テレンス・ブランチャードが語るウェイン・ショーターへの敬意、見過ごされてきた「黒人とオペラ」の歴史
Rolling Stone Japan / 2024年8月26日 17時20分
トランペット奏者/作曲家のテレンス・ブランチャード(Terence Blanchard)による11年ぶりの来日公演が、9月2日・3日に丸の内コットンクラブ、4日にブルーノート東京で開催される。
テレンスといえば、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズで頭角を現し、ドナルド・ハリソンとの双頭バンドでブレイク。その後は『ブラック・クランズマン』などスパイク・リー監督の映画音楽を手掛けてきた。また、ブルーノートと契約してからの2000年代以降はハイブリッドなサウンドを試しながら、積極的に若手を起用し続け、自身のバンドからロバート・グラスパー、デリック・ホッジ、リオーネル・ルエケなど多くの才能を輩出してきた。
現時点の最新作は2021年の『Absence』。ウェイン・ショーターへのオマージュ・アルバムで、弦楽四重奏団タートル・アイランド・カルテットとのコラボにより、ショーターの楽曲をカバーし、彼に捧げるオリジナル曲を演奏している。
今回の来日公演では自身のエレクトロニック系バンド「E-コレクティブ」に加えて、上述したタートル・アイランド・カルテットも伴う豪華な9人編成で登場する。そこでこの取材でも、昨年3月に亡くなったショーターへの想いをまずは語ってもらった。
また、近年のテレンスはオペラを通じて大きな注目を浴びている。世界最高峰のオペラシアターとして知られるニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(以下MET)で2021年に上演された、史上初のアフリカ系アメリカ人作曲家によるオペラ『Fire Shut Up in My Bones』を手がけると、2023年にも『チャンピオン』をMETで上演している。
この2作はアフリカ系アメリカ人によるオペラというだけでなく、人種問題、経済格差、セクシャリティなど、様々なテーマを扱ったことでも高い評価を得ている。そこで今回の取材では、同性愛者であり、試合中に対戦相手を殺してしまった悲劇の天才ボクサー、エミール・グリフィスの伝記を基にした『チャンピオン』の話を中心に、オペラの世界での活動についても話を聞いている。アフリカ系アメリカ人とクラシック音楽との関係についても言及された、かなり貴重な記事になったと思う。
ーまずは『Absence』のコンセプトを聞かせてもらえますか?
テレンス:ウェイン・ショーターにラヴレターを送りたかったんだ。どれだけ僕らが愛しているかを彼が生きてるうちに伝えようと……でも、そこまで症状が重かったとは思いもしなかった。トリビュートは誰かが世を去った後に行われることが多いが、それはしたくなかった。実際、アルバムに参加したメンバーたちとウェインの家まで行き、いろんな話をして一日過ごした。僕は何年も彼を知ってるが、会うのが初めての連中からは「ウェインに紹介してくれてありがとう」と感謝されたよ。それくらいみんな気持ちが昂ってた。完成したCDを渡し、聴いてもらうこともできた。僕らとしてはただウェインに「ありがとう」と言いたかったんだ。
ーウェイン・ショーターには偉大な側面がいくつもありますが、どんな部分を称えたかったのでしょう?
テレンス:大変だったのはまさにそこだ。一枚のアルバムに収めなきゃならなかったことさ。ウェインの偉業を考えたら、シリーズ化するとか、何枚かのアルバムじゃなきゃ無理なわけで。ごく初期の若かりし日から、アート・ブレイキーやマイルス・デイヴィスとの時代、ウェザー・リポート、そしてソロ……。ウェイン自身は「自分は進化し続ける一つの長い音楽のようなものだ」と口にしていたが、その中で一貫してるのは、美しいメロディと物語を語るドラマの感覚だ。僕がウェインを愛してやまない理由の一つは、常識にとらわれないコード進行とメロディアスな曲を結びつける方法を知っていたから。それが全く新しいサウンドや、即興という意味だけでなく、作曲に関する新しいアプローチをもたらしたんだ。
ー今おっしゃった、ウェイン・ショーターの常識にとらわれないコードとメロディを結びつける方法にあなたも影響を受けたと?
