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トーンズ・アンド・アイが語る、PiNKからの影響、「傷つきやすさ」を歌う理由

Rolling Stone Japan / 2024年5月22日 18時45分

トーンズ・アンド・アイ

待望の初来日が控えているトーンズ・アンド・アイ。トーンズ・アンド・アイは世界30ヶ国のミュージックチャートで1位を記録し、5度のARIAアワード受賞を誇るオーストラリア出身のアーティスト。今回はGREENROOM FESTIVAL24と初単独公演でのライブが決まっている。一度聴いたら忘れられない歌声、傷つきやすい感情を描いたリリック、幅広いサウンドの楽曲は、あまりにもオリジナルで、ポップ・ミュージックという枠を大きく広げている。彼女の曲が支持されているのは、圧倒的な共感を呼ぶある種のアンセム感にもある。ストリート・ミュージシャンとして活動している時に見い出され、2ndシングル「Dance Monkey」で大ブレイク。以来、100億回以上のストリーミング、マルチプラチナの獲得、ツアーの成功、アワードの受賞など、世界中で数多くの記録を塗り替えてきた。

ー今回の来日は初来日ですよね。日本でやりたいことはすでに決めていますか?

実はライブ後に延泊して、いろいろ見て回ろうと思っていて。夫が昔、交換留学生として日本に住んでいたから、夫のお気に入りの場所にも行きたいし、富士山にも行きたいし、今のところ人からのお勧めしかわからないけれど、とても楽しみにしている。

ー今回、自分のショーとGREENROOM FESTIVALへの出演になりますが、どのようなライブになりそうですか?

日本での初のライブだから、みんなが楽しめるものにしたい。自分のショーとフェスのライブの違いで言うと、自分のショーは時間が長いからトークもできるし、親密な雰囲気でやるからお客さんとのつながりもできる。フェスの方はとにかく楽しく、バンバンバンって感じでどんどん進めていきたい。だからトークは少なめになるかな。

ー今年の2~3月にPiNKのツアー「Summer Carnival Tour」にサポートアクトとして参加しましたよね。PiNKは自分にとってどのような存在ですか?

PiNKは間違いなく私が若い時にずっと聴いてきたアーティストで。実は学校で行われた歌のコンテストで、最初に歌った曲はPiNKの「Dear Mr. President」だったの。彼女のサポートアクトを務めることになった時は信じられなかったけれど、彼女と話をした時に、「あなたは最高のソングライターだから、一緒に曲を作りたい」って言ってくれて。それも本当に信じられないことだった。彼女は素晴らしい女性で、誰に対しても優しくて。バックステージでも一緒にケータリングで食事をするぐらいフレンドリーだった。

ーPiNKとのツアーから何かインスピレーションはもらえましたか?

彼女のこれまでのキャリアは、私からした夢のような、本当に素晴らしいものだと思っている。彼女のようなキャリアを私はまだ積めていないんだけど、彼女のことは私が将来なりたいアーティスト像のお手本だと思っていて。5年後でも10年後でもいいから、彼女のようなライブができるアーティストになりたい。今回の彼女のツアーにしても、オーストラリアをツアーした女性アーティストのチケット・セールスの記録を塗り替えているわけで。彼女はパフォーマーとしても素晴らしいし、周りの人たちの居心地も良くしてあげるし、才能もスゴくあるアーティスト。私は彼女からインスピレーションをたくさん受け取ることができたと思っている。

ーPiNKと一緒に曲を作る話もしたんですね。

彼女のアルバムを一緒に作ろうって言われた。トラックで一緒に歌うのか、曲作りを手伝うのか、どういう意味なのかはまだわかってないんだけど。ただ、私はソングライターだし、他のアーティストの曲を作るのは珍しいことじゃないから。それでも、PiNKのようなアーティストにお願いされるのは、光栄でしかないと思っている。

ー日本でのライブはバンドセットでやるのですか?

今回、コーラス隊は連れていけないんだけど、バンドは連れていくつもり。私のライブはけっこう楽しくて、ノリが良いものだけど、ボーカルにかなりの重点を置いていて。強いボーカルで、曲の中のストーリーテリングを大切にしている。ただ、お客さんの誰もが私の曲を知っているとは限らないから、2曲ぐらいカバーソングをやることで、みんなとユニティを作っていきたい。みんなで歌って、楽しめるものにしたいから。


「ストリート・ライブは私の人生の中で大好きな一部だった」

ーちなみに、ライブの衣装がいつもカッコ良いですよね。ジャケットとパンツの時もあれば、スポーティな時もあって、スタイルのバリエーションの幅がスゴく広い印象があります。衣装はいつもどのように選んでいるのですか?

