Ken Yokoyamaが語る、90年代パンクの原風景「ライフスタイルの変化が鍵だった」
Rolling Stone Japan / 2024年10月17日 17時0分
Ken Yokoyamaが初のパンクカバーアルバム『The Golden Age Of Punk Rock』をリリースする。横山健は90年代からカバーの名手として世界中から高い評価を受けていたが、今作はタイトルにあるように、パンクロックの黄金期――90年代の楽曲を中心にセレクトされた楽曲を、原曲のよさを損なわぬようにストレートにカバーしている。
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今回は、なぜこの曲が選ばれ、なぜこの曲やバンドは選ばれなかったのかという、多くのパンクリスナーが興味を持っているであろうポイントを中心に話を聞いた。そのほかにも、新たなパンクムーブメントの当事者として90年代を全力で駆け抜けた彼独自の視点から語られる、貴重なエピソードの数々を楽しんでもらえたらうれしい。
―一時期、パンクバンドがカバーアルバムをこぞって出していたことがありましたけど、だいたいがポップスだったり、ちょっと変化球気味な選曲が多くて、ストレートなパンクカバーのアルバムって意外とないんだなと思ったんです。
だって、原曲どおりにやるのって本当は意味のないことだからさ。バンドにとっては全然パンクじゃない曲をパンクアップしてアルバムに収録する、とかならオリジナル曲と近いものになるし、実際それがメインの手法なんだけど、今回俺たちがやったようなことってオリジナルアルバムに1曲入れてもあんまり意味のないことでさ。だから、やりづらいはやりづらいのよ。それをやる意味が見出せないというか。
―でも、今回は出せた。
うん。でもね、それをやるためには圧倒的な曲数が必要だった。2、3曲だと意味は見出せないけど、16曲にして1枚のアルバムにすることで大きな意味が出たって言えるんじゃないかな。
―でも、なんでこのタイミングだったんですか。もっと前でもよかったんじゃないかって。
確かに。(今作に封入されている)ライナーノーツにも書いたけど、具体的な引き金はTHE STAR CLUB『GOD SAVES THE PUNK ROCK』の存在を突然思い出したからなのよ。当時、あのアルバムはすごく目に留まったというか、存在感がよかったんだよな。
―純粋にそれが理由なんですね。
だから、思い出すのが5年早かったら5年前につくってたかもね……いや、でも、他にもいろんなタイミングとかいろんな辻褄が合ったからこそ今なんだろうな。
―俯瞰できるようになったとか?
うん、俯瞰できるようにはなったよ、年々。こういったタイプの音楽って、言葉で言ったらもう死語みたいなもんで、今は誰も聴いてないし、口にするのすらちょっと恥ずかしいみたいなところがあると思うんだわ。でも、俺はこの時代にどっぷりで、未だにこのアルバムに収録されてる時代の曲を毎日聴いてるわけよ。だけど、世の中がそうじゃないとなるとそれを紹介したい気持ちにもなるよね。もしかしたらまだこういう音楽を知らなくて、もし聴いてもらえたならそのうちの何人かはカッコいいって思ってくれたりするんじゃないかなと。
―だからこそ、これだけの時間が必要だったと。ライブにも若いお客さんが増えてるし、そういう顔を見ると、もしかしたら響くんじゃないかって。
そうね。だから、90sパンクが地に落ちるのを待ってたのかな(笑)。
―でも、横山さんたちぐらいのキャリアになると、ある程度絞らないと選曲面で大変ですよね。
そうね。でもね、今回まだやりたい曲あったんだよ。
― それはそうでしょうね。だから、今作から漏れたバンドも興味深くて。最後までやるか迷った曲はあります?
あるよ、オフスプリングがやりたかった。でもね、キーが高すぎて、トライしたんだけどできなかったのよ。あと、ストラング・アウトもやりたかったし、グッド・リダンスもやりたかったし……いっぱいあるよ。
―テン・フット・ポールとかプロパガンディとか。
そうね、プロパガンディもアイデア出たなあ。
―レザーフェイスがいないのが意外でした。
でもね、レザーフェイスは90sパンクって感じではないから。
―でも、そうじゃない曲は今作に入ってますよね?