テレンス:そりゃもう(笑)。その影響はオペラを書くようになって余計に感じたよ。子供の頃から、父が家でかけるオペラやクラシックを聴いて育ったことは僕のメロディのコンセプトに大きな役を果たしたが、ウェインときたら……彼は優れたボクサーと一緒。ジャブ、ジャブ、ジャブ……と仕掛け、またジャブだと思わせておいて、突然それまでとは違う手を使ってくる。彼のそういうところが大好きでね。
初期の「Adam's Apple」を聴くと、すでにメロディをマッシュアップしたり、反転させたりしながら、シンプルでロジカルなサウンドを作っている。そこが重要な点だよ。僕が学校で教えていた頃、いろんなことを生徒に教えたが、「(ウェインの作曲法のように)それが理に叶い、意味を持っているかが重要なんだ」と強調したよ。ウェインがやったいろんなことは、ただ無闇に意味なくやってたのではなく、それが彼の心の中の物語を語るツールだったんだ。
ー作曲の観点から特によく聴いた、もしくは研究したウェイン・ショーターの曲はありますか?
テレンス:全部さ! だって、たとえば後期の曲である「Three Marias」(1985年の『Atlantis』、2018年の『Emmanon』に収録)に即興演奏はないが、5分もの間、様々な方向に進むから、一瞬たりとも気を抜くことができない。でも「Adams Apple」の入ってるアルバムに遡って聴くと、あんな初期の録音から、そのアイディアの痕跡がすでにあるんだ。つまり、ウェインは生涯を通じて、それを内面に抱えていたということさ。
ーショーターの即興演奏に関してはどうですか?
テレンス:音の選び方だね。いつも驚かされるのは、彼が即興で演奏する音はすごく異質で、聴きなじみのない音に聴こえるんだが、よく考えると実はそうでもなくて、ソロのどこに音を配置するかでそう聴こえるんだよ。これはウェインが「人が聴き慣れた音」が何なのかを理解しているから為せる技だ。つまりを「人が聴き慣れた音」を避けることができるから。「俺はこれをやらない。俺はこっちをやる」とね。
何年も前だが、ハービー(・ハンコック)のバースデイライブのリハーサルでも、彼のやってることが誰も聴いたことのないことすぎて、皆が驚かされていたのをよく覚えている。それでいて、ジャズのトラディションに深く根ざしているのが彼の素晴らしい点だ。ただ風変わりなことをしようとしてるんじゃない。違う表現の仕方を探す結果としてなんだ。
ー『Absence』に収録された「I Dare You」はウェインに捧げたあなたの自作曲です。これはウェイン・ショーターとどう繋がっているんですか?
テレンス:あれは生徒に「いかに2音だけで丸1曲をアレンジができるか」をデモンストレーションするために書いた曲なんだ。聴けばわかる通り、メロディは2つの音の繰り返しや反転だ。ベースラインも2つの音のパターンで成り立っている。つまり限界は脳の中にしかない、ってことを示したかったんだ。
時々僕は学生たちに「30分で1曲を書く」というドリルを出す。考え過ぎずに書き上げることを実践する意味でね。ところがそれを自分でも実践しなければならなくなった。「I Dare You」のストリングス部分があるだろ? あれはレコーディング当日の朝に「イントロが必要だ」って思いつき、すぐに書いて、スタジオに持っていったんだよ。「I Dare You」というタイトルはウェインが「ジャズとは何か?」と聞かれ「ジャズは”I dare you”(私はお前に挑戦する)だ」と答えたことからつけた。ウェインにとってのジャズは「お前に挑戦する」なのさ。
E-コレクティブ、タートル・アイランド・カルテットを交えた「Absence」のパフォーマンス映像
オペラで訴えかける「今のストーリー」
ー次はオペラ『チャンピオン』について聞かせてください。ボクサーのエミール・グリフィスの生涯を描いた物語で、ここには人種差別、LGBTQ、人を殺めてしまったことへの贖罪など、様々な文脈が含まれています。最初に彼の生涯について知ったときにどんなことを思ったのか聞かせてください。
テレンス:エミールに関して最も僕が惹かれたのは、試合中、対戦相手のベニー・パレットを殺してしまったことだ。その対戦相手は彼の友人でもあった。その試練と苦難を乗り越えた晩年、エミールの言葉「俺が男を殺しても世界は許してくれたが、俺が男を愛すると世界は俺を殺したがった」……。あれはものすごくパワフルな主張だった。人をオープンに愛せない苦しみ。
ーエミールのセクシャリティに関する部分の発言ですね。
テレンス:初めて僕がグラミーを受賞した時(2004年)、僕は妻を抱き、キスをして、ステージに上がって賞をもらった。でもエミールは複数階級で王者になったが、その喜びを誰かと分かち合うことができなかった。そこがとても悲しい。それにエミールは心優しい穏やかな男だった。彼のドキュメンタリー『Ring Of Fire』を見ればわかるが、対戦相手のベニー・ペレットをコーナーで殺してしまって以降は、決して対戦相手をコーナーに追い詰めていない。つまり攻撃的な性格なのではなく、ボクシングへの生来の才能があっただけで、性格は優しくて思いやりがある男だったんだ。
『チャンピオン』は昨年6月、METの最新公演を映画館で上映する「METライブビューイング」にて日本でも上映された
ー複雑な事情を持つ彼の生涯を『チャンピオン』というオペラとして表現することに際して、作曲家としてどんなことを考えたんでしょうか?
