小原綾斗が語る、傑作『(((ika)))』にまつわる表と裏、Tempalayというバンドの真実
Rolling Stone Japan / 2024年5月17日 17時30分
一聴して、Tempalayというバンドの音楽表現としてひとつの極みを見た作品だと思った。まったく予期せぬ展開のなかでものすごく人間臭い異型を成すオルタナティブなサウンドプロダクション。白目をむきながら眼の前にあるリアルな感覚を見つめたその次の刹那、瞳孔を開きながらあちら側にある情景を想像するような感覚にさえ陥るサイケデリックな音像。そして、特定の宗教観に絡め取られない死生観や観念を言語化したリリックと、それを驚くほどポップに響かせてみせるノスタルジックな親しみにまみれたメロディ。正直、もしかしたら、これをラストアルバムのつもりで送り出そうとしているのではないかと思った。もっと言えば、どこか遺言めいているとさえ感じたところもある。本作の過剰なまでの刺激、おかしみ、愛らしさ、切なさの源泉はなんなのか。フロントマン、小原綾斗(Vo, Gt)はここまで歯に衣着せぬ語り口で、Tempalayというバンドと『(((ika)))』という傑作にまつわる生々しい表と裏を語ってくれた。
【写真を見る】Tempalay
─アルバムのインタビューってけっこう受けてるんですか?
いや、これと『MUSICA』くらいですね。それも3人のインタビューではなくて、俺ひとりで。まぁ、3人だとやりづらいというのもあって。
─やりづらいというのは?
インタビューを通してメンバーの感想を聞いてもあまり意味がないというか。3年ぶりのアルバムなんですけど、『ゴーストアルバム』のときに死ぬほどインタビューを受けて、2人は俺がいるとしゃべれないこともあるだろうし。だったら、今日みたいに個別で受けたほうがいいなと。たとえば俺がこういう思いでこのアルバムを作ったということを共有しなくてもいいなと思って。これが得策だと思います。バンドを継続するうえでも。
─そう言っても、制作中はもちろんこう弾いてほしい、こう叩いてほしい、こう歌ってほしいというリクエストはするわけでしょ。
それはもちろんスタジオで一緒に作業するときはやりますけど。ただ、曲タイトルとか、歌詞とか、アートワークのコンセプトとか、そこにある思いとかは俺からは共有してないので。
─「ドライブ・マイ・イデア」(『SANDLAND THE SERIES』エンディングテーマ』)とか「預言者」とか、とか「Room California」とか「月見うどん」とかAAAMYYY(Syn, Cho)のボーカルが重要な役割を果たしている曲も多いじゃないですか。それも綾斗くんがボーカルディレクションするわけですよね?
そうですけど、でも、AAAMYYYはなんでもできちゃうので。逆に言えば俺から「これはこういう曲だから」って言って彼女のボーカルの芯が変わる子じゃないので。憑依型じゃないというか。「こういうニュアンスで」みたいなことは伝えるけど、基本的になんでもできちゃうので。そこは言うことないです。
─そこは信頼という言葉にも変換できますよね。
まぁ、そうですね。
─このアルバムを聴いて思ったのは、綾斗くんとしてTempalayの音楽表現を極めた手応えがかなりあるんじゃないかということで。前作から3年の間に「小原綾斗とフランチャイズオーナー」としても積極的な活動があったり、Tempalay以外の音楽表現における気づきがいろいろあったと思うんですけど。
ああ、はい。
─だからこそTempalayじゃないと形象化できない音楽表現の気づき──それはサイケデリックな音像やバンドグルーヴであり、そこに映えるリスナーの耳がどうしようもなくそのノスタルジアに惹かれてしまう歌メロのチャームであり──いろんな気づきやクリエイティビティの高まりがすごくあったと思うし、それがこのアルバムにダイレクトに反映されてるなって思ったんですよね。
うん。でも、どうなんですかね? 「そう言うこともできる」みたいな感じになっちゃいますね(笑)。
─というのは?(笑)。
三宅さんが言ってくれたようなことも言えると思うけど、自分としてはわかんないっすね。
─じゃあ綾斗くん個人のリアルな実感としてはどうなんですか?
リアルな実感としては、もっとよくなったと思います。
─それはアルバムの内容として?