89年とか2002年のものは入ってるけど、イメージ的に90sパンクかなっていう曲だからさ。
―ああ、独自の枠組みがあるんですね。
そうそう。そこは主観でしかないんだけれども。たとえば、「Too Late」は89年の曲でさ、「International You Day」は2002年の曲なのよ。でも、その辺だったらいいでしょうっていう判断。
―レザーフェイスってそんなに古いんですか?
スナッフよりもちょい前だから、80sの香りがすんのかな。
―スナッフと同じぐらいに存在を知ったから、てっきり同じ時期なのかと思ってました。
確かに。ほかにも何人かからなんでレザーフェイスを入れなかったのかって言われたよ。やりゃよかったかなって思う。Vol. 2つくるか(笑)。バンド内で意見が割れた曲もあったし。
―あったでしょうね。絶対ストレートに決まらなそう。
でもね、そこは聴く人を意識して、そのバンドのとっかかりになれるような曲をピックアップしたつもり。
―確かに、今作の収録曲をApple Musicで見てみたら、全部「トップソング」の1位か2位でした。
あ、本当?
―そう。個人的には「21st Digital Boy」が選ばれてるのが意外で、「いや、大好きだけども!」と思いながらApple Musicを見たら2位で。
マジで!? ちなみに、1位はなんだった?
―「American Jesus」。
ああ、そっか! それがあった! じゃあ、ALLはどうだった?
―「Crazy?」が1位ですよ。
マジで!? 本当!? へぇ~!
―だから、ライナーノーツで横山さんが書いてたテンションと世の中はちょっと違うんですよ。
そうなんだ。ALLは隠れた名曲をピックアップしたつもりだったんだけど……そうなんだ。すげえ。
ゲット・アップ・キッズとの対バン秘話
― 実際にカバーしてみて意外な発見があった曲はありますか。
どの曲にもあったな。やっぱ、聴いてるのと自分たちで鳴らすのとで全然違うっていうかね。レコーディングも難しかった。
―一番難しかったのは?
演奏面ですごくハードルが高かったのはサタニック・サーファーズ。複雑でさ。あと、スーサイド・マシーンも難しかったかな。(ゲット・アップ・キッズの)「Holiday」も難しかった。あの曲は原曲の音数がすごく多いのよ。それを4人でうまくまとめるのがけっこう難しかった。どれも意外な難しさがあったな。例えば、フェイス・トゥー・フェイスもすごくストレートな曲じゃない? でも、ストレートな曲をカッコよくやるのってすごく難しかったりすんの。俺たちのオリジナルだったら「ここでテンポを変えよう」とか、「展開を作ろう」とかあったと思うんだけど、これはずっと3コードのパンクロックだから、そのカッコよさをちゃんと収めるのは難しかったね。
― ゲット・アップ・キッズ「Holiday」はストレートな選曲で嬉しかったです。この曲が収録されているアルバム『Something to Write Home About』が1999年秋にリリースされてから、翌年2月に渋谷クアトロでハイスタが対バンするに至るまでの盛り上がりとか熱気を思い出しましたよ。
そう、ゲットアップは当時盛り上がったよね。あの日のライブもみんな観たがってたもんね。
―異常な熱気だったことを覚えてます。
俺、自分のライブはあんま覚えてないけど、俺のリクエストを1曲やってくれたのは覚えてんだよな。
―何をリクエストしたんですか。
「My Apology」。初日のセットリストに入ってなかったのよ。だから、俺たちが一緒にやった2日目にリクエストしたらやってくれたんだよね。「Kenのリクエスト」つって。
―客層もちょっと違いましたよね。当時のパンクのお客さんではなかった。
そうね。エモが出始めた頃だからちょっと毛色の違う人はいたかもね。そう言われてみれば、時代が変わっていく感じはあったかも。
―だから、そういう記憶も横山さんの中にあってのストレートなチョイスなんだなと。
そうだね、(1stアルバム『Four Minute Mile』収録の)「Dont Hate Me」じゃないんだよ。ここはもう、「Holiday」でいくっきゃないっしょって気持ちだった。その前に、ゲット・アップ・キッズは90sパンクに入るのか入んないのかっていう議論がバンド的にはあったな。JunちゃんとMinamiちゃんは消極的だったけど、EKKUNは世代じゃない? だから「やりたい!」って。
