Absolute area山口諒也と606号室円花が語る、楽曲制作へのこだわり、2マンへの想い
Rolling Stone Japan / 2024年7月12日 20時0分
Absolute areaが主催する2マンライブシリーズ『ふたりのり』が7月26日に代官山SPACE ODDにて開催される。
今年は3月にHalt time Old、5月になきごとと対峙してきたが、締めくくりとなる7月にゲストとして迎えたのは新進気鋭のピアノロックバンド、606号室。ただ、これまで何か接点があったというわけではなく、リードギターならぬリードピアノが引っ張るサウンド感や活躍の場を広げ続ける勢いに興味を惹かれてのオファーということもあり、Absolute areaからフロントマンである山口諒也、606号室からはピアノで格別な彩りを生み出す円花による対談を行った。
バンドとして注目を集めるキッカケが共通していたり、円花は以前からAbsolute areaの熱心なリスナーであったり、向き合ってみれば互いに頷き合う場面も多く、より白熱した2マンになることを期待させる語り合いになったことは間違いないだろう。
―まず、お互いの印象についてお話していただけますか?
山口:606号室さんはめちゃくちゃ勢いのあるバンドだなと思っていて。Eggsというインディーズバンド音楽配信サイト、606号室さんもやってるじゃないですか。そこのランキング上位にいたのも見たことがあるし。僕らも高校生のときにEggsで楽曲を上げたりしてて、「ひと夏の君へ」はそこから広がったんですよ。だから、勝手に似てるなとも感じていて。しかも、606号室さんは結成して2年ぐらいですか?
円花:はい、2年半になりました。
山口:凄い勢いだな、と。1回、サーキットイベントで下北沢CLUB 251に出演されてるのを観に行ったんですけど、人が凄すぎましたね。もちろん、悔しいなと感じたけど(笑)、凄いなと思いました。
―円花さんは以前からAbsolute areaを聴いてらっしゃったんですよね。
円花:高校生のときに「ドラマチックサマー」を知ったんです。大学生になって楽曲を作ろうとしたとき、ピアノが入ってる曲を学びたくて「ドラマチックサマー」を参考にさせていただいたりもしました。Absolute areaさんはめちゃくちゃ好きな曲調が多いんですよ。「カフネ」のサビとか「僕が最後に選ぶ人」のサビで半音ずつルートが上がっていくところがあるんですけど、そこのコード感もめちゃくちゃ好きです。
山口:めっちゃ嬉しいですね。
―山口さんはピアノが入っているバンドを積極的に聴いたりもされるんですか?
山口:僕は音楽的ルーツがミスチルだったりするので、だいたいピアノが入ってるみたいなところもあり、やっぱり好きですね。しかも、606号室さんはメンバーにピアノがいるというのが羨ましくて。僕ら、ライブではサポートメンバーとしてキーボードを加えてるんですけど。
―山口さんは606号室のどういったところに惹かれたりしますか?
山口:ちょっとこう、自然に円花さんにフォーカスすると、ピアノのサウンドがどちらかと言うとバラード寄りな楽曲が好きなのかなと感じるんですが、結構シンセの音も使うじゃないですか。その音が特徴的だし、606号室さんの色というか、楽曲のキャラクターを作る大きな存在なんじゃないかと思っていて。
円花:めっちゃ嬉しいです。ありがとうございます。リードギターがいない分の役目をしっかり果たそうとは思っていて。いちばん大事なのはヴォーカルなんですけど、リードギターじゃなくてリードピアノとして、メロディーでバンドを引っ張っていくことはちゃんとしたいと考えているんですよね。
円花(Photo by Jin Tachibana)
山口:ピアノの奏でるリフ、イントロや間奏のメロディー、凄く印象的だなと思ってます。そこがめっちゃ頭に残るし。「未恋」もそうですけど、僕らが作りたくても作れるようなじゃい部分でもあるので、凄いな、って。
円花:でも、今まで作ってきた全曲、計算はそんなにしていないんです。聴いてきた曲で印象に残ってるモノが頭の中にあるから、それを上手く組み込んでブラッシュアップして出す、みたいなことがいちばん多いですね。ピアノが入ってるバンドだと結構バッキングで弾く楽曲が多かったりもすると思うんですけど、リードギターが弾くようなリフをピアノが弾いたらカッコいいんじゃないか、という話はメンバーともよくしています。
―この2マンへ向けて、ということで山口さんは606号室の「未恋」を弾き語りカバーして、Xにアップされてましたね。
山口:歌わせていただきました。
円花:ありがとうございます。めっちゃ良かったです。
7/26(金)606号室とのツーマンに向けて、
「未恋」歌ってみました!