最近はけっこうスパンコールとかアクセサリーを付けるようになったけれど、以前の私はもっと控えめというか、上手くハマっていない感じがして。それが今では何でも着るようになったし、カラフルなのも楽しめるようになった。でも良い質問をしてくれたと思うわ。自分でもどの色の服を着たらいいのかわからないから。だからどの色を選んだらいいのか手伝ってほしい(笑)。

ー特に好きな色とかあるんですか?

ピンクとオレンジが大好きだけど、特にこだわっていないし、その時の気分にもよるかな。

ー今回の来日は2公演あるので、全く違う衣装にするのはどうでしょう?

確かに。それにいつも2色の衣装を用意しているから。ベーシックな色と明るい色の場合もあるし、2色とも明るい色の場合もある。ツアー中は洗濯が終わってきれいな方を選んだりもするんだけど(笑)。

ー帽子とサングラスも良いものをたくさん持っていますよね。

帽子とサングラスのコレクションはたくさんあると思う。私が死ぬ時は、大親友の一人にコレクションを譲ることを遺書に書こうと思っていて。その友達はよく私のサングラスをかけるんだけど、不思議としょっちゅう壊すんだよね(笑)。

ー3月にやったライブのセットリストを見たのですが、アルファヴィルの「Forever Young」、リアーナ「Rihanna」のカバーをやりましたね。

さっきも話したように、カバーをやるとたくさんの人が盛り上がってくれるから。同じ理由で、今は多くの人がYouTubeでカバー曲を披露しているし、好きな音楽を通じて好きな人たち同士でつながることもできる。日本でもカバーはやるつもり。

ーカバーと言えば、メン・アット・ワークの「Down Under」のカバーを出しましたよね。オーストラリアではクラシック・ソングだと思いますが、あの曲を選んだきっかけは?

オーストラリアのTV局から、オリンピックのCM用にあの曲をカバーしてほしいと依頼されたから。それでカバーをやってみたら、とても気に入ってくれて、リリースをしたいと言ってくれて。私も「もちろん」と答えて、それでリリースとなったの。



ーセットリストの最後に、「Dance Monkey」「Fly Away」と続けてやることが多いですが、この2曲はあなたにとっては重要な曲ですよね。

間違いなくそうね。「Dance Monkey」は誰もが知っている曲だから、いつだって最後の方にやると盛り上がる。それでも「Fly Away」を一番最後にやるのは、この曲はライブでやると祝福の曲になるし、美しいエンディングになるから。それでこの2曲を最後にテーマ曲のようにして入れている。

ー「Dance Monkey」はSpotifyで再生30億回を超えて、Spotify史上最も多く再生された女性アーティストの曲となって、記録を塗り替えたんですよね。

今でも信じられないんだけど。オーストラリアに限らず、世界中で最も多く再生されたわけだから、これをオーストラリア人として達成できたことはとてもうれしい。



ーこの曲はストリート・ライブをやっていた時に受けたインスピレーションから生まれた曲なんですよね。

私は普通にライブをやるずっと前からストリート・ライブをやっていて。ライブだと1時間とか1時間半で、たまにもう少し長くなる程度だけど、ストリート・ライブは6時間ぐらい続けてやっていた。途中で休みたくなるんだけど、観客からすると休んでほしくないと思っていて。これって良いことに聞こえるけれど、観客の方は酔っ払っていたり、感じが悪かったり、収拾がつかなくなっていたりする。今の私はいろいろなところでライブをやっているけれど、ストリート・ライブは私の人生の中で大好きな一部だった。通りを歩いている人が立ち止まって私の音楽に耳を傾けてくれるのは、最高の瞬間だった。私の知らない人たちがラジオで私の曲を聴くのもいいけれど、30人の人が私のライブを観てくれるのは、この世界で最高の出来事だった。もちろん今の状況にも感謝しているけれど、その時のことは決して忘れたことがない。私のことをストリートで悲しみ、苦しみもがいている人だと思っていた人もいただろうけど、それも私の人生の一部として愛したものだった。それがあったから経験できたことがあったわけだし、しかも今ではもうそこには戻れないのだから。


「その時に自分が何を感じたのかを思い出すのは大切なことだと思う」

ーストリート・ライブを始めた時、すでに仕事に就いてましたよね。そこで音楽の道を選んだのは大きな決断だったと思いますが。

以前はお店で働いていたんだけど、お店の外の通りにストリート・ミュージシャンがいて。それを通りにいる人たちが観ていたの。当時の私はすでに音楽活動を始めていて、パブやホテルでプレイしていたんだけど、ストリート・ミュージシャンを観て、私もやりたいと思ったし、毎日できると思った。それが私の新しい仕事になったし、それで私はハッピーになれたから。