―確かに、今作で最も「この選曲はどうなんだろう?」ってなるラインはここですよね。
そうなんだよね。あとはブリンク(182)。ブリンクは90sパンクなんだけど、やるかやらないかっていう視点で言うとね。やっぱり、みんなはブリンクっていうとものすごく売れてからの印象が強いと思うけど、俺からすると一緒にツアーした96年のイメージなのよ。知り合ったときは普通に90sパンクの一員でさ、先輩のテン・フット・ポールに気に入られようと一生懸命になってた。なんかそれが未だに忘れらんなくて。あと、彼らはハイスタより下の世代のバンドに与えた影響がすごく大きかったからピックアップしたんだよな。
―パンクの歴史における重要性もセレクトに影響を与えていたんですね。でも、根っこにあるのは……。
自分やMinamiちゃんとそのバンドの関わりかな。
―そこのすり合わせは難しかったんじゃないですか。横山さんとMinamiさんでは見ていた景色が違うじゃないですか。
でも、メインは俺が考えて、あとは俺がMinamiちゃんにこういうのはどうか、とかMinamiちゃんはあの時どうだったか、とかそういった話をしながら決めてった。「基本、KENさんがやりたいのでいいんじゃない?」って言われてたんだけど、俺がやりたかったヴァンダルズの曲は一度やってみて「違うね」ってなったな(笑)。ペニーワイズはやってみたけどシックリ来なかった。
―ああ、入ってないなとは思いました。
あのスピード感とかタイム感ってペニーワイズならではのものでさ、カバーしてもカッコよくなかったんだよな、やりたかったんだけどね。俺、未だにペニーワイズのTシャツ着てるもん。あのバンドが出てきたときはセンセーショナルだったもんな。
―入ってないバンドでいうと、一番気になるのはグリーン・デイですよ。なんで入ってないんですか。
議題にはあがったよ。みんなも実はやりたかったと思うの。ただ、俺はこのメンツの中にグリーン・デイを入れると作品自体がちょっとぼやけるなと思って。
―それはどういう意味で?
なんだろうね……? あの人らは違ったタイプなんだよね。90sパンクではないんだよ。オフスプリングはアリだったけど、グリーン・デイはナシだったんだよな。90年代に初めて一緒にツアーした頃にはもう、あの人たちはパンクを見限ってたんだろうな。
―そうだったんですか?
うん、当時、「Basket Case」とかで売れてさ、ギルマン(サンフランシスコにある、パンクロックの聖地とも言われるライブハウス924Gilman street)を出入り禁止になってさ。それでちょうど「ギルマンなんかには戻らねえ」っていう曲を歌ってた頃に一緒にツアーをしてたんだよ。
―一緒にツアーをしたり、近いところにはいたものの、今作のコンセプトからはちょっと外れていたんですね。このラインナップって当事者の横山さんにとっては憧れの90年代ではないじゃないですか。
ああ、そうだね。
―今回こうやって作品をつくってみて、横山さん自身も90年代パンクの歴史を作った1人なんだということを改めて考えたりしましたか。
うん、考えたよ。だって、友達のバンドが多いし、俺らも同じ時代に同じようなサウンドで同じような活動してたわけで。でも、こうやって彼らの曲をプレイすると「すげえな」って。豊かな音楽だなと思った。パンクっていうと速いものを想像する人が多いだろうけど、実際はその中にいろんな要素が入ってるんだよ。90sパンクっていい音楽だなって改めて思いながらやってたかな。
―時代の当事者から見て、この時代のパンクってどういうものだったと思いますか。
70年代から80年代にかけてオリジナルパンクっていうものが出てきたじゃない? そのときはファッションのほうが強かったのよ。なぜかというと、当時のバンドにはそんなに演奏技術も作曲技術もなかったから。ただし、それだけでは片付けられないようなものすごい衝動と魅力があって、それで一大シーンを築いたわけ。それが過激化したのがハードコアパンクと言われるもので、オリジナルパンクからスピードアップして。バンドごとに違う主張があって衝突することもあったと思うんだけど、初期パンクのシーンとハードコアパンクのシーンっていうは地続きで、ものすごく強烈だったと思うんだよ。
―なるほど。
