アンバー・リウが語る、f(x)で磨いたクリエイティブ精神、自分自身のための音楽
Rolling Stone Japan / 2024年2月13日 17時45分
K-POPのガールズ・グループ、f(x)のメンバーとして2009年に韓国でデビューし、今はポップ・スターとしてワールドワイドに活動するアンバー・リウが、日本初となるソロ公演で来日する。
【動画を見る】アンバーのソロ曲「No More Sad Songs」ミュージックビデオ
カリフォルニア出身、中国系アメリカ人のアンバーは、15歳の時にLAで行われたSMエンターテインメントのオーディションで発掘され、韓国に渡ってf(x)のメンバーとしてデビュー。f(x)はK-POPで最も人気のあるグループの一つとなり、BillboardのK-POPホット100とワールド・アルバム・チャートで1位を獲得、各所で高い評価を受け、数々の賞を受賞してきた。ソロとしてのアンバーは、2015年の1stアルバム『Beautiful』がBillboardのワールド・アルバム・チャートで2位を獲得。昨年の「ILY」「Cant Go Yet」「HARDER (feat. Jackson Wang & Yultron)」「hatemyself」、今年の「Dusk Till Dawn」といった曲では、よりピュアでリアルな自分を表現した、新しいフェーズの音楽を聴かせている。
ーもうすぐ来日しますね。
めちゃくちゃ楽しみ! 日本には去年も少し行ったし、何度もライブをやってきたけれど、今回の来日は私にとっては初のソロライブになるから。前にf(x)で日本に行った時もかなり盛り上がったし、ファンのみんなと直接会えるのをとても楽しみにしてる。
ー今回のソロツアーは、「Amber Liu No More Sad Songs Tour 2024」というタイトルですが、去年リリースしたシングル「No More Sad Songs」から名前を取っていますよね。ツアーにはこの曲にも通じるようなメッセージを込めていますか?
この2年間はアルバムの曲を制作していて、去年はアルバムからの曲を1曲ずつ発表してきたんだけど、この間の私は自分が本当に良いと感じてること、本当に自分らしいと感じてることをずっと探し続けてきた。これは私の5年間の歩みの一部であって、自分のことを人として、アーティストとして理解するために必要な時期だったと思う。私は自分のネガティブな感情と向き合おうと、ずっと葛藤を繰り返してきたけれど、実際には悲しみや怒りといった感情と向き合うことは避けてきた。何年もの間、自分が何を感じてるのかを考える時間を持たなかったし、何かを好きになる時も、自分が好きだからではなく、誰かに言われて好きになることが多かった。でもアルバムを作っていく中で、たとえ悲しくなってもOKだし、怒りの気持ちを持ってもOKだし、自分が自分らしく何かを感じることはOKなんだって思えるようになって。ただ心の中で、自分が努力を続けてるのを知るだけでいいし、自分は諦めないというのを知るだけで良くて。それを自分自身のためにやればいいんだというのがやっとわかってきた。もちろん両親のこと、友達のこと、チームのことも考えるけれど、まずは自分のハートの中から生まれるものじゃなきゃダメだから。今の私は自分のハートに向き合うようにしてるし、やるべきことをやってる感じ。
ーだから去年、今年とリリースした曲では等身大の姿を見せて、自分の中のリアルな感情を歌にしているわけですね。
このアルバムは今までで一番素直に自分をさらけ出したものになると思う。私は以前からずっと曲を書いてきたけれど、今は自分を表現するための言葉がどんどん出てきてる感じがする。私がf(x)で活動を始めたのは16歳の時でまだ子供だったけど、今の私は31歳。昔の私はビッグスターになりたいと思ってたし、音楽は大好きだけれど、成功というものは数字によって決まるものだと思い込んでた。SNSのフォロワーの数とか「いいね」の数をどれだけ増やせるのかが重要だったし、自分がどれだけのお金を稼げるのかが重要だった。でもそれは私にとっては不健康なことで、私としては成功や幸せの基準を考え直して、仕事のプロセスや他の人とのつながりをもっと大切したいと思ってた。もっと自分自身に優しくなりたかったし、他の人にも優しくありたかった。というのも、私が作ってるものはアートだから。時々自分が何者なのかがわからなくなることもあったけれど、この2年間、曲を作っていく中で、私は自分がどう感じてるのかだけでなく、自分が感じてることをどう人に伝えたらいいのか、そういう言葉が見えてきたんだと思う。
ーそうやって自分自身を見出していくのに、何かきっかけとなったことはありましたか?
