TEAM SHACHIが語る 「継続は力なり」、マインドチェンジの背景と変わらぬ愛情
Rolling Stone Japan / 2024年2月26日 18時30分
TEAM SHACHIがプライベートレーベル・ワクワクレコーズを立ち上げてから初となるフルアルバム『笑う門には服着る』をリリースした。ヤマモトショウが手掛けたkawaii曲「おとなりさん」から強烈なラウドチューン「舞頂破」まで非常に幅広いサウンドを網羅。メンバー曰く「やりたいことを全部やってみた」という、枠にとらわれない姿勢で取り組んだ結果、清々しいほどの快作が生まれた。
【撮り下ろし写真を見る】TEAM SHACHI
今回のインタビューにはメンバー全員が登場。新作のことだけでなく、990万回超えの大バズを巻き起こしたTikTokアカウント「待ち合わせに、飽きもと。」の裏側をはじめ、プライベートレーベル設立以降の4人の成長にスポットを当て、じっくりと話を聞いた。そこには以前とは意識の異なるTEAM SHACHIがいた。今の彼女たちはよりポジティブで、より愛情深く、自由で、戦略的だ。
―プライベートレーベルを立ち上げて1年半が経ちました。ひと通り自分たちでリリースなどを経験してみたことで、これまで以上に音楽業界の仕組みが見えるようになっていると思います。何か感じることはありますか。
大黒柚姫 今はアルバム制作のための会議にも参加するようになっていて、「今、こういう楽曲が届いています」とか「どういう楽曲が欲しいですか」とか、今までより深いところまで関わらせていただくことが増えたので、今回のアルバムでよりプライベートレーベルになったなっていう感覚があります。たとえば、「沸き曲」は最初は収録の候補にはなかったんですけど、「こういうのも届いているんですけど、どうですか?」って言われて試しに聴いてみたら、私たちにとっては今すぐ欲しいタイプの曲だったので制作されることになったり。
坂本遥奈 リリースイベントの特典会ひとつとってみても、こういうことやりたいね、ああいうことやりたいねっていう話をすごく近くでできるようになったし、メンバー発信の意見も採用されることもあるので、間接的ではあるけど、直接ファンの方に届けられてる感覚がより強くなってる気がします。それと同時に、自分たちの発言一つひとつに対してしっかりと意識を持たないといけないとも感じます。
―逆に適当なことが言えなくなるという側面もありますね。
坂本 責任感が求められますね。だからこそ、いろんなところにアンテナを張らなきゃいけないっていう意識はそれぞれ持つようになったと思います。ライブ制作に携わるようになってからは、ライブを観に行かせてもらう機会があると「あ、こういう演出もいいな」とかこれまで以上に熱心に観るようになってます。
―楽しいですか。
坂本 楽しいです!
―でも、大変さもありますよね。
咲良菜緒 ハル(坂本)が言ったみたいに、自己プロデュースする機会が増えてるから人にお任せっていうことはできないし、考えたこと、やりたいことの責任すべてを自分たちも背負わなきゃいけないっていうのは難しいけど、でも……それが大人になったってことだよね(笑)。
大黒 なったなった(笑)。
―自分たち発信で話す機会が増えたことで、ほかのメンバーに対して「あ、そんなこと考えてたんだ」みたいに感じることはありますか。
大黒 例えば、今やってるツアーではメンバー同士で話すことが増えて、ハルがメインでセットリストをスタッフさんと会議して決めてくれてるんですけど、そこで決まったことをメンバーに伝えて、そこからまたメンバーの意見をすくい上げてスタッフさんに持っていくっていうパイプ役をしてくれていて。
―そうなんですね。
大黒 あと、私たちは今、満員の武道館でライブをするという目標を掲げているんですけど、どうやったらそこへ近づけるかとかそういったことを移動中のふとした時間とか、スタッフさんがいないところでも自然に話すようになっているので、それはすごくいい変化だと思います。そうやってみんなで話してる中でそれぞれが考えてることをより知ることができているので、今回のツアーとアルバム制作は TEAM SHACHIとしてめちゃめちゃ大きいですね。いろんな部分で大きな一歩になったなって感じます。