で、90年代のパンクっていうのは突然変異でさ、この時代の人たちは初期パンクもハードコアパンクもものすごく好きなんだよ。だけど、ライフスタイルが圧倒的に違うんだよね。てことは、格好とか主張も違うわけで、それが90sパンクのキーだと思うんだよ。
当事者として体感した90'sムーブメント
―当時、初期パンクからの流れなんかを知らずに聴いてた自分のような人間としては、90年代って新しく台頭してくるバンド、次々とリリースされるアルバムがことごとくカッコよくて、それを当たり前のように享受していたんですけど、オリジナリティ溢れるカッコいいバンドや名曲があそこまでたくさん同時発生的に生まれたのはなんでだと思いますか。
なんでだろうね。このムーブメントは本当に全世界的だったからね。俺らが91年にHi-STANDARDをはじめたときはバッド・レリジョンのこともNOFXのことも知らなくてさ、知ってたのはスナッフだけ。そんな中、誰から教わったわけでもなく、ほかのバンドと似たような音を出してたわけじゃない? それはもう、説明つかないよね。そういう時期だったんだって言うしかない。さっき、初期パンクとはライフスタイルが違うって話をしたじゃない? でも、俺たちはパンクマインドは持った上で、スラッシュメタルもポップなメタルもスカもラテンもブルースも何もかも詰め込んで、それを速いビートでコーティングしたのが90sパンクだと思うのよ。そういうアイデアを持った奴らが世界中に散らばってたってことは必然だったと思うんだよね。さっき話したように、オリジナルパンクの人たちには技術はないし、作曲能力もそんなに高くない。そこで、パンクマインドを引き継いだ「俺だったらこういうサウンドを出すよ」っていう子どもたちが、80年代後半から90年代にかけて世界中にいたっていうことだと思うんだよね。
―70年代からの流れがあったからこそ。
そうそう。90sパンクの人間は初期パンクやハードコアの人たちからは否定されるけど、俺たちは初期パンクもハードコアも好きだったからね。ただ、彼らの出したサウンドに感銘を受けてはいたけど、同じことをやってもなっていうことは感じてたんだよ。
―カウンターを打ちたかったわけではないと。
そう、敢えて逆張りではなかった。自分がやるならこうだよなっていうものを自然と出したんだよ。俺が好きなものはパンクロックだけじゃないしなって。話は飛んじゃうけど、俺、実はそれと同じことをのちにもう一度体験してるんだよね。
―それはいつですか?
2000年代に入ってから、俺も含めてみんながアコースティックに走ったんだよ。ラグワゴンのジョーイとかさ、 ノーユース(・フォー・ア・ネーム)のトニーとか、スナッフのダンカンとか。これで人数がもっと多くなって音源の数も増えたらひとつのムーブメントになるよなって思ってたの。
―それはエモからの影響もあるんですかね。ダッシュボード・コンフェッショナルとか。
ああ、なくはないね。ニュー・アムステルダムズとか。で、パンクマインドをもってアコースティックを鳴らせるってことに俺ら世代は気づいて、同時期にみんなそっちに走っていったわけ。あれは興味深かったよ。
―話を戻します。俺は90年代にアメリカに住んでたんですけど、思い返してみると、当時はMTVの力も大きかったのかなと。人気のあるパンクバンドが新曲を出せばすぐにBUZZ CLIP(ヘヴィ・ローテーション)になってましたから。
その流れを作ったのはオフスプリングだよね。だから、(オフスプリングが所属していたレーベル)エピタフの力がデカいんだよ。これは音楽史の話になっちゃうけど、その伏線として考えられるのはニルヴァーナとガンズ・アンド・ローゼスなんだよね。ガンズがMTVですごくヒットして、「第2のガンズを探せ!」つって白羽の矢が立ったのがニルヴァーナだったんだよ。
―そうだったんですね。
で、その恩恵を受けたことで、オフスプリングも世に出やすかったんだと思う。もちろん、細かく言うと全然同じタイプの音楽ではないけどさ、普通の人からしたら「次の激しい音楽」だったわけで。
―この作品をきっかけに、 今のおじさんおばさんにも胸を張って当時のパンクの話をしてもらいたいですね。
そうだね。これをつくってるときはわかんなかったけど、ひとつのパッケージになったことでそういう発見はあったかな。「こういうのが好きだったんだよ!」って胸を張ってもらえるっていうか……張れないかもしれないけど。
―いや、張れますよ。
本当? だって今さ、メロディックパンクとか笑いものなんじゃないの?
