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新進気鋭のピアノロックバンド606号室が語る、「等身大の恋愛曲」を作る理由

Rolling Stone Japan / 2024年8月14日 21時0分

606号室

新進気鋭のピアノロックバンド、606号室が恋人と過ごした夏に思いを馳せる新曲「夏が君を離さない」を発表した。まだ2年半とキャリア自体は浅いものの、「君のことは」や「未恋」が話題となり、2回行った自主企画はどちらもソールドアウト。まさに今、ネクストブレイクとして注目を各方面から集めている。

そんな彼らの新曲はリードギターならぬリードピアノが光るバランスは健在ながらも大胆にストリングスも導入し、夏の切なさと適度な疾走感を携えた新機軸とも言える1曲。バンドの成り立ちやそのスタンス、新曲へ懸ける想いまでメンバー全員にじっくりと語ってもらった。

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ー結成して2年半ほどですが、「君のことは」や「未恋」もキッカケになり、かなりの勢いで駆け上がってきた印象もあります。

昇栄(Vo/G):あっという間でしたけど、凄いスピードで駆け上がってきたとは自分たち的にはそんなに感じてなくて。ひとつひとつのことにしっかり向き合った結果ではあるかな、と思ってます。





ー多くの人に響くんじゃないか、みたいな手応えはありましたか?

円花(Pf/Cho):このバンドを始めたころは自分の技術面もそうですし、まだバラバラだった自覚があったんです。正直に言ってわからないところもあったんですけど、初ライブを機に自信もついて頑張っていこうとは思ってました。

ゆうあ(Ba):当たり前だと思うんですけど、全部が上手くいったわけでもなくて。僕らがこれはいいんじゃないかと思って出したのがそうでもなかったり。逆にどうなんだろうなと思っていたのが広がったり。そういった中でいい形で進んだモノが聴かれるようになって、今につながっているのかな、と。

ー活動していく中で意識が切り替わるようなことは?

くわ(Dr):もともと、頑張ろうとは思っていたんですけど、初めての自主企画の日、自分の中で意識が変わるタイミングやったと思ってますね。応援してくれる人たち、出てくれたバンド、すべてに対してもっと頑張らないといけないな、と感じたんです。

ー改めてバンドとしての流れを振り返りたいのですが、昇栄さんが大阪芸術大学へ入り、そこで円花さんとの出会いもあって606号室はスタートしたという。そのときはどんなバンドをイメージしていましたか?

昇栄:自分的にはギターロックがやりたかったんです。でも、バンドをやりたくて大学に入ったのにメンバーを集めるだけでも1年ぐらいかかってて。今となっては(円花の)ピアノが強みになっているんですけど、当時は妥協というか、とりあえず(バンドを)やりたいから入って、みたいな感じでした。

ー円花さんが昇栄さんと一緒にバンドをやろうと思ったのは?

円花:もともと、軽音部に入りたかったんですけど、タイミングをミスっちゃったのもあり、私がバンドを組みたいと思ったときにはすでに周りが固まっちゃってて。居場所がないなと思ったとき、ちょうど(昇栄が)プライベートでバンドをやろうとしてるというのを当時いたドラムから聞いて、「バンドをやりたいならウチに入ったら?」と誘ってもらったんです。

ーそうなると、昇栄さんと円花さんがバンドを始めたのは偶然が重なったような。

昇栄:ホントにそうでしたね。

ーその後、楽曲を耳にしたくわさんがオーディションを受けて加入された、と。

くわ:バンドをやりたいと思ってメンバー募集サイトを見てたとき、「君のことは」のMVが添付されてて、イントロがめっちゃ良かったんです。もともと、ピアノが入ってるアーティスト、それこそドリカムとかが好きやったし、他のバンドは音源や文章だけだったのに(606号室は)MVもあるし、ちゃんと本格的だったんですよね。



ーゆうあさんは606号室と対バンして知り合い、まずはサポートということだったそうですね。

ゆうあ:606号室としての初ライブに僕がもともとやってたバンドも出てたんです。そこから1年ぐらい経って、昇栄からサポートをして欲しいという連絡をもらい、最初は軽いノリで始めましたね。

ーそこから正式加入した決め手は?

ゆうあ:人柄が大きかったです。全員やる気があるし、人もいいし。コイツらとやったらちゃんと音楽をやっていきたいな、と思えたんですよ。

ーこの4人が揃ったとき、いい手応えはありましたか?

昇栄:そこまで思えなかったというか、まずメンバーが揃うこと自体が夢だったんですよ。最初に組んだときもベースはずっとサポートで「バンドを組むのはこんなにも難しいんや?」みたいな。だから、4人が揃って良かった、という安心感がいちばん強かったです。

ーくわさんも惹きつけられたということでしたけど、606号室はプラスαじゃなくてピアノがサウンドの肝になってますよね。そのバランスは自然にそうなっていったんですか?

