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ジェイ・Zやファレルも惚れ込むR&Bの後継者、Maetaが語る音楽ルーツと初来日への想い

Rolling Stone Japan / 2024年7月17日 17時30分

Photo by Juliet Wolf

ジェイ・Z率いるロック・ネイション所属の新進気鋭R&Bシンガー、メイタ(Maeta)が8月28日・29日にビルボードライブ東京で初来日公演を行なう。音楽ジャーナリスト・林剛による最新インタビューをお届けする。

昨年11月に行われたBET Soul Train Awards 2023でのパフォーマンス。風に髪をなびかせながら「Through The Night」を歌うメイタの姿に見惚れたファンも多いと聞く。自分もそのひとりだが、映像を見なくてもクールで情熱的な歌声から漂ってくる妖艶な雰囲気に吸い込まれそうになる。

ジェイ・Zを創設者とするロック・ネイションとの契約で注目を集めたインディアナ州インディアナポリス出身の彼女は、いわゆるZ世代で、オルタナティブな感覚を標準装備しながらマチュアでトラディショナルな感覚も身につけたシンガーだ。ブラック・チャーチ叩き上げではないマルチレイシャルなR&Bシンガーは数多いが、その中でもメインストリームに最接近して、今や現行R&Bを代表する歌い手のひとりになった。2023年リリースの『When I Hear Your Name』に参加したアーティストやプロデューサーたちの名前を見ても、その立ち位置がわかるというもの。業界内からは「R&Bの正統な後継者」との声も一部であがっている。

現在はクリス・ブラウンの北米ツアー「The 11:11 Tour」にスペシャル・ゲストとして同行中。同ツアーでカナダのモントリオールにバスで向かう途中の彼女に、国境検問所での待機中、音楽的なルーツからアーティストとのコラボ、楽曲のことなどを根掘り葉掘り聞いた。




R&Bシンガーとしての音楽的ルーツ

―まず名前ですが、Maetaは”メイタ”と読むのですよね? 

メイタ:そう、メイタ(本名メイタ・ホール)。最後の”タ”にアクセントを置くのが正しい発音なんだけど、私は普通に(アクセントの強弱をつけずに)発音したほうが呼びやすいと思っている。ドイツ系の名前で、高祖母あたりの先祖にちなんでつけられたって聞いている。父方の一族がドイツからの移民で、どうやってインディアナに辿り着いたのかは知らないけど、私にはドイツの血が流れているの。

―お父様がドラマー、お母様がビジュアル・アーティストというアートな環境で育って、5歳でピアノを弾き始め、8歳で歌い始めたというバイオグラフィを目にしましたが、音楽業界で仕事をするようになったのはいつ頃ですか?

メイタ:物心がついた頃から歌っていて、ビヨンセやレオナ・ルイスのようなシンガーに刺激を受けて、いつか自分もあんなふうに歌いたいって憧れていた。実際に音楽業界に入ったのは13歳の時。初めてマネージャーが付いて、レコード会社との契約交渉が始まった。その後、18歳でロック・ネイションと契約したのをきっかけにインディアナからLAに移住した。そこから本格的なレコーディングが始まって人生が大きく変化した。8歳の頃から自分の進むべき道はこれだと決めていたとはいえ、こうして夢が叶って世界中でライブができるようになったのが信じられない。

―ロック・ネイションとの契約に至った経緯を教えてください。

メイタ:13歳の時にSNSの活用とカバー動画をアップロードすることが才能を見出される手段だってことをジャスティン・ビーバーのドキュメンタリーを観て知っていたから、18歳までの5年間はとにかくたくさんカバーを録ってアップロードしまくっていた。それで18歳の時にインスタに上げたH.E.R.とダニエル・シーザーの「Best Part」のカバーが、今ロック・ネイションの共同代表をやっている(A&Rの)オマー・グラントの目に止まった。当時ルックスに関してはかなり調整の余地ありで、ひどいもんだったけど(笑)、私の声に惚れ込んで感謝祭の数日前にインディアナまで会いに来てくれて、1週間後には契約していた。あれを機に私の人生は大きく変わった。オマーは私のキャリアを理解してくれている親友でもあって、この6年間に作られた曲はすべて彼の助言をもとに一緒に取り組んだもの。楽曲のプロデューサーではないけど曲を形にするということを熟知していて、私の音楽のために尽力してくれている。



