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マネスキンのヴィクトリアが語るDJに目覚めた理由、セクシーとハイエナジー、多様性の追求

Rolling Stone Japan / 2024年8月15日 19時0分

ヴィクトリア

サマーソニックでのヘッドライナー公演が目前に迫る中、マネスキンのグルーヴ・マシーン、ヴィクトリア・デ・アンジェリスがインタヴューに応じてくれた。その理由? 言うまでもなく、彼女の課外プロジェクトだ。ロックンロールだけでなくダンス・ミュージックも愛し、DJ活動をスタートさせた彼女は、幕張メッセで8月16日開催されるソニックマニアにも出演を予定していることはご存知の通り。トラック作りにも取り組み、DJ/プロデューサーとしての名刺代わりに制作したというミックステープ『Victorias Treat』(タイトルもジャケットも某ランジェリー・ブランドに因む)を半年前にリリースして、ここ数カ月の間に場数を踏んできたヴィクトリアに、まだあまり語ったことがないクラブ・カルチャーとの関係を振り返ってもらおう。


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―今のように、DJとしての活動を軌道に乗せるという展開は、あなたにとって想定外だったのでしょうか。それとも、いつか独自の作品を作るんだろうなという予感はあったんですか?

ヴィクトリア:これまではバンドの枠外で何かをやるなんて、あまり考えたことはなかったかな。何しろマネスキンの一員としてノンストップで走ってきたから、ソロ活動は物理的に無理な話でしょ。でも以前からダンス・ミュージックは大好きだったし、空き時間にちょこちょこ曲を作ったり、マネスキンのライブのアフターパーティーでDJをしたりしていて、常に私の生活の一部ではあった。やっていて楽しかったし、そういう意味では、こういう展開は必然的だったんだと思う。時間さえあれば、遅かれ早かれやることになったんじゃないかな。で、まさにここにきて数カ月間オフを取ることが出来て、バンドのツアーの予定もしばらくなかったから、今のうちにやっちゃおうと。結果的にはすごく充実した体験になったし、普段と違うことをやるのはものすごく刺激的でもある。マネスキンでの活動とはあまりにもかけ離れていて、全く異なる世界に身を置いているわけだから。



―あなたとクラブ・カルチャーとの出会いを教えて下さい。若い頃からダンス・ミュージックも聞いていたんですか?

ヴィクトリア:えっと、高校時代に友達と色んなパーティーに行っていたのが始まりで、15歳くらいだったかな。ただその頃は、クラビングという体験やクラブという環境そのものが私にとっては重要で、DJがどうとか、かかっている音楽がどうとか、そういう面にはあまり関心がなかった。ほら、クラブってすごく自由な空間で、思い切り楽しむことができて、色んな人と出会えるでしょ。今に至るまで、そこにクラブ・コミュニティの素晴らしさがあるわけだけど、その後だんだんクラブでかかっている音楽への興味も増して、「あ、この曲すごくカッコいい!」と思ってその場でShazamして調べたりするようになった。そしてDJの友達ができて、そうするとDJにも興味が湧いたんだよね。DJたちを観察して、みんなそれぞれ違うスタイルでプレイしていることが分かってきて、彼らに色々教わりながら、あくまで遊びとして自分もDJを始めたわけ。当初はごくプライベートな友達のパーティーなんかでプレイしていたんだけど、これが本当に楽しくて! みんながひとつになって、その空間に生まれるエネルギーに興奮させられた。すぐ目の前に人々がいて、一緒に踊って、自分がそのエネルギーを自在に操っているように感じられて、ダイレクトに反応を引き出せる感覚がすごくクールだと思うし。

@vicdeangelis ―当時のローマのクラブ・シーンはどんな感じでした?

ヴィクトリア:例えばベルリンとかロンドンとかニューヨークには遥かに大規模なクラブ・シーンがあるわけだけど、ローマでも規模は小さいとはいえ、すごくクールな、インディペンデントなパーティーがたくさんオーガナイズされてた。私にクラブ・シーンの面白さを教えてくれたのもそういったパーティーだったし、その後もう少し大人になってから外国の都市のシーンも体験したことで、クラブ・カルチャーが秘めるポテンシャルの大きさを思い知らされた気がする。

―じゃあ、「これを真剣にやりたい」と考え始めたのはいつ頃でしたか?

