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ジェイミーXXが語る、ダンスミュージックの新たな金字塔を生み出した「熱狂」と「内省」

Rolling Stone Japan / 2024年9月18日 17時30分

Photo by Alasdair McLellan

言わずと知れたThe xxのトラックメイカー、ジェイミーxx(Jamie xx)の実に9年ぶりとなるソロアルバム『In Waves』は、これまで以上にエッジーで、なおかつダンスフロアの熱気と興奮が充満しているような作品だ。と同時に、ジェイミー個人の物語にフォーカスした私小説的な作品でもある。熱狂的だが内省的。コミューナルだがパーソナル。前作『In Colour』は2010年代におけるインディダンスの金字塔となったが、一層奥行きが増した今作もそれに勝るとも劣らない傑作だと言っていいだろう。

詳しくは以下の対話に譲るが、本作の野心的なサウンドは、新世代が「クレイジーなサウンドデザイン」の曲を次々と生み出しているクラブカルチャーの”今”にインスパイアされている。そしてそんな刺激的なアンダーグラウンドのシーンとは対照的に、退屈なダンスミュージックが量産されているメインストリームに対するリアクションでもある、とジェイミーは話している。つまり、The xxの『I See You』が2010年代半ばの「売れているポップこそが一番冒険的で面白い」という状況に対するインディからの応答だったとすれば、『In Waves』はメインストリームの冒険性に陰りが見え、再びアンダーグラウンドが活性化している2020年代半ばの状況を映し出した作品だということだ。

ただジェイミーが詳しく語っているように、本作は決して簡単に生まれた作品ではなかった。一時は曲も書けないほどのスランプに陥っていたというのだから、ソロ前作のリリースからしばらくの間、相当大変な時期を過ごしていたのだろう。しかしパンデミックで世の中のすべてが止まり、じっくりと自分を見つめ直す時間を持てたことで、徐々に彼は回復していった。このアルバムは、そんなふうにジェイミー個人が回復していく過程と、パンデミックから世界/クラブシーンが回復していく過程が重ねて表現されている作品でもある。だからこそ本作は、汗ばむようなダンスフロアの熱気が感じられると同時に内省的でもあるのだ。

本作リリースのアナウンス時にジェイミーはコメントを発表しているが、そこで彼は自分や世界が経験してきた困難を「wave、波」という言葉で表現していた。それを踏まえると、アルバムタイトルの意味合いも想像がつく。つまり『In Waves』とは、あなたや私、クラブシーン、そして世界を襲った様々な困難を乗り越え、深夜のダンスフロアでまた会おうというジェイミーからのメッセージなのだろう。




コロナ禍に取り戻した音楽への情熱

―『In Waves』は、前作以上にダンスフロアの熱気を感じさせると同時に、ある意味で内省的な作品だと感じます。自分ではどのような作品だと捉えていますか?

ジェイミー:このアルバムは完成までにすごく時間がかかったから、僕にとってどのような作品かって答えるのは難しいんだ。制作期間の体験が凄まじいものだったから、アルバムを完成させて以来、僕はまだアルバムを一度も聴いていないんだよ。でも、質問の表現はこのアルバムを正確に捉えていると思う。楽しいアルバムにしたかった一方で、内省的なものにしたいとも思っていて。メッセージ性も含めたかったけれど、あまりシリアスになり過ぎないようにしたっていうか。それに僕の、この数年間の考えや思いを代表するものにしたいと思ったんだよね。

―プレスリリースには、前作『In Colour』のリリース後、しばらくの間あなたが思い悩んでいたという趣旨のことが書かれています。それは具体的に何についてなのか、教えてもらってもいいでしょうか?

ジェイミー:僕の世代では――特にクリエイティブな分野に携わっている人は、30歳手前になると、次のステップについて悩む人が多いと思う。自分の人生において何を大切にしていきたいのか、ということについて考えるようになるっていうか。僕もそういうことを考えていたら、そのうちパンデミックが起きて、世界中の全ての人が同じ状況で生活せざるを得なくなって……パンデミックは多くの人にとって悪いものとして捉えられがちだったけれど、僕みたいな人にとっては、一度立ち止まって、「自分はこの15年間、何をやってきたんだろう?」ということを振り返る機会になったんだ。自分にとって本当に大切なものは何なのかを考えることができたし、作曲することやライブパフォーマンスをやることに対して再び意欲が湧くきっかけになったよ。

―人生の次のステップについて悩んでいたとき、何か具体的にやりたいことは思い浮かんでいたんですか?