昇栄:自分がリードギターがいるバンドに憧れていたので、リードギターがいるもんやと思って作ってるんです、特に「君のことは」や「未恋」みたいな初期の曲は。円花にもギターフレーズをピアノで弾いて欲しい、それぐらいやって欲しいと伝えてて。

ーそういった提案を受けて、円花さんはどう感じました?

円花:もともと、ひとりでピアノをやってきたので目立つ場所にしか慣れてないこともあり(笑)、自分を出せる部分があるのは嬉しかったですね。

ーじゃあ、いろいろとスムーズにイメージが共有できたような。

昇栄:ただ、「君のことは」が最初の曲なんですけど、デモが(円花から)戻ってきたとき、基盤にクラシックがあるからなのか、理論にハマってるじゃないけど、面白みに欠けるなとは感じて。そこで「ありえないぐらい弾いて欲しい」と伝えて、あのアレンジがでてきたり。

ーそこで円花さんが持ってるモノが爆発したんですね。

昇栄:技量が凄くあるのはわかってましたから。

ー今って、ギターですらリフやソロを推さない傾向があるじゃないですか。そういうところは気になりました?

昇栄:あぁ……気にしてないですね(笑)。

ゆうあ:「もう、やったれ!」みたいな感じです(笑)。

ーバランス感だったりで参考にしたアーティストはいますか?

円花:ピアノの出方に関してはAmazarashiを聴いてみたりはしました。

昇栄:ただ、これを参考にしたというアーティストは特にいなくて。4ピースバンドのリードギターをピアノに変換してるっていう感じですね。

ーまた、606号室はコード感も特徴的だと思います。昇栄さんから出てきたメロディーに円花さんがコードをつけたり、ベーシックなアレンジをしているということがひと味違うモノになっているのかな、と。

円花:そうですね。鍵盤を弾いてるからこそできる、細かく言うとオンコードとか、ギターだとなかなか思いつかないでしょうし。そこは鍵盤ならではのコード感があるのかな、と思います。

ー606号室は恋を題材にした曲が多いですけど、そのあたりについてはどう考えていますか?

昇栄:自分的には恋愛にこだわってるというわけでもないんですよね。「君のことは」は恋愛の曲として聴かれてると思うんですけど、自分としては恋人ではなく、大切な人に作った曲だったりもして。

ーあくまで表現方法のひとつみたいな。

昇栄:でも、恋愛の曲だと妄想しやすいところはありますね。応援ソング的な曲になると、他のバンドと重なる歌詞も多くなりそうだし、ウソみたいなところも出てくる。恋愛の曲だと自分で物語を作って妄想を膨らませて、そこに実体験も入れて、みたくできますし、歌詞も書きやすいというか。

ー「未恋」では終わってしまったけど振り切れない恋を歌ってたり、「君のことは」は大切な人へ、というお話もありましたけど、強い想いを自問自答していたり。絶妙に主人公が弱気というか、相手を尊重してる傾向がありますよね。

昇栄:それは僕の性格ですね(笑)。結構そういう感じの、後ろめいたというか、不器用なところがあるので。

円花:めちゃくちゃ自分に謙虚で弱っちぃ感じは昇栄だなと思います(笑)。だから、全部が実体験やと思えるぐらいにリアルなんですよ。妄想って言ってるけど、リアルでもありえるんちゃうかな、っていうぐらい等身大になってますね。

くわ:たしかにそう思います。ただ、昇栄は映画がめっちゃ好きやったりするんで、その物語を書いてるようなところも感じますね。



ーそして、新曲「夏が君を離さない」がリリースされました。先月に発表した「君との日々は退屈だ」に続いてストリングスが導入され、スケール感が増した仕上がりになっています。

昇栄:今のシーンというか、ひとつ抜け出したいなと考えたことがストリングスに繋がりました。



ー抜け出したいというのは、バンドとしてもっと大きくなっていくにはそういったアプローチの楽曲も必要だと?

昇栄:そうですね。やっぱり、今までの楽曲はインディーズバンドやな、って自分の中では結構思ってて。もっと広がった世界観を出したいと考えて作ったのが「君との日々は退屈だ」と「夏が君を離さない」なんです。

ー「夏が君を離さない」は忘れられない夏の恋を噛みしめる、切ないサマーチューンですけど、どういったところからスタートしたんですか?

昇栄:以前から季節に合わせた楽曲を出したいなと思っていて、そこで夏をまずテーマにしました。自分は歌詞から先行して作るんですけど、以前からメモとして残していた<花火が綺麗だねって言う君が/離れなくて溢れそうになる>というフレーズを思い出して広げていったんです。

ー円花さんはデモを渡されたとき、アレンジのイメージはすぐに広がりましたか?