僕の中ではうまく自分の狙いがメンバーに伝わってないなと思った部分もあって。何回もそのラリーの時間があったりして。僕もけっこう抽象的な物言いをしてしまうのでそういうことが起こるんですけど。そういうところも含めてコミュニケーション不足が出ちゃった感じはありますね。ミックスも13テイクくらいまでいっちゃったり。納期も延長しながら、本当のデッドの次の日とかまでやってそれでも納得できなかったので。まぁ、でもめちゃくちゃ向き合ったからこそ納得してないというところはあるかも。
─たしかにめちゃくちゃ向き合ったという感じがすごく伝わってくる、アルバムの端々から。
俺がそもそも体たらくなんで。ここまで音楽について考える、あきらめないという経験はあまりなかったんですよね。前までは納期のあれこれとか考えて、「これくらいでもカッコいいし、まぁいいか」というノリがあったと思うんですよ。でも、今回はあきらめたくなかったんで。だからより悔しい。「ちゃうなぁ、ちゃうなぁ」というのがずっとあったっすね。
Tempalay(Photo by Mitsuru Nishimura)
あきらめたくないと思った理由
─じゃあ、なんでこのアルバムをそこまであきらめたくないと思ったんですか?
う〜ん、なんだろうな。ムズいっすね。普通に年齢とかですかね?
─年齢以外の理由もたくさんありそうだけどね。
まぁ……武道館が(アルバム制作の)先に決まってたというのもあるかもしれないですね。というかね、ぶっちゃけると、今、瀬戸際な気がするんですよ。Tempalayがどういう方向に行くのかが。むしろこのアルバムで決まるんじゃないかと思ってたんですよ。(バンドとしての)戦い方というか。
─道筋とか。
道筋っすね。ある種、メジャーでリリースすることの仕組みとか、世の中の流れとかをなんとなくわかったうえで作ったアルバムなので。自ずと「これでどうや!」というアルバムを作りたいと思ったというのはあったかもしれないです。
─だからこそ、全19曲というボリュームになったというのもある?
これはもう、シングル曲が多いからで。俺はシングルが入ってるアルバムが嫌いなんですよ。でも、大人の事情もあるからシングルを入れなきゃいけない。そうしたらやっぱりシングル曲の倍以上は新曲を入れたかった。
─そういう意地もあった。
ありましたね。最初は、前半は新曲で、後半はシングルみたいな、A面、B面くらいの構成にしようと思ったんですけど、マネージャーから「それはあんまりじゃない?」と言われて。っていうくらいムズかったっすね。だって、シングルってすでに個体として世に出ていて、固有のキャラクターもあって、アルバムに入れるために意味を後付けするわけじゃないですか。
─最初にアルバムを作り上げてからシングルを切る場合もあると思うけど、多くの場合は綾斗の言う通りだと思います。
だからムズいんですよ。こっちはアルバム全体の構成を想像して新曲を作るので。そこに既発シングルを入れるとバランスが合わなくなってくる。だから本当にいろいろギリギリだったし、納期もパツンパツンで。1カ月で9曲くらい録ってるので。曲順も、タイトルも、ジャケットも全部ギリギリ。だから本当に「ああ、もっとこうできたな」というアルバムです。でも、音に対して最後まで向き合ったとも言える。3年前よりもいろんなことが現実味を帯びてるなと思いますけどね。
─でも、Tempalayの状況が悪いなんて全然思わないけどね。
ああ、悪くはないと思いますよ。でも、メジャー的にはべつによくないんですよ。会社ってやっぱり数字をとってなんぼなんで。前はメジャーと契約したことを武器みたいに思ってたんですよ。でも、実際はそうじゃなくて、やっぱりお互いに利用するものなんですよね。
─基本的にそういう相互関係ですよね。
そう。めちゃくちゃ基本的なことなんですけど、音楽家って意外とこれをわかってないんですよ。音楽家だから。
─うん。
そこに現実的に気づいていって。じゃあもっとこうしてもらうためにはこういう動きをしなきゃいけない、みたいな。そういうテンションが自分の中で生まれてきたというか。って感じっすね。つまり、いつだってバンドも終わるかもしれないから、こっちもちゃんとリスナー、お客さんに対して真髄を示さなきゃいけないなと。お客さんからしたらメジャーでリリースしようがどうでもいいはずなんですよ。
─もちろんそうだと思う。
