山下達郎やAORを愛するUK4人組、PREPが語る「懐かしくも新しい」ポップスの作り方
Rolling Stone Japan / 2024年9月18日 17時20分
ロンドン発のバンド、PREP(プレップ)による2ndアルバム『The Programme』が、7月の発売以来ロングセラーを記録している。ヨット・ロック(AOR)やR&B、シティ・ポップ等をベースに「懐かしくも新しい」サウンドを聴かせる彼らは、特にアジア圏で大きな人気を得ており、本作の好評をきっかけとして、ここ日本でもより一層注目度が高まっている。バンド結成のいきさつから、音楽的コンセプト、エディ・チャコンやタイのプム・ヴィプリットら多彩なゲストを迎えた新作の内容について、バンドメンバー4人へ話を訊いた。
左からダン・ラドクリフ(Gt, プロデューサー)、リウェリン・アプ・ミルディン(Key)、ギョーム・ジャンベル(Dr)、トム・ハヴロック(Vo, 作詞)
Photo by Ian Hippolyte
スティーリー・ダンを通じて意気投合
―バンド結成の経緯を改めて教えて下さい。
リウェリン:僕たちは全員ロンドンを拠点にしていて、僕とギョームがパブで出会ったのがそもそもの始まりだった。 その頃僕はバンドを始めたいと思っていたんだ。エレクトロニック・ミュージックに携わってきたけど孤独感を覚えることもあったしね。話し始めたらすぐに意気投合した。スティーリー・ダンをはじめ、夢中になっているミュージシャンが一緒だったりしてね。
それからダンにソーシャルな形で出会った。彼のスタジオを訪れる機会があったんだ。ダンとも同じような話になって、何とも不思議な偶然だったよ。
ということで、3人で集まってみて、何が起こるか様子を見ようという話になった。そうしたら、初日からいきなり「Futures」という曲のアイデアがまとまったんだ。
2016年リリースのデビューEP『Futures』
―トムさんの加入はどのようにして?
ダン:その頃、僕は色んなソングライティング・セッションに参加していたんだ。僕がインストゥルメンタルのパートを担当して、シンガーやアーティストやソングライターがやってくるとコラボしていた。トムはそのうちの1人だったんだ。トムはとてもいい声の持ち主だったから、トライアウトしてみようと思ったんだ。そしてオーディションに受かったというわけさ(笑)。
トム:オーディションだって僕は気付いていなかったけどね(笑)。リウェリンがスティーリー・ダンの名前を出したのは興味深いね。いつも自分たちの影響がどこから来たのか、PREPが生まれたきっかけになったのは何かを考えるんだ。色んなアーティスト名が出てくるけど、いつもスティーリー・ダンの名前に帰ってくる。今まで色んな人が僕をスティーリー・ダンに夢中にさせようとしてきたけど、僕は一度も理解できていなかったというか、かつては特に気に入ってもいなかったんだ。
―あれ、そうだったんですか。
トム:うん。僕にとってはクリーンすぎる気がしてさ。若い頃はもっと粗削りな感じのサウンドが好きだったからね。でもダンにPREPの話を持ち掛けられた時、スティーリー・ダンの曲をいくつか聴かせてくれたんだ。フレッシュな耳で聴いてみたら、すっかり惚れ込んでしまったよ。今度は完全に理解できたし、大好きになった。
―スティーリー・ダンはみなさんにとってそこまで大きな存在なんですね。
ギョーム:そうだね。僕たちが特に影響を受けたスティーリー・ダンのサウンドは、彼らのキャリアの後半くらいの作品じゃないかな。『Aja』(1977年)とか『Gaucho』(1980年)とか。
スティーリー・ダンの影響が垣間見える「Turn The Music Up」(2021年)
―スティーリー・ダンもそこに含めて語られることがあると思うのですが、いわゆる「ヨット・ロック」というジャンルとの出会いはどんなものだったんでしょうか?
