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アジカン後藤正文のフジロック談義2024 フェスの見どころ&注目アクトを語る

Rolling Stone Japan / 2024年7月17日 17時40分

後藤正文、フジロック(Photo by 宇宙大使☆スター)

後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)がホストを務めるSpotifyのポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+Talk-』では、つやちゃん、矢島由佳子、小熊俊哉(本誌編集)というレギュラー陣に、ときにはゲストも交えながら、ユニークな視点で音楽トピックや楽曲を紹介している。今年も同番組との連動企画で、2大洋楽フェスをテーマに音楽談義。注目すべき出演アーティストなどについて4人で語り合った。こちらはフジロック編。



後藤:1997年から始まったフジロックは今年で28年目。コロナ禍を経て、昨年は例年通りのフジロックが戻ってきた……という声も聞かれましたが、実際に参加してみた方はいかがでしたか?

小熊:まずは深夜のパーティー空間、THE PALACE OF WONDERの復活が印象的でしたね。個人的にも3日目の深夜に入り浸って、友人とライブを観ながらお酒を呑んでダベったりして。ビジネス的な観点だけで言えばなくても成立するけど、そういう場所を大事にしてきたからこそのフジロックだなと改めて思いました。

後藤:昨年、小熊くんと行ったグラストンバリーは、それこそTHE PALACE OF WONDERみたいな場所だらけなんだよね。フジロックはもともと、「グラストみたいなフェスをやりたい」という日高(正博)さんの想いからスタートしたわけで、ああいう場所はなくしちゃいけないんだろうな。最近は世界レベルでフェスが苦境の時期……曲がり角に来ているような印象があって。 ビッグなアーティストはフェスに出るより、自分たちで興行した方が儲かるわけで、みたいなね。ヘッドライナーのブッキングは欧米でも難しくなってきているという話も聞くし。

小熊:スマッシュも今は移行期を迎えていると思いますが、これまでのレガシーを受け継ぎつつ、フジロックの新しいあり方を示そうという志を強く感じます。もちろんフェスはこれからも必要だと思いますし、フジロックも「やっぱりフェスっていいよね」と思えるような場所であり続けてほしい。



後藤:ただビッグなアーティストを集めて騒ぐだけのお祭りじゃ、なんかちょっと切ないしね。グラストは会場のそこらへんで、いろんな国のいろんな人たちが勝手に演奏していたのもよかった。フジロックも若いインディーの子とかが楽器を持ち込んで、河原とかで演奏すればいいのに。俺もやろうかな……さすがに怒られるか(笑)。そういえば2012年の夜中に、(キャンプサイト近くの)ラコスバーガーの前で吉村(秀樹/bloodthirsty butchers)さんと歌ったんだけど、そのときは一応スマッシュに許可をとりましたね。

矢島:何時くらいにやられたんですか?

後藤:深夜12時ぐらいかな。吉村さんが苗場プリンスに戻る後輩を見つけては歌わせてました(笑)。「おっ、百々じゃねぇか」ってMO'SOME TONEBENDERの百々(和宏)さんを捕まえて歌わせたり、9mm Parabellum Bulletの菅原(卓郎)くんも歌わせられてたな。彼らの歌に吉村さんがギターを乗せていくんだけど、バカでかい音でギターソロとか弾くから、むしろ邪魔してるように聞こえるんだよね。あれは笑ったな。また誰かああいうことやってくれたらいいのに。

小熊:そういう自由さも受け入れてくれそうなムードを感じますよね。「自由」でいうと、SIRUPさんが去年のMCで「戦争・差別・インボイス反対」を掲げていたのもよかった。これもグラストで実感したことですが、各々が自由に楽しむためにも、政治の話は切り離せないわけで。フェスへの参加を通じて自分の生き方、社会のあり方を考えることも大切だなと再認識させられました。

矢島:私は去年、キャロライン・ポラチェックのライブにめっちゃ感動したことが思い出深いです。世界的に最先端のライブ・エンターテインメントを3日間ずっと観られるのはやっぱりすごく嬉しいですよね。

4人の気になる出演アーティストは?

