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クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが語る、日本での異邦人感覚、音楽で「遊ぶ」ことの本質

Rolling Stone Japan / 2024年1月23日 18時15分

クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Photo by Andreas Neumann)

約6年振り、5回目の来日が控えているクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ。最新作である2023年6月リリースの8thアルバム『In Times New Roman…』は、全世界で大ヒットを記録し、第66回グラミー賞の最優秀ロック・アルバム賞と最優秀ロック・ソング賞の2部門にノミネートもされた。マーク・ロンソンのプロデュースでダンサブルな作風となった前作『Villains』とは変わって、ダークでブルータル、それでいて繊細で脆い音楽性は、人生の困難を乗り越えたというプロセスも大きく影響している。何層にも音がレイヤーとして重ねられたバンド・サウンドは、原点回帰というよりも、バンドの新たな進化を告げるものとなっており、来日公演でもどのようなライブを見せるのかが楽しみだ。ボーカル&ギターのジョシュ・ホーミに話を聞いた。

【画像を見る】クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのライブ写真

ーもうすぐ来日公演ですね。

スゴく楽しみなんだ。実は息子を連れてライブ前に来日するんだ。息子は日本が大好きなんだよ。

ー息子さんは日本語のレッスンを受けていると聞きましたが。

もう1年半ぐらい毎日日本語を勉強してるよ。日本にいた時、息子とゴミ収集車がゴミを収集してるところを見たんだけど、アメリカと全然違ってたんだよね。俺が息子に、日本人がどれだけ仕事にリスペクトの気持ちを持ってるのかわかる?って聞いたら、「イエアァァ」って答えたんだ。普通の「イエア」じゃなく、とても感心して頷くような感じなんだ。そういう日々起きることの違いに興味を持ってるみたいで。どういうことがサムライ・カルチャーを生み出したのか、知りたいみたいなんだ。良い仕事をすることへの静かなリスペクト。そこに興味があるみたいだ。ちょっと皮肉っぽく表現したけど、要は、日本人はディープでクラッシーなマザーファッカーってことなんだ(笑)。

ークイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジは4回来日していますよね。初来日の2002年はフジロック・フェスティバルへの出演で、非常に強烈な印象を残しました。

俺の日本に対する印象は、息子とは真逆だったね。初めて日本に行った時、それまでに味わったことのない孤独を感じたんだよ。

ー何故ですか?

22年前は俺の言葉はほとんど通じなかったし、日本人オンリーというのをあちこちで経験したんだ。人々が俺を見て最初に発する言葉は、「彼は日本人じゃない」だった。自分が属してない別の世界に来てしまった感覚があったよ。そこから3回、4回と来るうちに、「彼は日本人じゃない」って言われることが気に入ってしまったんだけど。

ーそう言えば、初来日の時、一緒にクラブをハシゴましたよね。あの時、何日も寝ていないと話していたのが印象的でした。

あれが当時の俺のやり方だったから。孤独は感じてたけど、行けるところはどこでも行ってみようという感じだった。何かを見る時、ディープに見しようとしないと、ステレオタイプに見えてしまうものだから。日本はアメリカのどんな場所とも似ていない。日本とアメリカという全く違う両極端のカルチャーを見てるからこその面白さはあるんだ。日本にいると自分がアウトサイダーだという心地良さを感じるんだよね。

ー2018年に来日した時は、何か変化はありました?

行くたびに自分が日本で何をしたらいいのかわかるようになってきたよ。今の俺たちは世界中で上手くやれてるから、日本での異邦人感覚は逆に貴重だと思えるんだよね。通りを歩いていても誰も俺のことを知らない。これはネガティブな意味じゃなくね。東京でビートルズのクラブに行ったけど、実際のビートルズを観たことがないから、曲をリクエストしてプレイしてもらった時は感激したね。「In My Life」をプレイする頃には涙も流れて、そこにいる人たちと抱き合ってたよ。


Photo by Andreas Neumann



ゲームセンターにあるアイスクリーム・パーラーみたいなもの

ー今回の来日は、セットリストを含めて、どのようなライブになりますか?

