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フジロック’24総括 絶体絶命のピンチを乗り越えて生まれた「奇跡」

Rolling Stone Japan / 2024年8月1日 17時15分

ザ・キラーズ(Photo by Chris Phelps)

「FUJI ROCK FESTIVAL24」が7月26日(金)、27日(土)、28日(日)に新潟県湯沢町・苗場スキー場で開催された。7月25日の前夜祭から4日間でのべ96,000人が来場。新たな試みとして導入された「金曜ナイト券」「Under 18チケット」「キャンプ・ヴィレッジ」「FUJI ROCK go round」も好評を博した。Rolling Stone Japanで毎年恒例の総括レポート、今年は大幅拡張して3日間の模様を振り返る。

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2024年のフジロックはいくつもの「奇跡」で満ち溢れていた。SZAキャンセルの大ピンチから形成逆転となるショーを届けてくれたザ・キラーズは、ワタルというニューヒーローも生み出して話題をさらった。クラフトワークがMCを披露したのも驚きかつ感動的だったし、ステージに際限なく観客が駆け上がっていくターンスタイルの大団円は、苗場開催25回目を迎えたこのフェス屈指の名場面として語り継がれることだろう。もちろん、ミラクルが生まれたのはヘッドライナーやメインステージだけではない。フジロックの楽しみ方に正解はなく、会場を思い思いに歩き回れば最高の音楽を発見することができる。その尊さを例年以上に再認識させられた。

渋さ知らズオーケストラ、ノーネームなど国内外の出演者が「フリー・パレスチナ」を訴え、ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAのゲストとして登場した後藤正文が「イマジン」を日本語で歌った一幕も忘れがたい。英グラストンベリー・フェスと反核・脱原発イベント「アトミック・カフェ」をルーツに持ち、音楽と政治は地続きであることを示してきたフジロックの精神が、今も健在であることを実感させられた。

Amazon Musicによって生配信が復活したこともあり、SNS上でも大いに盛り上がった今年。おおむね好天に恵まれた会場では、昨年以上に海外からのオーディエンスが目立った。現在のフジロックは日本のリスナーが「海外の今」を知るのと同時に、海外の人々が「日本の今」に触れる機会にもなっている。転換期の真っ只中にあるこのフェスが来年以降も成功しつづけることを祈りつつ、GREEN STAGE、WHITE STAGE、RED MARQUEEのハイライトをまとめた総括レポをお届けする。(小熊俊哉)

※以下、当日の出演時間順に掲載


◎1日目・7月26日(金)




indigo la End
11:00〈GREEN〉

ウィンドシンセを用いたサマーアンセム「夜風とハヤブサ」と、川谷絵音がSGでノイズを撒き散らしながらステージに倒れ込むオルタナなロックナンバー「晩生」がバンドの二面性を象徴していたインディゴ初のフジロック。「コロナで出られなかった2021年はREDだったけど、今年はGREENに出れて嬉しい」という言葉がそのままこの3年における活動の規模感の広がりを示し、「今日はこの曲をやるために来ました」と言って、その変化のキーとなる「夏夜のマジック」を演奏したのがこの日のハイライトだった。最後に新曲の「盲目だった」が演奏されたのは、日本武道館公演のアンコールで「名前は片想い」が初披露されたことを思い出させるもの。ポストロック風のアルペジオを用いた「盲目だった」は、バンドの原点を踏襲しつつ、それを現代に更新していく予告の一曲だったかも。(金子厚武)

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Friko
14:20〈GREEN〉

愛すべきバンドである。デビューアルバムが日本のApple Musicの総合チャートで最高10位まで上り詰めるという成功を受け、GREEN STAGEに抜擢されたフリコの2人(とサポートの2人)は日本のオーディエンスからの歓迎が嬉しくてたまらないといった感じで、ニコ・カペタンの「風里鼓」バンダナも何とも微笑ましい。「Crimson To Chrome」で始まったライブはその勢いと4人全員で歌うコーラスがやはりアーケイド・ファイア(あるいは、ウルフ・パレード)を連想させつつ、ギターが2人ともアームを用いてノイズを鳴らした「Crashing Through」はソニック・ユースのようで、「For Ella」ではドラムのベイリー・ミンゼンバーガーがニコのギターで音響的なアプローチを見せたりと、音楽性の広さも印象的。終盤に披露された「Where Weve Been」はすでにアンセムになっていて、11月の再来日も盛り上がること間違いなし。(金子厚武)