606号室が好きなみんなにも、届いて欲しい。最高のツーマンにしようぜ。
https://t.co/z4nOp6IlfS#アブソ #606号室 pic.twitter.com/mG8Kzsvdch — 7/26ツーマンライブ山口諒也【Absolute area】 (@ryoqoya0905) June 20, 2024
―カバーすることで、改めて良さに気付いたところもあったりされますか?
山口:それで言うと歌詞の部分ですね。僕も凄く近いんですけど、 (表現が)回りくどいというか(笑)、”好き”ということだったり、楽曲のタイトルにはなってますけど”愛してる”だったり、そういうことをあまりストレートに伝えない歌詞が多いなと思って。たぶん、そういう気持ちを伝えられなくなっちゃった人に向けているというか、”好き”や”愛してる”はもう伝えられないんだけど、これだけ好きという想いがある、これだけ愛してたんだ、という気持ちを書いてるんだろうな、と。しかも、その表現の仕方が凄くキレイなんですよ。例えば、「愛してる」の冒頭の一説、〈君に使った愛情にお釣りは出なそうだし〉は一瞬で心を掴まれましたね。
Absolute aera(Photo by Mizuki Abe)
円花:(作詞している)昇栄が喜ぶと思います(笑)。情景が浮かびやすいんですよね。その〈君に使った愛情にお釣りは出なそうだし〉とかも主人公の表情が浮かぶし、他にもここは昼だな、夜だな、みたく考えながらピアノを入れてたり。私は歌詞から浮かんだ情景から物語を作って、ひとつの映画みたく曲にしていってますね。
―お二人にお聞きしますが、バンドをやるようになってから、曲を作るようになってから衝撃を受けた1曲ってあります?
山口:……ありすぎるな(笑)。
円花:ハハハハ(笑)。ひとつ言うなら、谷口喜多朗さんがやられているTeleというソロプロジェクトの「花瓶」ですね。イントロがストリングスで始まるところ、そこから急にピアノへ切り替わる場面、どちらも2回ウェイってなるんです(笑)。しかも、インタビューで「何からインスピレーションを受けましたか?」という質問に対して「ポケットモンスターの戦闘シーンに流れてくるBGMを参考にしました」と答えられてて。これはヤバい、そっから取ってくるんや!?って。
山口:僕は選ぶのがめっちゃ難しいので逆にシンプルなところで答えますが、ミスチルの「HANABI」、超王道曲ですね。曲構成が特殊で、最初Aメロ、Bメロと進んで、またAメロに戻ってサビへいく、という。音楽をやってなかったらそこはスルーして自然に聴くと思うんですけど、僕としてはそこでAメロに戻るんだ!?と思ったり。それを参考にしているのか、と聞かれたら何とも言えないんですけど。
―その発想力ですよね。
山口:ただ、そういうことはいつも自由にやろうとは思っていて。今月、「グラウンドに吹く風のように」という新曲を出すんですけど、その1番がAメロ、Bメロ、Cメロ、Dメロまであって、そのDメロがサビになってるんです。曲としては自然な流れでサビまでいくんですけど、その前に全然違うメロディーの構成が3つある。今、曲自体も短くなっていく中でいろんな曲構成をみんな作ってると思うんですけど、ミスチルは随分前からやってて、凄く面白いなと思ったりしますね。
―せっかくの機会なので、こういった対談の場だからこそ聞けるような、お互いに気になっていることはありますか?
