カマシ・ワシントンが語る、より良い世界に進むための愛と勇気とダンスミュージック
Rolling Stone Japan / 2024年5月3日 10時0分
カマシ・ワシントンの最新アルバム『Fearless Movement』は、これまでの延長線上にありつつ、明らかに趣が異なる作品でもある。愛する娘が生まれ、彼女と暮らす中で感じたことがインスピレーションになっていたり、概念としての「ダンスミュージック」をテーマにしていたりするのもそうだし、過去の作品にあったスケールの大きさやフィクション的な世界観とは違い、現実(≒生活)に根を下ろした視点から生まれた等身大で身近に感じられるサウンドになったようにも感じられる。
たとえば、これまでは壮大な世界観をクワイアやオーケストラと共に表現していたが、今回はほぼ自身のレギュラー・バンドで構成しており、外から加わっているのはほとんどがボーカリストやラッパーだ(カマシはこれまで、声にまつわる表現はバンドメンバーのパトリス・クィンに任せていた)。ここでは様々な声がそれぞれのメッセージを語っているのだが、その言葉からもポジティブなムードが感じられる。これまでカマシはSFやアフロフューチャリズムといった言葉で語られてきたが、大きな驚きと共に迎えられるであろう今作は、全く別の言葉で語られることになるはずだ。
その一方で、2019年の来日時に行なったインタビューで、彼はこんな話をしていた。
「僕だって怒りとか悲しみとか、フラストレーションは感じる。それは自然なことだ。ただ、それをリアクションとして表現するのではなくて『そういう感情のために何ができるか』を考えて、その時の自分にできることを行動に移すようにしている。怒りや悲しみの感情の中に身を置くのではなく、それを一度受け止めて、理解するんだ。生活するときには幸せを感じていたいし、仕事や音楽活動に関しては破壊的な行動じゃなくて建設的な選択をしようと僕は思っている。いろんな感情が生まれてしまうのも、何かを感じてしまうのもしょうがないことだ。痛みや悲しみや怒りが生まれてしまう状況をどうしたら変えることができるのか、そのための行動を選び取っていきたい。世界は多くの人たちのそれぞれの行動があって、それが積み重なってできている。自分はその中の行動のひとつとして、何が貢献できるかと考えて、自分のできることをひとつずつ形にしていって、世界をいい方向に押し上げていきたいと思うんだ」
カマシと言えば、「ドラゴン怒りの鉄拳」や「マルコムXのテーマ」のカバーに象徴されるように、怒りや痛みを表現するパワフルでアグレッシブな楽曲の印象が強かった。それは彼がブラック・ライヴズ・マターの勃興と時を同じくして表舞台に出てきたことも関係しているのだろう。しかし、『Harmony of Difference』(2017年)で対位法のアイデアをもとに音だけで多様性を表現していたように、ある種の優しさやポジティブさを提示してきたのもカマシだった。彼の表現は徐々に調和や共生、祝福へと傾き、同時に地に足のついた等身大の言葉が増えていった。それは今思えば、ミシェル・オバマのドキュメンタリー映画のサントラとして作った『Becoming』(2020年)の柔らかさにも表れていたのかもしれない。その後、娘が誕生し、さらにポジティブな境地に至ったことを反映したのが『Fearless Movement』なのではないだろうか。
ここではカマシが新作に込めたコンセプトや想いにフォーカスして話を聞いた。今、彼が表現したいことの温度感も含めたニュアンスを僕は知りたかった。
前に進むための「手放す」勇気
―今回はアルバムのテーマになったキーワードについて話を聞かせてください。まず、「Fearless Movement」というタイトルの意味から聞かせてもらえますか?