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Erika De Casier
14:30〈RED〉

デンマークから来たエリカ・デ・カシエールの歌は、ふとした瞬間にギュッと心を鷲掴みにする。油断できないシンガーだ。ドラマーのJ. Ludvig lllに遅れてステージにふらっと現れたエリカの佇まいは驚くほど軽やかで、純度100%な透明感のある歌声はまるで暑さなど知らないかのようだ。ヘヴィなネオソウルに化けた「Photo of You」やブレイクビートに生まれ変わった「Little Bit」など、ラグジュアルなサウンドにただただ身を任せる。「Home Alone」や「Ice」では間の取り方や感情の込め方に演技力の高さを感じた。ドラムパッドでビートの音色を曲毎に細かく使い分けていたのは、繊細で多様な心情の機微に寄り添うためだ。ピアノフレーズが印象的な「Lucky」や「e-motions」での感情の溢れだすようなパフォーマンス。最後はその日リリースされたばかりの「Bikini」をソロで披露。ステージ上のエリカは人々を魅了する女優だった。(最込舜一)






Photo by Kazma Kobayashi

Omar Apollo
17:30〈GREEN〉

苗場の景色に映える水色のセットアップを着用したオマー・アポロは伸びやかで艶やかな歌声とモダンなバンドアンサンブルでゆるやかに心地良いグルーヴを構築していった。公開されたばかりのMVをLEDビジョンに映しながら披露された「Drifting」で「come on!」とアジテーション。曲に込めた切なさを語りかけるような歌に昇華するだけでなく、全身を使ってミュージカルスターのごとく華麗な動きを見せながら珠玉のファルセットを響かせるとGREEN STAGEから感嘆の声が上がった。エレクトリックなバンドサウンドに合わせてフレディ・マーキュリーのような動きを見せた「How」の後、「一緒に歌って」と言って、「Invincible feat. Daniel Caeser」を披露。ラストは「Evergreen」。いくつもの声色を巧みに使い分けながら情感たっぷりに歌い上げ、オーディエンスの合唱を誘った。「we like music! Thank you amazing time!」と言って颯爽と去って行った。(小松香里)

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King Krule
18:30〈RED〉

実に10年ぶりの来日となったキング・クルールは個人的に初日のベストアクト。ポストダブステップ譲りのサイケな音響と官能的なサックスの音色を絡めながら、6人編成でジャズ〜ポストパンク〜ビートミュージックを横断するアンサンブルがまず素晴らしい。そして、ステージの中央でフラフラと揺れながらあの特徴的なしゃがれ声で歌い、シャウトをするアーチー・マーシャルの不穏な存在感がとにかく抜群だ。セットリストも新作から旧作まで満遍なく並ぶ満足度の高いもので、音源よりヘヴィな「Easy Easy」に圧倒され、”Theres a cat on the roof”という歌詞に倣ってオーディエンスが猫の鳴き真似を強制された「Its All Soup Now」で爆笑。最後の「Out Getting Ribs」で一人スポットライトに照らされるアーチーの姿は、カリスマ以外の何者でもなかった。(金子厚武)





Awich
19:20〈GREEN〉

初日、GREEN STAGEのサブヘッドライナーはAwich。ライブ前、Awichは「今日のステージはNEXTレベルのAwichを披露します」とSNSにポストした。まずは「Queendom」で自らの出自を示し、「荊棘を抜け 今立つフジロック!!!」とAwichが叫ぶと大歓声が上がった。一挙手一投足から並々ならぬ気合が漲る。2019年のフジロックに愛娘と一緒にSIAを観に行った時の話をしたAwich。1997年の初回から欠かさず来場しているリカさんという車椅子のフジロッカーの方と出会い、「私はAwichという名前でラッパーをやっていて、いつかGREENに立ちたい」と伝えたという。リカさんは今は亡くなってしまったと明かした後、「リカさん見てますか? フジロックのGREENに立てました!」と力強く報告した。

山田健人が手がける映像を効果的に使った非常に作りこまれたライブ。「『ヘッドライナーがキャンセルになったから行かない』とか「『Awichにサブヘッドライナーは務まらない』」とか何もしてないのに文句ばっか言ってるヤツ、マジお前誰!?」というMCからの「WHORU?」。YENTOWNが結集しての「不幸中の幸い」、NENEとMaRiとLANAとの「BAD BITCH 美学」、JP THE WAVYとの「GILA GILA」、OZWorld、CHICO CARLITO、唾奇との「RASEN in OKINAWA」……すべてがハイライトだったが、とりわけ印象に残ったのは初披露された新曲2曲だ。より海外への視座を強く感じさせる曲であり、CHICO CARLITOとの「LONGINESS」を披露中に改めてグラミーというワードを口にしていたが、まさに本格的に世界に踏み出すための一歩となるNEXT Awichのステージであった。(小松香里)