そう。絶妙なバランスでこのアルバムを作ってましたね。
─でも、それが動力にもなったという。
まぁ、そうっすね。
─だから、ずっと言おうか迷ってたんだけど、これがラストアルバムでもおかしくないような熱量に満ちていると思うんですよね。
それは、本当にそうで。当初はこれを出して解散しようと思ってたんで。
─やっぱりそういう気持ちもどこかであった。
そうですね。アルバムを作りだす前は武道館で解散しようと思ってたんですよ。
─無責任な言い方としては、終わり方としてはきれいかもしれないしね。
はい。終わりは常に探してはいるんですけど。このアルバムを作る前はTempalayとしては続ける理由はもうないなという感じだったんですけど。逆に制作が始まって、回転しだしたときに少なからずTempalayというバンドに希望を抱いたというか。
─そう、それもわかるんですよ。やっぱり誰にも似てない音を、音像を、歌を生み出してるという手応えがあったんじゃないかなって。
いや、悔しさのほうが大きいですよ。というより、もっといいものが作れるなという感じですね。作ってるときは数字を意識してなかったし、作ってる状態に希望を感じてた。だから、あとから数字に落ち込むんだけど。でも、音楽家になったなって思います。でも、お茶の間の、世間のミュージシャンにはなってないなって。そこで初めて愕然とするわけですよ。完成すると、予約枚数とか数字がワッと押し寄せてくるじゃないですか。
─綾斗くんが言ってる数字ってどれくらいの規模を指してるの?
いや、次に希望が持てる数字っすね。結局、それは周りの期待値で僕らは音楽で遊んでるんで。
─でも、予約枚数云々の最初の現実的な数字はあるかもしれないけど、実際にアルバムを聴いてもらう前にそのジャッジを下すのは早計でしょう。
早いんですよ、僕は、判断が(笑)。なんとなく思い描いていた、アルバムをリリースするまでのストーリーがあったんですけど、いろいろタイミングが合わずに自分がやりたいように進めなかったという悔しさもあって。そういうのも全部含めて悔しいし、愕然としていて。でも、だからこそTempalayをやめる気が逆になくなった。やめられなくなった。
─その言葉を聞けて率直にうれしいけどね。
満身創痍で思い描いた通りのストーリーでリリースできて、手応えもめちゃくちゃあったらやめてたかもしれないですね。数字関係なく。音も全部満足した状態で、数字が付いてこなかったら、「ああ、もうしょうがない」って。
─でも、まだ全然やるべきこと、やりたいことあるわっていう。
そうそう。だからこのアルバムは気に入らないでいいんですよ。
─めちゃくちゃ楽しませてもらったリスナーとしては愛してほしいですけどね、このアルバムを。
なんか、愛せる日はくると思うんですよ。
─『ゴーストアルバム』のときもそう言ってたよね。
あのアルバムは、僕、作ってたときは愛してたんで。そこからリリースするくらいのタイミングのインタビューで「今、僕は『ゴーストアルバム』全然聴けないっす」って言ってたはずで。でも、僕は今、この『(((ika)))』というアルバムを全然聴けますよ。聴けるけど、つまんねぇなとは思う。
─めっちゃ面白いアルバムだよ。
だから、もっとできるっす(笑)。ぶっちゃけ、今年中にはもう1枚アルバムを出すっすね。
─おおっ!
同時に、「小原綾斗とフランチャイズオーナー」の制作にもすぐに取りかかりたい。それくらい僕は滾りすぎてますね。滾りすぎて周りが追いついてない状況ですね。「もっとついてこいよ!」って思う。
─その前に、このアルバムのどの曲かが飛び抜けて広がっていく可能性だって俺はあると思うけどね。
うん、それはわからないと思います。可能性はあるとは思うんですけど、ただアルバムというアートフォームとして納得してないから。だから、すぐに次に取りかかりたいってなってる。まぁ、そもそも僕らが3年もアルバムを出さなかったのが悪いんですけどね(苦笑)。既発シングルはライブとかでも飽き飽きしちゃってるんで。でも、これから僕らを知る人のほうが多いと思うし、その人たちにとっては新しいものだから。楽しんでほしいですけどね。
Photo by Mitsuru Nishimura
次は根本的な録り方からちょっと変えようと思っている
─話は前後するけど、アルバムの全体像は最初どういうものを描いていたんですか?
