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otsumamiが語る活動3年目の変化、宮沢賢治の言葉と描いた「大人は忙しい」の真意

Rolling Stone Japan / 2024年6月24日 19時0分

otsumami

2022年の結成以降、良質なポップチューンをコンスタントに発表し続けているクリエイターユニットotsumami。AKB48「365日の紙飛行機」を筆頭にさまざまなアーティストへ楽曲提供を行っている青葉紘季が率いるteamOUCAが楽曲制作を手がけ、ゲスの極み乙女とのコラボで話題を集めた福井伸実がアートワークを担当、そしてフィーチャリング・ボーカルには北海道のアイドルグループ・タイトル未定で活躍する冨樫優花がmikan名義で参加し、多方面から注目が寄せられている。

5月24日には今年2作目となるシングル「大人は忙しい」をリリースし、6月24日には初のスタジオライブ映像「mikansei」をYouTubeで公開するほか、ライブ映像+音源を収録した特別パッケージも発売。ユニットとしての実態がより明確になり始めたこのタイミングに、首謀者である青葉とすべての楽曲でボーカルを務めるmikanにユニットの「これまで」と「今」、そして「これから」について話を聞いた。

関連記事:作曲家と絵描きとアイドルによるユニットotsumamiが語る、「好き」に忠実な作品づくり



─otsumamiが始動してから2年ちょっと経ちましたが、周りからの反響や作品に対する手応えはそれぞれどう感じていますか?

青葉:僕は最初、ただ楽しみながらやっていくという、わりとユルい感じでスタートしたところがあって。特に、僕にとっては久しぶりのアーティスト活動みたいなところもあるから、そこで喜んでくださる方もいるんですけど、自分の性というか、普段の僕はJ-POPの楽曲提供などの生業とする作家なので、真剣になればなるほど「もっといい作品を作りたい」と追求してしまいがちなんです。とはいえ、ここまで楽しくやれていると思いますよ。

mikan:私は普段、タイトル未定というアイドルグループで活動しているんですけど、「タイトル未定の冨樫優花」が「otsumamiのmikan」と同一人物だってことを去年の夏まで発表していなかったんですね。それまではSNSだったりインターネット上で一方的に反響を目にするだけでしたけど、最近はotsumamiを聴いてタイトル未定のライブに遊びに来てくださる方がいて。そこでやっと「届いているんだ」って実感できて、すごくうれしかったです。

─では、この2年ちょっとでユニットの在り方に対して変化を感じる瞬間はありましたか?

青葉:otsumamiを始めたときに何曲かストックがあって、それはボーカルが誰とか想定せず作ったものだったんです。で、たまたま僕がタイトル未定に楽曲提供していたという経緯もあって、mikanの歌声がすごく気になっていたので、彼女が北海道から東京に来るタイミングに「ちょっと歌ってみてくれないかな?」とotsumamiの曲を歌ってもらったら、「これはボーカルとして迎え入れたい!」となって。その瞬間から、mikanが歌うことを想定して曲を作るようになりました。そこを踏まえて最初に作ったのが「3373」という、2022年の夏に発表した曲。あのへんからotsumamiっていうものが、なんとなく思いつきの集団ではなくある種バンドに近い、本当のグループになったと思います。しかも、「3373」の前に「タイムカプセル」という曲もリリースしているんですが、「3373」と「タイムカプセル」は同じ時期にできた曲で、「タイムカプセル」はmikanが歌詞を書いている。そう考えると、やっぱり2022年の夏くらいにパチンと切り替わったんでしょうね。







─mikanさんはレコーディングを重ねていく中で、自分の特徴を活かした曲が増えているとか、そういう実感は?

mikan:私の声を好きと言ってくださって、なるべくその声が生きるようにと、レコーディング中も「この声の成分が欲しい」と言ってくださることが多くて。そういう部分では、実感がありますね。あと、去年発表した「恋のまぼろし」や「レモン水」あたりは、私が昭和歌謡をすごく好きなのでそういう成分を入れてくださっていて。そうやって少しずつ、私も作品作りに参加させていただくことが増えている気がします。