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Floating Points
20:30〈RED〉

2024年のフローティング・ポインツは完全クラブ仕様だ。近年のサム・シェパードはファラオ・サンダースとロンドン交響楽団とコラボした『Promises』や、バレエ作品『Mere Mortals』の音楽を手掛けるなど、作家としての多彩な側面を見せていたが、9月にリリースが予定されている新作『Cascade』からの先行曲はどれも『Crush』期を更新するダンストラック。この日序盤に披露された「Birth4000」をはじめ、硬いキックと太いベースのバンガーな楽曲が続けて投下され、近作のアートワークを手がける中山晃子の「Alive Painting」を元にしたVJとともにその音を浴びる体験は強烈にサイケデリック。トランス、エレクトロ、アシッドと様々なダンスミュージックを浴びせていくライブは、パンデミック以降のクラブ界に天才プロデューサーが帰還したことを強く印象付けるものであった。(金子厚武)






The Killers
21:30〈GREEN〉

SZAがキャンセルとなり、デビュー年である2004年以来20年ぶりのフジロック出演がGREEN STAGEのヘッドライナーとなったザ・キラーズ。「Somebody Told Me」のグラマラスでダイナミックなサウンドが放たれると「待ってました!」と拳を突き上げるオーディエンス多数。ここから1時間半にわたって華やかなロックスター、ブランドン・フラワーズ(Vo, Key)を中心とするめくるめくロックエンターテインメントショウが展開された。ヘヴィにビルドアップされた「Jenny Was A Friend Of Mine」では「come on」の大合唱が巻き起こる中、ブランドンは歌唱中にフジロックというワーズを口にし、一層一体感を高める。キラーズの曲は一聴すればシンガロングできるキャッチーな曲だらけであり、フェスのヘッドライナーとして非常に強いということを実証していく。

中盤、「For Reasons Unknown」のギターリフが響く中、ブランドンは最前列にいた「CAN I DRUM!?」と書かれたボードを掲げていたキラーズTシャツを着た男性をステージに上げた。少し会話をした後、ブランドンから「東京から来たワタルだ」と紹介された男性はドラムセットに座り、1曲を通して見事なドラミングを披露し、ワタルコールが巻き起こった。この一幕もまたキラーズの最高のエンターテインぶりを示していた。アンコールはピンクのジャケットに着替えたブランドンの頭上からピンクの紙テープが勢いよく舞った「The Man」から始まり、「Human」「Mr.Brightside」と続け、オーディエンスの大合唱が轟いた。(小松香里)

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Peggy Gou
22:00〈WHITE〉

世界中で急速に支持を集め存在感を高める韓国のDJ、ペギー・グーのステージはBPM130後半を徹底的にキープするストイックな90分だった。WHITE STAGEの最高の音響でウワモノの彩度を使い分けながら、ディープハウスのゆったりとしたグルーヴを途切らさず徐々に盛り上げていく。彼女のMixではお馴染みのスリー・6・マフィアの名曲「Tear da Club Up」のマッシュアップでは、紫煙をくゆらせながら口ずさむのが見えた。90年代に並々ならぬ愛着とこだわりを持っているのが選曲から伝わってくる。折り返しくらいの時間で明らかに低音の強烈さのギアが一段階上がると、持ち曲「Lobster Telephone」を披露し、「(It Goes Like) Nanana」ではもちろん大合唱。90分にしっかり展開をつけながら最後はスッとスローダウンして〆。ペギー・グーは起承転結に手を抜かないDJなのだと思った。(最込舜一)

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電気グルーヴ
23:45〈PLANET GROOVE〉

大勢の人が詰めかけた初日深夜のRED MARQUEE。1曲目の「アルペジ夫とオシ礼太」が流れる中、ピエール瀧が「こんばんは、電気グループでございます!」と第一声を発すると「KISS KISS KISS」という歌が聞こえ、「Shangri-La」へ。他にも「モノノケダンス」「ガリガリ君」「Babys on Fire」「Flashback Disco」という風に代表曲を次々と繰り出していくが、2024年フジロックバージョンとでもいうべきアップデートされたミックスに。楽曲をまったく風化させないところがまた結成35周年を迎えてもなお電気グルーヴが強く支持されている所以だろう。「The Big Shirts」で石野卓球が歌詞を「クラフトワークも赤いシャツ!」と変えて歌い、翌日のヘッドライナーであるレジェンドにリスペクトを表す場面も。最後は「富士山!」の大合唱が轟いた「富士山」。やはり電気グルーヴにはフジロックがよく似合う。(小松香里)





◎2日目・7月27日(土)