円花:今までの楽曲はイメージも伝えてもらって、それに似合うような参考曲だったり、リファレンスを受けつつ考えていってたんですけど、今回のイントロは去年の夏に考えたモノなんですよ。

昇栄:この曲はサビのメロディーができた後、AメロとBメロが自分の中で上手く繋がらなくて。円花にいくつかイントロを作ってもらってもサビの雰囲気にハマらなくて、そんなときに「去年に作ったヤツがワンチャン合うんちゃう?」って話をしたんです。で、そのイントロの流れからAメロとBメロを作っていきました。

ーじゃあ、昇栄さんと円花さんのキャッチボールでAメロとBメロは生まれていったみたいな。

昇栄:そうなりましたね。

ーしかしながら、ストリングスからバンドサウンドで一気に開けていく印象的なイントロですけど、以前からそのようなアイデアがあったことも驚きです。

円花:どっちかと言うと、こういったアプローチは自分の好きなサウンドでもあって。ただ、去年の私はそのときに606号室には合わないと思ったんですけど、どんどんライブもやっていって、先を見据えるような考えも生まれてきて、今なら使えるかも、と。

ーゆうあさんとくわさんは「夏が君を離さない」にどういった印象を持ちましたか?

ゆうあ:夏というテーマがあったので、元気に疾走感のある感じでくるのかなと思ってたんです。でも、実際に聴いてみたら「たしかにこっちの夏もあるよな」みたいな。

くわ:めっちゃ説明が下手くそなんですけど……水色でした。

円花:ハハハハ(笑)。

ーでも、わかりますよ、そのイメージ。日差しが照りつけるわけじゃないし、真っ青な海が広がるわけでもないし。全体的に淡い印象を受けますよね。

くわ:自分は夏の曲というと熱血系ばっかり聴いてきたんで、余計に涼しさも感じましたね。

ーこの曲はストレートにアレンジするとしみじみと聴かせるバラードになりそうだな、とも感じたんです。でも、ピアノやストリングスの彩り、テンポ感もそうですし、ドラマティックに響く流れなっていますよね。

昇栄:ホントに最初に作ったときはもっとゆっくり歌ってたんです。でも、海岸線をひとりで走ってる女の子や男の子をイメージできる楽曲にしたかったのもあって、バラード寄りではあるけど疾走感もあるみたいな。今のテンポに変えていい感じでハマりましたね。

ーアレンジ面はスムーズに進んだんですか?

昇栄:いや〜、そうでもなくて。

円花:今回、いちばんたいへんだったんじゃない?

昇栄:新しい部分もあり、いつもより時間はかかりました。

ーこだわったポイントを挙げるとすると?

くわ:ドラムのフレーズはめっちゃ変わりましたね。

昇栄:あと、1サビの終わりのピアノの見せ場とか、今までやったらイントロと同じストリングスを持ってきてたと思うんです。でも、やっぱり面白いことをしたいというところでそこにリフを加えたり。メンバーでスタジオに入ったときに悩んだのは、落ちサビの後半、どこからドラムとベースが入るのか、ラスサビにどうやって雰囲気を繋げるのか、みんなで試行錯誤した感がありますね。

ーこういった楽曲が生まれると、ライブの雰囲気もまた変わっていくような予感がします。

昇栄:それはめちゃくちゃ思ってまして。ストリングスが入った楽曲ができて、世界観のあるライブをどう作ればいいのか、上手い流れにするのはどうすればいいのか。まだ正解は出てないんですけど。

ゆうあ:「夏が君を離さない」に限らず、僕らはライブだと曲の入り方や繋ぎもちょっと変えたりしてるんですけど、この曲は特に面白くなるんじゃないかな、とは思ってます。

ーああいったムードのライブもやってみたい、というイメージはありますか?

くわ:まだ想像つかないところもあるんですけど、自分はバラードで終わるライブも結構好きなんです。攻撃力高めの曲で最初にめっちゃアゲて、最後はそういった楽曲で終わっても606号室のいい味が出せるんじゃないか、と。

円花:それこそ、この曲で水を使いたいです。

ー水って、噴水的な演出ってことですか?

くわ:ドームクラスやん(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

ーでも、それぐらい大きな会場でやっても映える楽曲ということですよね(笑)。

円花:はい(笑)。

ー今後の展開も楽しみになっていきますが、近いところでバンドの目標を挙げるとすれば、どんなことになりますか?

昇栄:10月に初めてツアーをまわるんです。東名阪なんですけど、それを全公演ソールドできたらいいな、と。そして、そこでライブハウスで盛り上がれる新曲も披露できたらいいなと思っています。
<︎リリース情報>



606号室
New Digital Single「夏が君を離さない」
2024年7月17日(水)配信リリース
https://linkcloud.mu/b971aa41

<ライブ情報>



606号室初の東名阪ツアー「ロクマルロックツアー」
2024年10月6日(日)渋谷Spotify O-Crest
2024年10月20日(日)名古屋R・A・D
2024年10月27日(日)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
チケット:https://eplus.jp/room606/
※各公演ゲストアーティストあり

Official:https://lit.link/room606
X:https://x.com/606_official
Instagram:https://www.instagram.com/606._.official/
TikTok:https://www.tiktok.com/@606._.official
YouTube:https://www.youtube.com/@606_official

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