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ブルース・ディッキンソンが語る「マンドレイク計画」の真実、アイアン・メイデン日本公演の展望

Rolling Stone Japan / 2024年3月1日 17時30分

Photo by John McMurtrie

ブルース・ディッキンソン(Bruce Dickinson)がソロ・アルバム『The Mandrake Project』を完成させた。

アイアン・メイデンのヴォーカリストとして世界のヘヴィ・メタル界に君臨する彼だが、バンドに収まりきらない音楽性をソロ・キャリアで解き放ってきた。通算7作目、9年ぶりとなる本作ではハード&ヘヴィさを貫きながら幅の広いサウンド、そしてミュージック・ビデオやコミックを交えた壮大な世界観を提示。秘められた”マンドレイク計画”の真実へと導いていく。

今年9月にはアイアン・メイデンの日本公演も決定したブルース。1958年生まれの65歳となったが、ステージ狭しと駆け巡るライヴ・パフォーマンスそのままのアドレナリンが溢れるトークで『The Mandrake Project』を語ってくれた。



―アイアン・メイデンのアルバム『Senjutsu』(2021年)に伴うワールド・ツアーがまだ続いていますが、このタイミングでソロ・アルバムを発表することにしたのは何故ですか?

ブルース:好んでこの時期にアルバムを出すことにしたわけではなかったんだ。2014年には新曲を書き始めていた。でもその後、喉頭癌になったり、メイデンのツアーで3年をかけて世界を回って、ようやくスケジュールが空くと思ったらコロナ禍で作業がストップしたり……ようやく完成させることが出来たと思ったら、アナログ盤のプレスに時間がかかることが判って、ようやく(2024年の)3月にリリースすることになったんだ。アルバムの出来映えには自信があったから、世界中のみんなに聴いてもらえないのはフラストレーションが溜まったけど、待ったかいがあったよ。

―アルバムの曲を書いてからそれだけ時間が経過すると「ああすれば良かった」など客観視出来るのではないですか?

ブルース:幸運なことに、そう考えることはないね。アルバム最後の「Sonata (Immortal Beloved)」は25年前に書き始めた曲だった。「Shadow Of The Gods」は20年前ぐらいかな。大半は2013年から2014年に書いて、ロイと一緒にデモを録ったけど、未完成のままだった。ドラム・マシンを使って、ヴォーカルもラフなスケッチみたいなものだったんだ。最も新しいのは「Afterglow Of Ragnarok」「Many Doors To Hell」で、1年半ぐらい前に書いた曲だった。その2曲をスタート地点として、過去のデモを聴き返して、ひとつの流れのあるアルバムの形にしていったんだ。すごく70年代的なアルバムになったと思う。



―『The Mandrake Project』のmandrake(曼陀羅華=チョウセンアサガオ)は幻覚作用があることで、ディープ・パープルの「Mandrake Root」(1968年)など60〜70年代のサイケデリック・カルチャーで頻繁に登場しましたが、最近はあまり聞かないですね。

ブルース:実際にはマンドレイクの伝説は聖書にまで遡るんだけどね。ラケルという女が姉と同じ男を好きになって、マンドレイクを使って男を誘惑するんだ(創世記30章。”恋なすび”という訳語が当てられている)。史上初のデートレイプ・ドラッグだよ。それ以降も薬草として使われてきたけど、過剰接収すると死に至ることもあるから、気を付けなければならないんだ。それにマンドレイクは絞首台の下に生えるという言い伝えもある。罪人が絞首刑になると、50%が反射反応で射精するというんだ。それで絞首台の下に生えたマンドレイクの根を地中から引き抜くと、人間そっくりだったといわれている。引き抜かれたときにマンドレイクが発する呻き声を人間が聞くと死ぬから、犬の尻尾に結わえ付けて抜いていたそうだよ。それで犬は死ぬけど、我々はマンドレイクを手に入れることが出来るんだ。


『The Mandrake Project』CD版デラックス・エディションの展開写真

―『The Mandrake Project』をアルバム・タイトルにしたのは、そんな言い伝えに基づくものでしょうか?