カマシ:タイトルには複数の意味が込められているんだ。由来は2つあって、1つは純粋にこのアルバムの音楽から由来している。「Prologue」という曲を録音していた時に、曲にすごくリズムが感じられたから、「この音楽はダンスのための音楽だ」と思ったんだ。そのアイデアを思いついて、「ダンス・アルバムを作ろうぜ」と言ったら、みんなは「え、ダンス・アルバム?」という感じで困惑していたよ(笑)。僕がそんなことを言うのは意外だと思ったんだろうね。
でも僕にはルラ・ワシントンと言う有名な叔母がいる。僕は幼い頃から彼女のスタジオでダンサーたちが、とても表現豊かな即興音楽で踊っているのをずっと見てきたんだ。だから僕たちが作っているような音楽に合わせてダンサーが踊ると言うアイデアは僕にとって突飛なものではなかった。とてもクールだろうなと以前から思っていた。
それと同時期に、僕は思いがけない貴重な体験をした。娘が生まれて、僕の人生が変わりつつあったんだ。自分の人生が変化・進化していくと、先に進むためには、今まで自分が持っていたものを手放す必要が出てくる。僕はそうする必要があった。今までは、音楽が自分の人生にとっての最優先事項だった。でも、優先順位を変えて、僕は「父親であること」を最優先することにしたんだ。最初はそのことに対して不安があった。自分の作る音楽に影響するかもしれないと思ったから。でも実際のところ、僕の作る音楽はより良いものになった。「Fearless Movement(恐れのない動き)」という概念は、「前に進むためには恐れないことが大事」という意味なんだ。次に進むべきところに到達するには、今まで自分が持っていたものを手放さないといけない。それがタイトルの意味だよ。
カマシの叔母、ルラ・ワシントンは映画『アバター』『リトル・マーメイド』の振付も担当。マイノリティの子供たちにダンス教育の場を提供すべく、1980年に非営利のダンス・カンパニー「Lula Washington Dance Theatre」を設立。米国内外150以上の都市で公演を行っている。
―「Fearless」という言葉には、いろんなニュアンスが含まれているように思います。あなたが表現しようと思った「Fearless」はどんなものですか?
カマシ:怖さを知っていて、それでも飛び込んでいくという状態と、子供のように、怖いもの知らずでいる状態。その間にある、どこかに位置するものだと思う。大人は危険なことを認知している。前に進むことの危険性やリスクなどね。でも、あえて子供のような心構えで「怖い」と思う要素を無視して、前進するという姿勢。僕は音楽をやる時、そういう子供のような部分が必要だと思っている。何をしても、どんな道に進んでも間違いではないと思うこと。そもそも間違った演奏方法なんてないしね。自分が今までにやったことのないことをやってみる意思。それは、子供にとっては、実際のところ全てが当てはまるんだ。子供は今までにやったことのないことばかりだからね。
だから僕にとっての「Fearless」とは、危険なことに飛び込むというよりは、今までに自分が持っていたものを手放すことであり、それを失うということを恐れない姿勢を意味している。僕が考える「Fear」とは、失うことへの恐れや、今までに自分が持っていたものを失う恐れからくる、手放すことへの抵抗や拒絶感のこと。そのような恐れを抱いていたら、進むべき次のステージへ絶対にたどり着くことができないから。
―次のステージに進むための自己変革でもあると。では、それぞれの収録曲で「Fearless」をどのように表現しているのでしょうか?
カマシ:曲によって「Fearless」の表現のされ方は違う。「Lesanu」では、自分が今まで生きてこれた人生に対する感謝や、音楽に対する感謝、自分がミュージシャンになれたことに対する感謝を「祈り」という形で捧げている。さっき話した「自分が持っていたものを手放す」ことについても、自分が何を持っているか、自分に何があるかを知ることで、初めてそれらを手放すという考えが出てくるわけだよね。
「Road to Self」は、自分本来の姿を見出すための旅に出る意思を持つことについての曲だ。本来の自分には何が実際に備わっているのかを見つける過程。その過程は、少し不安に(Fear)感じられるかもしれない。なぜなら、本来の自分の姿を恐れているかもしれないから。もしかしたら自分には十分な価値がないかもしれないから。でも、あなたは、自分がそうあるべき姿以外の何者でもない。その姿に恐れを感じる必要は全くないんだ。自分が理想とする姿と違うかもしれなくても、それを恐れる必要はないってこと。