ー今では成功していますが、そこに至るまでの道のりはどうでしたか? 夢を思い描く中で葛藤もあったと思います。

もちろん葛藤もあったけれど、実は当時、自分の曲をリリースしようなんて考えたこともなかったの。私はただストリート・ミュージシャンをやりたかっただけで。だから曲をリリースした時、自分が成功するとも思っていなかった。「Dance Monkey」にしても、リリースするまで、ストリートで1年間プレイしていた曲だった。そこから大きなラジオ局から連絡をもらうことになって、その時にリリースしてもいいなと思っただけ。でもそれまでは曲をリリースするとか、そういうことは考えたことがなかったし、知識すらなかった。音楽チャートの存在も知らなかったし、そこで優劣の判断が生まれることも知らなかった。自分が曲をリリースしたら、私の小さな世界にいる人たちが聴いてくれると思っていただけで。そういう人たちに向けて曲をリリースすれば、私がいない時でも私の曲を聴いてもらえると思っていた。

ーニュー・アルバムも完成したんですよね。

アルバムは完成しているし、ちょうど今日アートワークも完成して、バイナルを作り始めたところ。時間は今までで一番かかったけれど、やっとリリースできるからとてもうれしい。

ー制作に何年もかけたんですよね。

何年もやってみたかったやり方で曲作りをやってみたし、急がないで作ったのも間違いなかったと思っている。大好きなアルバムになったし、大好きじゃなければリリースなんてしないから。きっとみんなにも気に入ってもらえると思う。

ーリリック、音楽性、曲作りのアプローチは変わりましたか?

音楽的にはちょっと変わったと思う。何曲かはとても明るくて楽しい曲だけれど、ユニークなところもある。ストレートなポップ・ソングもあったけれど、クリエイティブな誠実さに欠けるという理由で、最終的にはボツにしている。どの曲にもストーリーが込められていて、自分について書かなかった曲は1曲もない。前のアルバムとは違うものになったと思うし、非常にオープンなものになっている。どの曲のリリックでも傷つきやすさを扱っているんだけど、1曲だけ例外があって。「Call My Name」という曲で、その曲はソングライターのジャネット・アンドリュースと一緒に作っている。アルバム全曲を聴いた後、自分でもこういう曲が出来てしまったのかと思ったけれど、これは私の中から出てきたものだから。このアルバムがどういうものかは、聴き手がゼロの状態で聴いてもらって判断してもらいたい。ただ一つだけ言えるのは、前のアルバムの時の私はバラードを歌うのが怖かったということ。それを今回できたのはうれしかった。

ー今年3月にリリースした「I Get High」はアルバムからのリード曲になりますか?

「I Get High」は友達とのノスタルジックな気持ちを描いた曲で、個人的にも大好きな曲なんだけど、リード曲ではなくて。アルバムのリード曲はアルバムをリリースする時に出す予定。



ー「I Get High」は若い時に誰もが感じるような感情が描かれていて、アンセムという感じがしました。

そうだと思う。それに、「I Get High」はライブでやるとスペシャルな曲になるから。リリース前だったけれど、PiNKのツアーでこの曲を披露したら、聴いたことがない曲なのに、みんなのムードが高まったし、エネルギーも高まって、みんなが同じ感情を共有することができたの。

ー高揚感のあるアンセムですが、あなたが「but we saw ghosts」(でも私たちは幽霊を見た)、「but we were lost」(でも私たちは迷ってしまった)と歌うところは、はかなさの心底を突く感じがして、グッと来ましたね。

この曲を書いた時の私は、人生で一番感情が壊れやすくなっていた時期にいたと思う。でもこれって、私と同年代がこの歳になって感じることだと思っていて。それにそこに気づくことは重要だと思うから。でも多くの人は、大人になったらこの感情を抑えないとおかしくなってしまうなんて言う。それでその感情を隠して、すべては問題ないというふりをして、ノーマルに見せようとする。それで、年相応に行動しなきゃいけないと思っている。だけど友情が壊れた時、世界の終わりだと思っていた時期があったわけで。その時に自分が何を感じたのかを思い出すのは大切なことだと思うから。

ーこれはRolling Stone Japanの取材ですが、Rolling Stone Australiaのアワードでグローバル・アーティストを受賞したんですよね。

受賞するなんて思ってもなかったから、うれしかった。PiNKとのツアーの最終日の翌日にアワードに行ったんだけど、いきなり受賞することになったから、最高の瞬間になった。

ーRolling Stone Australiaの表紙の写真も相当カッコいいですね。

最初はとてもシャイだったけれど(笑)。キャップとサングラスを着けたら、オープンになれたし、自由になれた。

ー今後の予定を教えてください。

もうすぐ行く日本のことは、マックルモアにもいろいろ聞いてみたの(笑)。今後はアジア、ヨーロッパにツアーと回って、アルバムを出してからオーストラリア・ツアー、アメリカ・ツアー、そこからまたヨーロッパ・ツアーと続く予定。初めての日本は楽しみにしているし、みんなにライブに来てほしい。I love you!!



TONES AND I 来日公演

5月28日(火)東京・渋谷Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット ¥7,800(税込/All Standing/1Drink別)

https://www.creativeman.co.jp/event/tones-and-i/

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