ブルース:いや、そういう訳ではないんだけどね。アルバムのタイトルは最後に決めたんだ。アルバムが完成した時点で、コミックの企画も進行していたけど、やはりタイトルがなかった。両方に共通するテーマが必要となって、政府の謎めいたプロジェクトの名前としてThe Mandrake Projectが浮かんだんだ。アルバム・ジャケットもエンブレムのような、ミステリアスなアートワークにしたかった。Photoshopは使いたくなかったんだ。俺はガキの頃、ブラック・サバスの『Black Sabbath』(1970年)のジャケットを何時間も、何日も凝視して暮らしてきた。これは一体何だろう?……ってね。それと同じ感情を与えたいんだ。『The Mandrake Project』とは何か、考えてもらいたい。

『The Mandrake Project』の制作背景

―アルバムの曲はハード&ヘヴィで、メイデンの「If Eternity Should Fail」の兄弟曲といえる「Eternity Has Failed」もありますが、快調なリズムのスパゲッティ・ウェスタン・メタル「Resurrection Man」やヘヴィであってもタイプの異なる「Mistress Of Mercy」なども収録されています。メイデンの音楽性から意識的に距離を置きましたか?

ブルース:まあ、ソロ・アルバムでバンドと同じことをやっても仕方ないだろ? レコード店に行けばメイデンのアルバムは普通に売っているわけだしさ。もちろん歌っているのが同じ人間だから、似たところもあるだろうけど、異なったスタイルでも歌っているし、いろんなリスナーに楽しんでもらえるよ。

―アイアン・メイデンと最も異なっているのはどんなあたりでしょうか?

ブルース:「Sonata (Immortal Beloved)」だろうね。まったく新しいアプローチではないけど、メイデンに入る前にやっていたサムソンの「Communion」(1981年)や「Walking Out On You」(1980年)でやっていたことに通じる部分がある。



―あなたのソロ・キャリアの相棒であるギタリストのロイ・Zと今回も共作していますが、2014年に『The Mandrake Project』プロジェクトが始まってからずっと共同作業をしてきたのですか?

ブルース:いや、そういう訳ではないよ。ロイも俺もいろいろ別のことをしているし、顔を会わすのは俺がロスアンゼルスにいるときぐらいだ。メールでは連絡を取り合っているし、アイディアを送り合ったりするけど、ずっと作業しているわけではない。だからこそ新鮮な関係を保てるんだ。

―アルバムと連動するコミックについて教えて下さい。アイアン・メイデンの歌詞はしばしば具体的なストーリーがありますが、『The Mandrake Project』の歌詞は物語に基づくものではなく、コミック化するのがより難しいのでは?

ブルース:アルバムの歌詞をそのままコミックにしようとはしていないよ。アルバムとコミックは、森の中でそれぞれ独立して生えている木のようなものだ。根っこの部分は同じだけど、異なったものなんだ。どちらか片方でも楽しめるし、両方だとさらに魅力を増す。スーパーヒーローは登場しないし、音楽とも直接は関係ない。少しばかり歌詞の断片を忍び込ませたりしているけどね。アラン・ムーアの『ウォッチメン』でジョン・レノンがカメオ出演するような感じかな。ただ、『The Mandrake Project』の世界観の方がダークだよ。


「権力、虐待、アイデンティティをめぐる闘争を描いたダークでアダルトな物語」である『The Mandrake Project』。ブルース・ディッキンソンによって創造されたコミックシリーズでは、Tony Leeが脚本、Staz Johnsonがイラストを担当し、12の四半期のエピソードが3つの年次グラフィックノベルにまとめられる(画像は公式サイトより)

―「Afterglow Of Ragnarok」のミュージック・ビデオは「The Mandrake Projectとは何だ……?」と終わりますが、続きはどうなるのでしょうか?