ジェイミー:キャリア的な進路は特に考えていなくて、ビーチの近くに引っ越して、サーフィンをしながら残りの人生を過ごそうかと考えていたね。

―なるほど(笑)。パンデミックで一度立ち止まったことで、再び作曲やライブに対する意欲が湧いたということですが、それは裏返すと、パンデミック前はその意欲が失われかけていたということですか?

ジェイミー:そういう時期は確かにあったね。簡単に言えば、過度にやり過ぎていたんだと思う。当時、僕はツアー中で、最後にいたのは日本だった。その後にオーストラリアでライブが予定されていたんだけど、パンデミックが起きたから、ツアーを中断してイギリスに帰国しなくてはいけなくなった。イギリスに帰国してから気づいたのは、自分は延々と世界各地でライブをやっていたけれど、心ここにあらずという状態で、その活動に対して何の刺激も感じていなかったということ。ツアー三昧という自分の生活に慣れ過ぎてしまっていたんだろうね。イギリスに戻ってからは、昔のレコードばかり聴いていた。親が聴いていた古いレコードばかりだよ。ダンスミュージックを聴くと、仕事のことを思い出してしまうから、しばらくの間、一切聴かなかったんだ。で、自分がそもそも何でダンスミュージックが好きなのか、それと、ダンスミュージックが呼び起こしてくれる逃避的感覚について、改めて考えてみたりして。そうすることによって、音楽を作ることの楽しみを再び見出せるようになったし、僕が作りたいのは結局のところダンスミュージックだということに気づいたんだ。


Photo by Laura Jane Coulson

―あなたにとってパンデミックとは、久々にゆっくりと出来て、いろんな気づきを与えてもらった大切な時期だったわけですね。

ジェイミー:僕にとっては、人生の中で最も幸せな時期だったよ。親友が僕の家の上の階に住んでいて、僕は家で一日中、仕事をしていた。でも仕事と言っても、自分のためだけにやっていたというか、パンデミック中は誰も今後の見通しがついていなかったからね。日中は仕事を楽しんで、夜になると、親友が夕飯を作ってくれていたから、上の階に上がって一緒に食事をした。そういうルーティンがあることがとても素敵だった。僕の人生で今まで、そういうルーティンは一度もなかったから。ひとつの場所に留まって、生活していく。変な風に聞こえるかもしれないけど、パンデミック中、僕はコミュニティ感というものをとても強く感じた。世界のすべての人が同じ状況で、同じ生活をしていたということが、とても人間的に感じられて、素敵だと思ったんだ。

―パンデミックのとき、イギリスでは違法レイヴパーティが盛んにおこなわれていた、というニュースが日本でも報じられていました。あなたはそういったレイヴにも足を運んだりしていました?

ジェイミー:ロンドンではロックダウンが何度かあったんだけど、1回目のロックダウンが緩和されて、人々の外出がある程度、許されるようになった頃、若い子たちが、僕の家の近所にある運河沿いに各自のサウンドシステムを持参してちょっとしたイベントをやるようになってね。土曜の夜に運河の方へ歩いていくと、小規模なパーティが運河沿いでたくさん行われていたよ。すごくかっこいい音楽を流しているパーティもあったし、すごくひどい音楽を流しているパーティもあった。でも、そこにいた人はみんな、再びお互いと集えるということに感激していたんだ。とても美しい光景で、自分がなぜこういう音楽が好きなのかということを再認識することができた。あの時の感覚は、自分が最後に良いクラブに行った時に感じた感覚と同じものだった。その時の感覚が蘇ったね。

ポップとアンダーグラウンドの狭間で

―先日ロビンと一緒に出演したスウェーデンのラジオ番組で、「クラブミュージックがポップになった」という発言していましたよね。それは具体的にどういった現象のことを指しているのでしょうか?