テレンス:僕が意識したのは「エミールの誠意」だ。すべての混乱の中、唯一変わらなかったのは、彼が愛を求めていたということ。パートナーへの愛だけでなく、母や家族といったすべてへの愛。彼を取り巻いていたのは混沌としたカオスだった。一瞬はその中に溺れたこともあった。人間なら誰もがそうであるように、成功したことで派手に着飾ったりもした。踊るのも大好きだった。でも彼の人間としての内面には、相手を思いやる優しさがあった。そういったこと全部を見せようと構成したんだ。
ー全てですか。
テレンス:認知症に苦しむ老いたエミール、ボクサーのエミール、そして若き日のエミール。オペラは全編が年老いてからのエミールのフラッシュバックなんだ。だから彼は常にステージにいて、歌っていない時も、歩き回ったり、何かを見たりしている。人生が走馬灯のように蘇るんだ。公園ではベニー・ペレットの息子に会う。ベニーの息子が「あなたに何の悪意も抱いていません」と言うそのシーンが、僕にとっては最大のハイライトだ。実際にそのシーンはドキュメンタリーでも捉えられていて、言われた瞬間、エミールは泣き崩れている。生涯抱えていた重荷がその瞬間に降りたのだろうとわかる、実に感動的なシーンだよ。
つまりは僕らがこのオペラで描きたかったのは、贖いの物語。そして贖罪の過程で最も重要なのは自分自身を許すことを学ぶことなんだ。人は他人からの許しを常に求めるが、自分が自分を許すことも学ばなければならない。(対戦相手を殺してしまったとはいえ)エミールはボクサーとして仕事をしていただけなのだから。
ー『チャンピオン』は去年2023年にNYのMETで再上演されました。セントルイスで最初に上演されてからの10年は、人種問題、ジェンダーやセクシャリティ、多様性などについて、それ以前よりも活発に議論が交わされてきた時期だと思います。10年前の初演時と比べ、反響に違いはあったと感じますか?
テレンス:そうだね。深まったと思う。セントルイスの初演時には多くの人から感謝を述べられた。『Fire Shut Up in My Bones』を(2021年に)METで公演した後のロビーでは、自分も性的虐待のサバイバーだという男性から感謝の言葉をもらったんだ。『チャンピオン』でも同様だったよ。それに親が認知症だという人たちから大いに共感されたんだ。その中には当時、エミールの試合を観た人たちもいた。アメリカでは金曜の夜の生放送でTV放映されていたからね。
そして重要だったのは、認知症の問題、性的指向の問題……と多くの人が様々なレベルで共感できるストーリーだったという点だ。その中でも無視できない大きな点はMETのステージでブラックカルチャーが上演されるのを観るという事実に、多くの人が共感したことだ。それは体験として非常にパワフルなものだった。
ーアフリカ系アメリカ人であるあなたが作曲したという事実だけでなく、ストーリーや演出にブラックカルチャーが反映されていた点も大きかったと。
テレンス:METでオペラを観るのは初めてという人も多かった。その中にはシーズン中にチケットを買って、別のオペラを観たという人もいた。それも誇りに思っているよ。なぜならそれで、オペラというジャンルへの興味、METへの関心が引き起こされたのだからね。古典的な作品だけでなく、他の(新しい)作曲家たちの作品も知りたいと思ったのだろう。アンソニー・デイヴィスの『マルコムX』をはじめ、今後も多くの新作が予定されている。そのことに僕は何よりも意義を感じるよ。ニューオーリンズで『チャンピオン』を上演した時、「これがオペラなら、私はまた観にくる」と言われたんだ。あれには感激したよ。僕はプッチーニの大ファンだ。でも、ああいう(古典的なオペラの)ストーリーに必ずしも共感できない人がいることも理解している。そのなかで、『チャンピオン』の物語には共感し、興奮を感じてもらえるのは、あれが今のストーリーだからなんだと思う。