―いま武道館の話が出ましたけど、ただそこに立てればいいのではなく、満員にしないとダメなんですね。
大黒 はい。やれたらいい、ではなくて、やっぱり満員の景色が見たいですね。今、コロナ禍を乗り越えてライブハウスツアーを回っているんですけど、ありがたいことにソールドアウトもたくさんいただいていて、それはみんなで乗り越えたからこそだと思うので、その恩返しもしたいですし、タフ民も一緒に全員で武道館に行って満員にするというのがこだわっているポイントなんです。だから満員というのは重要です。
坂本 ステージを用意していただいてパフォーマンスをすること自体は満員じゃなくてもできちゃうのを知ってるからこそ満員でやりたいし、チームしゃちほこ時代に2回武道館でやっていて、きてくださったみなさんにとってはどちらも素敵な思い出で、私たちも一緒なのは大前提なんですけど1回目は超満パン、2回目はそこまで至らなかった経験を両方しているからこそこだわっているところもあります。それに武道館は2階席の一番上まで人が入ってこそだし、それができるのが本物だと自分たちは思ってます。だから、そこはこだわっている部分かもしれない。
秋本帆華 10年前に初めて武道館に立たせていただいたんですけど、 今のシャチならより理想のパフォーマンスができるだろうし、そんな私たちを見てほしいなって思います。当時武道館に来ていただいた人はもちろん、そうでない人にも今のシャチを見てもらいたいです。
―今、TEAM SHACHIの輪を広げるためにいろいろとPR活動をしている最中だと思うんですが、今のところ一番手応えがあるのはTikTokで展開していた「待ち合わせに、飽きもと。」だと思います。TEAM SHACHIのメンバーだと明かさず、普通の待ち合わせ場所でハルさんが全力でダンスをする様子を俯瞰で収めるという。横浜アリーナでのネタばらしまで含めてよくできていました。あれはすごかったですね。
秋本 上手くハマりましたね(笑)。
大黒 嬉しかったです、とっても。
秋本 待ち合わせというフォーマットにたどり着くまで実は10か月ぐらいかかっていて、いろんな試行錯誤をした末の「待ち合わせに、飽きもと。」なんです。
@machiawase_akimoto まってそんなのあり??www#TEAMSHACHI #待ち合わせは横アリで ♬ 沸き曲 - TEAM SHACHI
―そうだったんですね!
秋本 シャチの楽しさが伝わるような、「私たちはこんなふうに楽しく踊ってるんだよ」っていう、一番私たちらしいバズり方ができました。
―じゃあ、他にもアカウントを作っていろいろ試したりしてたんですか。
咲良 そうなんです。
―それをひっそりと。
咲良 そうです。
坂本 アイドルのかわいさを全面に出したものを載せたりもしてたんですけど、最終的には顔を出さずに遠くのほうで踊ってるっていう(笑)。
咲良菜緒(Photo by Rika Tomomatsu)
坂本遥奈(Photo by Rika Tomomatsu)
「待ち合わせに、飽きもと。」誕生のきっかけ
―どうやって「待ち合わせに、飽きもと。」の企画までたどり着いたんですか。
坂本 TEAM SHACHIという存在をとにかくたくさんの方に知ってほしいというところからはじまって、アイドルのことを知らない方とかアイドルって聞いただけで「いや、僕は、私はいいわ」っていう方もたくさんいる中で、一般の方にまで自分たちの存在を浸透させるためには名前を隠してTikTokをやってみるのがいいんじゃないかとチーム内で話をしたんです。そんなときにSNSに強い方々とお話をする機会があって、そこからTikTokでTEAM SHACHIをバズらせようというプロジェクトを立ち上げて、絶対に100万回までいくコンテンツにしようと決めて始めました。
咲良 ほんと、色々やったよね。メンバーそれぞれの個性に合わせていろんな撮影をして、ソロだったり4人の映像をつくったりして。ハルはダンス動画で、帆華はお笑い系のを撮ってたよね、ドッキリみたいな。
大黒 そう、それぞれが好きなものをいろいろ試して。
咲良 その結果……。
