RIZEが語る再始動の理由、ロック・バンドの「奇跡」を信じる男たち
Rolling Stone Japan / 2024年5月11日 20時0分
いよいよRIZEが再始動を果たす。『RIZE TOUR 2024”SOLU”』と銘打たれた全国7カ所を巡るツアーが、この6月から7月にかけて行なわれるのだ。ただ、通常こうしたニュースには大掛かりな活動計画や劇的な展開がつきものだが、このバンドの場合は相変わらず戦略めいたものとは無縁なままであるようだ。そんな彼らのリアルな現在を探ろうと、4月半ばの某日にインタビューに臨んだのだが、当日になってJESSE(Vo, Gt)が急用のため欠席となり、彼とは機会を改めて話をすることになった。この日、取材現場に現れたのは金子ノブアキ(Dr)、KenKen(Ba, Vo)、そしてサポート・ギタリストのRioだった。各々が多忙な毎日を過ごしているだけに、ツアーに向けてメンバー全員でリハーサルに臨める機会も限られている中、この日の彼らはJESSE不在という変則的状況でスタジオに入っていたのだという。
【写真を見る】再始動するRIZE
―スタジオ帰りだそうですね?
KenKen:そう。Rioと一緒にRIZEをやるのは6年ぶりってことになるのかな。武道館(2017年12月20日)以来やっていなくて。その直後、下北沢CLUB251のPA担当だった方が亡くなって、その追悼ライブで3曲ぐらいやったことがあったけど、それが実質的に最後だった。まあ、RIZEと関係なく一緒にやることはあったんだけど。
Rio:俺、あの武道館の時以来使ってなかった機材を引っ張り出してみたら、全部音が出なくなってた(笑)。ずっと放置してたから、完全に錆び付いてたのかも。
KenKen:だけど心は錆び付いてなかった、みたいな(笑)。実は昨年末にRioは不在のトリオ編成で、渋谷CLUB ASIAでファンクラブ向けのライブやったんだけど、あの時も武道館から6年経ってるという感覚ではなかったね。体感的には2週間ぶりみたいな感じで、やっぱりこのバンドには奇跡的なものが宿ってんだなって感じさせられた。普通はすごく時間をかけてリハーサルをしたうえで戻ってくるものなんだろうけど、細かいことは忘れていても、勢いとかグルーヴはまったく変わってなくて。ホントに家族が久々に集まったみたいな感じだったな。
―実家にみんな勢揃い、みたいな。
KenKen:うん。それこそJESSEにとっても、The BONEZがここまで大きなものになってきたことで、逆にRIZEについては実家感が増したんじゃないかな。
金子ノブアキ:それはあるかもね。しかもそこで妙なギャップはまるで感じないし、今のほうがずっといい状態にある。しかもあれから6年以上も経ってるという時間経過の長さはまったく感じなかったし、そこはホントに不思議だった。他ではこうはならないだろうな、と思う。集まって、ごく当たり前のように始まって、そこですぐさま爆発するものがあるというか。
KenKen:何年も自転車に乗らずにいた人が、久々に乗ってもちゃんと乗りこなせるのと同じようなことなのかもしれない。
Rio:自分でも曲を覚えてないんじゃないかと思っていたけど、意外とちゃんと記憶の中から出てきたしね。きょうのリハでも細かい確認とかはせず、ホントにフラットな感じで久々に音を出す感じだったけど「あれ? 意外にこんな細かいところまで憶えてる」みたいな面白さがあったし、やっぱり身体に染みついてるんだなって思わされた。
KenKen:Rioは途中からチームに入って来てるから、感覚的に俺らとは違うところもあるのかもしれないけど、たとえば俺の記憶が飛んでる箇所については他の誰かが憶えてくれてたりもする。たまに全員が忘れてるところがあったりもするんだけど(笑)。俺の場合、この5年ほどロック・バンドとしての活動をしてこなかったから、久々にこんなに大きな音を出すっていう新鮮さもあったし、これぐらいの音を出さないとこんなふうにならないよな、と再確認させられた部分もあった。しかもやっぱり、それがすごく楽しい。
金子ノブアキ:RIZEに戻ってくると、もうただただRIZEになるしかないというか。それはCLUB ASIAでやった時にも思ったんだけど、なんだか全員が前傾姿勢でつんのめってる感じで、すごくパンクだった。昔からよく「ミクスチャー・ロックって精神性としてはパンクなんだよな」みたいな話をしてたけど、それを改めて感じたし、90年代初頭の路地裏のライブハウスの空気がそのまま真空パックされて残されてたという感覚だった。