Hedigan's
11:30〈RED〉

「Suchmos以降」を感じさせるBillyrromに続いて、Hedigansがフジロックに初登場。ウィルコ「Via Chicago」ばりの轟音パートを含むこの日の1曲目「LOVE(XL)」がリリースされたときは、「YONCEがGliderやゆうらん船のメンバーとサイケなインディフォークを始めたのか」と感じたが、ライブは音源以上にエクスペリメンタル。熱量高いガレージロックな最新曲「Oshare」にしろ、フィッシュマンズばりのダビーなロングトリップを聴かせる「説教くさいおっさんのルンバ」にしろ、どの曲も非常にラジカルな印象を受ける。Y0NCEの存在感はやはり格別だが、栗田将治のギタープレイも目を引くし、終始楽しそうに演奏するベースの本村拓磨もアイコニックで、「バンド」としての仕上がりも順調。SuchmosがGREEN STAGEに立った日から早6年を経て、自由に真摯に音楽を楽しむYONCEの健やかな現在地がそこにあった。(金子厚武)

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The Last Dinner Party
13:00〈GREEN〉

アビゲイル・モリス(Vo)、ジョージア・デイビーズ(Ba)、リジ・メイランド(Gt)、エミリー・ロバーツ(Gt)、オーロラ・二シェヴシ(Key)という5人の女性メンバーが「それぞれ好きな服を着てきました」と言わんばかりの方向性バラバラの衣装をまとい、横並びにパフォーマンスする姿が目に入った時点で祝祭感が増大する。そして、それぞれが奏でたい音を好きに奏でているような奔放さがありながら、やたら人懐っこくてポップなアンサンブルがとても魅力的だ。アビゲイルは何度もステージから下り、最前列のオーディエンスの手をタッチしたり、ミュージカルのように踊りながら歌い、強い求心力を放っていた。高校で日本語の授業を選択していたというジョージアの日本語によるMCはとてもチャーミング。ブロンディの「Call Me」のカバーも飛び出したザ・ラスト・ディナー・パーティー初のフジロックのステージはたくさんの笑顔を生み出した。(小松香里)

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Glass Beams
14:00〈RED〉

オーストラリア出身の覆面の3人組バンド、グラス・ビームスの初来日公演は超満員のレッドマーキーの大歓声で迎えられた。あまりにも蒸し暑い会場に負けじと早速「Mirage」の熱烈なサイケデリックサウンドで迎え撃つ容赦のなさ。雷のようなギターは音源よりロック色が強く、その背景にインド音楽だけでなく西洋のロックへの憧憬があったことを思い起こさせる。時には太鼓のように響くミニマルなベースと、的確に欲しい音を打ち込むタイトなドラム。3人の息は終始ぴったりで、「Mahal」での音源とは違った締め上げたグルーヴは昇天しそうなほどに気持ち良い。ダンスミュージックとしての性格を色濃く持つのが新鮮な驚きで、特にラストのカバー曲はインド古典音楽のラーガを人力テクノに魔改造したような圧巻のパフォーマンス。全く飽きさせない仕掛けに満ちており、世界中のフェスに引っ張りだこなのも強烈に分からせられた一幕だった。(最込舜一)

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Photo by Kazma Kobayashi

Noname
18:00〈RED〉

昨年リリースした5年ぶりのアルバム『Sundial』がローリングストーンズ誌が選ぶ2023年のベストラップアルバム一位にも選ばれたシカゴ出身のラッパーであり活動家としても知られるノーネーム。ギター&ベース&ドラムが奏でるタイトなアンサンブルにキレの良いラップを巧みに乗せ、ラップの延長線のようなMCの魅力も相まって、あっという間にオーディエンスとの距離感をゼロにしてしまうような親密さがある。言わずもがなリリックの内容はとてもポリティカルだが、コール&レスポンスやハンズアップを効果的に挟み込み、するするとオーディエンスを引き込む手腕が見事。「フリーパレスチナ!」のコールも上がった約1時間はあっという間。歓声とどよめきがしばらく鳴り止まなかった。(小松香里)





Beth Gibbons
19:00〈GREEN〉

1998年にSMASH招聘の来日公演が行われるはずだったポ―ティスヘッド。しかし、直前にボーカルであるベス・ギボンズの体調が悪くなってキャンセルに。そこから未だに来日は実現していないわけで、今回のべスのフジロックのアクトは初めてべスの生歌が日本で響き渡るというメモラブルなライブとなる。弦楽器を含む大所帯のバンドメンバーと共にGREEN STAGEに現れたべス。リリースされたばかりの初のソロアルバム『Lives Outgrown』の楽曲を次々と披露。その幽玄な歌声は苗場の木々と一体化していくようだ。1曲ごとに大きな歓声と拍手を送るオーディエンスに感激したのか、笑顔を浮かべて何度も「ありがとう!」と口にしたべス。ラスト2曲目に歌われたのはポーティスヘッドの「Roads」。オーロラのような幻想的な照明の中、一瞬の声の掠れすら至高のアートのような歌を聞かせた。(小松香里)