秋本 顔を出さない<待ち合わせ>(笑)。
大黒 そこでも最初はTikTokでバズってる曲を使ってたんですけど、ある時から私たちの「沸き曲」を使うようになって。そうしたら、シャチのファンじゃない方もちょこちょこTikTokで踊ってくださるようになったりしてすごく広がりが出てきました。やっぱり、最終的には私たちのファンになってライブに来てもらいたいし、曲もいっぱい広めたいので。だから、これからもハルの鉄メンタルに付いていきます(笑)。
咲良 ハル、やばいんですよ。
―あれはヤバいですね、本当に。
秋本 ホントにすごいよ。なかなかできない。
咲良 ハルはいつもダンス面で引っ張ってくれるんですけど、ハルって元気いっぱいに踊るので、今回それが活かされたなって。上手いダンスにもいろいろあるけど、ハルの場合は「はっちゃけダンス」だから特に映えるんですよ(笑)。だから、今回の企画には適役すぎました。
大黒 こないだの撮影でも、バストアップで完結する振り付けのダンスをすることになったんですけど、「これは振りがちっちゃいからダメ!」っていうハル却下があって(笑)、「それだったらこっちのほうがいい」って。そうやって試行錯誤しながらいろいろできてるのはすごく楽しいし、この楽しい感じがTikTokを通じてシャチのことを知らない方にも届いたらいいなって思います。
―「ソーラン節」がバズったときの興奮なんて半端なかったんじゃないですか。
4人 あはは!
大黒 半端なかったよね! マネージャーさんからも定期的に「◯◯回も回ってます!」って報告がきたり(笑)。
秋本 私の周りでも反響がすごかった。あのタイミングで「え、これってシャチ?」って友達から連絡がたくさん来ました。
大黒 そのときはまだTEAM SHACHIって正体を明かしてなかったから人に話せないもどかしさがあって。でも最近は、撮影してると「待ち合わせに、飽きもと。さんですか?」って声をかけてくださる方とか、「いるかな?」と思って歩いてくださる方が増えてるんですよ(笑)。
坂本 「探したけどいなかった」とかね(笑)。
大黒 そういうのもすごく嬉しくて。
坂本 名古屋の金山駅で撮影したときにも声をかけてくださった方がいて、「名古屋の方ですか?」って聞いたら、「今日京都から
来て、名古屋だからいるかなと思ってたんです」って。
@machiawase_akimoto 最初から揃ってる状態でやってwww#名古屋駅 #待ち合わせ #ヒカキンボイス ♬ оригинальный звук - здесь пахнет икари..
―それはすごい。これをきっかけに、SNSの使い方についてより深く考えるようになっていますか。
大黒 なりましたね。
秋本 「待ち合わせ」以外にも、TikTokや他のSNSでのTEAM SHACHIとしての投稿数も増えてます。新曲の「おとなりさん」のかわいい振り付けはTikTokでいろんな方に踊ってもらいたいっていう思いを込めていたりするし、そういう部分でもSNSへの意識はちょっと変わりましたね。
大黒 リールとTikTokとYouTubeショートでそれぞれ伸び方が違うっていうお話を伺って、「とりあえず、シャチはYouTubeショートをやったほうがいいよ」みたいにアドバイスをもらったり。あとは、いろんな方向から攻めてみたり、とにかく数を打ってみたり、逆にちょっと減らしてみたり、いろいろ試行錯誤しているところです。
秋本帆華(Photo by Rika Tomomatsu)
大黒柚姫(Photo by Rika Tomomatsu)
―減らすというのもあるんですね。
大黒 ポンポン上げすぎると埋もれちゃうみたいで。新しい動画に再生数を取られて伸びなくなっちゃうんですよね。例えば「おとなりさん」のダンス動画も、バストアップで撮るよりも引きで元気に踊ったほうがシャチの場合は伸びるんじゃないかとか、どこで公開するかとか、そういうこともメンバー内でも話し合ってます。
―「待ち合わせ」きっかけでシャチのライブに来た人はいるんですか。
坂本 まさにで、ただバズるだけじゃなくて、ライブに来てもらうことが最終目標だから、それが今年の目標の一つです。いろいろ試していきます!