─それでいうと、YouTubeチャンネルで公開しているカバー動画も、mikanさんの特性やどういうキーや曲調が合うのかを探る上で重要だったのではないでしょうか。

青葉:そうですね。例えば作詞する際、mikanに「このメロディを聴いて、ちなみに何が浮かぶ?」と質問して、「どんな楽曲に仕立て上げていこうか」とか「これはラブソングなのか何なのか?」とか「主人公は今、部屋の中ひとりで何をやっているんだろう?」とか話しながらワードを決めていくんですが、これはカバーも関しても一緒で。最初は僕の好みで楽曲を決めていたんですが、それをmikan自身が「これいいですね」って気に入ってくれることで、だんだんmikanの人となりやmikanのツボがわかってきた。加えて、彼女自身も昭和歌謡のカバーを精力的にやっていたので、「だったらいっそのこと、mikanに選曲を丸投げしたら何が出てくるんだろう?」と思うようになり。そういう曲を歌う中で、彼女のいろんな側面が見えてきたんです。さっきmikanが「この声の成分」と言ってましたけど、それを僕らの共通用語で”mikanの残り香”と呼んでいて。

mikan:そうでしたね(笑)。

青葉:語尾に音とも声とも取れない息っぽいものがあるんですよ。それを想定しながら曲を作ったり歌詞を書いたりして、レコーディングで「ちょっと”mikanの残り香”をちょうだい」みたいな話をよくするんです。それを教えてくれたのは間違いなく昭和歌謡のカバーですね。

mikan:私自身は普段グループで歌っているから、otsumamiで全部ひとりで歌うことはまた感覚的にも違っていて。特にカバーの場合は正解があった上で、それに近づけながら自分の色を出そうと試みていますけど、オリジナル曲となると真っさらな状態でゼロから自分ひとりで歌うことがすごく難しくて。そこは自分の中でもまだまだ課題です。



─otsumamiの個性的なポイントとしてもうひとつ挙げられるのが、福井伸実さんが手がけるイラストやアートワークだと思うんです。福井さんが描く世界から、おふたりがインスピレーションを得ることもあるんでしょうか?

青葉:そうですね。音楽を聴いてもらうにあたって、ビジュアルってすごく大事だと思うんです。今は音楽に合わせてアニメーションみたいに絵が動くことは当たり前になっていますけど、otsumamiに関しては絵画みたいな形で見せていくことが正解なんじゃないかという思いつきから始めて。最初はその楽曲に対してどういう絵を描いてくるんだろうなっていうところもありましたけど、最近はmikanの声ありきで曲を作るように、福井のイラストの雰囲気ありきで、いろいろ想像しながら曲を作ってもいるので、良い相乗効果が出ているのかなと思います。

mikan:私がレコーディングするときはまだイラストが上がってない状態なので、イラストが私の歌に影響を及ぼすことはないんですけど、私が歌に込めた思いを色とか女の子の表情とかでしっかり表してくださっているので、ちゃんと伝わっているんだなと感じています。



─ここからは、5月に配信された最新曲「大人は忙しい」についてお話を聞かせてください。この曲はどういうイメージで制作を始めて完成させていったのでしょう?



青葉:それまでのotsumamiってわりと真面目な曲が多かったと思っていて、例えば12カ月連続配信を始めたときは12カ月連続でシングルを切っているみたいな状態だったので、どうしてもリード曲や表題曲みたいな考え方になってしまう。それをやり続けることで幅が狭くなることも自分の中では悩みだったので、そろそろ脇道に逸れたり寄り道したような楽曲があってもいいんじゃないかと。チャラついていたりふざけていたりユルかったり、みたいなところを見せたいなっていうタイミングが今回だったわけです。