―以前アップしていたカバー動画には、ミニー・リパートンの「Every Time He Comes Around」、ドレイクfeat.リアーナの「Take Care」、ジェネイ・アイコの「None Of Your Concern」などもありましたが、こうした曲があなたの音楽的なベースにあると考えていいでしょうか?

メイタ:うわー、すっかり忘れていた! そう、小さい頃からR&Bに惹かれて夢中で聴いていた。自分もボーカル・ラン(フェイク)が得意だったし、ソウルフルな声も含めてR&B独特の雰囲気が大好きだった。ジャズミン・サリヴァンとかケリ・ヒルソンとかね。最近ではイエバも好きでよく聴く。リアーナとかレディー・ガガ、あとマイケル・ジャクソンのようなポップ・スターに夢中になっていた時もあった。ポップ・スターと言ってもR&Bのソウルフルな要素を取り入れた歌手だけど、そういったアーティストたちが持つミックス感覚が好きだった。私が育ったインディアナって、どちらかといえば素朴な中西部だから、カントリーもよく聴いた。だから私のベースにはいろいろな音楽のジャンルの影響が少しずつあると思う。




―マイケル・ジャクソンの名前が出ましたが、インディアナと言えばジャクソン・ファミリーも同じ州の出身です。同郷意識はありますか?

メイタ:それはないかな。彼らは同じインディアナ州でもシカゴに近いゲイリーの出身だから。ただジャネット・ジャクソンが最近インディアナに帰省したりして、少しは繋がりを感じる。私の地元から数時間は離れている場所だから同じとは言えないけど、ジャネットが育った場所を見たりすると嬉しいし、マイケルとかジャクソンズと同じ州の出身だって人に言えることはちょっとした自慢ではある。

―”R&B”とはどんな音楽だと考えていますか?

メイタ:R&Bって愛にまつわる曲が大半だと思う。誰かに対する溢れる想いを歌っているものだったり、時には自分にとって良くない関係についての歌だったりするけど、愛と苦しみの深い感情がもとになっている曲が多い気がする。ポップとかダンス・ミュージックの中にもそういった気持ちにさせる曲もあるけど、それらはどちらかといえばもう少し気楽というか、楽しくて明るい、ワクワクさせる感じでしょ? それに比べてR&Bはズバリ本題に入って、感情がはっきり表現されている。だから聴いていて共感できる。他のジャンルには、なかなかない要素だと思う。心にグッとくるという点ではゴスペルも似ているかもしれない。

―ゴスペルのルーツはあるのですか?

メイタ:ゴスペルのルーツはないの。幼少期に教会で歌った経験はあるけど、礼拝の時にみんなに混じって歌っていただけで、本格的にやっていたわけじゃない。ゴスペルを聴き始めたのは10代に入ってからで、聴いたことのないような素晴らしい声の持ち主もいるし、今では大好きなジャンル。私の持つボーカル・テクニックの多くはゴスペルを研究したおかげだと言える。



―あなたのボーカルは、囁くような声と地声の使い分け、息遣いやトーンも絶妙で、とても美しいと感じていますが、歌唱面でお手本にしているシンガーというと?