最初はアンビエントなテンションというか。今回、仏教的なテーマなんだけど──アンビエントと言ってもいろいろありますけど、とにかく音像しかり、トータルとしてネイチャーなイメージが見えたらいいなと思ってたんですよ。でも、それも作っていくなかで、そっちでいくのは難しいんじゃないかと思ってきて。それに関してもシングルが邪魔だった(笑)。
─このアルバムは、1曲目の「(((shiki-soku-ze-kuu)))」に始まり、ラスト「))kuu-soku-ze-shiki(((」の閉じ方まで、特定の宗教観からはみ出た死生観であり観念というものがこれまで以上に明確に表現されてると思うんですよね、音楽として。
「結局、この世ってなんなんだ?」みたいなことはもともと興味があったし。じゃあ作品を作るということ自体の意義だったり、根本的な存在理由、死ぬということに対しても自分なりに見えながら作ってた感じはありましたね。この1年、本当にいろいろと思うことがあったんで。AAAMYYYに子どもが生まれたり。子どもが生まれて、あの子はマジで人格が変わったんですよ。それは自然構造に従っている感じがして。
─命を繋いでいくことだったり。
そうそう。それって抗えないわけで。悪い意味ではなくて、そういうところに結局巻き込まれていってる気がするんですよね。
─生物として自然なこととしてね。
はい。それって物理学とか飛び越えて、俺らくらいの脳みそじゃたどり着けないようなレベルの大きな流れじゃないですか。
─間違いない。
そういうところに流れていってるなという感覚を持っている。っていうテンションだったんですよ。
─それはすっごい、伝わります。このアルバムを聴いて。
っていうときに「色即是空」という言葉を知ったんで。言葉としては知ってたけど、意味までは調べてなかったんですけど。意味を調べたときに自分のなかでしっくりきて。入口はそうだったし、新曲を作ってる最中もその方向性でいけてたんですよ。なぜなら、シングルのことなんてすっかり忘れてたから(笑)。そこに「アルバムにシングルはどう入れるの?」って言われたときに「そうか!」ってなって。それで、このテーマ性は包括できないなって。そういう悔しさなんですよ。
─他の曲の存在でシングルに役割を持たせているとも思ったけどね「月見うどん」とか「湧きあがる湧きあがる、それはもう」とかもそうだけど。
そうですね。
─でも、当初はアンビエントを思い描いていたサウンドプロダクションの性格もシングルを入れなきゃいけなくなったときに変わっていったという。
そうです、そうです。
─そのうえで次のアルバムのことも考えてるし。
そうっすね。次は根本的な録り方からちょっと変えようと思っていて。スタジオか家を丸々1カ月くらい借りて、そこに籠もってポスプロして。いつだってレコーディングに取りかかれるような状況を作って、みたいな。なんかね、「何をもってTempalayなんだろう?」みたいなことを思っていて。
─TempalayをTempalayたらしめるのは何か、といいうね。
そうそう。今回、当初はライブで再現することを考えてTempalayとしてはかなり引き算していたんですけど。でも、やっぱりむず痒くなっちゃって。それで、徐々に足されていって。音数が少ないのが主流になっているなかで、「今さらそっちにいっちゃう?」みたいな自分から自分へのツッコミもありつつ。そういうありもしない目線に対して右往左往していた時間はけっこうあったかもしれない。
─その言葉を踏まえて言うと、「今世紀最大の夢」(真夜中ドラマ『地球の歩き方』オープニングテーマ)みたいな曲ができたことは素晴らしいことだと思うし、TempalayをTempalayたらしめるオルタナティブな様相の中にいるからこそ、このシンプルさが際立つと思うし。
うん。結局、「今世紀最大の夢」くらいシンプルにしてやっと世間の人は「いい」って言うんだってわかったというか(笑)。
─でも、異型のバンドがこれを鳴らしてるのが感動的なんだと思うけどね。
それはあるっすよね。
─あとは、どんなにオルタナティブな曲でも、やっぱりメロディの求心力がすごいですよ。
ありがたいですよ。めっちゃいいですよね?(笑)。でも、ムズいっすよね。俺自身、「何を求めてるの?」って言われたら、べつにないんですよ。どれくらい売れてたら自分が満足するかって言われると──友だちにもこの前、言われたんですけど──要は執着がないんですよ、俺は結局。
─本当は金にもそこまで執着してないし。
そうそう。売れるってことにも。でも、そのプロセスがなんか好きなんですよ。
─この音楽表現を楽しんでもらうための伏線を張ったりね。
そうそう。「これをこうしたらどう見られるんだろう?」って想像するのは楽しいんですけど。ただ、結局、「どれだけ売れたいの?」って訊かれたら、僕はそんなに積極的じゃないんで。そう考えると中途半端なんだよね。
─音楽で、そのアートフォームで人を驚かせたり、笑わせたり、泣かせたりすることのほうに興味がある。
うん。
─それをなるべく多くの人に楽しんでほしいと思うから売れたいと思う。でも、それは実感としてあとから付いてくるものっていうね。
そうっすね。そういうことがやっと自分で理解できるようになったかもしれないです。だから悔しいし、楽しいしい、ツアーもお客さんに定石じゃないものを見せたい。っていう戦い方を見せつつ、外もみつつ。今までフワッとしていたことが、なんとなく自分で固まりつつあるのかなって、話しながら思いました(笑)。遅いっすよね。10年やってますから。
Photo by Mitsuru Nishimura
─いや、綾斗くんはこれがリアルでいいんじゃない?