円花:マネージャーとも話してたんですけど、Absolute areaさんはストリングスの音色が凄くキレイじゃないですか。生演奏してるのか、めっちゃいい音源を使ってるのか、気になっていたんです。
山口:えっと、「発車標」のリアレンジしたバージョンを2023年にリリースしたんですけど、アレンジャーの松本ジュンさんに紹介していただいた方たちにお願いをして、そこから生のストリングスを入れさせてもらってますね。
円花:どのくらい重ねてるんですか?
山口:曲によっても違うんですけど、大体はバイオリン2本、ビオラ、チェロのカルテットでやってて。
円花:凄いな〜!
山口:「遠くまで行く君に」とか、昔の曲はほとんど打ち込みですね。
Absolute aera(Photo by Mizuki Abe)
円花:でも、めちゃくちゃキレイなストリングスが入ってますよね。「カフネ」の落ちサビに入る前、ストリングスがシャーって消えてくところ、あの音色がめっちゃ好きで。生演奏なのかな、とか考えてました。
山口:あっ、正確に言うと2021年に「記憶の海を泳ぐ貴方は」って曲を出してて、そのときに生のストリングス、バイオリン1本だけ入れて、あとは打ち込みという手法をしてますね。そういうレコーディングの仕方もあるみたいで。
円花:へぇ〜!
山口:それによって、打ち込みが生っぽくなるみたいな。ストリングスを入れるのは昔から憧れてたんですけど、やっぱりいいですよね。
円花:ここ2カ月くらい制作をしてて、丁寧にストリングスを(打ち込みで)入れたんですけど、生音に越したことはないよな、と思ったり。あと、打ち込みの場合でも普通は何本ぐらい入れてはるのかな、と気になってたんです。
―円花さんとしても606号室の音世界はもっともっと広げていきたいんですね。
円花:そうですね。せっかく私がキーボードをやるし、シンセサイザーもあるから、いっぱいやり方があると思うんです。(606号室は)ピアノロックとは言えど、ピアノが一切入ってない、めちゃくちゃ電子音ばっかりというのが1曲あっても面白いかな、と考えたりもしてて。それこそ、NEEさんみたいな中毒性のあるバチバチとした音色を使いながら世界観を作るような曲。それこそ、アルバムを作るとなったとき、万人には受けづらいかもしれませんがファンの中ではめちゃくちゃヒットするような曲を4曲目か5曲目ぐらいに挟みたいなと思ってます。
606号室(Photo by 松本いづみ)
―サウンドの広がりですと、Absolute areaは3ピースロックバンド然としたところからポップスも網羅するスケール感になっていきましたよね。そこは606号室も目指すところでもあるのかなと想像します。
円花:Absolute areaさんは最初の「続く明日へ」はめちゃくちゃロックでしたけど、次に出した「ドラマチックサマー」が入ってるEP(『あの夏の僕へ』)では凄くまろやかになってて。ロックを最初に出して、そこからどんどんポップになっていく、というのは私たちもちょっと似てるのかなと思ってて。
―その広がりは自然な流れだったんですか?
山口:今はDTMで楽曲制作するのが主流ですけど、僕が使い始めたのは大学に入るぐらいのときで、それ以前と以後で変わった何もかも変わったんですよね。ホントにギターロックがメイン、3人だけでできる音楽を作っていたのが、DTMを使うようになってピアノが入ってる曲も作りたいというところから生まれたのが「ドラマチックサマー」だったり。やっぱり、ピアノを入れるとポップにもなっていくじゃないですか。僕がもともと影響を受けたのもJ-POPだったし、作りたい音楽を追求していった結果、どんどん変わっていったんですよね。
―では、606号室に対して山口さんが気になっていることはありますか?
