日本語には日本語っぽい、英語には英語っぽい、タイ語にはタイ語っぽいテイストのフロウがあって、それが1曲にガッてまとまると自分たちも聴いたことがないような曲ができあがるんです。作っているなかでは、想像がつかない (笑)。
剣:もちろん、3言語が混ざり合うからこその難しさもあります。僕の前のバースがタイ語だと、どんな感じで振ってくるのか想像がつかないし、スタジオで聴いて「こういう感じね」と対応する必要があるので。なおかつ、バースごとのトップや、曲全体としての盛り上がりも意識しなきゃですから。
JIMMY:でも、スタジオでどんな音が録れるかに自分たちがかけているからこそ、コラボレーション相手との一期一会で音楽ができていくが面白い。聴いているみなさんにも、楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
―昨今では日本語を韓国語や英語のようにメロディに乗せるアーティストも少なくありませんが、PSYCHIC FEVERとしては各言語に準じた言葉の乗せかたをしているということですか。
JIMMY:そうすることが多いですね。グローバルに発信するからこそ、日本語の部分は日本語として、英語の部分は英語として、タイ語の部分はタイ語として、しっかり聴きとれる部分があってほしい。特に日本語に関しては、ラッパー陣の第一言語が日本語なので、ラップをしたときに日本語として聞こえなかったらもったいないと思うんです。臨機応変な部分もあるんですけど、今回のEPに入っている「Psyfe Cypher」に関しては、日本語の韻の硬さはすごく気にしながら歌いました。また、英語に関してもカナカナ英語ではなく、海外の人が聴いてもわかる綺麗な発音になるように意識しています。発音矯正は、かなり心がけていますね。
―ボーカルの方は、いかがですか。
WEESA:僕はどこの言語に寄せているとかはなく、自分なりの発音でやっていきたいと思っています。自分のしゃべりかたの癖を活かしつつ、日本語としても聴きとれるようにって感じかな。
小波津:ずっと意識しているのは、曲に合った歌い方をすること。今回のEPもそうですし、1曲1曲最善を尽くしながら歌っています。
「個性」を活かしながら揃える
―2021年頃のインタビューでは「日本発のグループなので、まずは日本のグループならではの強み、核となるものを見つけていくのが、海外に向けても刺さりやすいのかなと思っています」と語っていましたが、現時点でそれは見つかりましたか。
WEESA:「日本のグループならでは」というわけではないのですが、個々の見た目や性格、音楽性がバラバラなのは、僕たちの強みだと思っています。
半田龍臣 :こうやってインタビューを受けていると、ふと「なんでこの7人が、ここでひとつになるんだろう」って思うくらいには、バラバラだもんね(笑)。
WEESA:個性が強いからこそ、全員でパフォーマンスするとダイナミックだし、どこの国へ行っても印象づけることができるはず。
JIMMY:揃っている美学もあれば、揃っていない美学もあると思うんですよね。PSYCHIC FEVERは、メンバーがいろんなルーツを持っているからこそ、誰が観ても勇気をもらえるグループ。僕らのパフォーマンスを観たら「こういうタイプの人もいるし、こういう形もあるし、こういう表現もできるんだ」って思ってもらえると思うんです。どんな人であっても「こういう型じゃないと、こういうふうになれない」とか「こういうふうじゃないとダメなんじゃないか」と感じて、ひとつの型に収まってほしくないので。言語に縛られず、そういったことを表現できるグループになりたいです。
半田:今のボーイズグループシーンでは、揃っているほうが主流かもしれないけど、せっかくいろんな国に行かせてもらっているし、僕らが新しい風を吹かせていきたいよね。
―個性を活かすということは、ダンスの面ではシンクロ率を高めるより個々の魅せかたを重視するということでしょうか。
渡邉 廉 :パフォーマンスに関しては、手の角度や意識、パワーバランス、表情、ステージに立ったときの温度感など、本当に細かい部分までメンバーで意見を出し合って揃えていますね。自分たちで作った作品を1度見直して、揃ってなかった部分を指摘しあいながら、厳しくやっていると思います。個性を活かしながら揃えるというか。楽曲によって調整しながら、メリハリをつけるようには意識しています。
―続いて1月19日にリリースされたEPについても、お伺いしていきたいと思います。今作の『99.9 Psychic Radio』は、どういった経緯で出来上がっていった作品なのでしょうか。
WEESA:僕たちの「Hotline」という曲に、JP THE WAVYさんがフィーチャリングで入ってくださったのが、そもそもの始まりですね。
小波津:それが実現したのも、WAVYさんが「Hotline」のリリックビデオを観て「こういう子たちいいよね」とSNSで投稿してくださったのがきっかけで。