後藤 今年のヘッドライナーはクラフトワーク、ノエル・ギャラガー。SZAは個人的にも楽しみでしたが、残念ながらキャンセルになりました(編注:本記事の収録後、ザ・キラーズのヘッドライナー出演が発表)。最近、聴かず嫌いだったノエルの最新アルバム『Council Skies』をやっと聴いてみたんだけど、 良かったな。もちろん、オアシスで帰ってきてほしいという思いはあります。ノエルの書いた曲をリアムが歌う以上の魔法はないわけで。でも、それぞれが変わらず第一線でやっているのは本当にすごいこと。きっと素敵な日曜日のフィナーレになるんじゃないかな。



つや:Awichさんも気になります。2年前くらいにインタビューしたときは、まだヒップホップのフェスにしか出てなかったんですよ。そのときに、彼女はこれからはロック系のフェスにも出ていくと言っていて、そのあといろんなフェスに出るようになった。そして、1年前に話を伺ったときは次は海外のフェスに出ると言っていて、こちらもRolling Loudやコーチェラを含めて有言実行していった。そういった経験を積んで、フジのメインステージでどんなパフォーマンスをするのか。コーチェラでも「Bad Bitch 美学」でNENEさんやLANAさんなどをフィーチャーしていましたし、自分が大切にしている仲間や地元・沖縄のラッパーたちを自身のツアーやフェスに参加させていて。フジでもいろんなゲストを仕込んでいそうな気がしますし、常々マンネリが嫌だと言ってる人なので、新しい見せ方をしてくるんだろうなと。個人的には衣装も楽しみです。コーチェラではルイ・ヴィトンが提供していましたけど、いつも素敵なので。

後藤:近年のフジロックは、日本のヒップホップをいいスロットで届けてますよね。昨年のBAD HOPもそうだし、今年はKID FRESINOくんにRED MARQUEEのトリを任せたり。すごく素敵だなって。



小熊:コーチェラの配信で驚かされたのが、レイ(Raye)というUKのシンガー。ゴージャスでパワフルで華があって、エイミー・ワインハウスを想起させる歌声の持ち主。まだ日本での知名度は低いかもしれないけど、当日はかなり盛り上げてくれそうな気がします。



矢島:コーチェラからの流れで言えば、私はザ・ラスト・ディナー・パーティーが楽しみです。サウス・ロンドンの5人組フィメール・バンドですが、 ファッションや佇まいもかっこいいし、視覚的な表現までぬかりないんですよね。女性5人の堂々としたパフォーマンスからは特有の多幸感が溢れ出ていて、これをフジで体感できたら最高だなって。

小熊:僕も配信で観ましたが、アメリカのフェスということで最初はアウェイ感があったのに、逞しいステージングで最終的には盛り上げていて、新人バンドとは思えない実力を見せつけていました。眩しいほどのガール・パワーも放っていて。

矢島:CHAIとか好きな人たちにも観てほしいですよね。



矢島:あと、本誌の読者にぜひ観てほしいのはHedigan's。YONCEさん(Suchmos)がボーカルを務めるバンドで、2日目のRED MARQUEEに出演します。インタビューをやらせてもらったとき、ドラムの大内岳さんが「僕たちは音楽従事者だ」と語ったことが印象的だったのですが、その言葉通りのライブをするんですよね。音を操ろうとするのではなく、音に操られているみたいな演奏で、音楽に身を捧げるようなバンドサウンドが鳴り続く。初めて観たときは震えてしばらく動けない状態になったくらいで、あの感動をぜひみんなに味わってほしいです。



つや:エリカ・デ・カシエールも楽しみです。デンマークのシンガーソングライター/プロデューサーで、今年4ADから発表した『Still』というアルバムも素晴らしかったですし、昨年はNewJeansへの楽曲提供でも注目を集めていましたよね。90〜2000年代のR&Bとドラムンベースなどのクラブ・ミュージックを融合させた感じの音楽性なんですけど、その説明から想像するようなサウンドともまた違っていて。浮遊感や清涼感が漂っていて、メロディはメランコリック。心地よい自然に囲まれた苗場の地に、彼女の涼しげな音楽はすごく合うと思う。

後藤:初日のRED MARQUEEなんだね。そこの並びだと、僕はキング・クルールが楽しみですね。そうそう、僕も初日に出演するんですよ。ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAで歌います。(ネットで)燃えないようにがんばりたいなと(笑)。