KenKen:うん。だからこの音、この空気を出せるのは俺らしかいないんじゃないかっていう自負がいっそう強まってるし、みんな”素”のままなんだよ。それこそJESSEについても、The BONEZでの彼はある意味エンターテイナーで、すごく成熟してるのを感じるんだけど、ここではアメスク時代のやんちゃな彼に戻ってるような気がする(笑)。
―若い頃の遅刻癖とかが戻っていなければいいんですが(笑)。
金子ノブアキ:それはもう大丈夫だと思う。最近は遅れる時でもちゃんと連絡をくれてるし(笑)。でも確かに、俺自身もこの場にいる時は昔に戻っちゃってるところがあるかな。
KenKen:そういう感覚が初めて今回、俺にもわかったのかも。実は今回こうしてRIZEを再始動させるにあたっては、あっくんに3回も説得されてるのね。つまり2回断ってるということなんだけど(笑)。ブルーノートでSHAGのライブをやってる時に通ってくれて。
金子ノブアキ:打ち上げの席で説得してましたね。SUGIZOさんはじめ、メンバーの皆さんには邪魔だっただろうと思いますけど(笑)。
KenKen:俺はRIZEに入るよりも前にSUGIZOさんとバンドをやってたし、それも面白い流れだよね。そうやっていろんな流れがあって、2周目みたいになってきたところで、このバンドが存在してる奇跡みたいなものを俺自身がやっと感じられるようになってきたというか。それまではやっぱり、どうしてもJESSEとあっくんが始めたものだっていう意識が強かったから。だけど今回はそのあっくんが何度も口説きに来てくれて、すごくフラットな気持ちで戻って来られた。俺としてはすごくそれが大きくて。
―なるほど。ところでいちばん肝心なところでもあるんですが、何故このタイミングでの再始動になったんでしょうか?
金子ノブアキ:いろんな事情があるんですよ。それこそ執行猶予の件もあれば、コロナ渦もあったわけで。The BONEZの10周年というのもあったし。だからこのタイミングを狙ってたというわけじゃなく、最速でやれるのがこの時期だったというのが本当のところで。昨年末にファンクラブ限定のライブをやったのは、設立したのはいいけどずっと何もやれてなかったからなんですよ。みんなをずっと待たせっぱなしだから、そろそろ何かやらないとマズいだろう、と。そのうえで、ちゃんと焦らずに、誰にも迷惑をかけず、きちんとRIZEをやれる最速のタイミングということで、この時期になった。The BONEZの幕張(4月6日に実施された幕張メッセイベントホール公演)が終わってからであるべきだとも思ったし、ここなら誰もが納得できるだろう、と。
KenKen:コロナについてもすごくいろんな意見があったはずだしね。ただ、俺としては、お客さんも含めて、誰かが我慢を強いられるような状況だったらロック・バンドなんてできないと思ってたから。俺らが我慢してお客さんが好き勝手できるならいいけど、その逆は絶対無理だと思ってた。ロック・バンドがお客さんに対して唯一言えるのは「お好きにどうぞ」って言葉だけだと思うしね。だから俺自身もすごく考えたけど、ロック・バンドを自分がもう一度やるとすれば、それはRIZEしかないと思ってた。ただ、その気持ちになるまでには時間も必要だったから、あっくんからの申し出を2回も断ることにはなったんだけど。
金子ノブアキ(Dr)(Photo by cherry chill will.)
コロナ禍を経て
―コロナ禍においては、活動スタンスというか音楽人生のあり方について考え直したミュージシャンも多かったはずです。
金子ノブアキ:いろいろと考えさせられたのは確かですよね。「ライブハウスをなんとかしなきゃ」みたいな意識もロック・バンドはみんなあったはずだし、誰もがあれこれと天秤にかけながら苦しんでたと思う。
KenKen:しかもそこでの正解はひとつじゃないしね。
金子ノブアキ:人それぞれの考え方があるからね。だからホントにきつい時期でもあったけど、特に若いバンドたちは、上を目指していくうえでの梯子を外されたも同然の事態になっちゃっていたわけで、それゆえに生き抜けなかったバンドも少なくなかっただろうと思う。今になってようやくすべてが戻ってきたようなところがあるけど、だからこそ、そこで若い世代のバンドたちとフックアップしていくことの重要さもすごく感じていて。それこそ最近coldrainがやっているのもそういうことだし、The BONEZも、俺たちよりも若い世代のバンドたちと渡り合ってるのがすごいなと思う。
KenKen:昔はどうしても「RIZEのJESSEがやってるThe BONEZ」だったけど、今ではその逆の見方をしてる人もすごく増えてるはずだし、それも素晴らしいことだと思う。
―Rioさんの場合、コロナ禍での心境変化などはありましたか?