WEESA:フィーチャリングした曲がめちゃくちゃかっこよかったですし、僕らとしても「また新しいものができた」という実感があったので、「Temperature」をプロデュースしていただくことになりました。「Hotline」の件があったので、めちゃくちゃカッコイイ楽曲ができると期待していたら、期待以上にめちゃくちゃカッコイイ楽曲になって。せっかくならフィーチャリングでも入っていただきたいし、全曲をプロデュースしてもらったEPが作りたいということで、『99.9 Psychic Radio』ができました。
―各楽曲について、お話をお伺いできますか。
渡邉:「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」は、全く新しいPSYCHIC FEVERの姿が見られる1曲。WAVYさん節のリリックが多く、僕たちにとっては初めての表現ばかりでした。デモを聴いたときは「僕たちで表現できるかな」というプレッシャーを感じましたし、実際に難しい部分もあったんですけど、WAVYさんが親身になって教えてくださったおかげで、僕たちの味にWAVYさんのスパイスが加わった、より新しい楽曲になったと思います。MVも本当にカッコイイですよ。
JIMMY:かっこよさを更新しましたね。
半田:今までラッパーだけの曲がなかった僕たちのことを考えて、WAVYさんが「ラッパーだけの声もいいから、一人ひとりにフォーカスを当てた曲を作りたい」と発案をしてくださり、できたのが「Psyfe Cypher」。歌詞には、それぞれがやってきたことにまつわるワードも入っているので、一人ひとりの成り立ちがわかるような楽曲になっていると思います。僕だったら”これ先頭打者ホームランボーイメジャーですよ No マイナー”みたいな感じ。また、今回は4人で歌っているので、個々のラップをちゃんと見せられると思います。やっと聴いてくれるみなさんに僕らのフロウをお伝えできる機会が来たので、早くパフォーマンスしたい気持ちでいっぱいですし、普段からラップを聴くかたにも聴いていただけたら嬉しいな。
小波津:「Temperature」は、流行のジャージドリルを取り入れたうえで、僕たちならではのR&BやHIP HOPの要素もある楽曲になっています。
中西:この曲に関しては、コード進行がシンプルな曲やベースのエッジが利いた曲を中心に、僕たちからリファレンスを出させていただきました。僕たちの意見を親身に受けとめ、今の流行とこれからのトレンドをミックスしてできたのが「Temperature」なんです。
小波津:「Hotline」から続く、自分たちのTemperature(体温)を感じてほしいですね。いつ聴いても心地がいい飽きない曲でありながら、サビはとてもキャッチー。自然と口ずさんでしまうようなパートが多いので、ぜひ一緒に歌ってほしいです。タイでパフォーマンスさせていただいた際には、応援してくださっている方々が日本語で一緒に歌ってくださったんですよ。
JIMMY:大合唱だったよね。
小波津:そういった面でも、国とか言語とか関係なく乗っていただける曲かなと思います。
WEESA:「Rocket (Take You Higher)」は「うるさいところから逃げて、ロケットに乗って2人でデートしようよ」みたいな楽曲。メロディーの聴き心地がいいですし、何回聴いても面白い1曲になっているんじゃないかな。リリックがストレートでありながら、表現がめちゃくちゃ面白くて。志君の”俺がアナキンだったら君はパドメ”っていうバースとか、すごくヒップホップっぽさがあるなと思います。
小波津:普段だったら絶対にしないようなラップにも挑戦したんですよ。そのおかげで、新しい自分に気づくことができました。
JP THE WAVYとの共同作業
―WAVYさんのプロデュースは、どんな感じで進んでいきましたか。
WEESA:JP THE WAVYさん、めちゃめちゃ優しくて。指示を出すというよりは、すごく親身になって「こうしたほうがいいんじゃないかな」みたいな感じに相談ベースでやってくださいました。
小波津:いただいた楽曲のなかで、いかに自分たちの個性を出すか、相談しながら進めていった感じですね。僕の場合は「アッシャーやクリスブラウンをイメージして」っていう話があったかな。
WEESA:ちょっと上からな言いかたに聞こえてしまうかもしれないんですけど、WAVYさんは引き出すのが上手いというか。一人ひとりの良さが、すごく楽曲に表れているんですよね。
JIMMY:もともとはリスナーだったWAVYさんだからこそわかる、自分たちでは気づかなかったけどリスナーのみなさんが聴いてみたいと思っていた部分に、やっと手が届いたんだろうなって。LDHやタイのチームと一緒に作っていくなかで、知らない間に凝り固まっていた部分があったんだと気づかされました。
小波津:レコーディングの際も、ずっと付きっ切りでいてくださったんですよ。