リウェリン:すごくヘンな出会いだった気がするよ。ギョームとダンが「ヨット・ロック」という用語を使っていたんだ。僕はそれまで聞いたこともなかったから「何だそれ?」と思ってね。『ヨット・ロック』という名前のコメディ番組がネット上にあって、オマージュでありながら、70年代のその手のミュージシャンに関する妄想だったり嘘だったりを流す番組だったんだ。
ギョーム:僕は14歳の頃からその手のレコードをずっと集めてきた。僕はドラマーだから、そういうレコードに参加しているセッション・ドラマーに夢中でさ。ジェフ・ポーカロ、スティーヴ・ガッドとかね。
ヨット・ロックと呼ばれているジャンルで好きなアーティストといえば、ボズ・スキャッグス、マイケル・マクドナルド……いくらでも名前を挙げられるね(笑)。けれど、スティーリー・ダンこそが間違いなく、ヨット・ロックの山の頂点にいると思っているよ。
―そのヨット・ロックと同時期に興隆したのが日本のシティ・ポップですが、特に好きなアーティストを教えていただけますか?
トム:それこそ沢山いるけど……そう、ダンはいつも山下達郎のレコード・ジャケットを壁に飾っているんだ。
ダン:彼はシティ・ポップのサウンドを象徴するような人だからね。すごくスムースでファンキーなのに歌い方がすごく独特というか、僕たちの解釈では、日本の伝統的なスタイルに近いんじゃないかな。トムみたいな人がこのバンドのシンガーなのも、そういう考えが裏にあるんだ。僕たちのシンガーはスティーヴィー・ワンダーやダニー・ハサウェイみたいなR&Bシンガーでいてほしくない。アジアの人たちが僕たちのサウンドを理解してくれたのもそれがあると思うんだよね。
ギョーム:山下達郎は、アルバムのプロダクションも特別だと思うんだ。楽器の演奏面ではアメリカのR&Bミュージックを参照してはいるけど、ドラムのサウンドとかオーケストレーションなんかはとても個性的だと思う。僕たちも大きな影響を受けているよ。元々僕はカシオペアの1stアルバムを15歳のときに買って以来、日本のアーティストにはずっと親しみを持っていたんだ。
リウェリン:そうだね。「シティ・ポップ」という言葉を知る前に僕たちが聴いていたのは、カシオペアとかT-SQUAREとか、フュージョン系のアーティストが多かったかな。今僕たちがやっている音楽とは少し違うけど、何らかの形でDNAに組み込まれていると思う。
ギョーム:シティ・ポップは素晴らしい音楽だけど、厄介な部分もあるんだよね(笑)。なぜって、特別なレコードがあまりに多すぎるんだから!値段もすごく高いし、レアだし…全部手に入れたいよ(と拳を握る)(笑)!
PREPがスムースなヴィンテージ楽曲を集めたプレイリスト「Jeffrey International Presents」、日本の楽曲も多数セレクト
―なぜそういった過去の音楽にそこまで惹かれるのでしょうか?
トム:僕たちは全員マイケル・ジャクソンのアルバムを聴いて育っているからね。ステージでも実際に「Human Nature」をカバーしているし、今でも『Thriller』は世界一素晴らしい作品だと思うよ。そういう幼少期の体験が大きな位置を占めているんじゃないかな。10代の時はちょっと離れて他の音楽を色々聴いていたけど、後でこちらのサウンドに戻ってくるんだ。僕らにとってノスタルジックなイメージもあるし、ハーモニー的にもグルーヴ的にも、僕たちの中核にこの手の音楽があると思う。自分たちの前の世代の音楽を今風に解釈したらどうなるか、その試みがとても面白いんだ。
2018年5月、代官山UNITでの来日公演で「Human Nature」のカバーを披露
最新アルバム『The Programme』制作秘話
―ロンドンといえば、レアグルーヴやアシッドジャズをはじめ、歴史的に過去のソウルミュージックやファンク等がクラブカルチャーの中で支持されて、新しい音楽として再生させていく土壌がある街だと思うのですが、そういったジャンルから影響をうけた点はありますか?