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Sampha
20:00〈WHITE〉

白を基調としたビジュアルが神々しかったサンファの7年ぶりとなるフジロックでのライブは、人間の進化や未来への眼差しを強く感じさせるもの。トラックメイカーとしての個性を見せつけた『Lahai』の楽曲に、SBTRKTとの「Hold On」やケンドリック・ラマーの「Father Time」なども交えて進み、人力のブレイクビーツ(スネアの音が最高!)にシンセやサンプリングパッドを組み合わせた演奏は実に先鋭的。その一方、メンバー全員でドラムをアフロパーカッションのように打ち鳴らした「Without」で西アフリカという自らのルーツを明確に示し、声やシェイカーなどのプリミティブな要素を重用することで、どれだけ世界がデジタルに覆われても、その進化の源は人間の力であると伝えているかのよう。ラストの「Blood On Me」で広がった力強い手拍子は、そんなメッセージを会場全体で共有した証だった。(金子厚武)

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Photo by Kazma Kobayashi

Kraftwerk
21:00〈GREEN〉

ステージに「あの台」が4台置かれている。それらが緑色の光を放ち、ドイツ語の8カウントで「Numbers」が始まると、コンソールとリンクして発光する「あのスーツ」を着たクラフトワーク御一行がゆっくりと登場。電子音楽をポップカルチャーの中心へと押し上げたパイオニアが苗場の地に降り立ち、観客で埋め尽くされたグリーンステージに姿を見せた。
数々の大名曲が連続する豪勢なセットリストを超高品質な音響で披露してくれただけでなく、視覚的な要素も充実していた。スクリーンには、楽曲に合わせて緻密に設計された視覚効果が次々と映し出される。例えば「The Man-Machine」では、アルバムジャケットをモチーフにした赤と黒の幾何学的なアニメーションが音楽のリズムと完璧に同期。「Autobahn」では、ドイツの高速道路を走る車の映像が楽曲の展開に合わせてスピードを変化させていく。例えば、「Spacelab」の演奏中には、宇宙船が苗場に向かって降下するユーモラスな紙芝居のようなアニメーションが投影され、まさかの苗場限定の演出に会場からは驚きと喜びの声が上がった。疑いようのないレジェンドたる彼らのパフォーマンスは日本に向けた特別仕様でもあったのだ。

そういう意味でも最も感動的だったのはやはり坂本龍一とラルフ・ヒュッターの写真が映された場面だろう。坂本との出会いを語り、「私たちは永遠の友人」だと述べ、”Merry Christmas Mr. Lawrence”がシンセサイザーでピアノに重ねて演奏されると悲鳴が巻き起こる。坂本が監修した「Radioactivity」の日本語詞が大画面に表示されたことについては、受け取り方は自由だとはいえ少なくとも日本への愛としてのメッセージだったと思う。そして「Tour de France」「Trans Europe Express」「The Robots」といった名曲の応酬を浴び、「電卓」ではオーディエンスが「いち!に!さん!し!」と合唱。最後の「Musique Non Stop」におけるメンバーが一人ずつ丁寧に頭を下げて退場する姿には、音楽界の世界遺産たる彼らの謙虚さと観客への感謝の気持ちが表れていた。(最込舜一)

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girl in red
22:00〈WHITE〉

ノルウェー出身のマリー・ウルヴェンによるガール・イン・レッド。バンドと一体となって、元気いっぱいにステージの端から端まで移動し、足を蹴り上げる仕草をしながら生命力あふれる歌を披露したと思ったら、曲間は楽しそうに曲の説明をしたり、一生懸命覚えてきたという日本語でMCをしたり、最前列にいたファンと会話をしてコーヒーのプレゼントを受け取ったり、とにかくハッピーなムード。中盤、赤い鍵盤の上にいた虫を茶目っ気たっぷりな仕草でつまんで逃がした後、「次の曲はハッピーソングだけど、こうやって私が日本に来れたこともハッピーだ」と伝えて演奏したのは「Im Back」。鍵盤の旋律をループさせ、希望の歌を紡いだ。ラストの「i wanna be your girlfriend」ではオーディエンスに「真ん中を空けて」とリクエストし、ステージから降りて客席に突入。オーディエンスと一緒にジャンプしながら歌い、何度も「ありがとうございます!」と言いながらステージに戻り、ペットボトルの水をぶちまけ、ヘッドバンキングをして、笑顔でステージを去った。(小松香里)

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◎3日目・7月28日(日)



betcover!!
11:30〈RED〉

betcover!!こと柳瀬二郎にとって待望のフジロック。バンドの実力を鑑みれば初出演は遅過ぎるくらいだが、その分これまで何度も観てきたファンにとってもこの日がベストパフォーマンスと言うべきステージだった。スーツ姿で登場した6人による合奏は、半屋外の広い会場でもこれまで以上に威勢と色気を放つ。クリアに響くサックスやピアノも絶妙な加減でアダルトなムードの醸成に一役買っていた。継ぎ目なく楽曲を繋ぎ、昭和俳優のような貫禄をまとった柳瀬が名作映画のように次々と景色を重ねていく。特に名シーンだったのは「炎天の日」で演奏を一瞬だけ停止したものの、柳瀬が手持ちのアコギで弾き語る余裕の復帰を見せてからの鬼気迫るプレイ、そして「超人」への流れだろう。緩急つけたアレンジが施された圧倒的な演奏と、おどろおどろしい大演説のような熱唱。究極のバンドアンサンブルが締まると同時に「betcover!!」の文字がバックスクリーンに映し出された瞬間はきっと一生忘れられない。(最込舜一)