私はずっとクリエイティブだったと思う。学校でも浮いてたし、変わった子で、孤独を感じたことも多かったし、学校ではけっこういじめにも遭った。それでも自分の中のクリエイティブな部分はなくならなかったし、ある意味、私にとっては居心地の良い場所にもなった。そんな時に、近所に住んでた友達と一緒にギターを練習することになって。彼は今では有名なギタリストなんだけど、彼と一緒にギターを弾いて、私は曲を作って、そうやって他の人と何かをクリエイトすることで、エネルギーを感じられるようになった。人は私のことを外交的だと思ってるけど、本当の私は非常に内向的で。音楽があるから私は会話ができるし、話を続けることができてる。私の友達にしても、みんな深い会話ができる人たちで、その会話のほとんどが音楽のことだったりする。そういう会話が私の人生にエネルギーを注いできたんだと思う。
音楽のルーツ、ミン・ヒジンについて
ー昔はどういう音楽にハマっていたのですか?
ポップ・パンクをけっこう聴いてた。ブリンク182の時代だったし、SUM 41もリンキン・パークも好きだった。パラモアからは大きな影響を受けてる。そう言えばこの前、友達がアニメの音楽をかけた時に、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲が出てきて、「ちょっと待って。これ、私の子供の時の音楽よ!」ってなった(笑)。宇多田ヒカルも『KINGDOM HEARTS』で知って、アルバム『ULTRA BLUE』が大好きだった。好きな音楽の幅はけっこう広くて、ポップ・ミュージックやダンス・ミュージックをよく聴くようになったのは、f(x)に加入してから。
ーアンバーはラップが上手いですが、ヒップホップは好きで聴いていました?
私が子供の頃はエミネム、ジェイ・Zの時代で、彼らからは大きな影響を受けてる。自分がラッパーだとは思わないけど、ラップを楽しくやってるし、ヒップホップ・シーンも大好き。私がヒップホップにハマったのは、実はリンキン・パークとジェイ・Zのコラボレーションがきっかけで。そこから時代を遡って、ジェイムズ・ブラウン、マイケル・ジャクソンも聴くようになった。最近ではR&Bをよく聴いてて、SZA、ケラーニが好きで聴いてる。音楽は食べ物と同じで、好きな食べ物はすべて食べたいし、好きな音楽はすべて聴いて楽しみたいから。
ーf(x)はK-POPの中でも個性が豊かで表現力もあり、唯一無二のグループだったと思いますが、アンバーはf(x)の中でどのように自分を表現していきました?
f(x)のコンセプトは、私たちメンバー全員にとってごく自然なものだったと思う。誰もがユニークな存在でありたいと思ってたから。でも本当のことを言うと、私はまだ子供だったから、言われることをただ聞いてた感じ(笑)。それでもプロデューサーやクリエイティブ・ディレクターは私たちの良さを生かしてくれたし、私たちにも歌詞を書かせてくれた。それで、f(x)が最後の2枚のアルバムを出す頃には、私はプロデューサーと仲の良い友達になってて。私はグループの中でラップをやってたけれど、歌を歌うことが好きだったから、プロデューサーと歌に関してもいろいろとトライするようになって。けっこうコラボレーションという感じで作れたし、気持ち良く制作に臨むことができた。私たちの目標は非常に明確で、それは、私たちの持ってる能力のすべてを見せること、私たち一人ひとりを輝いて見せることだった。だから私たちは常に話し合ってたし、助け合ってたし、コリオグラファーもステージ・ディレクターも私たちの意見をちゃんと受け止めてくれてた。
ーf(x)のアートディレクションを担当していたミン・ヒジンとの仕事はどうでした?