セットリストに関しては、全く気にしてないね。前のライブと違うものにするという以外には。曲はたっぷりあるから、どんな曲も好きなようにプレイできるんだ。毎回、毎回、スペシャルな日になるようにライブをやるだけだから。

ー去年の12月にLAのKia Forumでやったセットリストを見ると、1曲目が「No One Knows」で、アンコールのラスト曲が「A Song for the Dead」でした。この辺はやはり鉄板なんですね。

毎回「No One Knows」をプレイするのは自分でもわかってるんだ。大好きな曲でもあるし。それに、みんなが知ってる好きな曲をやるのに抵抗はない。でも、「No One Knows」をプレイするたびに、みんなの知らない曲をやりたくなってくる(笑)。みんなの知ってる曲がたくさんある中、カードを切るような感じで、Spoitifyで聴いたことのない曲をやりたくなるんだよね。今回の日本は2公演あるけれど、両方観たらその意味がわかると思うよ。





ーそのKia Forumでは、最新アルバム『In Times New Roman…』からの曲も何曲かやりましたよね。その中の「Paper Machete」はオーディエンスのリクエストでしたね。

新曲を求められるのはうれしいよ。求められてないものをやるのは気が引けるから。いつもライブでは新作からの曲を5~6曲プレイするんだ。だけどあまり長くプレイしようとは思わない。2時間半も黙って座って観てるようなライブはやりたくないんだ。いろいろやってくれる、何でもありのライブの方が楽しいからね。



ー昨年、End Is Nero Tourを発表した時に、このツアーはみんなで世界の終わりを祝うもので、猥褻なものとクリーンなもの、アウトサイダーと変人たち、そしてその間にいるみなさんに参加してほしい、ここがあなたの居場所だから、と招待を呼びかけましたよね。今回の日本公演で日本人を招待する時は、どのような言葉で招待したいですか?

こういう言葉になるかな。「今回私たちがお届けするものはどんなものよりも価値があるものです。私たちが提供するのは現実逃避であり、明かりを消して、音楽をかけるので、そこでは言いたいことを言っていいし、自分らしくいてくれればいいんです」。これはゲームセンターにあるアイスクリーム・パーラーみたいなものだ。俺が提供するのは現実逃避だし、ストレスなんてなしだし、何をすべきかなんて言わない。そんなことよりも、美味しいものを食べてほしいし、楽しく飲んでほしいし、いいセックスをしてほしい。それ以外に俺が提供するものなんてないから。



ー最新アルバム『In Times New Roman…』では、自身の最も素直でリアルな部分、とりわけダークで傷つきやすい部分をさらけ出していますよね。自分の感情、考えをどのように音楽として形にしていきましたか?

音楽に関して言えば、俺はアイデアをいろいろ考えて、それをこねくり回すのが好きなんだ。「Sicily」という曲があるんだけど、ビッグ・コーラスに入るところこそが俺が聴きたかったもので、そこに向けてのアレンジを考えたわけだ。「Emotion Sickness」という曲だと、アレンジが非常に奇妙で、ヴァース、コーラスという構成でもなく、小さなヴァースがたくさん出てくる感じだ。そういうのを集めて錠剤を作るんだけど、なかなか呑み込めなかったりする。理解しなきゃいけないのは、どのようにポップ・ミュージックが作られ、どうそれで遊べるのかということだ。俺がポップ・ミュージックで遊びたいのは、ダークで言いにくいことを言いたいからだし、呑み込むのは大変でも楽しめる音楽をやりたいからなんだ。というのも、俺は自分がポップ・ミュージックだと思ってるものを、あちこちいじくり回してるからなんだ。ポップ・ミュージックというのは、ビッグ・コーラスがあって、ヴァースがあって、わかりやすいものだよね。俺はポップ・ミュージックの骨組みからこねくり回して、音楽的にもテーマ的にも奇妙なものにして、それでもちゃんと呑み込みやすいものをやりたいんだ。





ー確かに、『In Times New Roman…』は何層にも重なったサウンドのレイヤーが楽しめるし、ダークでブルータルなサウンドだけど、どこか聴きやすさもありますね。