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Photo by Shunichi MOCOMI

betcover!!ついにここまで来たんだな。勝負のタイミングで決定的すぎるライブ。何度も観てきたけど今日が間違いなくベスト。どの曲もアレンジがまたもや生まれ変わり、↓恒例のバカヤローで昂ぶり、最初から最後まで呆然。終演後のどよめきも凄かったし、声を震せて泣いてる人もいた。#fujirock pic.twitter.com/yqvnhrVhEv — 小熊俊哉 (@kitikuma3) July 28, 2024

US
12:40〈RED〉

フィンランド出身のUSに先立ってまずステージに現れたのはフジロック生みの親、日高正博だ。日高氏が「いよいよ最後の出番ね」と言ったのは彼らが今回のフジロックだけで何度もライブを行ったからだが、若き5人組のステージは疲労など微塵も感じさせないエネルギッシュなものだった。主に英国で活動する彼らのパフォーマンスは、暴れん坊なブルースハープを吹き散らすハーモニカ担当のパン・ヒルヴォネンの姿とテオ・ヒルヴォネンのテクニカルで鋭いエレキギターが印象的で、伝統的なロックンロールショーといった趣だ。もはやアナクロなほどのブルースロックを炸裂させ観客を煽る彼らだが、基礎体力と演奏力の目を見張るような高さには希望を感じざるを得ない。曲が終わるたびに全員で驚異的な深さのお辞儀をしてくれるのがなんともキュート。フロアからほぼ見えちゃってる位置に座り、時折観客の表情を見やる日高氏の眼差しに孫を見るような暖かさがあった。(最込舜一)

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Rufus Wainwright
13:00〈GREEN〉

もみあげと髭には白髪も目立って貫禄が増したルーファス・ウェインライト。ステージ上にはグランドピアノとアコギのみが置かれ、それを交互に演奏しながらステージを進行していった。ミニマルで流麗なフレージングが光るピアノ曲、ピョンピョン飛び跳ねて歌う姿がキュートなアコギ曲はそれぞれ魅力的で、一人でもすっかり演劇的なショーを作り上げてしまうのは流石の一言だ。「イッショニオチコモウ」と呼びかけた「Early Morning Madness」、「イッショニハッピーニナロウ」と呼びかけた「Cigarettes and Chocolate Milk」、民主党の大統領候補に立候補をしたカマラ・ハリスに捧げられた「Going to a Town」などを続け、最後に歌われたのはレナード・コーエンの「Hallelujah」。悲喜交々の人生讃歌を歌い続けるルーファスの姿から、エルトン・ジョンを連想した。(金子厚武)

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クリープハイプ
15:00〈GREEN〉

まるで小説のようなライブだった。「邦ロック系バンド、ロキノン系バンドとして、誇りを持って今日このステージに来ました」と話し、アッパーに鳴らされた「しょうもな」。「フジロックのGREEN STAGEでちょっと気が引けるけど、雨が降っててみんな濡れてるしちょうどいいのでセックスの歌を歌います」と言って演奏された「HE IS MINE」。「聴きたきゃ聴いてくれみたいな気持ちでひさしぶりにライブができて、大事なものを思い出させてもらいました」と語り、自らの「満たされなさ」に言及した上で歌われた「大丈夫」。そして、「一生の思い出にするつもりで来たけど、思ってた何倍も楽しくて、思い出にするのは勿体無いから、ぜひまた呼んでください」と話して鳴らされた「栞」での大団円。60分のステージの中で起承転結を作り、喪失と再生の物語を見事に描いてみせた。(金子厚武)






The Jesus And Mary Chain
16:10〈WHITE〉

結成から40年を迎えたジーザス&メリーチェインがWHITE STAGEに登場。ジム(Vo)とウィリアム(Gt)のリード兄弟に加え、ベースはプライマル・スクリームのシモン・バトラーだ。甘美なメロディとギターノイズに多くのオーディエンスが陶酔の表情を浮かべた。「Sometimes Always」はジムとシモンがデュエット、ジムのガールフレンドのレイチェル・コンテが登場して「Girl 71」を共に歌う一幕もあった。終盤、もったりとしたヘロヘロのギターリフが聞こえると大歓声が上がった。「Darklands」だ。ジムの気怠い歌に「I want go」というコーラスが重なり、WHITE STAGEを天国に誘う。続けて「Just Like Honey」。息を呑んでしまうような美しさが広がる中、「Reverence」へ。長いアンサンブルが響く中、ジムは目を瞑って何度も「I wanna die」と歌った。(小松香里)

