グリフィンが語る、メロディック・ダンスミュージックの真髄と新しい時代の幕開け
Rolling Stone Japan / 2024年5月8日 17時45分
煌びやかなメロディ、高揚感溢れるダイナミックなエレクトロニックビート。まるでジェットコースターに乗っているかのように有無を言わせずリスナーを翻弄し、恍惚の彼方へと誘うグリフィン(Gryffin)。日本のルーツを持った美メロEDM DJ/プロデューサーの快進撃が止まらない。コーチェラ、ULTRA、レディングなどのフェスは勿論のこと、北米の大規模会場を単独でソールドアウト。着実にファンを倍増している。昨年のフジロックに続き、6月には単独来日公演も決定し、更に通算3作目となるニューアルバム『Pulse』も、ほぼ完成したという彼にZoomで話を聞いた。が、この時点では、まだ来日公演は未発表、アルバムの詳細も明らかにはできないという状態。とはいえ上昇気流に乗っている彼が、過去を振り返りつつツアーやニューアルバムにかける意気込みや、今どこへ向かっているのかを教えてくれた。
ー先頃アーミン・ヴァン・ブーレンとコラボしたシングル「What Took You So Long」がリリースされましたが、以前からトランスミュージックに興味があったのですか?
グリフィン:アーミン・ヴァン・ブーレンのショーを初めて観たのは確か2009年。その頃からずっと彼のファンだし、トランスミュージックに夢中だったよ。でも自分の楽曲にトランス系のサウンドを取り入れたことはなくて……でもインスパイアは受けてきた。凄くメロディアスでエモーショナルで、その二つだよね、僕がトランス系の音楽に惹かれる理由は。今回初めてトランス系のナンバーを作ったけれど、彼のようなレジェンドと一緒に仕事ができて、とてもクールだった。僕自身のキャリアのハイライトのひとつじゃないかな。
ートランスミュージックは以前からヨーロッパで絶大な人気を誇っていますが、最近のアメリカでも復活モードにありますか?
グリフィン:うん、アーミンのようなアーティストは、アメリカでもずっと人気があるし、よく知られている。トランスミュージック全般に関しても、人気が高まっているのは確かだと思う。ヨーロッパ産のサウンドが、最近再びアメリカで人気なんだ。広がりを見せている。アメリカではダンスミュージックを取り巻く状況が良好で、特にエレクトロニックミュージックに関しては、サブジャンルに対するニーズが高まっている。今やサブジャンルが最前線に浮上したっていう感じかな。
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ーメロディとエモーションを大切にしているのは、グリフィンの音楽を聴くととてもよく分かります。自身のサウンドの特徴を、どんなふうに説明しますか? 難しいのは承知の上での質問ですが(笑)。
グリフィン:確かに難しい質問だよ(笑)。いろんな音楽を作りたいと思っているんだけれど、でもあえて言うならメロディック・ダンスミュージックかな。もっと正確に言うならメロディック・エモーショナル・ダンスミュージックだね(笑)。でもクリエイターとして限界を設けたり、制約を課したくないと思っている。ジャンルに縛られたくないし、ニューアルバムにも、そんな僕の現時点の気持ちが反映されている。
ーそのニューアルバムですが、『Pulse』と題した理由を教えてもらえますか?
グリフィン:『Pulse』と付けたのは、最高にダンサブルでエネルギーに溢れたアルバムだから。このタイトルがピッタリだと思ったんだ。”パルス”という言葉の響きもフィーリングも大好きだし、エネルギーを伝えるという意味があったり、鼓動を打つリズム、サウンドウェーブという意味でも使われる。それこそ正に僕が作っている音楽そのものを指しているんじゃないかと思うんだ。凄くハイエナジーで、どんどん感情が湧き出す感じ。それがアルバムのコンセプトと言えるかな。
ーアップリフティングというのも特徴ですよね。
グリフィン:常にアップリフティングというわけでないけれど、ダークなメロディとかもあるからね。でも僕の音楽には、必ず没入感があると思うんだ。スタイル云々ではなく、そこへと導いてくれるのがメロディであり、重要な役目を果たしている。聴いてきた音楽も、ダンスミュージックは勿論、ロックや他のジャンルの音楽にしても、そうだった。若い頃にはオルタナティブロックやインディロック、ヒップホップも聴いてたし、父親と一緒にクラシックロックを聴いたりも。今じゃカントリーも聴いてるよ(笑)。つまり、さまざまな音楽を聴いてきた上で、今もっとも注視しているのがフィーリングやエモーションに訴えかける音楽なんだ。
babyidontlikeyouをフィーチャーした新曲「MAGIC」
ーギターやキーボードが弾けるのは、DJとして大きな強みではないかと思うのですが、にもかかわらず、デジタル機材で制作をする理由というのは?