うん。
─ここからもっと、さらにどんどん色っぽくなると思う、音楽も、人間としても。
すごいいいこと言ってくれますね(笑)。個が見えやすいものが如実に受け入れられてるような気がするんですよね。それこそBAD HOPがABEMAでやってた番組あるじゃないですか。
─「1000万1週間生活」ね。めちゃくちゃ面白かったよね。
面白かったし、あの人たちのこと好きになったんですよ。ぶっちゃけ、音楽自体は聴いてなかったんですけど、あの番組で彼らの個が見えたうえで聴いた曲がよかったというか。
─ラッパーは特にその流れにもっていきやすいよね。
そうなんですよね。トラックは別の人が作るってなったときに、リリックは自分を出す以外ないじゃないですか。だから、ここからTempalayももっと個が出るように削ぎ落としていく作業になるんじゃないかなと思いますけどね。
─スリーピースバンドとしてのTempalayの生々しい個が見えるアルバムとも言えるのかなと思いますけどね。「愛憎しい」の〈あのときせいいっぱい生きていたもの同士 永遠に〉というフレーズはあきらかにメンバーに向かってると思うし、だからこそ「これ、ラストアルバムにするつもりなのかな?」とも思ったんだけど。
これは、宮崎駿が、高畑勲に向けた弔事から取ったんですよ。
─ああ……!!
「パクさん。僕らは精一杯あのとき生きたんだ」って。
─ああ、それで「愛憎しい」か。宮崎氏の高畑氏への愛憎が、『君たちはどう生きるか』を作らせたわけで。
そうそう。で、この曲はアルバム制作の最後に作ったので。なんだかんだで、このアルバムは3人で作ったという感覚があったので。いろいろ思うことはありますね。鳥山(明)さんが亡くなったのが「ドライブ・マイ・イデア」をリリースする1週間前だったり。
─そうだよね。鳥山さんの訃報に接して思うこともめちゃくちゃあっただろうし。
うん、そうですね。結局、あの人は自分の顔じゃなくて作品をもって自分を提示したじゃないですか。だから、こんなに世界中の人が悲しんでいて。結局、最後はそこに尽きるなって。音楽家というくらいだから。
【関連記事】藤本夏樹が語る、Tempalayを通して見る「音楽」のあり方、果敢な実験精神
【関連記事】AAAMYYYが語る『(((ika)))』のサウンドメイキング、「大人になったアルバム」の意味
Photo by Mitsuru Nishimura
『(((ika)))』
Tempalay
ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE
発売中
配信リンク:
https://tempalay.lnk.to/ika_Album
Tempalay Tour2024 ”((ika))"
5/17(金)東京・Zepp Haneda
5/24(金)北海道・Zepp Sapporo
5/26(日)宮城・仙台PIT
5/29(水)愛知・名古屋Zepp nagoya
5/31(金)福岡・Zepp Fukuoka
6/1(土)広島・ブルーライブ
6/9(日)新潟・LOTS
惑星X
10/3(木)東京・日本武道館
https://tempalay.jp/
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