─なるほど。

青葉:曲の作り方としては、今まではまずメロディがあって、そこにアレンジを施していくのが基本的なやり方だったんですけど、今回は完全にトラックから作ろうということで、まずワンコーラス分をうちのチームの人間に作ってもらって。そうすると、いつもの手癖とかそういったところから解放されて、逆に制限もできたりするので、すごく面白かったですよ。しかも、結構わちゃわちゃしたトラックが出てきたので、今まで悶々と抱えていた悩みを解消する機会にもなりましたし。で、その過程でサビのフレーズに〈大人は忙しい〉っていう言葉がハマって。この曲の主人公は子供の延長線にいて、大人の入り口に差し掛かった微妙な年齢感なので、そういうところを描ければちょっと面白いかなっていうことで、じゃあ「大人は忙しい」で行こうと。

─歌詞には〈金曜日は ねえ 銀河鉄道乗りたい〉や〈連れていってジョバンニ 日曜日は ねえ 山猫軒で食べたい〉と、宮沢賢治にちなんだキーワードが散りばめられたフレーズが用意されています。

青葉:僕は小さい頃から宮沢賢治の作品が好きだったので、歌詞にするならカンパネルラじゃなくてジョバンニのほうにスポットを当てたいとか、日曜日にレストランでメシを食いに行くなら山猫軒を使おうとか、そういうことを考えていて。ただ、ちょっとふざけすぎたのでmikanに怒られる可能性があるかなと思っていたんですけど(笑)。

mikan:そんなことないですよ(笑)。

青葉:実際、「ちょっと今までにないですね」みたいな感じですごく気に入ってくれたので、大成功でした。

mikan:コンセプトや世界観がしっかりしてるから、すごく新鮮で面白いなと一気に惹きつけられました。私も大人だけど大人になりきれないのに、大人としての責任を全うしないといけないみたいな場面がよくあるんですけど、宮沢賢治さんの言葉をまだ完全に理解できていなくて。それがこの曲の主人公と重なることで、大人になりきれていないところを表現できているんじゃないかと思います。

青葉:いつもmikanがレコーディングに入る前、お互いその作品の映像感や世界観を共有するためにいろいろ話し合っていて。今回はmikanと同世代の子を主人公にしていますが、僕はmikanより大人ですけど多分mikanの年齢ぐらいのときの精神性と今の自分が特別変わったなんて少しも思わないんですよね。大人って子供が作った幻想なんじゃないかと思うぐらい、何も変わんないのに、のしかかってくる責任に正直ついていけないことがたくさんある。そういう話をmikanにもしました。

─その感覚、わかります。自分が子供の頃に見ていた大人と、実際自分がそれくらいの年齢になったときのギャップに戸惑うといいますか。

青葉:ですよね。この歌詞の最初に〈パッ 開く退屈〉ってフレーズがありますけど、これ電車の改札を表現していて。そこから自分の家に帰るまでの道すがら、なんとなくコンビニで缶チューハイでも買っちゃおうかなみたいな。そういう家と会社の行き帰り、あるいは家と駅の往復みたいな、所詮5分ぐらいの距離を冒険している、そんなもんだよなと。そんな話をmikanとしたら、一応理解してくれたようで。一度スッと入ったら、あとは早いんですよ。

mikan:入るまでが長いんですけどね(笑)。同世代に向けての応援ソングという側面もある曲なので、歌うときには同世代の子よりもちょっとだけ目線を上にというか、そういう意識もあって。ちょっとカッコいい女性をイメージした歌い方をしました。



─この曲はMVも新鮮で。パフォーマンスする姿が収められたMVは今回が初めてですが、これは6月24日から配信されるスタジオライブ映像『mikansei』の一部なんですよね。なぜこのタイミングにスタジオライブをしようと思ったんですか?