ブルース:まさにそれがコミックの第1回に繋がっていくんだよ。コミックは全12回、毎回34ページで、これから続刊していく。4回ズルをまとめた単行本も出す。3年がかりのプロジェクトだ。俺が考えたラフなあらすじとキャラクター設定を元に、シナリオはトニー・リー、作画はスタズ・ジョンソンが手がけている。さまざまな謎がどのように解き明かされていくか、楽しみにして欲しい。



ソロとアイアン・メイデン、ステージの展望

―2024年4月から7月までソロとしてのツアーを北米・南米・イギリス・ヨーロッパで行うことが発表されていますが、どのような構成になるでしょうか?

ブルース:1972年へと回帰するんだ。俺が学生の頃、ロックのライヴに行くようになった原点に戻っていく。派手なライティングもパイロテクニックもなく、音楽だけでみんなの心を揺さぶるんだ。スクリーンに映像を映すかもしれないけど、あくまで主役は音楽だ。クリック・トラックに合わせてプレイすることもない。ツアー・バンドは凄腕ミュージシャン揃いだし、自由なパフォーマンスにするつもりだ。『The Mandrake Project』からは4曲ぐらいプレイするつもりだよ。ソロ・ツアーはもう20年ぶりだし、『Accident Of Birth』(1997年)や『The Chemical Wedding』(1998年)の曲を聴きたいファンもいると思うしね。アイアン・メイデンのツアーもソロの2カ月後にやるから、メイデンの曲を聴きたいファンはそちらで聴くことが出来るよ。

―『The Mandrake Project』コミックの連載中、2024年9月にはアイアン・メイデンの日本公演が行われますが、どんなショーを期待出来るでしょうか?

ブルース:『Senjutsu』と『Somewhere In Time』(1986年)からの新旧のナンバーを中心とした”The Future Past Tour”で日本に行くんだ。新作の曲をプレイするのは初めてだし、『Somewhere In Time』からの40年近くぶりに日本でやるナンバーもある。最高にエキサイティングなショーになるよ。その前のニュージーランド公演から5日間空くから、早めに日本入りするつもりなんだ。外国でリラックス出来る機会は珍しいし、うちの奥さんが来るのは初めてだから、プライベートな観光もするつもりだよ。城も訪れたいし、広島にも行くつもりだ。寿司も食べに行きたい。




―1986年といえばジューダス・プリーストの『Turbo』、クイーンズライクの『Rage For Order』、レイヴンの『The Pack Is Back』など、メタルとテクノロジーのクロスオーバーが盛んな1年でしたが、『Somewhere In Time』を作ったときの心境はどんなものでしたか?

ブルース:その時期に限らず、ロック・バンドは常にテクノロジーを取り入れてきたんだ。トランジスター・アンプでチューブ・アンプの音を再現したり、サンプリングやシーケンサーを取り入れたりね。『Somewhere In Time』の頃はエイドリアン(・スミス:Gt)がギター・シンセを弾いたり、判りやすいフューチャリズムがあった。目新しさもあって、「凄い、ギターでハモンド・オルガンの音が出る!」とか喜んでいたよ。ただのギミックに終始したバンドもいたけど、ラッシュのタウラス・ペダルの使い方は素晴らしかった。ニュー・アルバムの「Sonata (Immortal Beloved)」では80年代ですらチープに聞こえるドラム・マシンを使っている。決して人間のプレイを模倣するのではなく、機械っぽい効果を得ようとしたんだ。これからもさまざまなやり方でテクノロジーと付き合っていきたいね。



ブルース・ディッキンソン
『The Mandrake Project』
再生・購入:https://brucedickinson.lnk.to/themandrakeprojectPR


アイアン・メイデン来日公演
THE FUTURE PAST WORLD TOUR 2024
2024年9月22日(日)愛知・スカイホール豊田
2024年9月24日(火)大阪城ホール
2024年9月26日(木)東京ガーデンシアター ※SOLD OUT
2024年9月28日(土)神奈川・ぴあアリーナMM ※SOLD OUT!
2024年9月28日(土)神奈川・ぴあアリーナMM ※追加公演
詳細:https://www.creativeman.co.jp/artist/2024/09ironmaiden/

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