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Raye
17:00〈GREEN〉

フォーマルな衣装を着た管楽器を含む8人編成のバンドと共に登場したレイ。まずは「The Thrill Is Gone.」で驚異的な歌唱力とバンドの演奏力の高さを見せつける。とにかくゴージャスで貫禄がある。ヒールを脱いでステージに跪いて熱唱したり、曲の最中にもオーディエンスに真摯に話しかける姿勢が印象的。深い感謝を伝えながら、音楽への愛情と今回のステージに懸ける想いを表情豊かに伝える姿に心を奪われたオーディエンスも多いだろう。中盤にはジェームス・ブラウンの「It's A Man's Man's Man's World」のカバーを披露し、恐ろしい程の歌のうまさをより発揮。ラストは070 Shakeと組んだ大ヒットナンバー「Escapism」。レイが「1、2、3」とカウントアップし、ジャンプを促すとGREEN STAGEが揺れた。(小松香里)




toe
18:00〈WHITE〉

9年ぶりのフルアルバム『NOW I SEE THE LIGHT』を発表してフジロックに帰還を果たしたtoe。「録っただけで練習はしてない」と新作から披露されたのは「LONELINESS WILL SHINE」のみだったが、WHITE STAGEでのライブはいつも以上にエモーショナルに感じられ、柏倉隆史が椅子の上に立ってオーディエンスを煽り、山嵜廣和が寝そべってギターをかき鳴らす「エソテリック」はその象徴だった。ハイライトは「長く生きてると、自分の力や想いだけではどうにもならないことが結構あるなと気付いてくるんですが、『俺はこれがやりたいんだよ』っていうのが一個だけでもあるといいですよ。次の曲はそういうことに対するエールのような気が最近しております」と話して、んoonのJCとともに演奏された「グッドバイ」。白から始まり、紫、ピンク、オレンジと徐々に移り変わっていった背景は、最後に決して消えることのない情熱の赤へと変化していた。(金子厚武)

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Fontaines D.C.
18:00〈RED〉

フォンテインズD.C.がアイルランドの英雄と讃えられる理由は超シンプル、カッコいいからだ。単にそうであるのではない。カッコいいとはどういうことなのか、彼らは正確に理解している。バンドの華であるフロントマンのグリアン・シャッテンの猛獣のようでありながらジェントルな佇まい、他のメンバーに遅れてステージ上手袖から堂々とゆっくり登場する歩き方、ニヒルで知的な響きの歌声を妨げずに絶妙に空間を埋め尽くすサウンド、その全てがロックスターと呼ぶに相応しい。退廃的だがどこかロマンチックで、サウンドのバリエーションも豊富。終盤は「Boys In the Better Land」「I Love You」「Favorite」「Starburster」と、新旧の楽曲を巧みに織り交ぜ、ハードさとソフトさを交互に繰り出して観客を魅了した。起きるはずないとは了解しつつアンコールを求める声が巻き起こってたのも納得だ。その姿は未来のヘッドライナーとしての潜在能力十分に示すものだった。(最込舜一)





ずっと真夜中でいいのに。
19:00〈GREEN〉

最終日、GREEN STAGEのサブヘッドライナーは5年前のフジロックでフェスデビューを飾ったずっと真夜中でいいのに。。超絶なテクニックで魅せる大所帯のバンドのセンターに佇むACAねはこの後に登場するノエル・ギャラガーの顔がプリントされた服を着用。「お勉強しといてよ」「上辺の私自身なんだよ」「機械油」「残機」等に加え、新曲や新たなラップを加えた「綺羅キラー」を披露し、スペシャル感満載。バールやチェンソーを振り回し、広い音域と多彩な声質を宿した歌声でエモーションを高めていったACAねは5年前のフジロックによって「音楽が最高だと思えた」と吐露。「きっかけになったフジロックに恩返ししたいし、もっとそういう人が増えてほしい。必死にひたむきにやりたい」と話した後、ラスト曲「暗く黒く」へ。津軽三味線や扇風琴をも擁したバンドの演奏がヒートアップする中、ステージのあちらこちらからCO2が噴出し、巨大なラボのような様相に。大興奮のオーディエンスに向かってACAねは最後「また来たいです」と口にした。(小松香里)