「Lines in the Sand」という曲は、自分を他の属性や他の人々から切り離さないといけないという固定概念を取り上げている。例えば、僕が民主党支持者なら、すべての共和党支持者を嫌うべきだとか(笑)、ジャズ・ミュージシャンである僕はポップ・ミュージシャンを嫌うべきだとか、抽象画を描く画家なら実写主義の画家を嫌うべきだとか。このように想像上でしか存在しない枠によって、僕たちは理由もなく制限されているし、僕たち自身もそう考えるべきだと思い込んでいる。でないと、僕たちが尊敬する人たちに嫌われてしまうから。例えば、僕はジャズ・ミュージシャンだけど、今回はダンスミュージックのアルバムを作りたいと思った。すると、人々はこう思うかもしれない。「カマシはダンスミュージックは好きじゃないはずなのに?」と(笑)。でもね、僕がダンスミュージックを好きでも全然いいんだよ。
―我々が知らない間に縛られている固定観念から勇気を出して解放されることも含めての「Fearless」ってことですね。
カマシ:「Get Lit」にも別の意味合いがある。アメリカにはーー特にアフリカ系アメリカ人のコミュニティには、こういう表現がある。「成功した奴は、地元を去ることができる奴だ。(If you have success, then you have made it out of the hood)」。でも、この曲で僕は「地元を離れるんじゃなくて、自分で地元を築き上げて行くのはどうだろう?」と問いかけている。地元の人々、自分の仲間たちを恐れる必要はないってことだね。
こんな感じで、アルバムには人々が抱く共通した「恐れ」がさまざまな形で含まれている。この共通した「恐れ」は、僕たちを間違った方向へ導くものだ。僕が「Fearless」に込めた意図は「危険を冒したい」ってことよりも、むしろそういうことにある。僕たちは内面に恐れを抱えていて、その恐れは僕たちを間違った方向へ導いてしまい、僕たちが向かうべき、いるべき場所から遠ざけてしまうから。
あらゆる可能性が開かれたダンスミュージック
―次に聞きたいキーワードは「ダンスミュージック」です。アートやスポーツのようなものとして一般的に認識されていますが、古来から様々な意味をもつ表現形式だと思います。あなたが考えるダンスにも多くの意味が込められていそうですが、どうですか?
カマシ:ダンスは、音楽がそうであるのと同様に、コミュニケーションの一種だと思う。ある種の表現だ。それは、儀式を表現することもできるし、歴史を表現することも、個人の感情を表現することもできる。また、一緒に踊っている人たちとのつながりを感じることもできる。ダンスは必ずしも音楽を必要としないけれど、音楽とは密接なつながりがある芸術様式で、人々が自由という感覚を感じられる可能性をものすごく秘めている。高度なダンサーは、もちろん複雑な身体の動かし方で表現できるけれど、一般の人でも、例えば一人で家にいる時に、自分のお気に入りの曲がかかったら、ついつい踊っちゃうし、そういうのも気持ちがいいよね。ダンスをすると、まるで自分の感情を自分の身体を通して解放しているみたいに感じられるし。
―今作におけるダンスミュージックの概念を共有しているような作品の例を挙げるとすれば、どんな音楽が浮かびますか?
カマシ:僕の叔母はジョン・コルトレーンの『Om』に合わせた振付を考案したんだ。とても美しかったよ。彼女のダンス・カンパニーが作り上げた作品を音楽と合わせて観たときに、自分にとって全く新しい意味合いが生まれた。
また、彼女はファラオ・サンダースの「The Creator Has A Master Plan」の振付も制作していた。それも素晴らしかったね。あと、彼女はマッコイ・タイナーの「Fly With The Wind」の振付も担当したんだけど、その演目で僕はマッコイと共演する機会が得ることができた。でも、僕は、全ての音楽がダンスミュージックになりうると思っている。「どうやって自分を(自分の身体で)表現するか」ってことだけなんだから。僕の曲のインスピレーションってあらゆるものがその対象なんだ。それと同じように、あらゆる曲はダンスのインスピレーションになりうると思う。
―「踊りやすい機能性」みたいな話じゃなくて、「心躍ることで身体が動く」みたいな意味合いなのかもですね。次のキーワードは「子供」です。子供って自由で純粋で予測不能で、すごく弱いのに、コントロールできないですよね。ある意味では自然、もしくは宇宙のようなものとも言えます。そんな「子供」である娘さんから得たインスピレーションが、今作にどう反映されているのか聞かせてもらえますか?