どの曲もフックをいろいろ作れたのが良かったと思うよ。うちのバンドにはギタリストが三人もいるし、ギタリストがキーボードも弾くし、ラップ・スチール・ギターも弾くからね。オプションはたくさんあるんだ。メンバーも多いから、一番難しいのはシンプルにやることだったりする。だから、シンプルなものをやるために、いろんなことをやって重ねていくんだ。それでわかりやすく作ったフックをさらにダークで複雑なものにする。それでシンガロングするんだけど、「ベイビー、俺のことなんて気にするな/彼女を手放さなければならなかった」なんて歌うのは辛いことで、決して楽しいものじゃない。だけどそこにはメロディがあるから、甘いものと塩辛いものがミックスしてるような感じだよ。フックとメロディはアゲアゲだけど、歌と歌詞は全然アゲアゲじゃない。でもそれが同居してるからこそ、独特の音のフレイバーが生まれるんだ。多くのポップ・ミュージックは、ミュージシャンがつまらなそうにプレイしてるけど、それってボーカルに注目させるためにやってたりする。それでボーカルは同じことを繰り返し繰り返し歌うから、聴いてる方は耳にこびりついてしまうんだ。俺たちはミュージシャンも面白いものをプレイして、サウンドも楽しめるようにしてる。何度も繰り返すフックもダークにしてるから、変態的なポップ・ミュージックになるんだ。俺はそういうアイデアが好きだし、変態になって、ぶっ壊れて、共謀を計って、全く違う純粋なポップ・ミュージックを作りたいんだよ。


Photo by Andreas Neumann


Photo by Andreas Neumann


Photo by Andreas Neumann


Photo by Andreas Neumann



自己探求のツールから唯一無二の存在に

ー前作の『Villains』ではプロデューサーにマーク・ロンソンを迎えて、ダンサブルなサウンドになりましたが、今回はセルフ・プロデュースですよね。あのダークでブルータルなサウンドにするには、自分たちでやる必要があったのでしょうか? 

マーク・ロンソンと仕事をした時は、ずっと「ダンス」というワードを言い続けてたんだ。それはジョークでもあるし、マントラでもあって。自分たちの考え方を決めるためにマントラにしたんだ。今回の曲は前作と比べてダンサブルでもグルーヴィでもなくなったから、マークを呼んでさらにダンサブルなものを作りたいとは思わなかったね。俺もメンバーも個人的な経験をいろいろ乗り越えてきたし、自分たちのことは自分たちでしか扱えないってわかってる。しかも自分に起こったことを詳しく話しすぎると、とても耐えられないことになってしまう。だから、プロデューサーに向けて、世界に向けて、詳しく話しすぎると、見失うことだってあるし、どんどんソフトなものになってしまうんだ。デモの段階ですでにストーリーは語られてるわけだから、その曲をもう一度録り直すとなると、ソフトにするのか、よりエキサイティングなものにするのか、もっと水で薄めたものにするのかってなるよね。でも、アイデアの中にはすぐに形にするのがベストなものもあるんだ。一発で形にして、誰のフィルターも通さないこと。とにかく一発で形にしたかったんだ。できる限りパワフルでダーティでぶっ壊れたものにしたかったんだ。音楽というものは何かを語るよね。それが馬鹿げたことであっても、何か重要なことを語ってる。音楽における最大の間違いは、どこかに収まろうとすること、誰か他の人のふりをすることだと思うんだ。もし俺が重要な声明を出す時に、変に気に入ってもらおうと思って出したら、間違いを犯すことになる。俺は俺らしいやり方で出さなきゃいけないんだ。



ー今回、音楽は先に出来ていたけれど、歌と歌詞には時間がかかったそうですね。

どんな曲においてもメロディは一番大切なものだから。リフとか歌詞以上にメロディなんだよ。メロディが良くなかったら、もうそれ以上追求する意味がなくなる。レコーディングで歌う時、歌詞もメロディもすでにあったけど、曲にきちんとフィットするのかどうかが重要だった。そこは非常に複雑になっていたからね。例えば、楽しく過ごした時って、言いたいことはたくさん出てくるよね。自分に起こった良いことを話すし、相手に起こった良いことも話せる。だけど良くないことが起こったら、あまり話すことは出てこないものだ。話すのが辛い時だってあるし、ちょっと抑え気味に話すことだってあるし、抑えないでそのまま話したくなることだってある。苦しいことを経験した時は、言いたいことは一つしかないんだ。それ以外に何を言っても、自分ではそれが正しいとは思えない。だから、自分が正しいと思えるようになるまで、時間が必要だったんだ。

ー12歳の時からバンドをやっていますが、自分と音楽の関係は変わりました?