ヴィクトリア:本気でやろうと力を注ぐようになったのは、1年前くらいかな。DJとしても短期間にかなりのスピードで成長できた気がするし、自分は本当にラッキーだなって思う。

―初めてDJをやった時のことは覚えていますか?

ヴィクトリア:うん。数年前の大晦日で、友達が集まる内輪のパーティーだったから、本当に遊びのつもりだったんだけど、多分ひどい出来だったんだと思う(笑)。プロとしてのDJデビューは春にやったDJツアーで、3月16日に英国のリーズのウェアハウスというクラブで、Partiboi69(オーストラリア人のDJ/プロデューサー)のオープニング・アクトとして出演したのが初舞台。めちゃくちゃ緊張してたけど、彼はすごく優しくて、私をリラックスさせてくれて、「君がやりたいようにやって楽しめばいいんだよ」と言ってくれたっけ。結果的には最高の夜になった。


初DJ時の様子。ヴィクトリアのInstagram(@vicdeangelis)より

―その初のDJツアーでは、3月から5月にかけて、ヨーロッパとアメリカの20都市を周りました。

ヴィクトリア:本当にクールだった! 来てくれる人たちがみんなが歓迎モードのエネルギーで包んでくれて、毎晩たくさんの出会いがあって、インタラクションがあって、全然違う体験になった。場所によっても状況が一変するし、例えば出演するのがハウス系のイベントなのか、テクノ系のイベントなのかで同じ曲に対する反応が全く違うから、何が起きるか分からない。だからこそ、その場でアドリブで変化を加えて、新しい曲を探して、ノンストップで適応する必要がある。そういう意味でものすごく刺激的だった。常に進化し、成長し続けているっていう実感があったな。同じイベントでプレイした人たちはみんな、全然違う世界からやってきた私に本当に優しくて、アドバイスをくれたり励ましてくれた。感謝の気持ちでいっぱいだし、おかげで私も自分らしさを追求できてる。重要なのはそこなんだと思うな。

DJとしてのスタイル、多様性が尊重されるクラブ空間

―あなたが好むダンス・ミュージックは、音楽的なスタイルで言うと90年代のテクノが起点なんだそうですね。その後どんな変遷を遂げたんでしょう?

ヴィクトリア:最初は90年代のハード・テクノに夢中だった。マジにハードなビートに。だから私は、速いBPMのビートが放出するエネルギーに惹かれてダンス・ミュージックに興味を持ったようなものなんだけど、ダンス・ミュージックをより深く掘り下げて、実際にプロダクションを手掛けるようになると、サウンドとリズムの多様性を思い知らされて、そこにインスパイアされるんだよね。そんな中で、最近はブラジリアン・ファンク(バイレファンキ)とラテン系のスタイルにハマっていて、全く別種のエネルギーを備えているし、ほかとは一線を画しているんじゃないかな。今のシーンの主流はまさにハードなテクノで、それも大好きなんだけど、私は独自のフレイバーで自分を差別化したいし、人々をひとつにつなぐようなハッピーでセクシーなエネルギーに惹かれる。ラテン系の音はまさにそういうタイプだから。

―普段はロックバンドのベーシストであることは、DJとして、ダンス・ミュージックのプロデューサーとしてのアプローチに、どんな影響があると思いますか?

ヴィクトリア:そうだな、ダンス・ミュージックだろうとロックンロールだろうと、私が好きなモノは変わらないんだよね。リフの主張が強くて、印象に残る派手なサビがある曲っていうのが私の好みであり、自然に耳を捉えるから、それはダンス・ミュージックを作る上でも反映されている気がする。と同時に、両者をつなぐより大きな要素と言えば、やっぱりエネルギーであり、オーディエンスとのインタラクションなんじゃないかな。終始エネルギー値を高いまま維持していくのが、どちらにおいてもすごく重要なんだと思う。



―DJとしての自分のスタイルをどう表現しますか?