リウェリン:興味深い質問だね。そう、僕は間違いなくジャミロクワイの大ファンだ。ツアー中にジャミロクワイをかけてみんなで歌ったりもするよ(笑)。少なくとも僕個人は影響を受けていると思う。けどまあ、PREPはブリティッシュ・ミュージックの伝統に反しているようなところはあるんだけどさ。
ギョーム:それはあるね。
リウェリン:というのも、ブリティッシュ・ミュージックの多くはダイレクトというか、シンプルだったりファンキーだったりダーティだったりするんだ。僕たちもダイレクトではあるけど、もっとジャズの影響が強いから、なめらかな感じなんだよね。例えば僕たちがアジアの国々でオーディエンスに恵まれたのは、そういう感じのサウンドがヨーロッパより人気があるからじゃないかと思う。
トム:僕とダンが出会った頃、他のアーティストたちに向けてたくさん曲を書いていた時のことを思い出すよ。ハーモニーやコードを極めてシンプルにしておく必要があったんだ。少しでもフルーティでジャジーな方向に持っていこうとするとドン引きされてしまうというか、ファッショナブルじゃないと思われてしまってね。PREPが始まった辺りから、少しずつ変わってはきていると思うけど。リウェリンの言っていることには同感だよ。僕たちは、自分たちの音楽とはかなり違うトレンドの中で、何とか居場所を作ろうと励んできたんだ。
PREPはアジア各国で大人気、動画はマニラ公演(今年5月)の様子
―最新アルバム『The Programme』について伺わせて下さい。1st『Prep』(2020年)はセルフ・プロデュース作でしたが、この二作目でプロデューサーのルノー・ルタン(Renaud Letang:ファイスト、ベニー・シングスなどで有名)と共同作業を行おうと思ったのはなぜだったんでしょうか?
ギョーム:理由は色々だけど、共同作業から何か学べるかもしれないと思ったし、何よりサウンドが良くなるかもしれないと思ったんだ。僕たちは個性が全然異なる個人の集まりだけど、5番目にベストな人を連れてくることによって、物事が複雑になる可能性はあるにせよ、それ以上により興味深いことになると考えたんだ。他人のビジョンに基づいて動くのは、ある意味ラディカルで変わったやり方なんだよね。ルノーは僕たちを安全地帯から引っ張り出してくれたと思うよ。
トム:何だか、自分たちをさらけ出すような感じだったね。僕たちのプレイやパフォーマンスにスポットライトが当たっているような感じ。ルノーはむき出しの状態になるまで僕たちの演奏をそぎ落とそうとしていた気がする。そして、大抵の場合彼が正しかった。だから、僕たちの過去の作品より親密なものになった気がする。前作はもう少しエレクトロニック寄りだったし、そういう意味でも違う仕上がりになったね。
―レジェンダリーなアーティスト、エディ・チャコンのゲスト参加も目を引きます。
ギョーム:エディ・チャコンの存在を知ったときのことはよく憶えているよ。僕のSpotify上に突然流れてきたんだ。「Holy Hell」という曲だった。ものすごく気に入ったからメンバーにも聴かせて、何か一緒にやれたら最高だよねって話になったんだ。
1年後、僕たちのアメリカのレーベルに、セッションを取り付けてくれるように頼んだんだ。そうしたら居場所を突き止めてくれて、彼も快諾してくれた。それで改めて彼のことを調べたら、90年代の作品が出てきて……その時まで彼があのチャールズ&エディのエディだったとは僕たちの誰も気づいていなかったんだ!だから、いきなり「レジェンドとスタジオにいる」という状態になったよ(笑)。LAのストーンズ・スロウ・スタジオで一緒に「Call It」を仕上げたんだ。
ギョーム:初対面でいきなり「こういうアイデアがあるんだ」と言ってくれたんだ。そこから2分以内にリウェリンがコードを考えて、僕もグルーヴを考えて……トムとエディは早くもメロディに取り組み始めて、すべてがトントン拍子に進んだね。4時間くらいでコードや構成が決まったんじゃないかな。
トム:本当に、類まれなくらいクールな人だったよ。とても興味深い人生を送ってきた人で、しかもそれらに関してオープンで、面白い話を色々してくれたんだ。すっかり意気投合して、彼がロンドンでプレイしたときも観に行ったよ。アメリカでも再会したしね。