山口:曲作りをするとき、昇栄くんとケンカとかするんですか (笑) ?
―円花さん、めっちゃ爆笑してますけど(笑)。
円花:正直に言いますと、毎曲、全部ケンカしてます(笑)。
山口:そうなんだ(笑)。結構ピリピリした感じにもなったり?
円花:そんなこともなくて。ケンカしてもその日で終わることがほとんどですし、あんまり長引かせることがないのが幸いです(笑)。昇栄のこだわりを受け止めつつも、私は私で今までやってきたこだわりがあるんだ、っていうのをぶつけますね。
山口:そういうときって、どっちかが折れる?
円花:どちらもをやってみて、聴き比べてます。で、昇栄の方が良いなとなったら私が折れますし、その逆もあったり。どっちかがひれ伏せるみたいなことはなく(笑)。
山口:納得して、という。結構、作曲に関するところを2人でやってるとたいへんそうだなと思うんですけど、606号室さんの場合はアレンジってことになるのかな?
円花:えっと、昇栄がアカペラで送ってくれるデモがあって、それに対して私がコードを考えて、ピアノ、ベース、ドラムを入れてメンバーに投げてるって感じなんです。ベース(ゆうあ)とドラム(くわ)は任せてくれてるんですけど、コード感だったりの部分で昇栄と私は言い合いをしますね(笑)。
―こうやってお話を聞いてみると互いにリスペクトし合うところもあり、2マンがより楽しみになってきました。
山口:めちゃくちゃ楽しみです。
円花:私も楽しみにしてます。
―Absolute areaは『ふたりのり』と題した2マンシリーズを続けてきてますが、ワンマンとはまた違った気持ちにもなりますよね。
山口:やっぱりこう、2マンは温度感や空気感が凄く影響し合うというか。先にステージに立ったバンドにいいライブをされたら、こっちも燃えてきますよね。それを超えていかなきゃいけないというプレッシャーもありますし、いい刺激をもらって、負けないぞという気持ちで臨んでます。
円花:私たちは2マンという形式はまだ1回しかしたことがなくて、あんまり慣れてない状況ではあるんですけど、お互いの曲をいっぱい聴けたり、めちゃめちゃ凄い近距離で直接インスピレーションを受け合うのが好きだなと思ってます。
―では、改めてになりますが、2マンへ向けての意気込みをお聞かせください。
円花:昔から聴かせていただいていたAbsolute areaさんにお誘いいただいたこと自体もそうですし、ご一緒できるのがめちゃめちゃ嬉しいんです。私たちの魅力も伝えつつ、Absolute areaさんの魅力もいっぱい受け止めたいので、できる限り頑張ります。
山口:今年は『ふたりのり』を3月、5月とやってきて、この7月の606号室さんとの2マンが締めくくりになるので、一緒に熱い日を届けたいなと思います。
―先輩として見せつけたい気持ちもあったりされますか?
山口:僕、そういうキャラじゃないんですけど(笑)、負けてられない気持ちはありますし、ちょっとでもカッコいい先輩だなと思ってくれるように頑張りたいです。それに、これからもぜひ仲良くしてください、という意味も込めた日になったらいいなと思ってますね。
<ライブ情報>
Absolute area 2man Live 2024「ふたりのり」
2024年7月26日(金)東京・代官山SPACE ODD
GUEST/ 606号室
前売りチケット ¥3500
Open18:30/Start 19:00
チケット発売中 https://eplus.jp/absolutearea/
606号室初の東名阪ツアー「ロクマルロックツアー」
2024年10月6日(日)渋谷Spotify O-Crest
2024年10月20日(日)名古屋R・A・D
2024年10月27日(日)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
チケット https://eplus.jp/room606/
606号室 X https://x.com/606_official
<リリース情報>
Absolute area
『グラウンドに吹く風のように』
2024年7月17日(水)配信リリース
Absolute area HP https://absolutearea.net/
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