メイタ:ボーカルに関して言うと、ジャズミン・サリヴァンやイエバが素晴らしい。彼女たちのボーカル・ラン(フェイク)は完全に別レベル。ビヨンセのボーカルも、批判的な人もいるけど超一流だと私は思う。ホイットニー・ヒューストンもインスピレーションを与えてくれる存在ね。彼女のビデオはよく観ていて、真似したり、研究している。だから私の歌唱のルーツはそういったアーティストたちにあると思う。

―あなたのことを”現代のティーナ・マリー”と評するメディアもあります。

メイタ:なんとなくわかる気はする。子供の頃に彼女の音楽を聴いていたわけじゃないから肯定も否定もできないけど、声質も似ているし、実際に音楽活動を始めてからよく言われる。だからもし将来、彼女の伝記映画を撮るなら本人役に起用されたい。素晴らしい音域の持ち主で、一度、私のA&Rにティーナの「Déjà Vu(Ive Been Here Before)」(79年)をカバーするように言われて歌ってみたけど、すごく難易度が高くて……。A&Rとはこの曲をめぐって何度も喧嘩して、今のところその時の音源はお蔵入りになっている。とにかく素晴らしいボーカリストだし、似てると言われてから彼女の歌い方についても研究した。



―ライブなどで歌う際に心がけていることはありますか?

メイタ:あれこれ考えずに感じること。感情に身を任せることを大切にしている。私は形にはめられた状況だと自分の能力を発揮できないタイプ。まるで学校にいるみたいに窮屈に感じたりするのが嫌だし、練習を重ねて非の打ち所がないようにする音楽も好きじゃない。だからライブの時にも自分を解き放つ。そうするとお客さんもそれを感じとってくれる。

―ジャズミン・サリヴァンやH.E.R.のツアーでオープニングアクトを務めていましたが、その体験から得たものはありますか?

メイタ:他のアーティストとツアーする時は、いつも多くのことを学ばせてもらう。ジャズミン・サリヴァンのボーカルは言うまでもなく素晴らしかったし、H.E.R.は観客を飽きさせないで楽しませるコツを心得ている。今はクリス・ブラウンとツアー中だけど、彼から学ぶこともすごく多くて、もっと努力する必要があるってことを身をもって示してくれるから、とても謙虚な気持ちになる。私の持ち時間はたったの20分だけど、クリスは2時間ぶっ通しで歌って踊っているのに疲れた素振りすら見せず、ステージでは感情豊かに表現している。本当にすごいと思う。

作品から紐解く交友関係とコラボワーク

―では、曲作りにおいて影響を受けた人は?

メイタ:ジョン・メイヤーが大好き。自分の音楽にも取り入れたいって思っているのは彼の曲作りの才能。今まで聴いた中でダントツに素晴らしいソングライター!

―あなたはピアノを弾きますが、曲作りの際はピアノを使っているのでしょうか?

メイタ:それがしないのよ。子供の頃に習ってからずっと弾いてきたのにね。家にはピアノがあって音源も保存できるし、ボタンひとつでそれを再生できるのに、その機能も活用してない。普段使うスタジオにピアノがないからというのもあるけど。でも、今から始めてもいいのかも。ただ、ピアノが弾けることや知識自体はスタジオでメロディを考えたりする時に役立っていると思う。


Photo by Juliet Wolf

―ロック・ネイションと契約する前からインディペンデントで作品を出していましたが、現在に繋がる音楽性が定まったのは、2021年にロック・ネイションから出したEP『Habits』からと考えていいですか?

メイタ:『Habit』は大好きなプロジェクトだけど、あの当時から私も変わったし、自分の音楽もそれにつれて成長したという意味で、今振り返ると正直ちょっと恥ずかしく感じる。LAに移住してからすごく好きになった人がいて、当時の曲はすべて彼に関するものだった。彼に夢中だった当時の私は今よりずっとナイーブで、いろんな意味で人生経験も足りなかった。あのプロジェクトはその彼との関係、そして今でもわかったとは言えないけど、愛というものがよくわかっていなかった、恋に恋する少女が、それを理解しようとするさまがテーマだった。





―では、EP『Habits』の後に出した『When I Hear Your Name』(2023年)はどんなテーマの作品なのでしょうか?