Rio:俺の場合、実はコロナ禍の直前に一個バンドを作って、CDも作ったりしてたんだけど、結局全然ライブもできないから、ろくに活動できなくなってしまって。ただ、創作面については、そもそも俺の場合は家でひとりでやるものだったりするから、個人的にはあんまり変わらなかったし、引きこもりタイプの自分としてはむしろ都合いいんじゃないかと思える部分もあったかな(笑)。
金子ノブアキ:わかる! 俺もそう。なにしろ締切りがないから時間がたっぷりあるし、失敗できるわけですよ。いろんな実験をして、それがすぐにうまくいかなくても構わなかった。その意味では、めっちゃ楽しかったんですよ。だからいろいろなことが滞りはしたけど、かならずしも意義のない時間ではなかったと思う。
KenKen:しかもそんな流れを経て、今、バンドが過去最高に仲のいい状態にある気がするし。昔の子供の頃に戻って、しかもそこに、こうして付き合いの古いRioもいてくれて。実際みんな、RIZEがなくても飯食っていける状態にはあるんだよ。だけど、そこで大事なのは「なんでRIZEをやりたいか?」なんだと思う。俺としては、今、カッコいいと思えるロック・バンドが少ないないから、それを自分でやらなきゃいけないと思った。自分がいちばんカッコいいと思うことをやるための場だと思うしね、ロック・バンドって。
―こうして再始動とか復活がニュースになる時というのは、筋書きありきというか、先々のリリースなども決まった状態にあるケースが多いと思うんです。ただ、ここにはまるでそういった匂いがないんですよね。
KenKen:うん。普通はこういう時、もうシングルとかがあったりするんだろうけど。
金子ノブアキ:今の時点でそういうことは何ひとつ決まってないので。「まずはツアーをやって、その後で合宿にでも行って曲を作る?」みたいな。来年とかには新曲もひっさげた状態でやりたいなというのもあるし。なにしろすっごくシンプルなものを作りたいんですよ、2分半ぐらいで終わっちゃうみたいなのを。
KenKen:ライブ自体もすごくシンプルになると思う。メンバーがそこに立ってるだけで成立するカッコ良さみたいなものをRIZEは持ってると思うし、それは最近のエンターテインメント型のライブとはちょっと違うんじゃないかなと思う。「これをやったらお客さんが喜ぶんじゃないかな」というものを提供するのも素晴らしいことだけど、RIZEの場合は、俺たちが好きでやってることをどんだけの人たちが楽しんでくれるかだけでいいんじゃないかな、と思っていて。それが本来あるべきロック・バンドの姿なんじゃないかとも思うしね。実際みんなも忙しいから、ツアーまでに多分、おそらくリハにも4回ぐらいしか入れないと思う。でも、7年近くやってなかったバンドを観たいと思ってれてる人がこれだけいてくれてる時点でもう奇跡レベルだと思うし、しかもそれを家族でやれてるなんてもっとミラクルじゃん? それは今、すごく思ってる。この人たちがファミリーだったから自分はここまで来れてたんだなって。
―複数のバンドをやっていると、その場によって自分のスイッチを切り替えるような部分もあるのかもしれませんが、RIZEの場合はむしろ、すべての設定を解除してしまうような感じなのかもしれませんね。
KenKen:ああ、確かに。逆に言うと、OFFにするものがひとつもない感じ。
金子ノブアキ:だから実際、集まっても特にあれこれ喋るわけでもなく、普通にそこにいるだけなんですよ。それだけで成立するのってホントに家族ぐらいじゃないですか。「最近どう?」みたいなやり取りすらない。そういったバンドの空気はRIZEならではのものだと思うし、それこそフェスとかの楽屋にいたりすると、他との違いがわかりやすいのかもしれない。
KenKen:世界的に見てもここまでのファミリー・バンドってあんまりいないはずだし。しかも俺はRioとも十代の頃にライブハウスで出会ってるし。あっくんとJESSEは生まれた時から一緒にいる2人だからね。
金子ノブアキ:こっちからすると「生まれてきた!」だったから(笑)。
―ところで、具体的なリリース計画を決めてはいないとはいえ、新しいアイデアとかはすでに抱えているはずですよね?