中西:「Psyfe Cypher」なんて、レコーディングが終わって持ち帰ってから、「もう1回レコーディングしよう」という話になって、最初から最後まで録り直していますからね。
WEESA:一緒に作り上げたEPだと思います。
中西:それに、現役で活動しているかたに教えてもらう機会もなかなかないと思うので、僕らにとってはスキルを磨く時間にもなりました。
WEESA:世界でも日本でも活躍しているラッパーだからこそ、日本のトレンドを抑えながら世界も視野に入れていて。フロウひとつをとっても「こうハメてくるんだな」と。本来はプレイヤー側でありながら、いろんな人がカッコいいと思うような曲をプロデュース側として作ってくださって、何よりも熱を感じました。
中西:本当に貴重な時間でした。
―今作を漢字一文字で表すと、どのような1枚になったと思いますか。
WEESA:”新”じゃないですか。もしかしたら、ブブーかもしれないですけど(笑)。でも、ラッパーとボーイズグループが掛け合わさって、こんなフィーチャリングまでさせていただいて、いろんな”新しい”が入っている楽曲とEPになったと思うんですよ。
中西:たしかにPSYCHIC FEVERが今までに出した楽曲と比べると新しいと思う。
WEESA:それに、日本のアーティストとしても新しいことをやっているんじゃないかと思うんですけど……。どうですかね。
中西:いいと思うよ。
WEESA:もっといいのがあったら、言ってくださいね?
剣:俺も思いついたけど、エグイくらいよくないから止めておこう(笑)。
―コレオグラフについてもお伺いしたいのですが、半田さんがKAITAさん、KAZtheFIREさんと共に「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」の振り付けを担当したそうですね。
半田:3人でコンセプトをすり合わせて、振り付けに落としこんでいきました。ふたりがWAVYさんの楽曲の振り付けを担当したり、すごく近い距離で活動していたのもあって、WAVYさん・僕たち・KAITA君・KAZ君が上手く混ざり合ったコレオグラフになったと思います。けっこう難しいけど、すっごくカッコイイ振り付けになっているので、ダンサーさんとかに踊ってもらえたら嬉しいですね。
―「Psyfe Cypher」と「Rocket (Take You Higher)」のコレオグラフは、どのようになりそうですか。
JIMMY:「Psyfe Cypher」は、海外のラジオ番組や生放送でよくあるような、全員で卓を囲んで一人ひとりがフリースタイルをしていくイメージの楽曲なので、ライブや映像でもそういう演出ができたらいいなってひそかに思っていました。
渡邉:「Rocket (Take You Higher)」は、一人ひとりのバースが長いので、踊らないスタイルで個々を目立たせるのがいいかな。スタンドマイクで行きたいですね。
JIMMY:おしゃれな感じだ。
小波津:ここで言ったら決まっちゃうよ(笑)?
JIMMY:この2曲は、だいぶお楽しみですね。
―では最後に、2024年の展望をお伺いできますか。
WEESA:2023年にいろいろな国へ行けたからこそ、やっとスタートラインに立てたというか。ようやく地に足がついた状態になったと思うんです。昨年末に初めてタイで自分たちのライブができて達成感も感じたので、2024年は昨年いけなかった国にも行きたい。世界には僕たちのことを知らない人が、まだまだたくさんいると思うので、自ら出向いて少しずつでも心を掴んでいくのが、一番やるべきことなのかなって。もっと多くのかたが僕たちのライブに足を運んでくださるように、世界全体でやっていけるようにしたいとみんなで話しています。
JIMMY:いろんな国に自分たちで足を運んで、カルチャーを知って新しい音楽を生み出すことが、本当に面白いと思うからそういう機会をもっと増やしていきたいですし、LDHの”Love, Dream, Happiness”というマインドも、もっと世界各国に届けていきたいですね。
中西:アジアツアーがしたいよね。自分たちのライブとしては、まだ国外だとタイだけでしかやったことがないので。2024年前半はフェスやイベントに出ることで、自分たちのパフォーマンスを観てもらい知名度を上げて、可能性が出てきたら後半にはツアーをしたいな。
―みなさんが、そこまで精力的に海外へ活動範囲を広げていけるのは何故ですか。
剣:挑戦するときは、メンバーがいるので。ひとりだったら絶対にできないことも、メンバーがいるからこそ、できているって感じですね。そして何より、応援してくださる方が、一番の支えになっています。
<INFORMATION>
『99.9 Psychic Radio』
PSYCHICFEVER
LDH Records
配信中
https://lnk.to/psychicfever-99.9psychic_radio
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