ジェイミー:最近のポップミュージックは、残念なことに、僕の前作に影響を受けているものが多いと思う。僕の音楽からインスピレーションを得ているなというポップミュージックを聴くと、理解に苦しむんだ。僕はダンスミュージックが大好きだし、自分にとっては特に愛着のある音楽だから、ダンスミュージックはすごくパーソナルな領域のものだった。でも、最近耳にするポピュラーなダンスミュージックには、あまり心がこもっていないものが多いと感じる。ダンスミュージックの人気にあやかって作られている音楽のように聴こえるんだ。その一方で、ダンスミュージックは万人のためにある音楽だと思いたいし、新しい世代のキッズたちがハマっているのを見るのは嬉しい。まあ、色々な人が、さまざまな理由や目的でダンスミュージックに傾倒しているんだと思う。


今年のグラストンベリー・フェスにて、ロビンをフィーチャーした「Life」を一緒に披露

―そういった状況の中で、自分がどういった音楽を作りたいのか、改めて考えたりしましたか?

ジェイミー:違う種類の音楽を作ろうともしたけれど、結局はダンスミュージックに戻ってくる自分がいたね。やっぱり自分が本当に好きな音楽だからだと思う。それに僕はDJをするのも大好きだし、DJをするには最新のダンスミュージックに触れている必要がある。最近でも、アンダーグラウンドには素晴らしいダンスミュージックがたくさんある。ただ、それにたどり着くまでに、たくさんのゴミみたいなダンスミュージックをかき分けて行かなくちゃいけないっていう。でもこういう状況になったことがきっかけで、「Treat Each Other Right」のような曲ができたんだと思うし。

―というと?

ジェイミー:この曲は、テンポが急激に切り替わるんだけど、こういう技術は少し難しいから、真似できない人も多いと思う。それに、この曲をダンスフロアでかけるとクラウドも一瞬混乱するから面白いんだ。これほどまでにたくさんのダンスミュージックがポピュラー音楽の領域で普及している今だからこそ、僕にしかできないことができるし、そういうことをやろうというモチベーションにもなったんだ。



―The xxが『I See You』をリリースしたときにもインタビューさせてもらったのですが、当時あなたは「アンダーグラウンドの音楽はちょっと退屈になってきている。これだけアンダーグラウンドの音楽よりポップミュージックの方が面白いのは、初めてのことなんじゃないか」と話していました。これは当時の状況を的確に捉えた意見だったと思いますが、あれから7年が経ち、音楽シーンはどのように変わったと感じていますか?

ジェイミー:大きく逆転したと思う。でも、それは良いことだよ。世界はそうやって動いているものだからね。ポップミュージックで面白いものが出てくると、もっと面白いものを作ろうとする人が出てきて、その影響がアンダーグラウンドにも及ぶ。そしてアンダーグラウンドで面白い音楽が出てくると、それをより商業的にしようとする人たちが出てくる。現在がまさにその状況だよ。僕はアンダーグラウンドの世界にも関与しているし、巨大なライブをやる機会も与えてもらっているから、すごく恵まれている。この2つの世界の橋渡し的存在でいられることを幸運に思うんだ。僕はポップミュージックも大好きだし、アンダーグラウンドなダンスミュージックも大好きだから。この2つの世界の狭間に存在できる人はそんなにいないから、自分はとても恵まれていると思うね。

―『In Waves』の収録曲の多くは、あなたがここ数年DJで使ってきた曲でもあります。現場でのオーディエンスの反応というのは、曲をブラッシュアップさせていく段階で影響を与えているのでしょうか?

ジェイミー:もちろんだよ。僕はこのアルバム以前に、オーディエンスをここまで意識的に見るということはしていなかったし、反応に合わせて曲を変えていくということもしたことがなかった。でもこれはすごく楽しい方法だったよ。この方法が上手くいく時もあったし、上手くいかない時もあった。曲をかけて、オーディエンスの反応を見れば、その曲が上手くブラッシュアップされているのか、そうでないのかが分かった。だからこのアルバムは、オーディエンスの影響が大きいと言えるね。その点はすごく気に入っているんだ。

―具体的に、オーディエンスからの反応がもっともダイレクトに反映された曲を挙げるとすれば?