グリフィン:ひと言で言うと、エレクトロニックミュージックが大好きだから。あの正確さが好きなんだ。例えばドラムサウンドのあの量子的な感じ、ジャストな感じ、ビッグな感じとか。それにエレクトロニックミュージックは、ギターやピアノと違って、実験的なことがいろいろとできる。勿論ギターだってアンプを変えたり、音色を変えることはできるだろうけど、シンセやパソコンのようにサウンドを加工したり、変形できるわけじゃない。その点、エレクトロニックだと、ほぼ無限になんでもできる。他の音楽では、こんなに楽しめないと思うんだ。だから今でも音楽制作が大好きだし、ピアノやギターで曲を書いて、それをエレクトロニックにする。パソコンを使わない音楽制作も嫌いじゃないけど、少なくともダンスミュージックには、この方法が合っていて楽しいんだ。そのうちロックアルバムを作るかもしれないけど(笑)。
ーそれも訊こうと思ってました(笑)。カントリーアルバムになるかもしれないですね。
グリフィン:ハハハ……、そうだね、絶対ないとは言い切れないよ。
ー以前には、よくミュージシャンを率いてステージに立っていましたよね。
グリフィン:最近はあまりやってないんだ。でもドラマーやギタリストと一緒にステージに立つのは、凄く楽しかったよ。来年か再来年あたり、また生楽器を使ったステージをやろうかな、とか考えてはいるところなんだ。
ーザ・チェインスモーカーズのようなDJユニットは、ライブにドラマーを導入したり、生楽器を使用しています。例えばドラムの生音が入ることで、より人間らしいエネルギーが加わるとか、そんな変化を感じることは?
グリフィン:生楽器やドラムを使うことで、人間的な要素が加わるのは確かだし、違っているよね。いいと思うよ。プラス面しか思い浮かばない。だけど、エレクトロニックミュージックというのは、寸分の狂いもない正確な音楽だから、そこが大変なんだ。生ドラムや生楽器とPAでミックスすると、どうしても音がズレたりダレがちなんだ。
リタ・オラとグリフィン
ーリタ・オラをはじめ、今回もさまざまなシンガー、コラボレーターと制作されています。どのような基準で相手を選ぶことが多いですか?
グリフィン:こんなに多くの才能豊かな人たちと仕事ができるのは、すごく幸運だと思っているよ。車の中で音楽を聴いていたりして「あれ、この声、誰だろう? 聴いたことあるんだけど」って気になる声を見つけたら、すぐに調べてInstagramなどでDMするんだ。「君と一緒に仕事がしたいんだ。何か一緒にやらないですか?」って。マネージャーを介して、他のアーティストから曲が送られてくることもある。聴いてみて気に入ったら一緒にやろうってことになる。リタ・オラのような人は超多忙だから、なかなかプロモとか一緒にできないけれど……今も彼女はニュージーランドにいるのかな。でも一緒に制作できたのは本当に良かったし、素晴らしいトラックになったと思っている。
ー一緒にコラボしてから、のちのちビッグになったアーティストもいますよね。
グリフィン:彼らがスターとして開花するのを見るのは、いつだって嬉しいよ。このアルバムでも一緒に仕事をしてくれた人の中から、きっと後からビッグになる人がいると思うんだ。そんなの誰にも予想はできないけれど……それが音楽の世界だから。でも、才能がある人たちほどアイデアに溢れているし、一緒に仕事をしていて楽しいんだ。熱心だし、エネルギーを感じるから、成功するのも頷けるよ。
ライブへの取り組み方、野球ユニフォームを着る理由
ーステージでは、いつもDJをしながら曲に合わせて歌っているじゃないですか。自身でボーカルは取らないんですか?
グリフィン:バックボーカルならいっぱいやってるけどね(笑)。テクスチャーボーカルっていうのかな、ニューアルバムでもバックでは歌っている。でも、リードボーカルは……いつかやるかもね。最近ちょくちょく考えるんだ。
ー二の足を踏んでる理由とは?
グリフィン:う〜ん、みんなの前で歌うのが照れ臭いというか……(笑)。
ーでも、ステージを観ていると凄くロックスター的だと思うのですが。
グリフィン:あ、それはそうかもね。じゃ、やってみようかな……。
ーステージでの立ち回りなどに関して、影響を受けてきたロックアーティストがいたりしますか?