見過ごされてきた「黒人とオペラ」の歴史
ーあなたが手掛けたオペラの中にはジャズのピアノトリオが入っていたり、霊歌やゴスペルの要素もあったり。そこも古典的なオペラとは異なる部分かと思います。
テレンス:ストラヴィンスキーと同じように、全てを同列に扱っただけさ。ストラヴィンスキーの音楽からはハンガリーのフォークロアが聴こえるだろ? それは僕の作曲の先生であるロジャー・ディッカーソンが教えてくれたことでもある。「クラシック音楽に決まった型は何もない。クラシック音楽はフォークロアへのより深い探究だ」といつも言われていたよ。僕がオペラでやりたいのはそれだ。僕のジャズのバックグラウンド、チャーチでの経験……それらを持ち込み、時にはジャズトリオが主導し、時にはトリオがオーケストラに影響され、時には一緒に、時にはオーケストラが独自に展開する。だから最初、僕は「Jazz Opera」ではなく「Opera in Jazz」と呼んでいた。つまりジャズの影響はあるが、決して「カウント・ベイシー・バンドがオペラ歌手のバックで演奏しているような音楽」とは違う、という意味でね。
テレンスが手がけた『Fire Shut Up in My Bones』のハイライト映像
ー『Fire Shut Up in My Bones』をMETで上演した際のインタビューで、黒人の作曲家ウィリアム・グラント・スティル(アメリカの主要なオーケストラを指揮し、自作のオペラが上演された最初の黒人作曲家)の話をしていました。そういった先人の黒人作曲家たちもあなたのインスピレーションになったのでしょうか?
テレンス:ああ。彼もそうだし、もう一人あまり知られていないが、ハワード・スワンソンの存在も大きい。彼は僕の先生であるロジャー・ディッカーソンの先生なんだ。偉大な黒人コンポーザー、ヘイル・スミスも彼の一派。僕はロジャーとヘイルの両方に師事したんだ。ハワードはすでに亡くなっていたので会ったことはないけど、ロジャーが常にハワードの話をしていたので、僕はハワードという大きな木の枝の一つだと感じている。
ーウィリアム・グラントからの影響についてはいかがですか?
テレンス:彼から学んだことはなかったが、不思議な縁がある。METでの初演前の話だ。セントルイスの野外会場で観たオペラの一つが現代的に聴こえて、「これはなんだ?」と思ったら、1930年代の作品だと言うじゃないか。それがウィリアム・グラントの『Highway One』だった。ところがこの作品は、METから3度も上演が拒まれたという。驚いたよ。だって、今の時代に上演されたとしても十分に通用すると思いながら観ていたから。
ー「黒人のオペラ」ということで上演されなかったと。
テレンス:でも、僕が書いたオーケストラの音楽も、すべてではないが、オーケストラによっては演奏に苦労させられる部分があった。だから「もし1930年代にウィリアム・グラント・スティルの音楽を採り入れていたら、彼の音楽が僕たちのイディオムや言語の一部になっていただろうに」とずっと思っていたよ。アーロン・コープランドが採り入れられたようにね。アーロン・コープランドを誰もが演奏できるのは、彼の音楽が子供の頃から学んできた言語の一部になっているからだよ。そうだろ?