KenKen:そうだね。リフは山ほどあるかも。
金子ノブアキ:この先のイメージとしては、やっぱりシンプルな、IQの低そうな感じがいいかな、と(笑)。コーチェラ・フェスに出ていたブラーが「Song 2」をやってるのを見て、あの感じがいいなと思った。リフだけでガーッとやって、そのままいきなり終わっちゃうみたいな。かつて俺たちが感じてた90年代の風というか、歩いてた道というか、あの頃に「最高!」って思ってたもの。それを呼び起こせるのはここしかないし、他ではできないんですよね。たとえば今は、新しい機材とかプラグインで試せることとかも多々ある。だけどそういうことじゃないんですよ。なんだか時間を重ねていくほどに代わりがきかないものになってきてるから。なにしろ気が付いてみれば数年後には結成30周年がやって来るわけだし。そんな今、なんで俺がKenKenのところに通い詰めて「やろうぜ!」と説得したかといえば、ここであの曲たちをやる必要があると思ったからなんですよ。なにしろ中学生の時に作った曲とかもあるくらいだし、それはもう作れないものだから。RIZEはその曲たちの再生装置なんですよ。そして、それを俺たちがやる以外に選択肢はないから。
KenKen:90年代のカッコ良さって、直撃世代じゃなかった人たちは絶対リアルにはわからないだろうと思う。70年代とか80年代のサウンドは、ぶっちゃけ、機材とかにこだわれば作れるところがあるんだけど、90年代は時代的にもちょうど境い目の頃だったし、あの時代のカッコ良さを肌で感じてないと無理なんだろうなと思うことがある。
金子ノブアキ:しかもそれは、3~4年のごくわずかな期間でしかなくて。
KenKen:その時にちょうど10代のキッズでいれたってことがまたミラクルなんだよね。
金子ノブアキ:だからこそ、これができるのは俺たちしかいない。悲しいことに亡くなってしまった方たちもいたりする中で、確かにこのバンドの場合も執行猶予の件とか問題はいろいろあったけど、全員がこうして無事に生きていて、今もキレッキレの状態であれてるという事実。そうあれている以上、やる以外に選択肢はないんです。「ちょっと腕は落ちてるけど、そこはご愛敬で」というやつじゃないんですよ。全員の切れ味がまったく落ちてないっていう希少性がある。それは、これまで各々が重ねてきた経験があるからであって、そんなみんながこの場に戻ってくると完全にRIZEになるというのは、ホントにバンドならではの不思議な現象としか言いようがなくて。それはここじゃないと成立しないことだし、すごく貴重なことだと思うわけです。
KenKen(Ba, Vo)(Photo by cherry chill will.)
幸せのために「バンド」をやっている
―ええ、わかります。Rioさんから見て「他の現場ではなくRIZEでしか味わえないもの」というと何になりますか?
Rio:多分、1ミリも仕事でやってないっていうところ(笑)。
金子ノブアキ:間違いない!(笑)。なにしろホントに目標を設定したことが一回もないですね。最初から。昔から「目指せZEPP!」みたいなのすらなかった。普通にやっていただけで転がっていって……まあ、生まれた時から運が良かったともいえるけど。
Rio:だからホントに今回も、久々に友達から呼ばれたから遊んでやろうか、みたいな感覚でしかなくて。
KenKen:バンドをやってると、やっぱどうしてもデカくなっていくことが成功だと思ってしまいがちじゃん? 箱のサイズがどんどんデカくなっていって集客が上がっていくと、それが成功だっていう話になる。だけど俺、それと幸せは別のものだってことがよくわかってきて。誰と何をやるか、そこだけでいいんだなって思うようになった。
―つまり、RIZEは幸せのためにやっているバンドだということですか?
KenKen:うん。たとえば2万人集められてたはずのバンドの動員が1万人になったら、大概はそこで「半分になっちゃった!」って凹むわけじゃん? それはやっぱ、音楽じゃなくてビジネスの話になってしまってるからだと思う。そうじゃなくて俺は「まだ1万人も来てくれるんだよ」っていう考え方でありたいし、そこで超大事なのは誰と今まで生きてきて、今日この日に誰と演奏するんだろうってこと。この5年ほど、初めてマネージャーとかもいない環境で自分でいろいろやるようになってみた時に、それをすごく感じさせられましたね。
―ちなみにマネージャー無しの環境下でいちばん大変だったのは?