グリフィン:どうだろう、いい質問だよね。そう言われてすぐに思い浮かぶ人はいないけど、ロックのライブはいっぱい観てきたよ。子どもの頃からロック系ライブはいっぱい行ってたから。パンクに夢中だった頃はブリンク182とか人気だったし、ローリング・ストーンズを観に行ったこともあるよ。ステージで歌ってるミック・ジャガーを観て「スゲエ」って思ったし(笑)。そういう影響を受けてるのかも。ロックバンドの雰囲気やノリも大好きだし、フロントマンがステージで発散するエネルギーやショーマンシップなど、確かに影響を受けてるのかも。あまり考えたことがなかったけれど、そうかもね。
ー昨年コロラド州レッドロックスで行ったパフォーマンスの動画をアップされていますが、やはりあの会場は特別ですか?
グリフィン:うん、とっても素晴らしい。世界で10本の指に入る会場だと思う。とにかく最高なんだ。あそこでプレイできるなら、いつだって喜んで飛んでいく。去年は2デイズやったんだ。とにかく信じられないほどマジカルだった。
ー昨年7月のフジロックはどうでしたか?
グリフィン:あそこも素晴らしかったよ。あれほどクールなロケーションだとは知らなくて。スキー場があったり、キャンプができたり、あんなクールな場所だとは全然知らなかったんだ。日本に行くのも、日本でプレイするのも大好きだけど、フジロックがあんなに特別なフェスだとはまったく知らなかった。またいつか参加したいな。すごく感動的だった。
ー日本的な影響をグリフィンの音楽に見出すことは、少々難しいように思うのですが、思い当たる節はありますか?
グリフィン:日本のアーティストとコラボしたとか、そういう明白なのはないけれど、どこかに影響は隠れているんじゃないかな、きっと(笑)。日本のアーティストとは、以前にも増して一緒に仕事をしてみたいと思っているんだ。お薦めアーティストがいたら、是非とも教えてほしいな。今後はもっとグローバルに、さまざまなアーティストと仕事をしていきたいんだ。
ーステージでは野球のユニフォームを着てることが多くて、グッズとしても販売されていますが、以前に一緒にツアーをしていたジョナス・ブルーも、よく野球のユニフォームを着ています。何か特別な理由でも?
グリフィン:あ、彼も? いいね。野球のユニフォームを着ているのは、スポーツ的なチームというコンセプトが好きだから。ステージで僕が着ているのを観て、ファンもそれを真似して着てくれて、同じチーム仲間というか、音楽を通して繋がっている仲間意識が芽生えたり、感じられると思うんだ。ユニフォームを着ているファンを見つけると僕も嬉しいし、彼らのサポートをこの目で見て実感させられる。だからファンのユニフォームにサインしてあげるのとか、最高に嬉しいよ。そうやって楽しみながらファンベースを築いていけるのもいいと思うんだ。
ーアルバム『Pulse』のリリース後、今年はどのような予定ですか?
グリフィン:大規模なアメリカツアーとフェス出演などを予定している。夏にはヨーロッパを訪れるし、日本やアジアにも行くよ。今から興奮してるんだ。ニューアルバムを引っ提げたツアーになるから、僕にとっての新しい時代の幕開けとでも言うかな。すごく楽しみにしているんだ。
ーEDM系DJ/プロデューサーの中には、アルバム制作にあまり興味のない人も多いですが、グリフィンはコンスタントにアルバムをリリースしてきましたよね。
グリフィン:おそらく子どもの頃の思い出や影響が大きいんじゃないかな。アルバムにどっぷり浸かって聴きまくっていたんだ。新作が出ればすぐに買いに行ったし、聴き終わったらまた最初から掛けたり。アナログレコードのアートワークやブックレットなど、全てのコンセプトが大好きだった。お気に入りの曲はリードシングルじゃないけど、アルバムの11曲目だったりして(笑)。アーティストにとってもクリエイティブだったと思うし、僕も自分の音楽キャリアを進める中で、同じようなことをしたいんだ。アルバムの時代を再現したいんだ。
ーもしかして、このアルバムにもA面/B面のコンセプトがあったり?
グリフィン:いや、それはさすがにないよ。でも、それはいいアイデアだよ。ちょっと今後に取っておこうかな(笑)。
ー2枚組というのもありましたよね。
グリフィン:確かに! そうそう、そのアイデアも絶対クールだよ。考えてもなかったけれど、うん、今後のためにちょっと考えようかな(笑)。
GRYFFIN ASIA TOUR 2024
2024年6月18日(火)東京・豊洲PIT
2024年6月19日(水)大阪・GORILLA HALL OSAKA
詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4166
ニュー・シングル「Last Of Us feat. Rita Ora」
配信・購入:https://ingrv.es/J7m5Po
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