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「収入源も、影響力も変わった」 米オリンピック選手はSNSで稼ぐ

Rolling Stone Japan / 2024年7月27日 10時30分

(MIKE COPPOLA/GETTY IMAGES; STEPH CHAMBERS/GETTY IMAGES; MIKE COPPOLA/GETTY IMAGES)

26日に開幕するパリオリンピック。アメリカ代表の選手たちは、各競技で一生に一度の体験を味わうことになるが、トップアスリートの中にはインフルエンサーとしての活動に力を入れる者もいる。

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マイケル・フェルプスやシモーネ・バイルズ、シャカリ・リチャードソンのような有名選手なら、アパレル系・ライスタイル系企業と数百万ドルのスポンサー契約を結び、それを糧に万全のコンディションを維持することができる。だが大半のオリンピック選手はそうした話に恵まれない。2020年に48カ国500人のオリンピック級選手を対象に行ったアンケートによると、58%が「経済的に安定」しているとは言えないと回答した。国内および国際大会に出場するオリンピック選手はどこにいても週12~55時間練習できるが、9~17時でフルタイムの仕事をこなす余裕はほぼゼロだ。しかもオリンピックでメダルを獲っても、全員に賞金が与えられるわけではない。むしろ個々の国や各競技団体次第で、賞金が出るとしても国や競技団体が金額を決定する。アメリカ代表の場合、金メダリストには3万7500ドル、銀メダリストには2万2500ドル、銅メダリストには1万5000ドルがそれぞれ授与される。だがあくまでもメダルを獲った場合の話だ。

そこでインフルエンサーの登場だ。コンテンツ作成はこの8年で、選手の知名度を上げる秘策から、オリンピック有望選手の立派なサイドビジネスへと進化した。TikTokやYouTubeでクリエイタープログラムに登録したアカウントの場合、人気が出れば閲覧件数だけで毎月6000ドルはゆうに稼げる――それとは別に、企業とのタイアップ契約もある。今回ローリングストーン誌は、競技のファンを増やすためにコンテンツクリエイターとしてのキャリアをスタートしたオリンピック選手数人に取材した。だがクリエイター経済の拡大とともに、こうしたトップアスリートたちも新たな道を歩み始めている。自分の好きなことをしながら、同時にお金も稼げる術を見つけたのだ。

女子走り幅跳びアメリカ代表としてオリンピックに2大会出場したタラ・デイヴィス-ウッドホールは、大学陸上の選手時代からInstagramで人気を集めていた。ところが将来の夫となるパラリンピック選手のハンター・ウッドホールと出会い、交際を始めると、自分たちの日常生活がインターネット上で注目されていることに気づいた。2人がYouTubeで稼いだ初任給は3200ドル――大学生の収入としては驚愕の数字だ(「大学を退学しちゃおうか、なんて言ってたっけ」と夫のウッドホールは笑いながら言った。妻のデイヴィス-ウッドホールも「これで食べていけるかも、とかね」)。現在25歳の夫婦はそれぞれ個別にTikTokアカウントを運営し、それとは別に購読者数70万人以上のYouTubeのvlogチャンネルも抱えている。2人ともアカウント運営が本業だと考えている。

@tara LADIES! ♬ YA YA - Beyoncé

「自分はパラリンピック選手、タラは女子走り幅跳び選手。どっちも陸上競技では花形種目ではない」とウッドホール。「2人とも陸上が大好きだけど、陸上だけやってても自分たちが望む生活は送れないことは分かっていた。ぶっちゃけ(コンテンツ作成で)すべてが変わった」。

「正直、生活が変わったわ」とデイヴィス-ウッドホールも続けた。「最高の食事、最高の医師を手に入れ、コーチも雇うことができる。金銭的負担を感じることなく、競技のために全力を注ぐことができるようになった」。
@hunterwoodhall Our journey to the Paris Olympics and Paralympics. Lets go further. 2.29.2024 ♬ original sound - Hunter Woodhall


ごく最近になってコンテンツクリエイターとして成功したオリンピック選手もいる。女子ラグビーアメリカ代表選手のイロナ・マーは2021年の東京2020でオリンピック初出場を果たし、選手村の様子をユーモアたっぷりにとらえた投稿で瞬く間に時の人となった。現在TikTokで110万人のフォロワーを有するオリンピック選手兼コンテンツクリエイターは、年間を通じてアメリカ代表チームの裏側をフォロワーに披露している。2024年オリンピックの調整中ということで、今回の取材ではマーからコメントはもらえなかったが、2023年のNBCスポーツとの取材ではTikTokでの成功で人生と競技生活が変わったと語っていた。

@ilonamaher Disappointed to say the least @Naya Tapper @Sam_Sul_ @kayla canett @jazgray223 ♬ original sound - Ilona Maher

「始めた一番の目的は、この競技にもっと関心を持ってもらうためだった」と本人。「オリンピックに行くと別人になって帰って来る、なんてよく言うけど、私の場合は別人になったというより、大勢のフォロワーがついて前より知名度が上がった。間違いなく私自身だけじゃなく、キャリアも変わった。収入源も、影響力もね」。

アーティスティック・スイミングの世界の知名度が低いことは、ダニ・ラミレスも前々から承知していた。以前はシンクロナイズド・スイミングと呼ばれていたこの競技は、オリンピック競技に採用されてからまだ40年しか経っていない。だが2023年、ラミレスはそうした情報格差を埋めることにチャレンジした。現在オリンピックで期待のかかるラミレスも、インターネットでは40万人以上のフォロワーを抱える人気ASMRクリエイターだ。アーティスティック・スイミング選手は一糸乱れぬ髪型にするためにKnox社のゼラチンパウダーを使うが、50万人近いユーザーがラミレスのページにアクセスし、ゼラチンで固めた髪を爪ではがすラミレスの動画を閲覧した。

@annadramirez WE GOT BRONZE im so so proud of this team i could not be more happy to do this as my life. #artisticswimming #worldaquatics #teamusa #acrobatics #asmr #hairtok #hairstyle #knox #knoxremoval ♬ original sound - Daniella Ramirez

コンテンツのユニークさはラミレス本人も自覚しているが、自分のASMR動画がアーティスティック・スイミングを知るきっかけになると考えている。「パッと見ただけではものすごく複雑に見えるかもしれないけど」と本人。「実際はどうなっているのか詳しく知ると、今まで知らなかった競技の魅力にはまっていく。そういうところに人々は惹きつけられるのよ。たとえ奇抜なヘアスタイルが入口だとしても、多くの人に競技を紹介するチャンスをもらえて本当にありがたいわ」。

競技の認知度はささやかかもしれないが、ローリングストーン誌が取材した選手はみな、知名度が増えたことで収入も大きく変わったと力説した。女子バスケットボールがいい例だ。2024年、WNBAはファンの関心が高まったことで試合のたびに満員御礼。26年ぶりの過去最多観客動員を記録した。エイジャ・ウィルソンやケイトリン・クラークをはじめとする選手は誰もが知る有名人となり、100万ドルのスポンサー契約も結んだ。数週間後には2024年オリンピックが様々な角度から報じられることになるが、数百万人の忠実なファンはウッドホールやラミレス、マーをはじめとするクリエイターが伝える舞台裏にも目が釘付けになるだろう。

「僕らにとっては毎日のことだから、ごく当たり前になってるけど、僕らのスケジュールや練習内容、日常生活が面白がられて、人々の関心を集めている」とウッドホールは言う。「世界中の人たちが見たい、知りたいことで、みんながウィンウィンになれることを裏付けていると思うよ」。

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from Rolling Stone US

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