KenKen:ダブル・ブッキングですかね(笑)。あれは怖い。ホントに30代前半まではベースを弾くことだけをやらせてもらえる毎日だったけど、それはもう皆さんのおかげでやれてたことだから。ただ、毎日ベースを弾くっていうところはだけは、これまでの人生、何があっても変わらなかった。で、その時に「自分って何だろう?」っていう自問がまた同時に始まるわけですよ。その時にやっぱ「RIZE=自分」ではないんだけど、自分が存在するために当たり前のように存在するのがRIZEなんだって思えたし。
金子ノブアキ:俺はシンプルに、みんなと戻って来れてホントに嬉しいんですよ。もうそれだけですね。「ああ嬉しい!」って感じ。
―そういえばKenKenを説得するにあたり、JESSEとはそれ以前から合意できていたんですか?
金子ノブアキ:JESSEとは、ある時に待ち合わせをして蕎麦を食いに行って話をしたことがあって。ただ、その流れの最初の段階で超面白かったのは、彼がずっと俺の古い番号に電話をかけてたこと。今の番号じゃなくて、なんと中学の時の。
KenKen:すっげえ古い!(笑)
金子ノブアキ:何故かその電話番号がメモリに残ってたみたいで、知らない人の留守電にめちゃくちゃメッセージを残してたらしい(笑)。で、全然応答がないもんだから、俺がめっちゃキレてると思い込んでたみたい(笑)。で、ある時「あっくんの番号ってこれだよね?」というメールが届いて「JESSE、それは昔のだよ」と伝えたら「やべえ、知らない人にめちゃくちゃ留守電残してた!」って。それで新しい番号を伝えて「飯でも行こうよ」と誘って。だからそのJESSEとの会話のスタート自体が最高だった(笑)。
KenKen:その携帯の持ち主も驚いてただろうね。めっちゃ一方的に何度も謝られて(笑)。
金子ノブアキ:その出来事がワン・クッションとしてあったのも良かった。最初からそうやってエピソードがついてくるのがJESSEらしいというか、RIZEらしいというか。
―確かに。さて、今回の再始動を待ち焦がれていた人たちの中では期待感が高まりきっているはずですが、そんな人たちにはどんな心持ちで会場に足を運んでもらいたいと考えていますか?
KenKen:初めてRIZEを観る人も多いだろうね、きっと。
金子ノブアキ:初めての人も、これまでずっとお待たせしちゃってた人たちも、とにかく期待を膨らませておいて欲しいですね。こっちとしては、間違いないものを提供できる確信があるから。めちゃくちゃ楽しいことになるはずですよ。
KenKen:俺としては、ロック・バンドというのが何だったかを思い出したいね、みんなと一緒に。多分今回、すごくシンプルに「カッコ良きゃいいんだぜ!」というところが見せられると思う。そのカッコ良さのためにテクニックが必要だったりとか、そういう他のものが全部ついてくる。「カッコいいからそれでいいじゃん」で済まされるものというか、それが許される唯一の職業がロック・バンドだと思ってるから。だからなんか、四の五の言わずにとりあえず観てみて、みたいな。なんで俺らがこれを辞めずにいるかってことはライブを観てもらえればわかるはずだし、俺はRIZEを今のキッズに見せたい。小学生とか中学生とかにも、どうせ嵌まるならこんなカッコいいバンドに嵌まって欲しい。しかも大人になった人たちにとっても、ただ懐かしいだけのものにはならないはずだし。俺らは進化してるけど、真ん中に通ってる芯は何も変わってないしね。肉付きがみんなちょっと変わってきてるだけで(笑)。だから今の個性がいっそう出てくるんじゃないかな。
―「こういうRIZEであるべき」みたいなものに縛られる必要がないからこそ、今の自分たちがストレートに出る、ということでもあるわけですね。
KenKen:うん。俺のためのRIZEでもあるし、あっくんのためのRIZEでも、JESSEのためのRIZEでもある。みんなでひとつのものを掲げてそれを目指すというより、各々がちょっとずつ違ってても、RIZEって言えるんだったらそれでいいんじゃないかなって思えてますね。今は。
Rio:いろんなものに容易に触れられる時代だからこそ、その場にいないと感じられないものというのを持っていたいし、それをみんなにも体験して欲しい。そこに尽きますかね。こっちはリラックスした気持ちでそこに臨めそうだし、絶対いいツアーになるはずだから、あとは感じに来てもらうだけです。
―そして重要なのは、このツアーを経た後、次に何をしたくなるかってことですよね?