小熊:自虐的ですね(笑)。後藤さんたちのあとにGREEN STAGEへ登場するフリコも期待されてますね。2月に出たデビューアルバムが日本のSNSでバズって、ロックの救世主みたいに騒がれるなか、速攻でフジへの出演が決まるという。2日目に出演するオーストラリアのグラス・ビームスも、まだEP二作しか出していないのに人気です。覆面を被ったミステリアスな3人組で、インド音楽の要素も取り入れたエキゾチックでサイケデリックな音を鳴らしていて。クルアンビンにも少し通じる作風がフジにハマりそう。




つや:2日目だと、べス・ギボンズも観たいです。ポーティスヘッドのシンガーとして知られている人だけど、最近発表されたソロ・アルバムがすごく良かった。もちろん古くからのファンは絶対観るでしょうけど、若いリスナーにも刺さる音楽だと思います。ビリー・アイリッシュ以降のゴスなムードから見ても先駆者的な存在ですし、最近ではケンドリック・ラマーも彼女をフィーチャーしていましたよね。アルバムは50代を振り返っていくような内容でしたし、年齢を重ねたうえでのステージがどんなものになるのか注目ですね。



小熊:その流れでいくと、キム・ゴードンも見逃せない。ソニック・ユースのベーシストで、USオルタナの伝説的な存在ですけど、今年発表したソロアルバムがかなりの衝撃作だったんです。トラップからの影響を受けつつ、名状しがたい爆発的な音が鳴っていて。どう考えても71歳のアルバムとは思えない(笑)。どんなライブをやるんだろうって。

後藤:キム・ゴードンもそうだし、同じ3日目だとルーファス・ウェインライトも観たい。最近の活動はそこまでチェックできてないけど、好きなんです。こういうベテランが出るのも嬉しい。素敵なミュージシャンが老いていくさまを見届けるのも素敵なことだしね。ライドとかもそうかな。フジロック自体も、とにかく末永く続いてほしいという気持ちです。俺らが死んだあともずっと存在し続けてほしいフェスですね。






FUJI ROCK FESTIVAL'24
2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※後藤正文はROUTE 17 RocknRoll ORCHESTRA(feat. トータス松本、TOSHI-LOW、後藤正文、GLIM SPANKY、US)として7月26日(金)に出演
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/


『Recent Report I』
後藤正文
配信中


ASIAN KUNG-FU GENERATION
『Single Collection』
2024年7月31日リリース
購入:https://kmu.lnk.to/amrLDc

「遥か彼方 (2024 ver.)」
配信:https://kmu.lnk.to/V0xjaI



ASIAN KUNG-FU GENERATION Anniversary Special Live ”ファン感謝祭2024"
2024年8月24日(土)・25日(日) 横浜BUNTAI

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2024「ファン感謝サーキット」
2024年9月30日(月)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
2024年10月2日(水)東京都 LIQUIDROOM
2024年10月5日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2024年10月6日(日)北海道 帯広MEGA STONE
2024年10月10日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
2024年10月11日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
2024年10月13日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
2024年10月19日(土)香川県 高松festhalle
2024年10月24日(木)福岡県 DRUM LOGOS
2024年10月26日(土)熊本県 B.9 V1
2024年10月27日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
2024年10月31日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2024年11月1日(金)福島県 clubSONICiwaki
2024年11月3日(日・祝)宮城県 石巻BLUE RESISTANCE
2024年11月4日(月・振休)岩手県 KESEN ROCK FREAKS
2024年11月13日(水)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
2024年11月14日(木)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
2024年11月20日(水)大阪府 ユニバース
2024年11月21日(木)大阪府 ユニバース
2024年11月23日(土・祝)京都府 磔磔
2024年11月24日(日)兵庫県 Harbor Studio
2024年11月29日(金)愛知県 DIAMOND HALL
2024年11月30日(土)岐阜県 club-G
2024年12月4日(水)宮城県 SENDAI GIGS
2024年12月12日(木)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
2024年12月13日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
2024年12月18日(水)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
2024年12月19日(木)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

ASIAN KUNG-FU GENERATION公式サイト:https://www.asiankung-fu.com

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