ヴィクトリア:私が思うに、すごくプレイフルで、楽しくて、セクシーで、ハイエナジーで、あとは、ボーカルをいじるのが好き。ひとつの曲からボーカルだけを取り出して、別の曲に乗せたりとか……説明するのはすごく難しいんだけど。とにかくハードなエネルギーがあって、セクシーでプレイフルだという形容は出来るだろうし、たぶんそのハードなエネルギーはロックンロールの世界から来てるんだと思う。ただ、シリアス過ぎるのは自分らしくないのかな。例えば、すごくトリッピーなショウで、DJに催眠術をかけられるような体験も好きではあるけど、私自身はもっと楽しくて、みんなが一体感を感じられるショウをやりたい。ボーカルで遊んだり、どんどんトラックを切り替えたり、変化に富んだセットにするのが私のスタイルで、そのほうが刺激を感じる。8分とか長い曲をずっとかけてるってことは絶対にないし。とにかく楽しくてクレイジーで、パンクとも言えるのかも。

―ファッションもマネスキンのライブの時とは違ったりする?

ヴィクトリア:う~ん、どうかな、結局その日の気分で決めてるんだと思う。そんなにあれこれ考えてこだわってるわけじゃなくて。

―盛り上がりが足りない時にかける定番曲ってありますか?

ヴィクトリア:あるある。毎回のようにかけちゃう曲が幾つかあって、例えば、ミラノを拠点にしているミス・ジェイの「@t the Club」はほぼ毎回かけてるし、あとは、ブラジル人DJ/プロデューサーのRkillsの「Fogo No Puteiro(Rkills Remix)」、同じくブラジル人のPATIBULLの「XRE」、ノンバイナリーのウルグアイ系デンマーク人であるdj g2gの「Paleta x Faint」あたりかな。

Tai.no.a II • Various Artists [TAI.NO.A002] Various Artists
Club Tools Vol. 1 RKills
XRE PATIBULL


―クラブ・シーンでのマイノリティ、つまり女性やLGBTQのリプレゼンテーションについて伺います。元々男性主導のシーンとあって、女性DJの扱いなどに関してしばしばクラブ・シーンは批判にもさらされたものですが、最近は女性もどんどん増えて評価を勝ち取っていますよね。あなたの体験の範囲内で、どんな印象を受けましたか?

ヴィクトリア:私はふたつのパターンに分かれていると思っていて、一方でクラブ・シーンは、LGBTQやマイノリティのコミュニティにとって、みんなが集まって自由に自分らしく振る舞える場所であり、レッテル貼りをされない場所であり、安全に感じられる場所であって、そこでは多様性やユニークさが尊重される。そんなゴールを掲げたパーティーが実際にたくさんあるし、私もそういう空間でプレイしたい。そして、そういう場所を作り上げたい。私の音楽ってそんな場所でこそ深く響くと思うから。でも他方で、男性に支配されたシーンが存在するのも事実。そこでは女性アーティストへの反感が溢れていて、実力のある女性DJたちがどんどんブレイクしているのを見て、「あいつはルックスがいいからブッキングされたんだ」とか、「あの女のウリは露出度の高さだけだろ。そのほうが人を呼べるし、技術はたいしたことないから」みたいなことを言いたがる男たちがいるわけ。自分こそリアルなDJだって威張ってるヤツが。それって結局ジェラシーなんだと思う。最高にカッコいい女性DJが次々にプレイして、めちゃくちゃ盛り上がっているイベントを見ていると、妬ましくなるんじゃないかな。

マネスキン/ソロとして日本への想いを語る

―究極的にあなたの目から見て、ロックンロールの世界とダンス・ミュージックの世界はどこか一番違いますか?

ヴィクトリア:やっぱり、ツアーの面に一番大きな違いが出ると思う。バンドの場合は自分たちの曲があって、基本的には毎晩それらをプレイすればいい。だから慣れがある。寝ててもプレイできるくらいに(笑)。もちろん毎回異なるオーディエンスの前に立つから、それぞれエネルギーも違うし、その場の成り行きで多少インプロを挿んだりするけど、セットの大筋は変わらないからね。でもDJの場合は毎晩がインプロで、同じセットはふたつとない。自分自身もその夜はどんなショウになるのか、どんな曲をかけるのか、全く見当がつかない。自分を取り巻く環境に適応しなくちゃならないし、前後にプレイするDJのスタイルだったり、時間帯も考慮するし、クラブなのかフェスなのかっていうシチュエーションにも左右されるでしょ。色んな要素に影響されて不覚的要素が多い分、より変化がある。

あと、スケジュールがクレイジーだってこともバンド活動とは違う点かな(笑)。メキシコでは、マネスキンのライブを終えたあと、午前2時からDJをやったことがあって、タフではあったけど楽しかったな。合間にひと眠りして休まなくちゃならない時もあるけど、くたびれていても、オーディエンスのエネルギーが元気をくれるんだよね。



―マネスキンのほかのメンバーも、あなたのソロ活動を応援してくれているんですか?