これからのシャチの可能性を探る『笑う門には服着る』
―ニューアルバム『笑う門には服着る』もそのきっかけのひとつになると思うんですが、こんなにバラエティ豊かな作品になるとは驚きでした。
咲良 ホントにバラバラですよね。
秋本 ひとつも曲がカブってないねえ。
咲良 最初は「プライベートレーベルになったことで楽曲提供とかしてくれるかな?」とか不安だったんですよ。「ワーナーさんだからしてくれたんじゃないかな」とか。でも、ワーナー時代にお世話になった方々も楽曲提供してくれて、本当に嬉しかったです。
―なんでこういう作品の方向性になったんですか。
秋本 やりたいことを全部やってみたら……こうなりました(笑)。
大黒 「こういう方々につくっていただくのはどうか」とか他にもいろんな案があったんですけど、最終的にこちらになりましたね。
―よくこちらになりましたね。
坂本 本当にすごいと思います。
咲良 「シャチのイメージを決めない」っていうことがやりたくて。シャチはライブがけっこう激しいし、改名してからはメッセージ性の強い曲を多く出してたのでロック的な印象が強かったと思うんですけど、プライベートレーベルになってからは自分たちのやりたいことがなんでもできるから、「なんでも歌っちゃえ!」みたいな。「とりあえずやってみようぜ」っていう。何が今のシャチに合うのか、ファンの方に何をかわいいって思ってもらえるのか、実験みたいな感覚もありつつ、これからのシャチの可能性を探るために今回みたいな楽曲でチャレンジさせてもらったら上手くいっちゃった(笑)。
―でも、下手したら「何がやりたいのかわからない」と言われる恐れもあるし、けっこう紙一重だと思うんですよ。
坂本 それで言うと、チームしゃちほこ時代は”アゲ”に特化したハッピー要素もありつつ、自分たちのことを歌ってる曲が多くて、改名後はラウドでポップでブラスっていうゴリゴリな楽曲でシャチの音をつくろうっていう時期で、それを合体させたのが今、みたいな。だから最近、デビュー1、2年目の頃に私たちのことを応援してくれてたような方が久しぶりにライブに来てくれたりしていて。
大黒 割と多いよね。
坂本 「最近、シャチが楽しいって聞いて」みたいな(笑)。このアルバムもそんな感じがするなって。改名後のゴリゴリな曲を歌ってなかったら歌えなかった曲もあれば、昔の何もわからずやっていた時代にあったような曲もあって。例えば、「愛のニルバーナ」もこれまでの歴史があるからつくれた曲だと思うし、そういう曲が詰まったアルバムだからみんなに届けられてるんだと思いますね。
大黒 「NEO首都移転計画」は私たちのメジャーデビューシングル「首都移転計画」の現代バージョンみたいな感じで、当時と同じくSEAMOさんにつくっていただいたんですけど、 今ハルが言ってくれたみたいに、「首都移転計画」があったからこそ「NEO首都移転計画」という曲ができたし、この曲もめちゃめちゃ盛り上がるし、みなさんに楽しんでいただけてるんですよ。今回のアルバムはこれまでの歴史を丸ごと受け止めた上でさらなる夢に向かうという決意表明にもなっているので、自分でも本当にすごいアルバムになったと思います。
坂本 曲順もいいよね。
―そう、曲順を決めるのは大変だっただろうなと思いました。
秋本 無理。難しすぎます(笑)。何が正解かわからない。
咲良 レコーディングしてるときから「これをどうまとめるの?」って思ってました。