初期の頃、音楽は自己探求のツールだった。音楽を武器だと思ってたし、枕や毛布のようなものだと思ってた。自分がどうにでもできる、自分のものだと思ってたし、自分に何かをしてくれるものだと思ってた。それが年月を重ねていくうちに、何でも共有できるパートナーのような存在になってきたんだ。自分を見失った時は助けを求めるし、解決を求める存在になったんだ。さらに年を重ねると、自分が唯一正直になれる存在になった。唯一告白ができる存在になったんだ。だから、俺を理解してくれる唯一の存在なんだよ。俺が一度も嘘をついたことのない唯一の相手だし、他の人から見られないように鍵をかけておく唯一のものだし、俺が理解できないことを説明してくれる唯一のものなんだ。自分が大切にしてるものをこんな風に形作れたのは面白いと思うし、それが上手くいったことも面白いと思うんだ。俺が言う「上手くいった」というのは、みんなが買ってくれるという意味じゃなく、自分のためになったという意味だ。


Photo by Andreas Neumann

ー『In Times New Roman…』を聴くと、自分もいろいろ乗り越えてきたことを思い出したし、いろんな感情が湧いてきたけど、最終的には今ここに生きていることが重要なんだなと思えました。

俺自身は他人が何を感じ取ろうと関係ないし、そこに立ち入るのは傲慢なことだと思うけど、そこで生まれた感情はリアルだと思うんだ。時々思うんだけど、俺とかバンドのことを知らないまま、人々が俺たちの音楽を聴いて、「これは何なんだ?」ってなってくれたらいいなと思ってて。俺は何も知らない人に聴いてもらいたいんだよね。俺自身、音楽をやりながらも、何も知らない人になりたいと思うから。俺は誰かの情熱とかアートを、その人のことを知らないまま感じたいと思ってる。音楽はその人のスペースを形作るものだし、その人以上にクールなものにもなり得るから。

ーおそらく今度の来日公演に来る人たちは、2002年の初来日で喰らったファンもいれば、最近ファンになった若い人たちもいると思います。それこそロック・ミュージック・ファンもいれば、パンク、オルタナティブ好きもいて……。

俺たちはそのどれでもないね。俺は今までなるべくそういうジャンルの外にいようとしてたくらいで。よくあるのは、「俺はもう最悪だ。誰かのシナリオの中に入らなきゃ。そこで誰かに会えるかもしれない」ってなることだ。誰かのシナリオの中に入るのは簡単なことだからね。12歳、18歳、29歳、42歳、60歳……。俺たちのライブの客の年齢層はそんな感じだ。アイスクリーム・パーラーに行くと、アイスクリームはいろいろあるけど、基本の味は一つしかないよね。俺はそんな風になりたいんだ。俺たちのお客さんにもそうなってほしい。だから俺には選択肢がないし、いろんなものの外を走り回ってる感じなんだ。

ー前にイギー・ポップに大きなインスピレーションをもらったと話していましたよね。年を重ねていくということに関して、イギーから得たものはありますか?

俺が彼に惹かれるのは、どの年齢の時も彼が素晴らしくやれてところなんだよね。あれだけ自分のことを理解できてる76歳は他にはいないよ。世界における自分のポジションを理解してるし、自分が何者なのか、他人が自分をどう見てるのかをちゃんと理解してるんだ。その年齢らしく自分らしく生きてる人を見てるだけで、俺はインスピレーションをもらえるよ。彼は自分自身に満足してるからね。この先自分がどんな目的地を設定しようと、自分自身に満足できてなきゃいけないと思うんだ。まあそれこそが最高の目的地になるんだろうけど(笑)。だから、どこに行こうが関係ないんだ。まずは自分に満足できなきゃ。そうすればどこに導かれようと大丈夫だから。




Photo by Andreas Neumann

<INFORMATION>

Queens of the Stone Age
最新アルバム『In Times New Roman…』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13404

Queens Of The Stone Age 来日公演情報

大阪:2月5日(月)Zepp Namba Osaka
OPEN 18:00 / START 19:00 
TICKETS 1Fスタンディング¥9,000/2F指定席¥12,000(各税込/1ドリンク代別途必要)
<問>キョードーインフォメーション:0570-200-888

 東京:2月7日(水)Tokyo Dome City Hall
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS アリーナスタンディング¥9,000/バルコニー指定席¥12,000(各税込/1ドリンク代別途必要)
<問>クリエイティブマン:03-3499-6669

チケット発売中!
公演ウェブサイト:
https://www.creativeman.co.jp/event/queens-of-the-stone-age24/

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