メイタ:内容としては今話した彼のことなんだけど……長いこと付き合っていて、実は今でも大切な存在の彼とは問題続きの時期をともに過ごした後にしばらく別の道を行ったんだけど、結局ヨリを戻した。その時にふたりである島に旅行したの。全てから現実逃避するためにね。ふたりの関係はかなり複雑だったけど、旅の間はすべてがうまくいっているように思えた……。それで彼へのどうしようもない気持ちと島への逃避行をコンセプトにした。その人の名前を聞くだけで記憶が蘇ったり、ドキッとする人が誰にだっているでしょ? それでタイトルが『When I Hear Your Name』というわけ。

―赤裸々に語っていただきましたが、その『When I Hear Your Name』は13曲入りでありながら厳密にはアルバムではなくEPだそうですね。フル・アルバムは別に作られると?

メイタ:そう。ケイトラナダとのプロジェクト(『Endless Night』)もやったけど、それは夏向けで、デビュー・アルバムに関しては最近取り組み始めたところ。年内のリリース予定ではあるんだけど、私は完璧主義なところがあるから、それが現実的なのかはちょっとわからない。でも作業自体は開始しているから、みんなに早く聴いてもらいたい。




―『When I Hear Your Name』のゲストや裏方には、ケイトラナダをはじめ、タイ・ダラー・サイン、デスティン・コンラッド、ザ・ドリーム、ラッキー・デイ、アンブレ、ルイ・ラスティック、シャーロット・デイ・ウィルソン、キャンパー、デミ・ロヴァート、イライジャ・ブレイクなど、あなたと同じく今のR&Bやその周辺のシーンを盛り上げている人たちの名前が並びますが、これほど豪華で多数のアーティストが集った作品も珍しい気がします。

メイタ:これはひとえにA&Rのオマー(・グラント)の手腕。私に良い曲を提供できるよう尽力してくれて、みんな(ゲストやプロデューサー)も私との共演を快諾してくれた。あと、私の性格もあるかもしれない。知らない人ばかりの環境でもすぐに友達を作れるタイプだから、自然に一緒にやろうよ!ってなる。ザ・ドリームやタイ・ダラー・サインみたいな、今まで自分がファンだった錚々たるメンバーが私を信じてサポートしてくれて、もう感謝の気持ちでいっぱい。本当に今でも実現したことが信じられない。中にはロック・ネイションとの契約前に録った曲もあるけどね。

―「Anybody」の作者に名を連ねているSZA(Solana Rowe)とは直接会ったことがないそうですが。

メイタ:SZAが書いた「Anybody」は契約直後に曲(デモ)を聴いて当時すごく気に入ったんだけど、数年間寝かせていた。でも、ある時『When I Hear Your Name』にすごくフィットするかも……ってことでギリギリに追加された曲。状況はその都度違うけど、そうやって突然採用された曲もある。

―「S(EX)」のライター・クレジットにはケラーニの名前もあります。トキシックなスロウ・ジャムと言いますか、「体だけの関係を取るか、人間としての魅力を取るか」というキワどい歌詞の曲ですが、これも未発表だったものをあなたが歌ったそうですね。

メイタ:そう。共通のヘア・スタイリストがいて、ある日ディナーに誘われた。そうしたらそこにケラー二も来ていて、それが初対面。食後にみんなでカラオケに行ったんだけど、当時の私は彼女を前にしてただのファン状態でドキドキしていたのを憶えている。「S(EX)」はもともとケラーニが自分で歌うために作ったんだけど、結果的には出さなかった曲で、それを私のA&Rが送ってきてくれた。聴いてみたら歌詞からサンプリングまで当時の私には共感できるところが多くて……彼女がこの曲を私にくれて本当に嬉しかった。

―後半でフロエトリーの「Say Yes」(2002年)のフックを歌う部分がありますが、このアイディアは?