大黒 実際、「どうしよう?」って言ってました(笑)。でも、「Voyage」で旅が始まって、最後に「だれかのために生きる今日を」で愛を歌うっていう。いい順番だよね。曲順どおりに1曲目から通して聴いてもらいたいです。
―僕は「だれかのために生きる今日を」が好きです。
咲良 この曲、人気高いんですよ。
秋本 こんなに温かい空気感を作れる曲がこれまでそんなになかったので、今やってるツアーでも披露しているんですけど、「これは新しいシャチだな」って思ってます。
―ボーカルの生々しさがよくて、そのせいなのか4人の今を感じられるんですよね。
大黒 レコーディングの前に、この曲をつくってくださったSundae May Clubの浦さんとお話をさせていただいて、ファンの方へのメッセージを強く表現すると決めて歌ったので、そういう想いも届いてるから好きって言ってもらえてるのかなって思います。
咲良 歌詞カードを見たらより伝わりそう。
―先ほど話題に上がった「愛のニルバーナ」では、昨年行われた「SHACHI SUMMER2023 名古屋城~叫べ!夢と希望の銃弾を放つ夜~」で飛び出た大黒さんの迷言「一福去ってまた一福」が引用されていますね。
大黒 おお! はじめて触れられた!
―まず、この言葉の説明をしてもらえますか。
大黒 えっとですね、去年名古屋城で行われた「シャチサマ」での話なんですけど、これは声出しが解禁されてから初の野外ワンマンライブだったのですごく嬉しかったんですね。TEAM SHACHIに改名してからすぐコロナ禍になっちゃって、皆さんの声をあまり聞けなかったり、会えない期間も続いて。でも、「それを乗り越えたからこそ今があるよね」という気持ちを表現するつもりで<一福去ってまた一福>というちょっとよくわかんない造語を作ってしまいました。
―今、キレイな感じでまとめましたけど、そのときのMCではしっかり「一難去ってまた一難」と誤用していましたよね(笑)。
大黒 そうなんです! 1やらかし(笑)。実は、「一難去ってまた一難」っていう言葉を私はいい意味で使ったつもりだったんですけど、なんか気まずい空気が流れてしまって、「あ、これはヤバい……」と思って一生懸命訂正したんですけど……。
咲良 なんで「シャチサマ」が「一難」になっちゃったのー?ってみんな思ってた(笑)。でも、あそこから挽回した瞬間はすごかったよ。
大黒 そうだよね。でも、あんな一気に人をざわつかせられるの、私だけじゃない?
咲良 悪気がないから余計にざわついたんだよね(笑)。
―それがこうして曲になるという。
大黒 デビュー当時から見てくださっている浅野くんだからこそ書けるような素敵な曲をいただきました。
―言い間違いもしてみるもんですね。
大黒 そこから歌詞が生まれてますもん、浅野くんの力だけど(笑)。
Photo by Rika Tomomatsu
「本当に幸せな瞬間」
―4人はここまで着実にキャリアを積み重ねていて、今回これだけバラエティに富んだ作品をつくったわけですが、今、4人それぞれがグッと来る歌詞ってどういうタイプのものなんですか。大人になった分、何年も前とは感覚がけっこう違うと思うんですが。
咲良 うわ、むっず! いっぱいあるな。今回のアルバムの歌詞はめっちゃグッときちゃってる。
秋本・大黒・坂本 わかる~!
咲良 恥ずかしいから普段はこんなこと言わないけど。
―例えば?