金子ノブアキ:うん。ただ、何かしらやるんでしょうけど、それが何になるのかはまだわからないし、決めてもいないし。
KenKen:俺ら自身、動き出すことを決めただけで。これから実際にやってみないとわからないことがたくさんあるから。
金子ノブアキ:多分、JESSEがステージ上で言ったことを次に現実にしていくことになるんじゃないかな。きっと、勢いで「来年アルバム出すんで!」とか言っちゃうと思うんですよ、全然何も作ってないうちから(笑)。自分たちでもそこで「え? マジで?」みたいなことになりそうな気がする。というわけで、ステージ上でJESSEが何を言うかにも注目しておいて欲しいですね。きっと何か、予告すると思うんで。
KenKen:うん、未来日記みたいな感じでね。
Rio(サポート・ギタリスト)(Photo by cherry chill will.)
JESSEが語る、RIZEの核(コア)
3人との賑やかな会話から2日後、JESSEと話をする機会を得た。この日に4人が集合することができたならば全員同席でのインタビューも可能だったわけだが、それが不可能だったこと自体が彼らの多忙さ、RIZEが全員集合する機会の稀有さを実感させる。そしてJESSEとの会話はいつも突等な話題からスタートする。この日はTシャツの話だった。彼は、RIZEの新しいプロモーション写真の撮影の際に、THE MAD CUPSULE MARKETSのTシャツ着用で臨んだのだという。
―そのTシャツを選んだのには、何か理由があったんですか?
JESSE:理由ってほどのものではないんだけど、俺、初めて買ったバンドTシャツがヘルメット(HELMET)のやつだったのね。今回の撮影ではそれかKORN、パンテラ(PANTERA)、リンプ・ビズキット(LIMP BIZKIT)、シルヴァーチェアー(SILVERCHAIR)あたりのうちどれかを着ようって考えてたんだけど、そんな候補の中にいつもかならず入れてるのがTHE MAD CUPSULE MARKETSのTシャツだった。結局、撮影現場でみんなの着てるものの色味とかを見たうえでそれを選んで、3人でパッと並んでみた時に「これ、完全にMADじゃん!」と思った(笑)。俺、メンバーの誰が好きとかじゃなくて、バンドとしてのMADが好きだったんだよね。カート・コバーンじゃなくてニルヴァーナが好きだったのと同じように。で、そういう感覚が当て嵌まるのがRIZEなんじゃないかなって思ったんだ。あのTシャツを着てる写真を見ただけで「おっ、今もRIZEは絶滅危惧種のバンドでいられてるんだな」というのが伝わるんじゃないかと思えたし(笑)。
実際ね、楽しいことばかりじゃなくてめんどくさい部分もあるんですよ、RIZEには。どんなジャンルだろうと、家族や友達と仕事することの難しさというのはあると思うけど、ある意味それの究極形でもあるから。友達というかファミリーで、やりたいからやるっていうのは間違いないんだけど、そこでビジネスとしても成り立ってないといけない。子供の頃は、そういうのを全部切り捨ててたというか無視してたけど、今はそういうわけにもいかない。それこそ自分の場合は逮捕されたこともあったわけで、それによってどれくらいの損失が生じたのかとか、そういうことも意識しないわけにはいかないからね。そういう部分に対処していくことも、俺は自分が成長していくにあたってめちゃくちゃ必要なことだと思ってたから。もちろんRIZEの活動は早かれ遅かれ始めるべきだと思ってたし、それをやるってことになると、RIZEだからこそビジネスライクじゃないところでやりたいというのがある。そこがある意味、俺のRIZEに対してのいちばんのワガママってことになるかな。そこを失くしちゃったら、また何かがおかしくなるっていうか。本当に特殊な成り立ちをしてるバンドだからね。だけど、それこそアー写を撮るだけでワクワクさせられたりもするし。
―The BONEZも決してビジネスライクなバンドではないはずです。しかしRIZEとはまたどこかが違うわけなんですね?