ジェイミー:難しいけど、「Treat Each Other Right」なんかはそうだと思う。とても変わっている曲だからね。テンポの切り替えがあるから、構成が正確でないと、元のテンポに戻した時にオーディエンスが理解してくれないんだ。オーディエンスを混乱の渦から、納得へと導くには正確な構成が求められた。オーディエンスを納得へと導くためには、何ヴァージョンも試す必要があったよ。


Photo by Alasdair McLellan

―現場でのオーディエンスからの反応以外で、本作に影響を与えたものはありますか? 何かしらの曲やアーティストから音楽的にインスパイアされたりとか。

ジェイミー:アルバム制作の特に後期は、ブレイクビーツや、最近のヨーロッパやUKの若いプロデューサーが作っている、テンポがすごく早い2ステップにインスパイアされていた。後者に関しては、僕でさえどうやって作っているのか分からないくらいのクレイジーなサウンドデザインで、とても面白いプロダクションなんだ。僕は他の人から刺激を受けたいと思っているし、若い世代から背中を押されて刺激を受けるのはその最適な形だと思う。新しいことをやっている人や、他の人と違うことをやっている人を知りたいと思うし。しかも、そういう人たちは、まだ酒も飲めないくらいの未成年であることが多いんだ(笑)。

―具体的に刺激を受けたアーティストの名前を挙げることは出来ます?

ジェイミー:難しいな……メトリスト(Metrist)というプロデューサーがいるんだけど、彼が作る音楽はクレイジーなサウンドだよ。僕は数カ月前からロンドンでクラブイベントを始めたんだけど、そのイベントに彼を誘ってDJをしてもらったんだ。その時に彼がどうやって音楽を作っているのかという話を色々と聞いたよ。すごく感心したね。



『In Waves』を成功に導いたコラボワーク、The xxの今後

―前作『In Colour』は、ヤング・サグとポップカーンが参加していたことを除くと、ゲストはThe xxのロミーとオリヴァーだけでした。しかし『In Waves』には幅広いシンガーがフィーチャーされていて、ハニー・ディジョンやザ・アヴァランチーズのようなトラックメイカーも参加しています。ある意味、前作よりも開かれた印象を受けますが、こうした変化の理由を教えてください。

ジェイミー:僕はこのアルバムの制作を始める前、作曲が出来なくて悩んでいたんだけど、そうなってしまった理由のひとつは、自分が孤立していて、視野が狭くなっていたということだった。制作に関しても、全部自分でやりたいと思っていたんだよね。しかも、自分はそうやって制作するのが得意だと思っていたし。でも、自分を開放して、他のアーティストや、特に他のプロデューサーと一緒に仕事をすることは、自分にとってすごく有益なことだった。僕は今まで、他の人と一緒に仕事をすることに苦手意識があったんだ。音楽制作をしているときは、自分が安心できるセーフスペースというものがあって、そこにいるのが心地よかったから。でも今回、他の人たちと一緒に仕事をすることで、自分を限界までプッシュすることができた。それに、自分が尊敬するアーティストやプロデューサーたちに、このアルバム音源をリリース前に聴いてもらうことで、アルバムを完成させることができたんだと思う。

―プロデューサーとのコラボと言えば、ザ・アヴァランチーズは彼らのアルバムでも共演経験がありますが、ハニー・ディジョンは少し意外な人選だと思いました。

ジェイミー:バスク地方のビルバオでパーティをやった時に、ハニー・ディジョンに参加してもらったんだ。かなり前の話だけど、彼女はすごく最高だったよ。その時に知り合いになって、ずっと連絡を取り合っていて。で、パンデミック中に彼女から一緒に曲を作らないかという連絡があったんだ。当初は彼女のアルバムのための音楽を作る予定だったんだけど、僕は閉ざされていた状況から一気にモチベーションが上がったから、(自分のアルバムの曲を)すぐに完成させることができて。曲の基本的な部分は1日くらいで完成させたね。その後は彼女と連絡を取り合いながら、曲を仕上げていったんだ。彼女から一緒に作曲をしないかという話が持ち上がらなかったら、僕はもっと長い期間、停滞していたと思うから、彼女には感謝しているよ。




―今作のゲストはどのように決めたのでしょうか? やろうと思えば、あなたがこれまでプロデュースしてきたポップスターをフィーチャーした豪華絢爛なポップアルバムを作ることも出来たと思いますが、そうはしなかったですよね?