90年代のソウル・デュオ、チャールズ&エディの片割れとして知られるエディ・チャコンは2020年代に音楽活動を再開。Stones Throwからリリースした「Holy Hell」はジョン・キャロル・カービーがプロデュース
―その他にも、タイのプム・ヴィプリット、LAのヴィッキー・フェアウェル、モントリオールのアノマリー等、多彩なゲストが参加していますね。
トム:僕たちは3人の大ファンだから、彼らがどんなものをもたらしてくれるか興味があったし、きっとエキサイティングなことになると思ったんだ。プムとはタイで曲を書いたんだよ。僕たちがツアー中にね。バンコクにあるプラスティック・プラスティックのスタジオを一緒に借りたんだ。プムとはフェスが一緒でね。彼とスタジオで過ごすのはとにかく気楽なんだ。すぐに意気投合したよ。
ヴィッキーは僕たちのLAでのショウに来てくれたんだ。僕たちは彼女の音楽の大ファンなんだ。素晴らしいプレイヤーだし、自分自身のプロジェクトの他にも色んな曲を書いていることも知っていた。アンダーソン・パークのアルバムにも参加しているし、興味深い作品を色々出しているよ。マイルド・ハイ・クラブも彼女がプロデュースしたんだ。それで一緒にスタジオに入れたらいいなと思って、彼女に声をかけたら、予定がうまく合ったんだ。LAに着いて最初のセッションが彼女とのものだったよ。
リウェリン:アノマリーに関してはリモートで参加してもらったんだ。本当に強力なインストゥルメンタリストがアルバムでソロをプレイしてくれるというのは素晴らしいことだね。これまで話に出てきた(スティーリー・ダンなどの)バンドやアーティストたちも強力なゲストたちを迎えていたし、以前からそういうカルチャーが大好きなんだ。
目指しているのは「レトロ」ではなく「モダン」
―アルバム全編に渡って、キック(バスドラム)の音が、みなさんが参照しているであろう過去のポップスに比べて迫力のあるアタック感を伴っているように聴こえるのですが、これにはどんな意図があるんでしょうか?
ギョーム:素晴らしい質問だし、ニッチな視点だね(笑)! ただ、答えはルノーに訊くべきだね。彼が僕のプレイを録音したから。アルバムのミキシングも彼がやってくれたんだ。彼はビジョンを持った人だし、こだわりが強いから、キックの音については僕というより彼の意向なんだよね。でも、君がそういう感想を持ったのは面白いね。と言うのも、僕はいつも彼に「音がデカすぎる」と言われていたんだ。実際はすべて静かに叩かないといけなかった。
―なるほど、プレイはなるべくフラットに録って、ミックスの段階でメリハリをつけたかったということなのかもしれないですね。
ギョーム:それはあり得るね。ダイナミクスがわかりやすくなるようにしてくれたのかもしれないな。
トム:僕たちの音楽には常にヒップホップのサンプリングの影響があるんだよね。それもキックのサウンドに関係しているかもしれない。
ギョーム:バンドを始めたその日から僕とダンが決めていることがあってさ。それは、トラディショナルなサウンドやレトロなサウンドをそのまま目指すのはやめて、モダンなアルバムと同様の音を目指そうということなんだ。世の中には、トラディショナルなヨット・ロックのサウンドを踏襲している素晴らしいバンドがたくさんいる。でも僕たちがそうしたいと思ったことはないんだ。
リウェリン:僕があるバンドとスタジオに入ったときのことだった。僕たちと割と似た感じのシーンで活動しているバンドなんだけど、アナログのシンセサイザーを買ったって言って、誇らしげに見せてくれたんだ。「素晴らしい機材だよ。これでPREPみたいなサウンドを手に入れられる!」なんて言っていた(苦笑)。それで、「僕たちそういうのを1つも持っていないんだ。大体全部プラグインだし」と返したら、すごくムッとしてたね(笑)。「えっそうなの? ハウス・ミュージックを作るような感じで作ってるの?」と言われた。僕たちはアナログ機材のつまみをちょっとずつ調整して音を作ったり、ちゃんとチューニングできるようにウォームアップしたりとか、そういうタイプじゃないんだ。誰もそんな面倒なことはやる気がない(笑)。
―そういう考えは、元々エレクトロニック・ミュージックをやっていたというリウェリンさんのキャリアにも関係しているのでしょうか?