JESSE:まったく違うね。自分でもようやくThe BONEZとRIZEの違うところがきっぱりと見えてきたからこそ、こうしてRIZEもできると思ってるし、両方を同時進行できると思ってるわけなんだけど。The BONEZには、ホントにいまだに中高生の頃のバンドブーム当時に夢見た夢を一つづつ叶えてるバンドだし、ずっと思春期、みたいな(笑)。たとえば、あんなにすげえエモーショナルなリアル・ミュージックをやっていたPay money To my Painですら、Kが亡くなったことで、ZEPP TOKYOのステージを踏む寸前で夢が止まってしまった。ところがThe BONEZはZEPP TOURをソールドアウトにできていて、そろそろThe BONEZの歴史のほうがP.T.Pよりも長くなりつつある。だけど今もなお夢の途中にいるバンドなんだ。もちろんビジネスとしても成立してるわけだけど、あくまでインディペンデントだしね。物販をどれくらい作って原価率をどれくらいまで抑えるかとか、キャパ何人の会場でツアーを廻るべきかとか、そういうこともメンバー全員ですげえ考える。そこでRIZEはまたちょっと違っていて、ホントに雷が鳴る時ぐらいイレギュラーな時にしか集まらないから、計画的な話なんか無理じゃん? ただ、絶対という言葉はなるべく使わないように意識してるけど、俺がRIZEを辞めることは絶対にないな、生きてる間は。
―続けるとか止めるという次元のものではないってことですね? The BONEZが続いていくものだとすれば、RIZEは発生するものと言うべきなのかもしれません。それこそ落雷みたいに。
JESSE:ホントにそうだね。それこそ俺たち、「RIZE IS BACK」とか言っておきながらまたすぐにどっかに行っちゃってたじゃん? 武道館をやって、すぐにいなくなってしまった。そこで今回の再始動は、そもそもRIZERのためだけに始めたものだった。俺たちのファンクラブであるRIZERS CLUBに入ってる人たちのためだけに。そんな中、逮捕とかもあって、どんどんRIZEは動けなくなっていったけど、それでも残ってくれるRIZERたちがいてくれた。情報更新がずっと何年もないのにも拘わらず、それでも「そういうところもRIZEっぽいよね?」って言ってくれてる子たちがいてくれた。それぐらいRIZEは突発的に動くバンドだからさ。そこを理解してくれてる人たちには、感謝の気持ちしかないよね。それでまずCLUB ASIAでのライブをやることにしたし、正直、その後もしばらくはその繰り返しでいいんじゃないかと思ってた。つまりリリースも物販もRIZERS CLUB限定でいいんじゃないかって。今までいてくれたRIZERに感謝したかったし、もちろんそこで新たにジョインしたいっていう人がいれば大歓迎だけど、当面は何もかもそこだけ限定でもいいんじゃないかって思ってた。当然そこで「それは勿体ないじゃん。もっと広く出ていくべきだよ」という声も出てくるけど、俺はべつに新しいファンを増やすべきところでもないんじゃないかなと思ってたし、それでも観に来て「なんだよこれ、すげえ!」みたいになった人たちはファミリーに入ってくれればいい。そこで広げることとかを目的にしちゃうと、また何かが壊れかねない。それがわかってるからね。だからホントに「RIZERがいるからこそRIZEが成り立ってる」ということへの感謝の気持ちのもとで始めることにしたというか。ただ、いざやり始めれば、あれもやろうこれもやろうって話にはなってくるんだけどさ。それはその都度、面白いと思えることがあればやっていけばいいかな、と。
JESSE(Vo, Gt)(Photo by cherry chill will.)
「今のRIZEは、RIZERのために動くべきだと思ってる」
―世の関心からすると「何故今なのか?」という点もあるわけですけど、そこは執行猶予とか、そういうものとの兼ね合いもあったわけですよね?
JESSE:うん。2年前には執行猶予が終わってた。もちろん最初、それがあるうちは……迷惑をかけたというより心配をかけたってことについて「やっちまったな」っていう気持ちが強かった。迷惑なんかは子供の頃からずっとかけてきたし、人間同士お互いかけてるものだし、そんな中で学んでいくわけじゃん? だから自分もそこでたくさん学んできたけど、心配をかけるっていうのは別の話だと思う。俺、ばあちゃんに「心配をけかるな。それは人の寿命を縮める」って言われてたし、ホントに誰かの寿命を縮めるようなことをしてしまったという辛さがあった。だからこそ、可能な限り最短距離のところでRIZEをやりたかった。2017年の末に武道館をやった時は、The BONEZがRIZEの動きに区切りがつくのを待ってくれてた。それが終わってからはずっとThe BONEZに集中してきて、今度はThe BONEZが10周年の節目を迎えた。そこで、RIZEを始めるのは今なのかなって。
The BONEZは、言ってみれば人の死から始まったバンド。99.9%のマイナスが生んだ0.1%の奇跡がThe BONEZだと思ってる。だからRIZEとはまったくスタートが違う。そこで俺はどっちにも120%の力を注ぎたいけど、正直、なかなか難しいところもある。ただ、生きてるなら絶対やったほうがいいものだと思ってるから、RIZEは。新しい曲を作ることとかは現時点ではまったく考えてないけど、今までの曲たちをとにかくRIZERたちに聴かせたい。その機会をいっぱい持ちたいしね。だから「みんなが聴きたかったものを聴かすよ」っていう気持ちが根源にある。少なくともRIZERは今新曲よりもそっちを聴きたいはずなんじゃないかな。俺だって自分の好きだったバンドにはそれを求めると思うしね。
―ただ、複数のバンドでの活動を並行させていくことには、なかなか容易ではない部分もあるわけですよね?