青葉:そもそも音楽活動においてライブっていうのは僕の中ではマストで、楽曲をちゃんと届けていく手段として欠かせないものだと思うんです。ただ、タイトル未定というグループ自体がそもそも北海道で活動していて、日本全国津々浦々でライブをたくさんやっている中で、otsumamiとしてなかなかライブをすることができない、でも僕の中ではどうにかしてmikanが歌っている姿をお見せしたい。そう考えていく中で、スタジオライブを収録すればいいんだっていうことに気づいたわけです。そもそもmikan自体が顔出しすること、動く姿を見せることは今回が初めてですし、このやり方は実に我々らしいなと。我々はこの企画を”実体化”と呼んでいます(笑)。

mikan:これまではイラストの女の子が”otsumamiのmikan”だったから、初めて人前に出るということで緊張してしまって。しかも、当日は関係者の方がたくさん見守ってくださっていたこともあり、多分人生で一番じゃないかっていうぐらい、途中で収録を止めちゃうじゃないかってぐらい緊張してしまったんです(笑)。でも、本当に貴重な経験をさせていただいたことで、改めて自分に足りないものに気づかされたし、カメラに向かってotsumamiの曲を歌って届ける中で気づいたこともたくさんありました。

─課題もいろいろ見つかったんですね。福井さんが手がけた衣装はいかがでしたか?

mikan:福井さんが以前個展をやられていて、そのときにご自身でデザインしたお洋服を着ていたんですが、それがすごく素敵で。「私もその服を着たいです」って青葉さんにお話させていただいたんですけど、そうしたら福井さんに伝えてくださって、当日のために新たに用意してくださったんです。

─イラストから飛び出してきた感があって、すごく良かったですよ。

mikan:ありがとうございます。私も福井さんのイラストが本当に大好きなので、実物を着ることができてうれしかったです。

─「大人は忙しい」といいスタジオライブ映像といい、otsumamiがまた新たなフェーズに入ったんだなという印象を受けます。活動3年目に突入した今、おふたりはどんな目標を持っていますか?

青葉:僕はotsumamiを始めた時点から、純度の高い音楽をしっかり作っていくっていうことしか考えていないんですよね。mikanの歌声に惚れて、こうやって今ボーカルとして真ん中に立ってくれている彼女のことを、いろんな楽曲を通してたくさんの人に知ってほしいしとか、そこから派生していく福井伸実のイラストが、どこかで別のアーティストの何かを彩っていってほしいとか、それぞれがいろんな場所で活躍して、またotsumamiで集まって好きなことをやる。そういうふうになれるんじゃないかなと信じています。あとは、スタジオライブのみならず、いずれお客さんの前でもライブをやりたいですね。

mikan:私はotsumamiにはたくさんいい曲があるのに、まだまだ広く届いていないと思っていて。もっとたくさんの方に知ってしてほしいし聴いてほしいし、届いてほしいという気持ちが強いので、これからは最新曲だけじゃなくて昔の曲ももっと届けられるように工夫していけたらなと思っています。あと、私にとって歌というのは一生をかけてやっていきたいくらい大切なものなので、自分の武器とかどんなことを歌っていきたいかっていうことも見つけたいですし、昭和歌謡をカバーする人とたくさんの方に認識してほしいので、もっと精力的に歌っていきたいです。

─個人的には「タイムカプセル」の歌詞がすごく気に入っているので、ぜひ作詞にもまた挑戦してほしいです。

mikan:うれしい。文字を書くこともすごく好きなので、私もぜひやらせていただきたいです。

青葉:「タイムカプセル」の歌詞を初めて見たとき、本当に初めての作詞なのかなと疑うくらい、ワードのチョイスとか組み立て方に透明感や青さみたいな独特の世界観があって驚いたんですよ。なので、今後はもっと書いてもらえるようお願いをしていきたいと思います。

mikan:よろしくお願いします!


<リリース情報>



otsumami feat.mikan
シングル「大人は忙しい」
配信中
https://linkcloud.mu/8e5ee770



otsumami feat.mikan
「otsumami feat. mikan 〜mikansei〜」YouTube edition
2024年6月24日 19時予約開始
2024年7月15日 頃発送開始
フォーマット:フラッシュメモリーUSB2.0〜6GB
内要:スタジオライブ動画 6曲 + ライブ音源6曲
メンバー全員の直筆サイン入りセットリストポストカード付き
https://www.youtube.com/@otsumami0203
=収録内容=
1. きみのものにだけ
2. レモン水
3. 青葉
4. 大人は忙しい
5. 醒めない予感 
6. タイムカプセル

Official HP:https://otsumami0203.com/

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