ーウィリアム・グランスト・スティルが実践していたような、黒人由来の音楽要素とクラシック音楽が共存するような音楽が1930年代の時点で定着していたら、その後の音楽のあり方も変わっていたはずだと。
テレンス:あのセントルイスでの体験があったから僕の思いは強くなったんだ。絶対に『Fire Shut Up in My Bones』『チャンピオン』をMETで成功させると。ウィリアム・グラントが手に入れようとしても得られなかった機会を与えられた以上、何があってもその重みを軽く受け止めたりしないと。
それをシンガーたちに伝えることが重要だと思った。だから『Fire Shut Up in My Bones』の初日、僕は全キャストと話をした。どうかオペラや文化に関する君たちの思いのありのままを曝け出してほしいと。「君たちの多くはチャーチに通って育っただろうし、R&Bを歌ってきた者も、ジャズを歌った者もいるだろう。でもプッチーニの『ラ・ボエーム』を歌う時にはその部分は「そぐわないから消せ」と言われてきたはずだ。でもこれは”今”のオペラだ。オペラはスタイルじゃない。オペラは”マイクで増幅されない声”なんだ。だから、君たちが抱えているものすべてを活かして、キャラクターにこのストーリーを語らせてくれ」と言ったんだ。
そして、全員がその意図を理解してくれた。エンジェル・ブルーが歌う「Perculiar Grace」は……彼女はチャーチで育ったこともあり、オペラのスタイルに即興でフレーズを加えながら歌うんだ。本当にパワフルで美しいんだよ。
ー僕もアメリカの音楽を多少調べてきたつもりでしたが、ウィリアム・グラント・スティルという名前は、あなたのMET関連の発言で初めて知りました。あなたのオペラがなければ知る機会はなかったでしょう。アメリカの音楽教育の場で彼らのことは教えられるものなんですか?
テレンス:いや、僕が知る限りそれはない。実は僕ですら知らなかった。
ーえ?
テレンス:もちろん一握りの人たちは知っていただろう。今、アフリカン・アメリカンがオペラに与えた影響を研究としてまとめるべく、友人が作曲家たちの調査をしているところだが、これまで一度も聞いたことのない名前がたくさん出てくる。僕は完成が待ち遠しくてたまらないんだ。
そういえば、あるジャーナリストから質問されて、本当に頭に来たことがあった。「あなたのオペラは、黒人がオペラを歌うきっかけになると思いますか?」って言うんだよ。「君たちが取り上げないから知らないだけで、何世代にもわたって、people of colorはオペラを歌ってきたんだ!」と僕は言ってやった。METで歌った初の有色人種の歌手はマリアン・アンダーソン(1955年、ヴェルディ『仮面舞踏会』のウルリカ役)だとされているが、実はその前にもう一人いたんだ。METのイベントとしてではなく、劇場を借り切っての上演があったらしい。これもまた、有色人種の人たちが何世代にもわたってオペラの歴史の一部であったにも関わらず、その功績が認められなかったことの一例なんだよ。
マリアン・アンダーソンのドキュメンタリー映像
ーそういった経緯を考えると、あなたが今回METでやったことの意義は信じられないほど大きいものですよね。
ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。友人だったウィリアム・ギャディスがつい先日亡くなった。彼は全米のいろんな会場でオペラを手掛けてきたが、彼に会うたび、同じようなことを言ってもらえたんだ。ありがたいと同時に、それが僕のモチベーションにもなった。僕がやれたのだから、(タートル・アイランドの)デヴィッド・バラクリシュナンを含め、多くの素晴らしい才能ある人たちにチャンスが回ってくると思えるからさ。
今、オペラの世界では一つのシフトチェンジが起きている気がするんだ。いろんなものが生まれ、受け入れられ始めている。『Fire Shut Up in My Bones』と『チャンピオン』がMETで上演されたという事実だけをとってもね。『Fire Shut Up in My Bones』にはステップショー(ステッピング)を採り入れたシーンがあるんだけど、あそこでは毎晩スタンディング・オベーションがおきていた。僕はただリズムを書いただけで、あとはカミーユがそれをステップショーにしたんだけどね。
テレンス・ブランチャード featuring E-コレクティブ with タートル・アイランド・カルテット来日公演
2024年9月2日(月)・3日(火)丸の内コットンクラブ
>>>詳細・予約はこちら
2024年9月4日(水)ブルーノート東京
>>>詳細・予約はこちら
[1st]Open5:00pm Start6:00pm
[2nd]Open7:45pm Start8:30pm
〈メンバー〉
【E-コレクティブ】
テレンス・ブランチャード(トランペット、シンセサイザー)
チャールズ・アルトゥラ(ギター)
テイラー・アイグスティ(ピアノ、キーボード、シンセサイザー)
デイヴィッド・ジンヤード・ジュニア(ベース)
オスカー・シートン(ドラムス)
【タートル・アイランド・カルテット】
デヴィッド・バラクリシュナン(ヴァイオリン)
ガブリエル・テラッチアーノ(ヴァイオリン)
ベンジャミン・フォン・グーツァイト(ヴィオラ)
マルコム・パーソン(チェロ)
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