ジェイミー:確かに僕はポップスターと仕事をしてきたことがある。ただそれは、自分の安全領域を超えて音楽を作ってみようと思ったからで。自分のための音楽というよりは、相手(ポップスター)のためだったんだよね。だけど、今回のアルバムに収録した曲は、すべて自分にとって意味のあるつながりを持った人たちとのコラボレーションなんだ。彼らとの曲が出来る以前から、その相手とは基本的に知り合いだったし、音楽だけではなく、友人として仲良く一緒に過ごしたことのある人たちで。そういうコラボレーションをするのが、僕にとって自然なことなんだ。ちゃんとしたつながりを感じられる人たちとコラボレーションすることが、自分にとって有意義なことなんだと思う。

―今回サンプリングされたボーカルは、サウンド的に曲にフィットするだけではなく、歌っている内容、言葉の意味も意識して選んでいるように感じられたのですが、そのような意図はありましたか?

ジェイミー:そうだね、言葉の意味も考えて使うようにした。ゆるくメッセージを伝えたいと思っていたから。

―言葉の意味の話で言うと、「Breather」から「Falling Together」までの流れは、落ち込んだ状態から立ち直り、最終的には再びダンスフロアの熱狂に身を投じていく過程を表現しているように感じられました。

ジェイミー:「Breather」からの流れに関しては、すごく気に入っているんだ。しっくりくる流れを見つけるのがすごく大変だったからね。今回は、トラックリストの制作に今まで最も時間がかかったアルバムだった。このアルバムは長い期間を経て作られたものだから、ひとつのアルバムとして聴くことが難しく感じられて。でも、ちゃんとアルバムとして聴ける作品にすることが、僕にとって大切なことだった。だって、アルバムっていうアートは、聴いている人をその瞬間に没頭させるものだと思うから。実際、収録曲の多くは、アルバムとしてフィットするように調整を加えたんだ。制作の後期の方では、アルバム向けの曲も作ったりしてね。

―「Breather」ではヨガ講師のジュリアナ・スパイコラックのスポークンワードが使われています。なぜ彼女に参加してもらうことにしたのでしょうか?

ジェイミー:ロックダウン中にYouTubeでヨガの動画を見て、上の階に住んでいる友達と一緒にレッスンを受けていたんだ。毎日やっていて、バカみたいだったけれど、健康的でいることが気持ち良かった。で、ヨガの先生の話を聴いているうちに、健康的なライフスタイルを歩んで毎日の瞬間を大切に生きることは、いろいろな物質を摂取してダンスフロアで体験することに通じるものがあると思ったんだよね。

―確かに「Breather」で語られているのはヨガのレッスンで講師が言うような内容ですが、この曲で聴くと、クラブでのスピリチュアルな体験について話しているようにも聴こえますよね。ロックダウンの経験とクラブでの体験が同時に表現されているようです。

ジェイミー:その対照的な組み合わせも面白いと感じたし、そのどちらも、人々にとって違った意味で良い影響があるということが面白いと思ったんだ。



―その次の曲、「All You Children」でサンプリングされているニッキ・ジョヴァンニの「Dance Poem」の一節は、この流れで聴くと一際感動的です(「涙を拭いて、音楽が聴こえないの? このハッピーなビートが聴こえないの? 子供たちよ、みんなで集まって、一緒に踊ろう」)。この曲は、あなた個人の回復の過程、そしてパンデミックで止まっていた世界が再び動き出す過程を表現しているように感じられましたが、あなたはどういった意図でサンプリングしたのでしょうか?

ジェイミー:今の表現の通りだと思うよ。そういうことを伝えたかったんだ。あの詩が載っているレコードは10年くらい前から持っていたんだ。ツアーでワシントンDCにいる時にレコード屋で見つけたんだよ。いつかサンプリングで使いたいとずっと思っていたんだけど、パンデミックを経験するまでは、これを使う真の意味を見出せなかった。こういう使い方ができて、こういう仕上がりになったことについてはすごく満足しているんだ。




―よくわかりました。ではもう時間が来てしまったので、最後に制作中のThe xxの新作について訊かせてください。現時点で話せる範囲で構いませんので、どのような作品になりそうか教えてもらえますか?

ジェイミー:どんな作品になるかは僕も分からないから、本当に何も教えてあげられないんだ。この3カ月間、僕たちは一緒に音楽を作ったけど、それが良いものなのか、そうでないのか、僕には全く分からない。でも3人で制作をするという過程は楽しんでいるよ。今、言えるのはこれくらいかな。



Jamie xx
『In Waves』
2024年9月18日 CD/LP日本先行リリース
2024年9月20日 デジタル/ストリーミング配信
国内盤CD:ボーナストラック追加収録
初回生産限定Tシャツ付きも発売
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14157

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