坂本 「舞頂破」のラスサビ。<変わらないでずっとここにいるから 苦しい事も消し飛ばすよ>。私たちは変わらずにずっとここにいるよ、ということを目の前にいるタフ民に言ってるときに、「いや、マジでこれ……!」って思っちゃう。
咲良 実際に思ってるからね。
坂本 「舞頂破」はプライベートレーベルを発足してから最初の曲だから思い入れが強いかもしれないです。
秋本 私は「愛のニルバーナ」の<シャチっていったらライブだね ライブといったらシャチだよね だよね だよね だよね~>って自分たちで言ってるのがなんかすごくグッときちゃうんですよ。私たちが一番やりたいことはライブで、ファンのみんなと一緒に作るライブが本当にやりたくて、それに対して<だよね だよね だよね~>ってファンの人も一緒に言ってくださるっていう。バカっぽいけど変に明るいのが逆にエモくなっちゃう。
―その感覚はわかります。
大黒 私は「Voyage」の<虹をかけてくれた「あなた」となら、さあ>ってところなんですけど、私もちょっとアイドルオタクをやらせていただいてて……。
―「やらせていただいてて」(笑)。
咲良 なんか職業みたい(笑)。
大黒 (笑)ファンの立場だと自分は大勢いる中の1人だと思ってしまうんですけど、ステージに立つ側からすると1人1人のことが本当に大切だし、そんなふうには思ってほしくなくて。だから、この歌詞は「みんな」じゃなくて「あなた」というところがすごく素敵だなって思ってけっこうグッときます。
―ドルオタだからこその視点ですね。では、菜緒さんは?
咲良 歌詞というか、ライブ中の景色も含めた「この瞬間!」みたいなことを言うと、 このアルバムには入ってないですけど、「アサガオ」っていう松隈(ケンタ)さんにつくってもらった曲で柚姫が落ちサビを歌うとき、私、柚姫の後ろにいるんですけど、そこからだとメンバーとお客さん全員が見えてマジでエモい! みんなで声を出せる曲だし、サビではみんなで手を広げて踊るから解放感もすごくてライブハウスで映えるから、めっちゃロックスターみたいで超カッコいいのね。
大黒 え、嬉しい!
咲良 柚姫もカッコいいし、柚姫のそばにいるメンバーも「あ、いいな」って。まあ、私もメンバーなんだけど!(笑)
―あはは!
咲良 とにかく、ステージにいる3人とそれを見て手を振ってるタフ民を見ると、「あ、これは本当に幸せな瞬間だな」って感じますね。今回のツアーでもやってるんですけど、毎公演それは思いますね。一番多幸感があるというか、すごくいい気持ちになれる瞬間だから、すっごい好きです。
―菜緒さんは特等席で見てるんですね。
咲良 そう、頭にカメラつけたいもん。みんなに見てほしい。
大黒 確かに、タフ民は見れないもんね。
咲良 みんなすっごいいい顔してるのがわかるし、すっごい幸せな空間なので、「これが続けばいいのに~」って思ってます。
―メンバー全員、頭に小型カメラをつけたりして。
咲良 見せてあげたーい!
秋本 それ、アリです~。
坂本 メンバーがアイコンタクトしてるのもわかるし。
大黒 めっちゃ面白そうだね!
―カメラが付いてても見た目的に成立しそうな衣装にして。
秋本 シャチの推しメンカメラは推しメンを見るんじゃなくて、推しメンからの景色を見るっていうことでアリじゃない?
咲良・大黒・坂本 アリアリアリ!
―これだけ様々なタイプの曲をやっているからこそお聞きしたいんですけど、 今のTEAM SHACHIができない曲ってあるんですか。
咲良 最初の頃は「アゲ曲以外の曲って歌えるのかな?」とか思ってたし、今回のレコーディングも「これ、歌えるかな?」って思ってばっかりだったんですよ。
大黒 難しかった。
咲良 「Voyage」も「おとなりさん」も。松隈さんの曲(「勲章」)も松隈さんディレクションで歌ったんですけど……。
秋本 レコーディングする前までは自分が歌ってるのが想像できなくて。だけど、松隈さん節というものを教えていただいて、「音程とかを気にしないで魂で歌ってほしい、雑に歌ってほしい」ということで、雑に歌う代わりに魂を届けるという歌い方を初めてさせていただきました。それが私の中では一番の挑戦だったんですけど、それができたからこそ、今はなんでも挑戦してみたいって思うようになれました。
―今のTEAM SHACHIならなんでもやれちゃうんですね。
咲良 そういう意味でも自信がついたアルバムになってます。「江戸女」の歌詞も<江戸の女に生まれたかった>で「そんなこと言っていいのかな?」って思ったし、「<結婚したい>なんて言っていいのかな?」みたいな。だって、年齢的にリアルだから(笑)。
―あはは!
