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中絶は「人類の汚点」と発言の米極右系共和党候補、態度を軟化

Rolling Stone Japan / 2024年6月22日 20時35分

2022年、ワシントン州バンクーバーで開かれた討論会の開始を待つ共和党出馬候補のジョー・ケント氏(AP PHOTO/RACHEL LA CORTE, FILE)

共和党から米・連邦下院議員選に立候補したジョー・ケント氏が、中絶は奴隷制度や人種隔離政策に匹敵する「人類の汚点」と発言した。

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2年前、連邦下院議員選でまさかの敗退を喫した極右系共和党候補のジョー・ケント氏は、中絶に関してこだわりを持っている。この先数年後の社会は、現在アメリカで行われている生殖治療の議論を、恐怖と疑いの目で振り返ることになるだろう、というのが同氏の考えだ。

まったくもってその通りだ。テキサス州では女性が通例の中絶治療を受けられず、代わりに死産を強制される。アイダホ州は妊婦の健康を維持する治療を拒否する権利を押し通そうとしている。サウスカロライナ州、アラバマ州、テキサス州の州議員は、中絶を希望する人を死刑に処すことも検討している。

だが、ケント氏が意図するのはこういったこととは無関係だ。2021年、CPAC(保守政治活動協議会)の檀上で行われたポッドキャスト「21 Studios」とのインタビューで、ケント氏は「私は中絶には断固反対だ。今現在、中絶が合法と認められているのは人類の汚点だと思う」と発言した。

同氏はさらに続け、法で認められた中絶をアメリカ奴隷制度に例えた。「奴隷制度や人種隔離政策について勉強した時に驚いたのを覚えている。そこまで大昔でもない自分の親の時代に、人種隔離がまさに現実だったことに驚いたとは。『なんということだ、親の時代にこんなことが起きていたなんてどうかしてる』と思った。それからさらに2世代遡れば奴隷制度があった。『とんでもない、どうかしてる――自分の祖父母や曽祖父母があんな時代に生まれ育ったなんて』。私たちも自分が60~70代になれば、子どもたちから『当時は赤ん坊を殺しても、みんな平気だったんでしょ?』と言われることになるだろう。近いうちにそういう日が来ると思う。そういった意味で、中絶は完全な悪だと思う」。

ケント氏は前回下院議会選に立候補した際にも、奴隷制度との比較を1度ならず口にした。対立候補だったマリー・グルーセンキャンプ・ペレス氏は2022年、高校生からDMでスクリーンショット画像を受信した。高校生いわく、ケント氏は学校訪問の際に同じような主張を展開していたという。「ジョー・ケント候補がうちの学校を訪問しました。学生は興味にかられて、生殖の権利についての意見を尋ねました。すると候補は、奴隷制度や人種隔離政策になぞらえました。同級生も私も、どんな関係性があるのか、あんな卑劣な行為と女性の権利に共通点があるのかと首をかしげました。会場を埋め尽くした高校生に向けた候補の発言は、私たち(少女や女性)には自分の身体に関する権利などないと(いう)メッセージを発信したようなものです」。

今年に入って選挙活動を再開したケント氏は、中絶に対する態度の軟化を図っている。「ドブス判決以降、(中絶は)州の問題になった」とX(旧ツィッター)に投稿し、現在は連邦レベルでの中絶禁止を支持していないと付け加えた。選挙陣営の責任者フロー・ロスミラー氏も、ローリングストーン誌に宛てたメールで同じ立場を強調した。「最高裁判所はこれが州の問題だとの判決を下しました。ジョー・ケント氏も州レベルにとどめておくことに賛同します」とロスミラー氏は返答した。



ちなみに、女性の身体的自主性を制限する州の規制と、過去の奴隷制度の間に関係性を見出している法律学者は実際に存在する。『Policing the Womb』の著者でもあるジョージタウン大学法学部のミシェル・グッドウィン教授は以前こう記している。「妊娠可能な女性や若い女性に対し、州が本人の意思に反して妊娠継続をむりやり強要するのは、生身の人間を所有物とし、保育器にしているのと同じだ。そうすることで、州議員は女性たちの身体をむりやり州のいいなりにさせている」。

先日ローリングストーン誌の取材に応えたグッドウィン教授は、アメリカでもとくに厄介な中絶規制が存在する州が、かつて奴隷制度の維持を主張していた点を指摘した。「『へえ、だから何?』と言う人もいるでしょう。明らかに奴隷制の本質は、個人の自主性や黒人の人間性を否定することでした」とグッドウィン教授。「今現在、こうした法律があらゆる人種の女性に悪影響を及ぼしているのは明白です。ですがポイントは、立憲民主主義で暮らす今、憲法で認められた人間性を一部の集団に認めることを回避する手段が見つかったのだとすれば、その州の立法府や裁判所に身体記憶として残っていたということです」。

これらの州では、黒人や女性の権利に対する拒絶が内部で清算されていなかったとゴールドウィン教授は続けた。代わりに市民権法や投票権法、ロー対ウェイド判決といった形で連邦政府が介入し、少なくとも一時的にこれらの州に慣習をむりやり改めさせた。

一方、ジョー・ケント氏が下院議員に立候補しているワシントン州では(Cook Political Reportでは現時点で互角の戦いと位置付けられている)、これまで連邦法で定められていた中絶制限期間、つまり「母体外生存可能性」が生じる前までなら、中絶手術は容易に受けられる。この点について、かつてケント氏は改正を望む意向を示し、連邦レベルでの中絶禁止に加え、ワシントン州での中絶禁止も支持すると表明していた。

同氏が最近態度を軟化させたのは、ワシントン州の世論調査の結果と呼応している。中絶の権利を覆したドブス判決の直後に公表された世論調査によると、ワシントン州の有権者の63%が判決に反対すると回答。支持するという回答はわずか26%だった。もっとも、今後ケント氏が中絶問題に関して世論を考慮に入れるかどうかは何とも言えない。

2022年のインタビューで同氏はこう発言している。「生きるチャンスを望んでいるかと胎児に意見を聞く技術が出てこない限り、賛同はできない……子どもの命を奪っておいて、それを女性の選択だと? そんな考えは全く理解できない」。

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