カマシ:さっきの「古きものを捨て、新しきものを取り入れる」という話にも関連するんだけど、子供にとっては何もかもが新しいんだ。子供が知っているのはそのことだけ。僕の娘も、大人の常識やルールなどを一切知らない(笑)。だからそんなことはお構いなしに、好き勝手やって楽しんでいる。その自由な姿勢や、探求したいという意思、万物に美しさを見出せる感覚ーーそういったものにはすごくインスピレーションを受けたね。
僕が考える音楽の究極の次元として、「間違った音は存在しない」という考え方がある。すべての音に検討の余地があり、あらゆる可能性に対してオープンだという姿勢でいたい。それが音楽における最高次元だと思っている。僕は娘に、色々な音楽を聴かせたり、楽器を自由に演奏させたり、色々なものに対する彼女の反応を見たり聴いたりすることによって、自分のマインドをさらに自由に押し広げることができた。
―今、あなたが話してくれた「子供」の定義は、フルートを持ち始めてからのアンドレ3000とも近いのではないかと思うのですが。
カマシ:そう思うよ。自分たちが扱う楽器ーーそこには声という楽器も含まれているーーは、自分のクリエイティブな精神を表現するツールにしかすぎない。僕たちは、大好きなミュージシャンやアーティストたちが表現する、その「クリエイティブな精神」の音を聴くことに喜びを感じているんだと思う。
アンドレ3000はものすごくクリエイティブな精神の持ち主だ。彼は、今まで表現していたこととは違うことを表現するために(フルートを)使いたいと思った。彼は新たな媒体を見つけたんだ。そして、彼の精神はそっちの方向に傾倒していった。
アンドレがスタジオに来たとき、本当は彼のためにいくつかの曲を書いて用意していたんだ。でも、彼はフルートをたくさん取り出してーー10本か15本はあったーーそれぞれがどんな音色かをひとつずつ聴かせてくれた。そうやって僕たちにフルートの演奏を披露しているとき、彼はフルートですごくクールなことをやっていた。彼の演奏を聴いていた僕らは「あ、今のは曲になってる!」と何度もみんなで思っていた。彼が3、4本、フルートを吹き終わった時点で、「よし、今から何かを作ろう」と僕は彼に伝えたんだ。
―アンドレが参加している「Dream State」はその場で考えた即興的な曲だったと。
カマシ:そう、彼の演奏にすごくインスパイアされたからね。ミュージシャンなら誰しも突き止めたい、音楽が降りてくる「源」みたいなものがあるんだけど、彼はその「源」と非常に強いつながりを持っている。とても素晴らしい経験だったよ。
「無条件の愛」が教えてくれたこと
―「子供」の話に戻りますが、自分の子供のことを考えるようになると、世界の見え方も変わると思うんです。世界に対して求めること、望ましいと思う未来の形などが変わる。それが今作に込められたメッセージも変えたんじゃないでしょうか?
カマシ:その通り。今まで見過ごしていたようなことが、子供を持つと、とても重要なことのように感じられる。
僕に関しては、世界の未来について、僕たちがどのような方向に向かっていくのかということについて、今までよりも直接的な関心を抱くようになった。子供がいなかった時も、関心事としてはあったんだけれど、子供が生まれてから、それがもっとパーソナルに、自分事のように感じたんだ。なんとなくの関心や心配ではなく、本当に心から心配だと思えるようになった。「ああ、そんなことやっちゃいけない!」と世界に対して思うようになったし、そこに自分の娘がいることを想像してしまう。
僕たちは、やるべきことや、進むべき道はすでに分かっているんだ。現在の物事の進め方では、この世界を維持していくことができない。でも、昔のやり方に未だ縛られている。昔のやり方というのは、境界線(ボーダー)という概念や、お金への固執といった、昔ながらの考え方のこと。こういうものにしがみついても仕方ないし、しがみつくべきではないと僕たちも分かっているはずなんだ。だけど、それを手放すことに不安を感じている。今の世界が進んでいる方向のままだと、未来は娘にとって上手く生き抜くのが難しいんじゃないかと心配になるよ。例えば、戦争や紛争なども含めて、世界には様々な危険がある。僕たちは人類として、自分たちを高めるために変化していかなければならない。僕は(娘が生まれる前から)そういうことを考えてはいたけど、今ではその悩みが自分の心により重くのしかかっている感じがするんだ。
―そういった心境の変化も関係あるのかもしれませんが、今作は「怒り」の感情やメッセージがこれまでよりも薄れているようにも感じました。
カマシ:確かに、今はこれまでに感じたことのないほどの愛情を感じているよ。でも、怒りを感じる時も全然あるよ。ハッハッハッ!