咲良 でも、自分たちがそういう曲に挑戦して自信がついたのは、タフ民がライブで楽しんでくれたり、「この曲好き」って言ってくれるからだし、そのお陰で自分たちの自信につながってるから、最終的に決めるのはタフ民というか。今回のツアーでもタフ民のリアクションがいいからすごく手応えを感じるし、どの曲もシャチらしくなれたのかなって。
―タフ民がシャチらしくしてくれたという。
咲良 うん、認めてもらえたって感じです。
―今やってるツアーではすでに新作からの曲をたくさん披露しているんですよね。
坂本 本当は12月ぐらいにアルバムをリリースするパターンも考えていたんですけど、最終的に2月にリリースすることになりました。
秋本 だから、「ツアーに来たら新曲が聴ける」っていう方向に見せ方を変えました。
―先にライブで新曲を披露してからアルバムが出るという 流れがバンドっぽくて面白いと思いました。普通は先にアルバムが出て、ツアーが始まるまでにそれを聴き込んでくるっていう感じじゃないですか。
大黒 そうですね。今回はツアー初日にみんなが聴いたことのない新曲を何曲かセトリに入れることになって私たちもすごく新鮮だったし、タフ民も曲がよくわからないなりにコールを入れてくれて。新曲に対する先入観がない分、一緒に新曲をつくれてる感覚があります。たとえば、「縁爛」はお祭りの曲なんですけどこんなに盛り上がる曲になるとは思ってなかったし、そういう意味ではみんなとつくり上げたアルバムになったと思います。
―先にライブで観ていることで、タフ民的には作品の受け取り方が違ってきますよね。
咲良 全然違うと思う。
坂本 しょっちゅう来てくれてる人なら振りはもう頭に入ってるだろうし。
―先ほど武道館の話が出ましたけど、ここにたどり着くために今後どんなことが必要になってくると思いますか。
秋本 シャチの輪を広げることが一番大切ですね。ライト層の方たちにシャチのことを知ってもらって、そこから今度は好きになってもらわなくちゃいけないので、何をするのが正解なのかは誰もわからないとは思うんですけど、シャチらしく楽しいことをいっぱいしていけばきっとライブに来てくださると思うので、いろいろと仕掛けたいです。
―TikTokであれだけの結果を残した今、その言葉はめちゃめちゃ説得力がありますね。
秋本 プライベートレーベルになってからより自由なタイミングで曲を出せるようになったんですよね。たとえば、「おとなりさん」はFRUITS ZIPPERさんと高嶺のなでしこさんとの3マンのタイミングでリリースしたし、自分たちのレーベルだからこそできる細かい動きもあると思うので、いろいろと仕掛けていきたいです。
Photo by Rika Tomomatsu
<INFORMATION>
『笑う門には服着る』
TEAM SHACHI
ワクワクレコーズ
発売中
https://ssm.lnk.to/WARAUKADONIHAFUKUKITARU
1. Voyage
2. おとなりさん
3. 愛のニルバーナ
4. 沸き曲
5. FANTASTIC MIRAI
6. 舞頂破
7. 勲章
8. NEO首都移転計画
9. 江戸女
10. 縁爛
11. だれかのために生きる今日を
TEAM SHACHI ライブハウスツアー2023-2024 WINTER ~ライブスペクタクル!命短し、沸かせよ乙女~
3月31日(日)兵庫・神戸Harbor Studio(※振替公演)
[第1部]OPEN 14:15 / START 15:00
[第2部]OPEN 17:45 / START 18:30
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