カサビアン圧巻の来日公演を総括 サービス精神旺盛な「20年選手」の底力
Rolling Stone Japan / 2024年10月8日 17時45分
デビュー・アルバム『Kasabian』をリリースしてから20年という節目を迎えたカサビアン(KASABIAN)。新作『Happenings』が全英アルバム・チャートで1位を記録し、2ndアルバム『Empire』(2006年)から7作連続No.1という偉業を成し遂げたタイミングで、実に12年ぶりの単独来日公演が実現した。初日の10月7日、Zepp Hanedaでのライブレポートをお届けしよう。
※以下、セットリストのネタバレあり
【写真ギャラリー】カサビアン東京公演初日ライブ写真(全12点)
開演予定時刻の19時より数分早く客電が落ち、ノイ!の「Hallogallo」が流れる中メンバーが入場。電話のベルを合図に『Happenings』から「Call」が披露されるや、悲鳴にも似た歓声が上がった。2022年のソニックマニアと同様に、サージ・ピッツォーノはギターを持たずに登場。ラッパーを思わせる身振りでステージ上を闊歩しながら歌うスタイルも、前回よりずっと様になってきて軽やかに見える。
続いて、ソニックマニアで1曲目だった「Club Foot」を投下。ハンドマイクで歌うサージの堂々たるアクションがバンドのグルーヴとぴったり噛み合い、早くも序盤から壮絶な盛り上がりを見せる。久しぶりに生で体験したリズム隊の威力は衰えなど微塵も感じさせず、やはりこの強靭なグルーヴこそがカサビアン・サウンドの柱なのだなと改めて痛感させられた。その熱が冷めないうちに、曲は「Ill Ray (The King)」へと突入。サージは「バウンス! バウンス!」と煽り続けてオーディエンスを休ませない。
Photo by Masashi Yukimoto
Photo by Masashi Yukimoto
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そろそろギターを弾くサージも見たい……と思ったところで、彼が最近愛用しているグリーンのリッケンバッカーが「Underdog」から登場。電撃的なイントロのリフは、やはりサージの見せ場だ。ティム・カーター、そしてサポートを続けているザ・ミュージックのロブ・ハーヴェイとトリプルギターで重厚に迫る。ティムが弾くテルミン、イアン・マシューズのドラムロールが交錯し、クリス・エドワーズのベースが唸りを上げる後半の展開は圧巻だった。
前作『The Alchemist's Euphoria』(2022年)から演奏したのは「Chemicals」のみだったが、アルバムバージョンよりずっと骨太で疾走感にも磨きがかかり、曲が育っていることを如実に感じさせる大熱演。バンド内で存在感を増してきたティムのギターソロも、なかなか聞かせる。そこから矢継ぎ早に「Shoot The Runner」へと続け、暴れたいオーディエンスを存分にジャンプさせる流れは鮮やか。思えば2000年代半ば、こんな風にゲイリー・グリッターお得意のビートパターンを増強、再提示したバンドは彼らだけだった。
「何だってやる」を有言実行
驚いたのは「Youre In Love With A Psycho」から始まるメドレー。間にテイ・トウワが在籍していたディー・ライトの名曲「Groove Is In The Heart」(1990年)を挟み、新作一メロウなロック・チューン「Coming Back To Me Good」へとつなぐ構成は、DJプレイさながらの鮮やかさだった。新作からもう1曲披露した「Italian Horror」では、キャッチーなコーラスでたちまちシンガロングを巻き起こす。この圧倒的なわかりやすさ、歌いながら体を揺らしたくなる気持ちよさは、前作から育んできた”今のカサビアン”を象徴する個性だ。
次の「treat」で冒頭に鳴り響いたのは、何とビースティ・ボーイズ「Intergalactic」(1998年)のイントロ! 絶妙なはまり具合にクラクラしていると、続けて演り出したのはプロディジーの「Breathe」(1996年)で、先ほどのディー・ライトに続いて90sクラブヒットをちりばめてくる。サージが自分と同年代のファンを想定して、泣かせにかかっているとしか思えない作戦だ。そして「Vlad The Impaler」「Empire」とフロアバンガーを連打後、またしても90sでファットボーイ・スリム「Praise You」(1998年)をチラッと演ってから、「L.S.F.」に突入して本編終了。ここまでやられて盛り上がらないわけがない。
Photo by Masashi Yukimoto
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アンコールで1stアルバムからこの日3曲目となる「Reason Is Treason」をやってくれたのは、20周年を意識したプレゼントだったかも。ノイ!を思わせるビートが、一周してオープニングのBGM「Hallogallo」に戻ったような気分を味わせてくれる点も心憎い。本編で見せた90sへのラブレターみたいな演出に対し、アンコール2曲目の「Bless The Acid House」は伏線を一気に回収するかのような爽快感があった。この曲は特にそうだが、ロブ・ハーヴェイのバックボーカルが前回の来日時以上に利いていたのも、うれしい収穫だ。
ラストの「Fire」まで正味75分ほどのショーは、一切無駄がなく、ほぼ完璧と言っていい流れ。サージの手からビームを発射する演出まであってサービス精神旺盛だ。7月に行なったインタビューでサージが「お客さんが思わず立ち上がって、ぶっ飛ぶくらい思い切り楽しんでもらうためには何だってやる」と言っていた通り、彼は徹底的にやり抜く有言実行の男であった。他にも聴きたい曲は山ほどあるが、観客の反応次第で2日目以降は構成に変化が出てくるかも。バンドとして最高の状態を迎えている20年選手の底力を、細部まで存分に味わって欲しい。
Photo by Masashi Yukimoto
カサビアン来日公演
2024年10⽉7⽇(⽉)・8日(火)
東京・Zepp Haneda
2024年10⽉10⽇(木)
大阪・Zepp Bayside
公演詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/kasabian_2024/
カサビアン
『Happenings』
発売中
初回仕様限定ステッカーシート封入
ボーナストラック1曲収録
歌詞・対訳・解説付き
再生:購入:https://kasabian.lnk.to/JPHappeningsRS
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