メイタ:初めてこの曲を聴いた時にはすでにその部分は入っていたから、ケラーニのアイディアだと思う。最高のアイディアだけど、残念ながら考えたのは私ではないの。彼女とこの曲を手掛けたOGパーカー、それとデスティン・コンラッドにも敬意を表したい。




―「See You Around」を手掛けたザ・ドリームとは制作中に喧嘩したというエピソードを読みました。

メイタ:あれも契約して間もない頃に曲を耳にして、数年間温めていた。ザ・ドリームがプロデュースをしたいって言ってくれたのでニューヨークまで会いに行った。それで数日間かけて一緒にこの曲を含めた数曲に取り掛かったんだけど、彼はボーカルに関してのこだわりが強くて、彼から歌い方を指示されたことが私は気に入らなくて揉めたというわけ。どう言えばいいかな……私は性格的にすぐに折れないっていうか、本気で怒ってるわけじゃないけど冗談半分で喧嘩腰になっちゃうというか。でも、最終的には彼が正しかった。彼が感性を重視しているのに、私はブレることなく完璧に歌うことに意識を集中させていたら、「聴く人に気持ちが伝わるように歌わないとダメだ。大事なのは完璧に歌うことじゃない」って言われた。その大切さを彼から学んだ。

―アンブレとラッキー・デイはそれぞれソングライティングに参加し、ふたりとも別の曲でボーカリストとしても声を交えています。特にロック・ネイションのレーベルメイトでもあるアンブレとは以前からお互いの曲で共演し合っていますが、彼女のどのあたりに共感していますか?

メイタ:アンブレとは同時期にロック・ネイションと契約した縁もあって仲良くなった。レーベルメイトというより大切な友達ね。最高にクールで、すごく面白い子。何を考えているのかわかりにくいところもあるから、最初にコラボした時は「うわー、絶対私嫌われてる」って思ったけど(笑)。ソングライターとしても素晴らしい才能の持ち主で、リリックの内容もクールで私のことをよくわかっているから、いかにも私が言いそうなリリックを書くのよね。



―ラッキー・デイがソングライティングに関わったバラード「Through The Night」はキャンパーたちのプロデュースで、フリー・ナショナルズが演奏しています。これは今やあなたの代表曲と言っていいと思いますが、この曲が作られた背景を教えてください。

メイタ: キャンパーとラッキー・ディとはプロジェクトのために1日セッションを入れていたんだけど、いろいろアイディアが出て時間が足りなくなってきたから、もう1日追加しようってことになった。それで初日からのアイディアを2日目に仕上げるつもりだったんだけど、たしかキャンパーがこの曲のベースのフレーズを弾き出したの。そこにラッキー・ディがフリースタイルで加わった時に、「これだ! 他の曲はもういらない、これで行こう!」ということになった。完全に偶然の産物なんだけど、おかげで私にとって初めてのNo.1ソング(※Billboard「Adult R&B Airplay Chart」で1位を獲得)になった。今日もツアー・バスの中でテレビをつけたらこの曲が流れていて、本当にいい曲に恵まれたと感謝している。



―クイーンの「Cool Cat」(82年)は、どういう経緯でカバーしたのでしょう?

メイタ:A&Rのオマーと車に乗っていた時、彼が「ちょっとアイデアがある」と言ってこの曲をかけてくれて、聴いた途端にめちゃめちゃ気に入った。クイーンの曲の中でもあまり知られていないし、今までにやったことがない雰囲気だったから歌ってみたけど、すごく難しい曲で、途中で集中力が欠けてしまって、オマーにお尻を叩かれてなんとか歌い上げた。それでレコーディングした音源をプロデューサー・チームの1500・オア・ナッシングにリプロデュースしてもらったんだけど、私にとっての自信作のひとつになった。クイーンのカバーじゃなくて私のオリジナルだと思ってる人が多いみたいだけど。仕上がりには大満足している。



―1500・オア・ナッシングといえば、その構成員でもあるジェイムス・フォントルロイを「Sexual Love」でフィーチャーしていますよね。

メイタ:もう数年一緒にやっているけど、彼は本当に素晴らしいシンガー/ソングライター。だから、彼がどこにいようと関係なく、仮に彼が日本に住んでいても一緒にやるためなら喜んで日本まで行く!