ヴィクトリア:うん、みんなめちゃくちゃスウィートで、私がDJをやる時には応援に来てくれて、一緒に踊ってたりする。ほら、元を正せばバンドのアフターパーティーで経験を積んだってことがあるから、今もその延長で、みんなでパーティーを楽しんでいる感じなんだよね。もちろん作った曲も彼らに聞かせていて、すごく気に入ってくれてる。

―そのマネスキンは夏フェス・ツアーの最中で、スペインのMad Coolなどでヘッドライナーを務めていますよね。これまでと気分的に違いはありますか?

ヴィクトリア:う~ん、ぶっちゃけ、あんまり変わんないかな。これまでと同じエネルギーでやってるし、オーディエンスがまばらな時間帯だろうと、超満員の時間帯だろうと、常に相手の度肝を抜いてやるぞ!っていう気合いでステージに立って、全力を尽くすだけ。そういう意味では従来と大差ないんだけど、もちろんヘッドライナーとして8万人とかのオーディエンスを前にして、みんなが私たちを観るためにそこにいるんだって思うとクレイジーなことだし、自分たちが大変なことを成し遂げたんだなって実感する。だって、2年前に同じフェスに出て、真昼間にプレイしていたりするわけだから、本当に自分たちが誇らしい。全てに意味があったんだなって。


2024年6月、オランダ・Pinkpop Festivalにて(Photo by Didier Messens/Getty Images)

―サマーソニックにもヘッドライナーとして出演しますが、今思うと、初来日だった2022年のサマーソニックでのパフォーマンスは本当にスペシャルでしたよね。あの時に日本のファンとの間に築いたコネクションは、この先もずっと揺るがない気がします。

ヴィクトリア:その通りだと思う。あの時からマジカルなところがあったし、私たちは日本と、そして日本のオーディエンスと恋に落ちて、バンド史上最高の部類に入るショウを日本でプレイしてきた気がしてる。だからまたそっちに行けて本当にうれしいし、みんながイヤじゃなかったら、私たちはこれからも何度でも日本に戻って来るから!(笑)

―最後に、ソニックマニアに来場する人たちにメッセージをお願いします。クラブ空間に慣れないマネスキンのファンもいると思いますが、どんな風に楽しんでもらいたいですか?

ヴィクトリア:とにかくエネルギーを感じて、自分を解放して、好きなように踊って、友達と一緒に楽しんでくれたらいい。私自身、ソニックマニアでそういうエネルギーを提供したいと思ってる。みんながその瞬間に没頭していて、ケータイをいじってる人なんか1人もいなくて、笑顔で踊ったり、飛び跳ねたり、お尻を振ったりして、心を空っぽにして、なんの不安もなく思い思いに楽しめる場所を作るというのが私のゴールだから!



SONICMANIA
8月16日(金)幕張メッセ
開場:19:00/開演:20:30
※VICTORIA(MÅNESKIN)は0:10〜PACIFIC STAGE出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/sonicmania/

SUMMER SONIC 2024
2024年8⽉17⽇(⼟)18⽇(⽇)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
⼤阪会場:万博記念公園
※マネスキンは8⽉17⽇(⼟)東京会場、18⽇(⽇)大阪会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/


東京会場にマネスキンの特設ブースも出現!
バンドの世界観を楽しめる展示やフォトスポットに加え、来場者や商品購入者に先着で豪華プレゼントも。

【開催概要】
サマーソニック東京会場 幕張メッセ 5-6ホール内
2024年8月17日(土) 9:00~19:00
※開始時間前からのご整列はご遠慮ください。
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/info/565860


マネスキン
『LIVE IN JAPAN - RUSH! WORLD TOUR -』
発売中 ※CDのみでのリリース
CD2枚組・完全生産限定盤
〈特典)
・LIVEで歌えるマネスキン合唱の手引き(Are U Singing?)
・全16Pカラー・ブックレット
・漢字ロゴステッカー
・ツアー・セットリストレプリカ
・解説・歌詞対訳
CD購入:https://ManeskinJP.lnk.to/liveinjapan

マネスキン SUMMER SONIC 2024予習プレイリスト
※終演後、当日のセットリストを反映
配信:https://ManeskinJP.lnk.to/SS2024NW

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