JESSE:うん。ただやりたいだけじゃ駄目なんだっていうのは常にある。たとえばあっくんが全体のバランスを見ててくれたこともあれば、事務所がその役割を担ってくれてたこともあると思う。だけど次は俺がそれを担う番なのかな、とも思ってるし。だけどね、CLUB ASIAの時はすごかったよ。約6年ぶりに雷を落とせたことは、RIZEの俺としてめっちゃ自信になった。RIZERの前だからこそそれができた気もするしね。いちばん身近な審査員みたいな存在でもあるんだと思う。あの時も、事前のリハは3回ぐらいしかやらなかったんじゃないかな。あっくんもKenKenも、その時点で「もうバッチリじゃん。これ以上リハの必要はないよ」って感じだったけど、むしろ俺の側が「いや、もう一回だけ」っていう感じだった(笑)。久しくやってなかったというのもあるし、「俺、弾きながらこれを歌うのか?」って感じの曲もあったし(笑)。ただ弾いて歌えればいいってわけでもないしね。歌詞とかももう一度しっかり叩き込んでおかないといけないし、あっくんとKenKenとの間にちゃんとグルーヴがないといけない。
―そういえば先日、KenKenは「RIZEをやる時のJESSEはアメスク時代に戻ってる」みたいなことを言ってましたが。
JESSE:それはあるかもしれない(笑)。やっぱ幼馴染と一緒にいるわけで、それは要するに俺の成長過程を少年期からずっと見られてる連中ってことじゃん? だから裸になっちゃってる。ただ、それゆえの楽しさも当然あるんだけど、孤独感みたいなものもあるんだよね。ふたつのバンドの間に立ってるのは自分だけだしさ。
―そこについてはまたいつか機会を改めて聞かせてください。ところで今回の再始動は、綿密に計画立てられたものではなく、このツアーの先の活動プランもほぼ白紙なんですよね?
JESSE:プランはまったくないね。ただ、ライブは増やしたい。自分自身が大変なことになるのは承知のうえだけど、一回やってみればどこまでやれるかっていう範囲が見えてくるはずだし。まあ、いざ始まってしまうと、俺も俺であれこれやりたがっちゃうんだけど(笑)。というのも、そうすることでスキルがどんどん上がっていって、結果的にできちゃうからで。だけど、そんな調子でずっと続けていくと、身体ってどこかで壊れるものなんですよね。ただ、去年、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとかリンプ・ビズキットのライブを観てすげえヤラレたし、あの人たちがあの年齢であそこまでやってるなら俺はもっとできるはずだと思ったんですよ。俺も今では40代だけど、40代というのは俺にとって2回目の20代みたいなもので。だからまだまだやれるし、RIZEがやれるってこと自体、めちゃくちゃ楽しみだしワクワクさせられる。これをずっとやりたかった。だけど雷だからどこに落ちるかわかんないし、どれくらい大きなものになるかもわからないんだけど(笑)。そこで誰にも迷惑かけずにやれればいいな、というのはあるけどね。
―プランが皆無だというのは、このバンドが始まった頃に似てますよね。血筋などを理由に、将来的な約束があるもとで始まっているバンドだと誤解されがちな傾向もありましたが、実際には何も決まっていないところから始まっていた。そういう意味では、ちょっと原点回帰っぽくもあるように思えます。
JESSE:そうですね。当時も今も、いちばんピュアな状態で始めたかったし、そうやって一個一個クリアしながら続けていくよ。
RIZE Tour 2024 "SOLU"
チケット一般発売 5/12(日)10:00開始!
e+:
https://eplus.jp/rize/
ローチケ:
https://l-tike.com/rizeticket/
ぴあ:
https://w.pia.jp/t/rize-pr/
6月5日(水)神奈川・KT Zepp Yokohama
6月11日(火)北海道・札幌PENNY LANE24
6月13日(木)宮城・Rensa
6月20日(木)大阪・Zepp Osaka Bayside
6月22日(土)愛知・Zepp Nagoya
6月28日(金)福岡・DRUM LOGOS
7月5日(金)東京・Zepp Haneda
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日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月24日 9時26分
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スポーツ報知 / 2024年11月24日 19時29分
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