彼女はとにかく天才! 当時は彼女としか仕事をしてなかったから、彼女がどれだけ天才なのかは理解できてなかった。彼女が私たちにとっての基準だったし、彼女を信じるしかなかったから。彼女からは「あなたたちにはビジョンがあって、私はそれを実現するためにここにいるから」って言われて。アルバム『NU ABO』のMVの時も、廃墟となったプールで撮影したんだけど、「そこでポーズを取っちゃダメ」って言われて。でもそれは自然体の私たちが良かったらしくて。彼女はいつも毅然としてたし、彼女から「走って」って言われると、私たちは走ってた(笑)。目からうろこが落ちるような経験ばかりだったし、常識とか境界線を超えた感覚があった。私から彼女に質問をしたことはなかったけど、彼女との撮影を通していろいろ学んだと思う。アルバム『Red Light』でも、私たちのメイクは顔の半分だけだったし。でもそういう美学が音楽のムードと絶妙に融合してた。彼女にとっては、どう絵を描いてすべてを形にするのか、それが重要だったと思う。
ー日本のファンは、f(x)こそがK-POPの新しいスタイルを最初に提示したグループだと思っていますよ。
自分たちの手柄にはできないけど(笑)。でもアイデアは素晴らしかったし、私たちが何かを表現したいってなった時は、チームとしてクリエイティブがまとまって、ちゃんと意見を出せてたと思う。しかも形にする時はクオリティにこだわってたし、パフォーマンスにおいても100%ではなく、200%を出せるようにやってたから。
「私たちは常により良い音楽を作り続けたいと思う」
ー2015年に初のソロ・アルバム『Beautiful』をリリースしますが、f(x)時代からソロ活動のアイデアは温めていました?
音楽はずっとやりたかった。グループからソロになって、俳優、ミュージカル、MCの道に進む人もいるけれど、私にとっては音楽だけがずっとやりたいことだった。だからソロで音楽をやりたいってなったのはごく自然なことだったと思う。難しい決断ではなかった。
ーそこから今に至るまでの音楽の旅はどのようなものでした? それは同時に自己発見のプロセスでもあったと思いますが。
最大の変化は、自分自身のために音楽を作るようになったことだと思う。自分勝手に聞こえるかもしれないけれど、これは私にとって必要なことだった。少し話を戻すと、昔はレーベルから期待されてたから、私はその期待に応えようと思って曲を作ってた。私はアーティストなのに、ちょっと後ろ向きだったのかな(笑)。とにかく私は誰か他の人を喜ばせようと思って音楽を作ってた。ただ、当時の私は他のアーティスト、他のレーベルのためにも曲を作ってたから、そのマインドはごく当たり前のことでもあった。でもソロ・アーティストとして活動していくうちに、ゆっくりではあるけれど、私は何が言いたいのだろう?って考えるようになって。デモを作ってる時も、歌詞を書いて、しばらくしてからまた歌詞に取り組むと、何これ?ってなってしまって。それで時間をかけて、自分のメッセージが明確になるまで、納得がいくまで歌詞に取り組むようになった。でもそれって、何よりも自分を喜ばせたいからで(笑)。
「hatemyself」という曲を作った時、この曲の音はピアノがメインで、シンセサイザーが少しとビートのキックとギターだけなんだけど、ミックスを20バージョンも作ってしまって。プロデューサーとエンジニアには悪いことをしたと思ってるけれど、「バージョン20がいいけど、バージョン15の要素も入れてくれない?」って感じで、何度も何度もやり直して。それでも彼らは完璧に理解してくれたし、そのプロセスも楽しいものになった。私もプロデューサーも過去に出した曲を聴いて、あそこはこうした方が良かったとか、ここにこういう音を入れておけば良かったとか、そういうことを言い出したら止まらなくなってしまうタイプで。でもそれって完璧主義者のマインドだから、決して満足することがなくて。だからこそ、私たちは常により良い音楽を作り続けたいと思うし、自分たちとしても常にチャレンジし続けたいと思ってる。
ーMVにも注目しているのですが、例えば「No More Sad Songs」のMVでは、ダンスを大きくフィーチャーしていて、曲自体は決してハッピーなものではないですが、MVには楽しさもあって、曲とMVのバランスが絶妙だと思いました。
曲を作る時に頭の中にビジュアルが浮かぶことが多いから。「No More Sad Songs」のMVでは、私のリアルな姿をビジュアルで見せたいというのがまず最初にあった。あのMVは、メインのシーンをサンタモニカで撮影したんだけど、ディレクターがいきなり「今すぐここでダンスしましょう」って言い出して。ダンサーたちも、「アンバーならできる」って言うから、エッ?!ってなって。めちゃくちゃたくさん人がいる中、自分はダンサーとして自信があるわけでもなく、時間もなかったから、とにかくやるしかないって感じだった(笑)。たくさん人がいる中でダンスをして、みんなから見られてるわけだから、恐ろしかったし、自分の自信をつけるという意味でも大きなチャレンジになったと思う。