リウェリン:たしかにそういう経験が作業にも活かされているんだと思う。ギョームもAbletonを使っているしね。僕たち全員がこよなく愛する昔ながらのソングライティングの要素を、現代的なプロダクション・スタイルといかに組み合わせるかということに興味があるんだ。
Photo by Em Cole
―モントリオール在住のアノマリーさんとのコラボレーションもまさにそうだったと思いますが、地理的に離れているアーティストともスムーズに共同作業を行うことができたり、クイックな発信ができたりというのも、現在のデジタルテクノロジーの発展の利点ですね。
リウェリン:そうだね。初めてトラックを公開したのもSoundCloudだったしね。数年前はHype Machineがとても重要な存在だった。ブログやHype Machineに載せることによって、すぐにオーディエンスをグローバルに獲得することができたんだ。典型的なインターネット・ストーリーだよね。それ以前の世界ではありえなかったことだから。ミュージシャンにとってはいいことだと思うよ。一方で、情報があまりに飽和状態にある場合、うまくいかないこともあるけどね。
ダン:さっきの話題とも関係するけど、テクノロジーはいつの世も音楽の作り方に直接影響する。初めて音楽が電気で録音されるようになった頃を考えてみても、当時は1本しかマイクがなかった。ワックス・シリンダー(蝋管)か何かがあって、ミュージシャンがマイクとの距離を自分でとっていた。今の時代、レコードはコンピューター上で作られている。オーバーダブとか、断片を1つずつレコーディングしたりとか、それをレイヤーにしてまとめるとか……マイクとかアンプとか、本物の楽器は、使われることがどんどん少なくなっている。それに、音楽界でのコラボの大半は、ファイルを送り合って、行ったり来たりさせることによって行われているんだ。そうするとサウンドも変わってくるんだよね。PREPはいつもモダンなやり方で音楽を作ってきた。そう考えれば、70年代に作られたものと同じ音になることはないよ。当時とは違う環境で作られた訳だからね。
PREPが同時代のスムースな楽曲をまとめたプレイリスト「Smooth Crew」
―片や、あなたたちの音楽には、決して「デジタル」には還元できない人間的なテクスチャーが溢れていると感じます。このように高度に情報化した世界で、人間的なフィーリングを音楽に込めていくことの意味について、どのように感じていますか?
リウェリン:モダンなやり方でやると人間的なテクスチャーが薄れる危険は大いにあるよね。今昔のヒップホップ……例えばメンフィスのヒップホップを深く聴きこんでいるんだけど、すごく興味深い。初期はMPCなんかのドラム・マシーンを使っていて、多分今にしてみればおもちゃみたいな機材なんだけど、とにかく素晴らしいフィーリングがあるんだよね。「オーガニック」という言葉が正しいかどうかはわからないけど。それが90年代の初めくらい。その後はみんなコンピューターを使うようになって2000年代に突入するんだけど、そうすると僕にとっては色んなものが失われてしまうというか、いかにもコンピューターで作りましたみたいな感じになってしまう。僕たちはいつも……まぁ、ミュージシャンはみんなそうだとは思うけど、常に人間らしいフィーリングを音楽に取り込もうとはしているんだ。重要なことだね。
それからドラムス。たくさん加工はするけど、99%は生のドラムスを使っているから、人間的なフィーリングを得るのに役立っていると思うよ。
トム:それから、僕たちが全員インストゥルメンタリストなのも大きいと思うね。全員子供の頃から楽器をやっていたんだ。バンドだったりオーケストラだったり、他人のゲストだったり。だから音楽がどう作用するかとかについての共通認識があるんだ。他人とのコミュニケーションを通じてピッチとかを決めていく。だからコンピューターを使っていても人間的なマインドセットで作業しているんじゃないかな。
あと、ライブを想定しながら曲を作っているというのも大きいと思う。バンドとしての僕たちにとってとても重要な部分だから。不思議なもので、バンドを始めたときは、これがライブ・プロジェクトになるなんて思ってもみなかったんだけどね。ステージでやる日なんて来ないと思っていたんだ。プレイするからには自分たちの指や声を使ってやりたいと思っているよ。ライヴで他人とプレイしていると、特定のグルーヴにロックオンされるときの感触とかがわかるからね。その理解をもってコンピューターに向かっているんだ。そういう経験がない状態で臨むのとは違うと思うよ。
―みなさんのライブを日本で再び観られるのを楽しみにしています。
一同:ありがとう、僕たちも是非また日本に行きたいと思っているよ!
PREP
『The Programme』
発売中
再生・購入:https://ffm.to/TheProgramme
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