―こう言っちゃアレですけど、もはや笑われる対象にもなってないんじゃないですか?
確かに! 知ってすらいないのか。じゃあ、胸張ってもらおうか(笑)。
―昔話をすると若い人たちから煙たがられがちですけど、そんなの関係なく。
なんで今の人たちって昔の人たちのそういう話を聞かないんだろう。
―どうしてですかね。語ってる人の態度に問題があるのかもしれない、わかんないですけど。
確かに、俺が若いときから昔話するおっちゃんは煙たかったからな。でも、こういう音楽があったんだよっていうことを後世に伝えていくためには、おじさん、おばさんが若い子にどう話すかっていうのが大事な気がする。昔と今では言葉の伝え方も違うしさ、世代によって感受性も違うわけで。俺はこういう音楽を知ってもらいたいと思ってつくったんだけどさ、どうやったら若い子らに知ってもらえるんだろう……無理なのかな?(笑)。
―いや、でも、横山さんがMステに出たのを見たところからサバシスター結成へとつながったように、この作品をキャッチする若いリスナーがゼロなわけではないと思いますよ。
まあね。そりゃそうだ。これから音楽を鳴らそうっていう若い子たちの感覚に触れてくれればいいんだな、どういう形であれ。
―自分たちの曲がカバーされる側になったとしたらどうですか。素直に受け止められます?
それはわかんないな……わかんないわ。どこを軸にしてどう捉えられるかによるかな。たとえば、今回のアルバムはすごく時代性を重視しるし、パンクに限定しているつもりなんだけどさ、自分がカバーされるとして、自分が思ってるのと違うくくりに入れられたら違和感あるかもね。でも、つくる人の主観があるからそれは全然しょうがないんだけどさ……いや、でも、どう思うかわかんないな。昔からそうなんだけど、自分が人を好きになったり、その人の行為が眩しく見えたりするのはいいんだけど、逆に自分がその立場になるとちょっと理解が追いつかないというか…… わかんないんだよね。
―そこに対して客観的になるにはもう少し時間がかかるかもしれないですね。
でも、この秋で55だぜ?(笑)。まあ、言ってみりゃ、自分が(甲本)ヒロトさんとかマーシーさんのことが好きで追っかけるのはいいんだけどさ、自分がされたらやだなっていう感じだな。
Ken Yokoyama:左から南英紀(Gt)、Jun Gray(Ba)、松本”EKKUN”英二(Dr)、横山健(Gt&Vo)
ステージ上で「必死」になる理由
―さて、前作『Indian Burn』のリリース後、どうですか。
『Indian Burn』、すごくいいアルバムができたと思ってさ。新作リリース時のツアーで新作の曲をこんな大々的にセットリストに置くことなんてこれまでなかったでしょ?っていうようなツアーをしたの。それがすごく楽しくて。
―ライブを観て、新作からの曲がめちゃめちゃ浸透してることにびっくりしました。
それは自信を持ってライブでやってるからだと思うよ。やっぱり、ライブでやらないと曲は浸透していかないから。ライブでやるってことはバンドが胸を張って紹介できてるってことだと俺は思うんだよね。
―ライブの変化は感じます?