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Kim Gordon
20:00〈WHITE〉

71歳になるというのがどういう未来なのか、自分にはよく分からないし想像もつかない。しかし、孫のようなバンドメンバーを引き連れてフェスで歌う将来は少なくともありえそうにない。そんな仕事を成し遂げているキム・ゴードンは、オルタナティブロックの出発に多大な影響を与えたソニック・ユースの歩みを終えてもなお、ロックの可能性を拡大し続けている。真珠で飾られたブーツを履き、ギターを振り回し、時にマイク一本でステージを歩き回る姿には憧れるしかない。とにかく実験的で恐れを知らないサウンドも現場ではさらに強力な出音に変貌していた。「Grass Jeans」ではギターをスピーカーで擦りつけて音を出すパワープレイ。最後にもう1曲と告げて、冒頭の「BYE BYE」を再演するというのも粋な演出だった。(最込舜一)

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Photo by Kazma Kobayashi

Ride
20:00〈RED〉

80〜90年代のUKロックにおけるレジェンドが顔を揃えた3日目、RED MARQUEEのトリを飾ったのはライドだ。前回出演した2015年は再結成直後ということもあり、往年の名曲連打の感動的なライブだったが、それから今年の『Interplay』まで3作のアルバムを発表しての今回は、今を生きるバンドとしてのライドを証明するもの。会場中に手拍子と曲名通りのピースサインが広がった「Peace Sign」は、特に4人の現役感を強く印象付けていた。もちろん、シューゲイザークラシックも存分に披露され、「Leave Them All Behind」のサイケなロングトリップも、「Dreams Burn Down」のバーストするギターも最高。ラストは「Vapour Trail」で恍惚の中エンディング……かと思いきや、アンディ・ベルが「もう一曲やるから、その後にGREEN STAGEに行って」と話して、当初セットリストにはなかった「Chelsea Girl」を演奏。かつて活動を共にした盟友との絆を感じさせた。(金子厚武)

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Noel Gallagher's High Flying Birds
21:00〈GREEN〉

アンディ・ベルからバトンを受け取る形でフジロック3日目のヘッドライナーを務めたのはノエル・ギャラガー。序盤は故郷マンチェスターへのトリビュートを捧げた最新作『Council Skies』からの楽曲を、マンチェスター・シティの監督であるペップ・グアルディオラのパネルとともに演奏し、その後はサイケにダンスとソロになってからの音楽的なトライを横断するセットリストを披露。ソングオリエンテッドな作風に回帰した新作からの楽曲のメロディーの良さは、ノエル健在を強く感じさせる。

一方、ライブ後半はオアシス曲の連打となり、「Talk Tonight」や「The Masterplan」など、昨年リリースから25周年でリイシューされた『The Masterplan』の楽曲が多く選ばれていたことにニヤリとしつつ、ソロキャリアを経て円熟味を増した現在のアレンジで鳴らされていることには音楽家としてのプライドも感じられた。「Love Will Tear Us Apart」のカバーで本編を終えた後の、アコースティックにアレンジされた「Stand By Me」と「Live Forever」はそのスタンスがより顕著。ただラストに披露されたお待ちかねの「Dont Look Back In Anger」に関しては、ギターソロも自分で弾き、オーディエンスの期待にちゃんと応えていたのは「さすが俺たちの兄貴!」という感じ。オアシスは今年デビュー30周年。リアムはこちらもマンチェスターの英雄であるジョン・スクワイアと作品を作り上げた。兄弟の明日はどっちだ。(金子厚武)





Turnstile
22:10〈WHITE〉

ターンスタイルは定刻を過ぎても姿を見せず、その間に雨が降り始めた。しかし、フジロック最終日のトリを務めるという期待感と周囲の熱気が相まって、観客の興奮は最高潮に達した。その興奮を爆発させたのが、彼らの登場と同時に始まった激しいナンバー「T.L.C」だった。ハードコアのライブに馴染みのない自分のような観客も含めて一気に会場のボルテージを最大値に到達させた。演奏が超人レベルで素晴らしいのはもちろんのこと、ハードコアの芯をぶらさずに幅広いジャンルを貪欲に吸収した音楽性も驚異的だ。起爆剤としてのポップなフレーズを大量に持つのも彼らの強みである。おそらく座って聴いても大興奮に違いないが、フロア前方のサークルモッシュで揉みくちゃになる体験に息を切らした。

「T.L.C」は「TURNSTILE LOVE CONNECTION」の略だという。自分たちが見たい景色をオーディエンスと共に自分たちの手で作り上げるという強く優しいハードコア精神。それこそが彼らなりのホスピタリティであり、オーディエンスも全身でそれに応えるのだ。エモーショナルな「MYSTERY」が終わると、ボーカルのブレンダンの煽りを受けてステージ上に数百人のオーディエンスが駆け登る異例の事態に。フィナーレを飾る「HOLIDAY」の終盤には、フジロック最終日を祝福する紙吹雪が発射され、その渦中で完全燃焼。それはもうハッキリ言って天国だった。(最込舜一)

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フジロック公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

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