ケイトラナダやファレルとの関係、初来日への想い

―そうした繋がりの中でも、とりわけケイトラナダと密な関係を築いているように感じられます。彼は『Habits』で「Teen Scene」、『When I Hear Your Name』で「Questions」、そして最新EPの『Endless Night』も手掛けていて、それらのクールでフューチャリスティックなダンス・チューンでは、あなたの艶美なボーカルが最大限に発揮されているように思いました。ふたりで”メイトラナダ(Maetranada)”とも名乗っているようですが、彼のどんな部分がスペシャルだと思いますか?

メイタ:ケイトラナダともコラボし始めて数年になるけど、彼のプロダクションと私のボーカルはすごく相性がいいと思う。私はメロディックな曲調にリバーブをかけたりするのが好きなんだけど、彼のダンス・ビートに私の声を乗せるといい感じにフロウする。だから、今取り掛かっているデビュー・アルバムがリリースされるまで、新作を待ちわびてるファンのために何か出さないとね、ってことになった。それで、今までにふたりで書きためていたダンス・ソングを夏向けのプロジェクトとして出してみようと。取り掛かったら、これはいいかも!っていう仕上がりになったのが「Endless Night」で……。

―EPのタイトルになった曲ですね。

メイタ:そう。その曲に新たにプラスして全7曲のプロジェクトになったというわけ。このプロジェクトのテーマは”フリーダム”。さっき話した彼との関係で馬鹿みたいに6年間も泣きっぱなしで、頭ではもういい加減に忘れなきゃって思いながら、そうできない状態で……。でも、せっかく夏なんだし、美味しいお酒やダンスを楽しんで、自由なシングル・ライフを謳歌して自分の人生を取り戻さなきゃっていう前向きな気持ちを歌っている。少しの間、自分を解き放ってあげたいというか。今までの作品とは全然違うスタイルだけど、仕上がりにはすごく満足しているし、きっと気に入ってもらえるはず。MVもすごく面白いコンセプトで、髪型も前髪を作ってみたり、ゲイのカップルにも登場してもらって、摩訶不思議な世界を描いている。




―先行シングルになった「DJ Got Me」では、後半でインディープの「Last Night A DJ Saved My Life」(82年)のフックが歌われますが、これは誰のアイディアですか?

メイタ:これもA&Rのオマーの選曲。私は曲を知らなくて、彼がこのダンス・クラシックをかけた時、フックの部分が気に入った。実はその時点で出来上がっていたのは1分30秒ぐらいで、これじゃ尺が足りないしリリースできないよって話になった時に、オマーのアイデアで後半に「Last Night A DJ Saved My Life」を付け足そうってことになった。それでもまだ短いって声がSNSであったから、長いバージョンも作ってある。これはプロジェクトの一環として近日リリース予定。Twitter(X)で文句を言う人がいなければいいんだけど…。

―やはりSNSでの反応は気になります?

メイタ:エゴサーチはやってる。人からどう思われているかがめちゃくちゃ気になって、Twitterで自分の名前を検索して、みんなが私のこと何てつぶやいているかをチェックしてしまうの。嬉しいコメントもあれば、傷つくこともあったりするけど。ほとんどスマホ依存状態で……よくないとはわかっているし、そのうちもうこんなことやってられないって日が来るんだろうけど、今のところは人の意見が気になる探索期。ただ、家族のこととかプライベートなことは公開しないようにしている。




―ファレル・ウィリアムズともプロジェクトを進めていると聞きました。

メイタ:1年ぐらい前にファレルと曲を作るためにマイアミまで会いに行った。出来上がった曲は私のスマホに入ってるけど、まだ数人にしか聴かせたことがない。めちゃめちゃグルーヴィーでクールな曲。アルバムに入れるのか、それ以外の形でリリースするか、今のところは未定で温めている状態。ファレルとはすごく波長が合って、自分の恋愛についても話したんだけど、それをベースにセクシーでグルーヴィーな曲を作ってくれた。この私があのファレルと話してるってことが信じられなくて、以前やったあるインタビューについて褒めてくれた時には感極まって泣いてしまって、トイレでしばらく気持ちを落ち着かせないといけなかった。いずれにしても曲は近いうちにお披露目できると思う。