少しずつお客さんが入れ替わってるのは感じるし、少し若い子が増えたかな……でも、男女比は変わんない。
―そんな、残念そうに(笑)。
本っ当に見事に7、8割男性だからね。
―2、3割いるなら十分じゃないですか。
……(憮然とした表情)。でもね、ライブやってて感じるのは、同性に支持されるっていうのはものすごいことだと思うんだよ。俺はそういう光景を見るとすごく嬉しくなるのね。だって、いい年こいたおっちゃんがさ……まあ若いのもいるけどさ、ステージを見ながら泣いたりしてんだよ? 俺、こいつの人生に何を与えてんだろうとかさ、俺の中に何を見てんだろうとか思うとすげえ熱い気分になるんだよ……でもさ、ステージ降りるとすぐに冷めるんだよね。「女の子がいい」って思う(笑)。
―あっはっはっはっ! 4月にあった立川ステージガーデンでのライブ後にも楽屋で言いましたけど、横山さんとKen Yokoyamaは今が一番カッコいいってマジで思いますよ。しかも、今後さらにカッコよくなる可能性すら感じます。
……女の子、増えるかな?
―それは知らないですけど(笑)、ライブ後の横山さんって本当に燃え尽きてるじゃないですか。
そうなんだよね。
―その姿を見て、ライブを観ながら感じていた、必死という言葉では足りないぐらいの切実さは本物だったんだなって。今日が最後のライブになっても後悔しないってぐらいの姿勢で臨んでるのがバシバシ伝わってきて、そこに心を揺さぶられるんですよね。
いや、俺もなんでこんなに必死になんだろうって思うよ。でも、理由はわかんないんだよね。ステージでもよく言ってるけど、いつまでやれるか本当にわかんないからさ、焦りって言葉じゃないんだけど、何かこう、ステージとか空間とか時間を惜しむような気持ちがあるんだろうな。
―しかも、ただ必死にライブをしてるだけじゃなくて、当日に開催を発表した「突然GIG」をやったり、フェスのセットリストから敢えて定番曲を外してみたり、自分の中で楽しみを見出してもいて。
そうね、考えてみりゃ今年は頑固おやじ発揮してるよね。でも、自分が今までやってこなかったこととか、やりたくても怖くて誰もできないことに手ぇ出してみたいんだよね。自分も刺激受けたいしさ。
―最後に聞きたいんですけど、横山さんのこれまでのキャリアは決して順風満帆だったわけではないと思うんです。とんでもない成功もたくさんあったけど、失敗もしっかりしていて。だけど今、「今の横山さんが一番カッコいい」と少なくとも俺に思わせることができてるのはなんでだと思いますか。
なんでだろうな……。(長考したあと)前よりも素直になったな。前はさ、どうしても表現があまのじゃくでさ、怒るしかなかったんだよ。最近はあんまり怒らなくなったから伝わりやすいんじゃないのかな。
―でもそれは、「丸くなった」というのとも違いますよね。
そうね……あと、ひとつ思うのはさ、いま言ってくれたように、こういう音楽が好きな人はみんな、俺がどういう道を歩んできたか大体知ってくれてるじゃない? ハイスタでもいろいろあったし、いろんなことと戦って、いろんな発言をして。そういうのって積み重ねだし、なんつうのかな……キャリアの賜物だと思うんだよね。そういうものに男はグッときちゃうよね。人が戦ってる様とか戦ってきた道のりとかさ。男が男にグッとくるのってそういうところじゃん。いまだに悩んでいろいろと戦ってるけどさ、気分はいいんだよね。
―うんうん。
あとは麻雀で勝てれば言うことなし。昨日、バカ負けしてさ!(笑)。
『The Golden Age Of Punk Rock』
Ken Yokoyama
PIZZA OF DEATH
発売中
https://kenyokoyama.lnk.to/StickinInMyEye
1. Soothing
Originally performed by Satanic Surfers
2. Its A Fact
Originally performed by The Vandals
3. Stickin In My Eye
Originally performed by NOFX
4. Too Late
Originally performed by Snuff
5. International You Day
Originally performed by No Use For A Name
6. Im The One
Originally performed by DESCENDENTS
7. All My Best Friends Are Metalheads
Originally performed by Less Than Jake
8. Youve Done Nothing
Originally performed by Face To Face
9. Time To Grow Up
Originally performed by Bodyjar
10. Roots Radical
Originally performed by RANCID
11. Crazy
Originally performed by ALL
12. All The Small Things
Originally performed by blink-182
13. Break The Glass
Originally performed by The Suicide Machines
14. 21st Century Digital Boy
Originally performed by Bad Religion
15. Holiday
Originally performed by The Get Up Kids
16. May16
Originally performed by Lagwagon
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