娘が生まれる前にも、愛を感じたことはあったし、愛する人もいた。でも「真の無条件の愛」というものを僕はまだ知らなかったんだ。自分がそれを知らないということにも気づいていなかった。誰かに初めて会って、何の理由もなく、この世の何よりも、その人のことを愛していると感じたことは今までになかったから。どんな条件にも左右されない愛情というものは、とてつもなくパワフルなんだ。そういう愛の形は、人を楽観主義にしてくれる。むしろ、強制的に楽観主義者にならざるを得ない。「絶対に大丈夫」という確信を持つようになるし、無私無欲になるし、そこから共感力がより高くなり、物事に対して新しい見方ができるようになる。問題や課題だけを見るのではなく、よりディープな光を通して物事を見ることができるようになるんだ。
このアルバムの根底にあるテーマは、「より良い世界が手の届くところにある。古きものを捨てさえできれば、向こうの世界に移行できる」ということなんだ。僕たちはまだその世界を手に入れてはいないけど、その可能性は確かに存在するし、僕たちも何をするべきかはわかっている。不要な古いものを手放して、より良い世界に進んでいくべきなんだ。
Photo by Vincent Haycock
―そういった恐れのなさ、ダンスミュージック、娘さんへの思いなどもあり、かなりの変化が感じられる作品になりました。多くの楽曲に歌が増えて、大編成の楽曲が減りましたよね。
カマシ:今回のアルバムの音楽からは、オーケストラや合唱団の音が、僕には聴こえてこなかったというだけだよ。それに、他の仕事でバレエの音楽を担当したり、別件でオーケストラの音楽ばかりやっていたというのもある。その反動で、自分のアルバムでは何か違うことをやりたいと思ったのかもしれないね(笑)。
また、今回のアルバムの曲にはダイレクトなメッセージがあるものが多いから、曲に歌詞を付けたいという思いが強くなったんだと思う。自分でアルバムの音楽を色々と書いているうちに、色々なアーティストと偶然出会う機会があって、「この人にはこの曲がぴったりだ」と思う瞬間が何度もあった。例えば、ジョージ・クリントンは、ヴィジュアル・アーティストとしても活躍していて、彼の展示会で実際に会う機会があった。それ以前から面識はあったんだけど、ちゃんとした話をする機会はなくて、展示会でようやくじっくり話すことができた。彼と話をしているうちに、頭の中にアイデアが浮かび、「ジョージ・クリントンがあの曲(「Get Lit」)に参加してくれたら最高だろうな」と思うようになった。そして、彼が参加してくれると決まった時点で、彼に合うような歌詞を僕が書いたんだ。
コースト・コントラ(ラジ&タジ・オースティン)も同じような流れで、僕は彼らの音楽をネットで知ったんだ。すごくドープだと思って大ファンになった。その後、Hollywood Bowl(ロサンゼルスのヴェニュー)に行ったら、彼らがデイヴ・シャペルのオープニングを務めていた。そこで「何か一緒にレコーディングできたら嬉しい」と伝えて、「Asha The First」のレコーディングを一緒にすることになった。あの曲にも「ここに彼らのラップを入れたら最高だろうな」というセクションがあったからね。
僕はいつでも、音楽から自然に導いてもらうように心がけていて、音楽が必要とするものに牽引されていきたいと思っている。『The Epic』をレコーディングしている時は、大編成のオーケストラや合唱団の音が自分の耳に聴こえてきたんだ。そういう音を入れたらクールだろうなと思った。今回のアルバムには、さまざまなメッセージが存在していて、それを届けてくれる人たちを必要としていた。そこからこういうアルバムになったんだ。
カマシ・ワシントン
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