Photo by Juliet Wolf

―コラボでは、ヴィック・メンサがファッション・デザイナーの故ヴァージル・アブロー(2021年に41歳で急逝)に捧げて作った「Strawberry Louis Vuitton」(2023年)にサンダーキャットと一緒に客演していましたが、あれも素晴らしかったです。

メイタ:当時、ロック・ネイションにいたヴィックとは何回か会ううちに仲良くなって。彼がこの曲にボーカルを必要としていて、私はアドリブとかフリースタイルでフレーズを作るのが得意だから、送ってもらった音源にバック・ボーカルを入れたら、数日後には曲として完成した。その数週間後には深夜トーク番組の「The Late Show with Stephen Colbert」に出演して歌っていた。本当に急ピッチでことが進んだんだけど、すべてが自然でオーガニックに実現したコラボだった。



―最近のアーティストで共感できる人はいますか?

メイタ:私は昔の曲をよく聴くから新しいアーティストを聴くのは結構珍しいんだけど、数カ月前、ちょっと精神的に辛かった時期があって、その時に聴いたのがシーロウズという女の子のプロジェクトの「House Song」(2023年)という曲。今まで聴いた中で一番心が落ち着く穏やかな曲調の歌で、私が作る曲とは全く違うスタイルだけど、ギターの音色がすごく心地いい。あと、ビヨンセのアルバム『Cowboy Carter』(2024年)にフィーチャーされたシャブージー。最近知ったんだけどノア・サイラスとの「My Fault」(2024年)が好きで聴いている。それと、サム・オースティンズの「Seasons」(2024年)っていう曲。TikTokを見ていてこの曲のプロモーションが目に止まった。オルタナ系のクラブとかアンダーグラウンドのダンス・パーティーとかでかかってそうなクールな曲で気に入っている。この3人が最近気になったアーティストかな。





―昨年12月に『When I Hear Your Name』 をベースにしたライブ・アルバムもリリースされました。2曲で一緒に歌っているケイレブ・カリーも気になりますが、現在はどんな編成でライブをやっているのでしょうか?

メイタ:去年、『When I Hear Your Name』を引っ提げてのツアーで初めてバック・ボーカルを入れてみたら、すごくよくて。ケイレブは、去年のツアーのバック・ボーカルのひとりだった。ロンドン公演で「Sexual Love」をやった時に、スタジオ版でフィーチャーしていたジェイムス・フォントルロイのパートを歌ってもらったら、すごくうまくいった。彼は素晴らしいボーカリストで、大切な友達でもある。今のクリス・ブラウンとのツアーでは振り付けも少しプラスしたから、ふたりのバック・ボーカル兼ダンサーが参加しているんだけど、この編成もめちゃくちゃ気に入ってる。



―8月の来日公演がどんなショウになるのか楽しみです。

メイタ:日本公演にはいつものバック・ボーカル兼ダンサーを連れていく。ビルボードライブは1日2回公演でそれぞれ90分なんだけど、こんなに長いセットは今回が初めて。歌あり、ダンスあり、ケイトラナダの曲もありで、ソウルフルなボーカルを披露する楽しいセットになると思うけど、どうなるかはお楽しみ。海外にはヨーロッパしか行ったことがなくて、日本は今回が初めて。日本は帰りたくなくなるぐらい最高だって聞いていて、1年前から行くのを待っていた。日本のオーディエンスはアメリカと比べて静かで礼儀正しいという前情報ももらっている。A&Rのオマーも同行するけど、彼は自称”日本通”で、お気に入りの場所にいろいろ連れて行ってくれるみたい。とにかくめちゃめちゃ楽しみ!



メイタ来日公演
2024年8月28日(水)29日(木)
東京・ビルボードライブ東京
1stステージ OPEN 17:00 / START 18:00
2ndステージ OPEN 20:00 / START 21:00
サービスエリア 8,400円
カジュアルエリア 7,900円(1ドリンク付)
>>>詳細・チケット購入はこちら

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