ー「Dusk Till Dawn」のMVでもダンスをフィーチャーしていますよね。
「Dusk Till Dawn」のMVは、コリオグラファーやダンサーと長い時間をかけて、お互いが気持ち良くできるところまで追求してみた。それで、実際にはダンスよりも話す時間の方が多くなって、感情のレベルでもみんなと同じ考えを共有して、何をすべきかをたくさん話し合うことになった。演技も多かったので、自分がそのキャラクターになりきるのは良い勉強になった。「Dusk Till Dawn」の脚本は3ヶ月かけて作ったんだけど、何度も書き直して、友達の意見も聞きながら、それも反映して作っていった。今私が作ってる音楽ではリアルな自分を反映したいというのが大きくて。今の私が前よりも良いところにいるというのを、みんなと共有していきたい。今の私は頭もクリアになったし、力強くもなれたから、めちゃくちゃ落ち込んでたことも、悲しいことも、すべてをみんなと共有したいと思ってる。
ー「Amber Liu No More Sad Songs Tour 2024」ですが、すでに1月はアメリカとロンドンを回っていますよね。ツアーの手応えはどうですか?
めちゃくちゃ楽しんでる。このツアーを通して、アーティスト、パフォーマーとしてのアンバー・リウを見せていきたい。あるショーでは、ファンが私を目の前にしてジョークを言って、私も言い返して、ファンも私に言い返してきた。私はそういう関係ができてるのがうれしいし、ファンのことを知る良い機会になってるのもうれしい。日本のファンからは何年も待ってるという話が来てるから、みんなにまた会えるのが楽しみだし、みんなのヴァイブスを感じたい。(日本語で)会いたかったです!
ー「EASIER (feat. Jackson Wang)」の日本語バージョンは披露しますか?
この前、日本語バージョンをサウンドチェックの時に遊びで歌ったんだけど、うちのダンサーが高校時代に大阪にいたらしくて、「発音、いいね!」って言われて、YES!!ってなってたの。今度の日本で初の披露になるかもしれない。
<INFORMATION>
Amber Liu No More Sad Songs Tour 2024
2月20日(火)
東京:ザ・ガーデンホール(恵比寿)
OPEN 18:00 / START 19:00
https://www.livenation.co.jp/amberliu2024
>>記事に戻る
この記事に関連するニュース
-
今市隆二とØMIが語る、三代目 J SOUL BROTHERS『ECHOES of DUALITY』全曲解説
Rolling Stone Japan / 2024年11月25日 17時0分
-
小西康陽が語る65歳の現在地 歌うこと、変わり続けること、驚くほど変わらないこと
Rolling Stone Japan / 2024年11月20日 17時30分
-
SKY-HI、Novel Core、CHANGMOが語る、日韓コラボレーションの狙いと意味
Rolling Stone Japan / 2024年10月31日 12時0分
-
LISA・Tylaが語る、世界を熱狂させるグローバル・アイコンの素顔
Rolling Stone Japan / 2024年10月29日 17時30分
-
レイラ・ハサウェイが語る、黒人文化の誇りと驚異的なボーカル表現の秘密
Rolling Stone Japan / 2024年10月28日 17時30分
ランキング
-
1「タイミー」を橋本環奈"パワハラ疑惑報道"直撃? CMキャラが中居正広に差し替わったと思われたが…
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月25日 9時26分
-
2「順調に“子持ち様”化」有吉弘行、優先エレベーターでの「お前降りろよ」発言が物議
週刊女性PRIME / 2024年11月25日 16時30分
-
3セクシー女優時代に妊娠が発覚、未婚の母に「ファンの皆さんが、息子のパパたちです」決意の先にあったもの
日刊SPA! / 2024年11月25日 15時54分
-
4日本テレビ、裁判終結の松本人志の復帰「何も決まっていない」 吉本側から報告&謝罪も
スポーツ報知 / 2024年11月25日 14時57分
-
5「ほんとズレてる」岡村隆史、不倫発覚の盟友を“中学生レベル”の擁護発言で炎上
週刊女性PRIME / 2024年11月25日 17時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください