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ゲスの極み乙女インタビュー 「踊る」という原点回帰、「ハードモード」でも音楽を続ける覚悟

Rolling Stone Japan / 2024年5月22日 18時0分

Photo by Kentaro Kambe

4月2日にメジャーデビューから10周年を迎えたゲスの極み乙女が、通算6作目となるニューアルバム『ディスコの卵』を完成させた。前作『ストリーミング、CD、レコード』からは4年ぶり、その間に初のベストアルバム『丸』を発表し、結成10周年記念公演での改名を経て完成した新作は、「踊る」というバンドの原点にもう一度立ち返ったような印象を受ける。もちろん、2020年リリースの「YDY」以降の楽曲が収録された全14曲はこれまで以上に幅広く、新たなチャレンジも詰まっていて、特にアルバムのオープニングを飾る名曲「Funky Night」の風通しのよさが現在のバンドの雰囲気を明確に伝えている。

川谷絵音と休日課長が複数のバンドで活動する一方、ほな・いこかは女優さとうほなみとしてテレビや映画に引っ張りだことなり、ちゃんMARIもFUKUSHIGE MARI名義で制作された映画『月の満ち欠け』の劇伴で日本アカデミー賞の優秀音楽賞を受賞と、それぞれがそれぞれの領域でも活躍し、さらなるアベンジャーズ化の進む4人が集まったときに生まれるのがこの軽やかな空気だというのは、とてもスペシャルなことだ。

【写真ギャラリー】ゲスの極み乙女 撮り下ろし(全23点)


川谷絵音(Photo by Kentaro Kambe)


休日課長(Photo by Kentaro Kambe)

ー前作『ストリーミング、CD、レコード』がコンセプチュアルな作品だったのに対して、今回はストレートに「踊る」という部分にフォーカスされている印象で。「原点回帰」という言葉を使っちゃうのはちょっとシンプルすぎるなと思いつつ、とはいえベストアルバムが出て、丸が取れてから最初のアルバムだし、原点回帰的な側面は少なからずあるかなという印象でしたが、いかがでしょうか?

川谷:ベストアルバムがあったので、昔の曲を聴く機会も多かったし、去年のライブハウスツアーのときも新しいアルバムは出してなかったから、昔の曲をやることが多かったので、昔の感じも取り入れつつ、でも今っぽいこともやろうみたいな、一番健康的な作り方ができたんじゃないかなって。奇をてらってめちゃくちゃ新しいことをやろうって感じでもないけど、でもちゃんと新しいものを作れたと思います。

課長:これまでできてなかったことも随所に入れましたし、他のメンバーの演奏に感化されてやった部分もあるし、個々に成長してるのもすごく感じて、めちゃめちゃ面白いアルバムになったなって。より自然に体が揺れる感じの踊れるアルバムっていう印象もあるので、とてもいい形でまとまったんじゃないかと思います。

ちゃんMARI:今回は作ってる期間が長かったんですよね。一曲一曲は短期集中で、ガッと集中して録ってはいるんですけど、最初に出した「YDY」からは結構時間が経っているので、その時々の気持ちが詰まってる。あとは自分にできることが研ぎ澄まされていってる感じというか、「このときにこう思った」っていう、その瞬間を閉じ込めたいと思って、鍵盤を弾いたり、コーラスを歌ったりしていたような気がします。

いこか:ちゃんMARIも言った通り、今回はキュッと録って、間が空いて、またキュッと録って、間が空いて、みたいな録り方をしてたので、「この曲たちが集まったらどうなるんだろう?」っていうのは、自分の中ではあんまり想像ができなかった部分があって。でも出来上がったアルバムを順番に聴いていくと、すごく絶妙なバランスになっていて、全体的に今回は削ぎ落とされて、すごくソリッドなイメージになったなと思います。


ちゃんMARI(Photo by Kentaro Kambe)


ほな・いこか(Photo by Kentaro Kambe)

―これまでは結構早めの段階でアルバムタイトルを決めて、そのイメージに沿ってアルバムを作ることが多かったと思うんですけど、今回はどうでしたか?

川谷:タイトルを決めたのは去年の7月です。「ハードモード」とか「歌舞伎乙女」はできてたけど、まだ最初の3曲はなかったし、「晩春」も「作業用」も「DJ卵」もない状態のときに付けました。その頃ちょうどビヨンセのアルバムを聴いてて、海外でディスコやハウスを取り入れてる人が多いなって感じがあったじゃないですか? それでその時の雰囲気的に「ディスコを改めてやりたいね」みたいな感じになって。でも「ディスコ」って言い切っちゃうと、「ディスコじゃないじゃん」とか言われるかもしれないから、「いや、これは卵なんで」って言えば何でもOKっていうか、広く捉えてもらいたいなって。卵がジャケットになったらかわいいだろうなとか、バームクーヘンみたいな変な出し方をしやすいんじゃないかとか、そういう理由もありましたけど。

―バンド名からは丸が取れたけど、丸感のあるジャケットでありタイトルは残りましたよね(笑)。でも確かに『ディスコの卵』イコール「踊る」ということの根源みたいな、そんな捉え方もできそう。

川谷:シンプルに作りたかったというか、『ディスコの卵』はわかりやすいじゃないですか。誰が見ても踊れるアルバムなんだろうなって思う感じのものを作りたかったんです。


Photo by Kentaro Kambe

―原点回帰ということでいうと、『ディスコの卵』というタイトルと、あとは「歌舞伎乙女」が大きくて。ミラーボールが卵になってるジャケットも含めて、このタイトルが「キラーボール」を連想させるし、「歌舞伎乙女」の間奏にショパンの「華麗なる大円舞曲」が挿入されてるのも、同じくショパンの「幻想即興曲」を用いた「キラーボール」を連想させます。ちなみに、去年の「歌舞伎乙女ツアー」のときに新曲としてやったのは「ハードモード」だったと思うんですけど、「歌舞伎乙女」はいつ作ったんですか?

川谷:ツアーでやろうと思ってツアー前に作ったんですけど、あまりにも難しくて(笑)。直前でできたから練習時間も足りなかったので、同じタイミングで作っていた「ハードモード」の方をやろうってなりました。


Photo by Kentaro Kambe

―「いよー!」っていうかけ声が入っていたり、「和」な感じと情報量の多さからは『両成敗』の頃を思い出したりもしたんですけど、どういうイメージで作りましたか?

川谷:ツアーの表題曲のイメージだったので、歌舞伎っぽくしようと思ってギターのフレーズを作ったり、かけ声みたいなのを入れたり、ライブをやりながら曲を作ってたときの感覚に近かったですけど、途中からライブを意識しないで作り始めたので、それで難しくなっちゃって。コードも難しくて、『両成敗』のころの僕らだったら作れなかった曲になったなと思います。プログレッシブさもあって、ジャジーな感じもあって、ショパンもあって、ちょっとふざけて作ってるけど、ひさしぶりに新曲を出すならこれぐらいやった方がいいかなって。

課長:「歌舞伎乙女」は合わせるのがすごく難しい曲なんですけど、演奏の中身のかっこよさがすごく詰まってるし、このごった煮感が好きですね。

いこか:この曲は展開がもう本当に……ひどい(笑)。たくさんトリッキーな展開がある曲だし、ショパンもわりと直前の無茶ぶりだったもんね。しかもわりと長いこと演奏するので、これはまだライブでやるのはしんどいんじゃないかって。


Photo by Kentaro Kambe

―「華麗なる大円舞曲」を入れようと思ったのはなぜだったんですか?「歌舞伎」がテーマだから「円舞曲」にした?

川谷:それもあるけど、ほかにも何か理由があった気が……それが出てこなくて(笑)。

―思い出したら教えてください(笑)。ちゃんMARIさんにとっては慣れ親しんだ曲ではある?

ちゃんMARI:わりと親しみのある曲というか、弾いたことはなかったんですけど、よく聴いてたし、とっつきやすくはありました。すごくいいトレーニングにもなりましたけどね(笑)。

川谷:ライブでちゃんMARIが一人で弾いてるときに僕たちは何をやるんだって話ですよね。「キラーボール」の間奏より全然長いから。

いこか:……踊る?

ー見たいかも(笑)。


Photo by Kentaro Kambe

遊び心と「キュンとくるゆるさ」

―『ディスコの卵』というタイトルを決めた後にできた頭の3曲は、このアルバムの「踊る」という色をすごく規定していて、特に「Funky Night」が一曲目に選ばれていることが、今のバンドのモードを象徴している感じがしました。踊れる曲だけど、穏やかな曲でもあって、いい意味で肩の力を抜いて、ゲスでのバンド活動を4人それぞれが楽しんでいるような雰囲気も感じて、めちゃめちゃいい曲だなって。

川谷:軽い曲を作りたいっていうのがあったんですよね。こういうディスコっぽい4コードのループみたいなのはゲスでは近年なかったので、ちょっとイージーに聴けるものでありつつ、ポップスでもあり、ちゃんとゲスっぽさがある曲というか。こういう曲はそんなに流行ってるわけではなくて、そんなにエモいコード進行でもないし、だいぶ好き嫌いが分かれる曲だろうなっていうのはあるっちゃあるんですけど、でもこういうのが一曲目に入ってることがアルバムとして重要で、悩みはしたんですけど、でもやっぱりこれかなって。最初のコーラスから始まる感じは、もともと曲の中の歌ってるところを逆再生にしたら面白かったから、それを人力で歌ってもらったんです。普通に逆再生してもああいう風にはならなくて、でもあれを人力で歌うと変な感じになって、違う言語の違うメロディに聴こえるから、それを試してみました。変なところで逆再生のコーラスが鳴ってたり、ちょっとふざけながら作った感じもあるので、そういうのも面白かったです。



―”Baby I love youの歌メロで くるりと回ったあの日”とか、遊び心は随所に感じられます。そういう曲を一曲目にするのが重要だったっていうのは、どんな理由でしょうか?

川谷:本当だったら「シアラ」とかを一曲目にした方がいいのかもしれないし、お客さんが好きそうなものを置いた方がよかったのかもしれないですけど、でも一番肩の力が抜けてるのが「Funky Night」で、これはちょっとBGMっぽい曲というか。海外ではイージーリスニング的なものも流行っていて、「日本にはそういうのがない」みたいな話がXの中では行われてるじゃないですか。リアルに僕の周りにいる人からは全く聞かない話なんだけど(笑)、でもいろいろ考えて、こういうのがいいのかなって。海外だと未だに「ロマンスがありあまる」とかがすごく再生されてて、でもまた同じことはやりたくなくて、エモめの歌にはせずに、どうやったらちゃんと持ってけるかなっていうのをやりたくて。「Funky Night」を一曲目にすることで、「こういうのがこのアルバムでやりたいことです」っていうのを見せたかったんです。

ちゃんMARI:アルバムを出すたびに思うんですけど、入ってる曲がどんどん自分に近くなってるというか、自分が好きで聴いてるものとほとんど変わらなくなってきてて、そういう意味では、今回も本当に好きなアルバムだなと思ってて。曲で言うとやっぱり「シアラ」とか「Funky Night」がすごく近い。「Funky Night」はそんなに熱くもなく、ちょっと生温かいくらいのテンションというか、そういうのがやっぱり好きなんだなって。「シアラ」は歌メロもいいけど音が本当に好きなんですよね。


Photo by Kentaro Kambe


Photo by Kentaro Kambe

ーどんな部分にこだわりましたか?

ちゃんMARI:今ってプラグインとかもいっぱいあるし、打ち込みもできるし、それで曲作りはできるんだろうけど、生でちょっとザラザラした感じが良かったり、本当にちょっとした質感の話ですね。プラグインも使ってますけど、「Funky Night」と「シアラ」はローズを使ってて、そういうのが合うなと思って。

いこか:「Funky Night」はすごくゆるい感じですけど、「ゲスの極み乙女ってもともとどこかゆるいバンドだよな」みたいなところはあって。派手にふざけるか、ゆるっとふざけるか、みたいな違いというか(笑)。しかも今回はそこにかわいさがプラスされてて、すごいキュンとくるゆるさだなと思ってて。「歌舞伎乙女」的な、派手にふざけるときもあるけど、今回は「Funky Night」が一曲目に来てる感じがすごくしっくり来ました。構えずに聴けるというか、ふと聴いたときにずっと耳に残って、またもう一回聴きたくなるようなアルバムだなって。

課長:「Funky Night」はすごく軽快ではあるんですけど、軽快さと同時に奇妙さもあって、それはゲスのみんなの人間性、いい意味で変わった部分がすごく反映されてる感じがして、「ただ穏やかな曲を作りました」って感じには全然なってないのがすごいなって。そういう独特さもありつつ、でも最終的にちゃんと体が揺れるような軽快さがあって、それが一曲目にあるっていうのがおっしゃる通り、アルバムのイメージを作ってると思います。

―このテンポ感と音数でグルーヴを出せるのは、スキルも必要でしょうしね。

課長:そうだと思います。この小気味の良さを出すには、タイトな演奏ができないとっていうところもあるだろうし、コーラスがあれだけ凝ってても、ちゃんと軽快になってるのは、やっぱりゲスでしかできない1曲なのかなってすごく思いますね。

それでもバンドを続けていく覚悟

―途中でちゃんMARIさんが挙げてくれた「シアラ」は非常にゲスらしい一曲ですよね。これは女性の名前シリーズの最新曲という位置づけであってますか?

川谷:そうです。これはかなり気合いを入れて作りました。肩の力を全く抜いてないというか、肩の力を入れて作りました(笑)。コード進行も細部までこだわって作ったし、間奏のプログレッシブなところもキメキメで全部作って、女性の名前シリーズはいい曲にしないといけないっていうのがあったので、ちょっと語弊があるかもしれないけど、この曲だけ特に頑張ってメロディを作ってます。



―ちゃんMARIさんが言ってくれたように、音自体にもこだわった?

川谷:そうですね。4人ともバラバラにちゃんと聴こえてくるっていうか、(井上)うにさんのミックスも大きいですけど、ちゃんと音の住み分けができていて、別に仰々しいことをやってるわけじゃないんですけど、ちゃんと4人の音として聴こえてくる。これはちょっとエモめのコード進行ではあるんですけど、今までのエモさとは違う感じで、おしゃれさもあるし、複雑さもあるし、僕らの好きなことが詰まっていて、これができたときは4人とも「めっちゃいいね」ってなったので、やっぱりこういうのが好きなんだなっていう感じの曲ではあります。

いこか:うん、ここに名曲がいる。

川谷:でもこれもめっちゃむずいです(笑)。

―「シアラ」は歌詞の面でも「踊る」がキーワードになっていて、さらに言うと「泣きながら踊る」という側面が「シアラ」であり「ゴーストディスコ」にはすごく端的に表れていて、そういう意味でも非常にゲスらしい曲だと思いました。

川谷:「泣きながら踊る」っていうイメージはもちろんあって、「ゴーストディスコ」は特にそのイメージで作ってたので、ビートが入ってきたら途端に走り出したくなる、みたいな焦燥感は過去の曲に通じるところもあるかなと思います。


Photo by Kentaro Kambe

―「ゴーストディスコ」は徳澤青弦さんのストリングスも印象的で、「悪夢のおまけ」はMELRAWがサックスを吹いていますが、他にもゲストはいますか?

川谷:「DJ卵」はPARKGOLFと一緒に作りましたけど、でもそれくらいです。今回管弦もあんまり使ってないので。ちゃんMARIのProphet(シンセ)を使ってたら、管弦を入れなくても、わりとそれだけで成り立っちゃうんですよね。最初は「Funky Night」に管を入れてもいいかもと思ったんですけど、やっぱりいらないかって。

ちゃんMARI:Prophet Xを『好きなら問わないあたり』から使ってるんですけど、優秀すぎて、めちゃくちゃ割合増えてます。

―他に機材だったり、制作方法にこれまでとの違いはありましたか?

川谷:「作業用ディスコ」と「作業用ローファイ」に関しては自分たちのスタジオで全部完結させて、外のスタジオを使わずにやりました。これまでプリプロだけやってたんですけど、そこで録りもやって、課長がエンジニアをやってくれて、ミックスだけ外部にお願いしたので、それは新しかったですね。


Photo by Kentaro Kambe

―最後の曲を「ハードモード」にしたのは何か理由がありますか?

川谷:迷ったんですけど、歌詞的に何か次に繋がるかなっていうのもあったし、去年のツアーで唯一やってた新曲ではあったので。インディゴの『哀愁演劇』で「プルシュカ」を最後にしたのが結構よかったなと思って、今回もちゃんと締まる曲がいいなって。

―「歌詞的に次に繋がる」というのはどういう意味合いですか?

川谷:「Funky Night」のちょっとふわっとした感じで始まって、だんだん濃くなっていって、最後は自分の主観的な歌詞になるっていう流れがすごく良かったのと、「晩春」に”あと何年歌えますか"って歌詞があったり、未来に対して悲観的な話があって、その流れから「ハードモード」に行って、これから自分にとってのハードモードが待ってるっていう自戒も込めました。「晩春」には”インプットの地獄をループしてばかりの人生だ"っていう歌詞もありますけど、35歳になって、あんまりインプットを楽しめなくなってる自分がいて。アウトプットをするためにインプットしてる自分がいたり、仕事で話すからヒットチャートを聴いたり、実際ちょっときついんですよね。それが何かの礎になって音楽ができたりするし、結果よかったりもするんですけど、そういう自分の中の迷いのループみたいなものが結構歌詞に入ってて、その感じがこれからどんどん強くなっていくんだろうなっていうのも含めて、「ハードモード」を最後にしました。

―「Funky Night」はいい意味で肩の力が抜けた感があるけど、その一方では音楽を続けるうえでもちろんハードモードになることもあって、それでもバンドを続けていく覚悟を作品に込めている感覚もある。

川谷:このループからは抜け出せないし、抜け出そうとも思ってないところもあったりするし、諦観というか悟りみたいなものもあるじゃないですか。主観的な自分じゃなくて、第三者的な自分になると悟っちゃう。「これはこういうもんだから」みたいな。でもそれと同時に人間は執着もあるじゃないですか。そのアンバランスな感じというか、「悟ったんだよね」と言いつつ、ホントは悟れてない。「こういう感じだよね」って達観した自分がいるんですけど、でも完全にはそうはなってなくて、達観する考えもわかるのに、なぜか執着しちゃうものがある。バンドはそういうものだと思うんですよ。全てのバンドがゆらゆら帝国みたいに「完成したから」みたいな……。

―あんなに美しくは終われないよね。

川谷:あんなのは絶対に無理じゃないですか。でも達観することが100%いいことだとも思ってなくて、執着がいい方向に行くこともあるし、人間味っていうのは執着から出て来たりもする。全ての人間が達観した考えを持ってやってたら……みんな片岡鶴太郎さんみたいになるのかなって。それは困るじゃないですか(笑)。


Photo by Kentaro Kambe

―その両面性みたいなものもゲスがずっと鳴らしてきたものというか、それこそ「泣きながら踊る」っていうのもきっとそういうことですよね。諦念はあるんだけど執着してしまうことと、喜びと悲しみがないまぜになって踊る感覚っていうのは、どちらもある種の矛盾を内包してるんだけど、でも物事の本質は常にそういうもののような気がするし。

川谷:そうですね。だからたまに「めっちゃ盛り上がってるけど、これ歌詞悲しいよ」とか思うときもあるんですけど。

―ゲスあるあるですよね(笑)。

川谷:めちゃくちゃ盛り上がってるけど、そんなに明るい歌詞じゃないというか、明るい歌詞はほぼなくて。だからゲスの場合はお客さんもお客さんで矛盾を抱えてライブを見てるのかもしれない。そこまで歌詞を深く考えてない人ももちろんいるだろうけど、僕らより詳しいくらい、歌詞についてすごく考えてる人もいて、そういうお客さんたちがワーッと盛り上がってるのを見ると、矛盾がある人の方が美しいというか、自分も矛盾してるし、人も矛盾してるんだなって思うとすごく安心するので、ライブはそういう場なのかなって。そうやってゲスの極み乙女がずっとやってきたことが実を結んだなって、去年のライブハウスツアーの一日目にすごく思ったんです。名古屋ダイアモンドホールでものすごく盛り上がって、声出しがOKになったのも大きかったですけど、バンドをやっててよかったなと思ったので、あの経験もアルバムには反映されてるのかなと思いますね。

―ライブ映えのする曲が多いアルバムなのは間違いなくて、7月から始まる全国ツアーのタイトルも「ナイトクラビング」だから、きっとより踊れるライブになるでしょうね。

川谷:名古屋ダイアモンドホールのライブをもっと進化させたいですね。こんなにライブハウスを回ること自体がすごくひさしぶりだし、近いところでやれるから、自分たちも楽しんで、お客さんにも楽しんで帰ってもらえるようなツアーになればなって。

【写真ギャラリー】ゲスの極み乙女 撮り下ろし(全23点:記事未掲載カット多数)



ゲスの極み乙女
『ディスコの卵』
2024年5月22日(水)リリース
再生・購入:https://gesuotome.com/feature/6th_album

〈収録曲〉
M1 Funky Night
M2 ゴーストディスコ
M3 シアラ
M4 悪夢のおまけ
M5 晩春
M6 作業用ディスコ
M7 YDY
M8 DJ卵
M9 スローに踊るだけ
M10 歌舞伎乙女
M11 ドーパミン
M12 Gut Feeling
M13 作業用ローファイ
M14 ハードモード

ゲスの極み乙女 ワンマンツアー 2024 「ナイトクラビング」
2024年7月4日(木)北海道 PENNY LANE24
2024年7月6日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
2024年7月8日(月)香川県 高松festhalle
2024年7月9日(火)福岡県 DRUM LOGOS
2024年7月11日(木)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
2024年7月12日 (金)京都府 KYOTO MUSE
2024年7月15日(月)台湾 Zepp New Taipei
2024年7月19日 (金)青森県 青森Quarter
2024年7月20日(土)宮城県 SENDAI GIGS
2024年7月21日 (日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
2024年7月23日(火)新潟県 NIIGATA LOTS
2024年7月30日(火)静岡県 LIVE ROXY SHIZUOKA
2024年8月6日(火)鳥取県 米子AZTiC laughs
2024年8月7日 (水)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
2024年8月8日 (木)愛知県 DIAMOND HALL
2024年8月20日(火)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

ゲスの極み乙女 オフィシャルサイト: https://gesuotome.com/

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