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XGにアメリカが大熱狂 北米公演で7人が見せた奇跡、音楽愛、揺るぎないメッセージ

Rolling Stone Japan / 2024年10月25日 17時30分

2024年10月8日、サンフランシスコのBill Graham Civic Auditoriumにて撮影

XGの快進撃は止まらない。現在開催中のワールドツアー「The first HOWL」で全8都市を回る北米公演は連日大盛況。10月8日のサンフランシスコ公演を目撃した竹田ダニエルの現地レポートをお届けする。

【写真ギャラリー】XG「The first HOWL」北米公演ライブ写真(記事未掲載カットあり)

アメリカでも揺るぎないXGの「強さ」

待ちに待った、XGのサンフランシスコ公演。昨年、Forbes JAPANで彼女たちにとっての初となる雑誌表紙の取材を行った時に語ってくれた「世界ツアーをするという夢」をまさに実現する瞬間を、目撃することができたのだ。今回ライブが行われたBill Graham Civic Auditoriumでは私自身、過去にはThe 1975やアークティック・モンキーズなど、大スターたちのライブを観たことがある。最大で8500人を収容することができ、ベイエリアの屋内ライブ会場では最大規模のものだ。

会場の外に並んでいる段階で、客層の多様性に気づく。人種、年齢、性別など、アメリカ国内で最も多様な街であるサンフランシスコにおいても、なかなかここまで自由度の高い客層は見かけない。ストリートスタイル風、WOKE UPの衣装のコスプレ、普段着など、XGの音楽を普段から聴いている人たちのバックグラウンドの幅広さが服装から伺えた。開演前には古き良きR&Bの名曲が流れ、中でもベイエリア出身であるキーシャ・コールの「Love」が流れたときには大合唱が巻き起こった。


2024年10月5日、ラスベガスのThe Theater at Virgin Hotelsにて撮影


2024年10月6日、LAのPeacock Theaterにて撮影

「WOKE UP」のリミックスが流れ大歓声が起こり、会場のボルテージが上がったところで、「Time to Say Goodbye」が流れ始め、会場には緊張感が走った。地球の映像がステージに映し出され、「音楽は世界を繋げる」「宇宙を走り抜ける」というXGのミッションを連想させる。目を光らせた狼たちの映像と共に地響きのような音が鳴ったところで、ロックアレンジの「SHOOTING STAR」でショーの幕が開ける。登場した瞬間から、XGは「強さ」に揺るぎがない。大きなサングラスで顔の約半分が隠れていても、それぞれから溢れ出るカリスマ性と個性は、海外でのツアーを経て何倍にも増したなと、ライブを見るのが3回目の私でも強く実感した。メンバー一人ずつにスポットが当たり、そのたびに地球が割れそうなほどの歓声が沸き起こる。いかに彼女たちの登場をファンたちが待ち侘びていたのかが「音」という形でひしひしと伝わる瞬間だ。

曲間ごとにALPHAZによる狼の鳴き声や歓声が上がり、鳴り止まないままどんどん次の曲へと進んでいく。「強さ」のテーマを拡張すべく、重いビートに乗せたダンスブレイクが始まる。メンバーのダンスの実力、そしてまるで「一つの生命体」として繋がっているかのような動作の連動で観客を盛り上げ、同時に圧倒させる。のちに待ち受ける「歌とラップのパフォーマンス」を裏付けるかのように、ここで一つの「前提」が見せつけられる。


2024年10月8日、サンフランシスコのBill Graham Civic Auditoriumにて撮影

「強さ」がテーマのXGの曲といえば、「GRL GVNG」。ラップパートでは観客も一緒にラップをし、会場全体が「無敵のチーム」であるかのようなムードが醸成される。そしてこの曲がリリースされたとき、「宇宙人のような、最強のガールズ集団」というコンセプトが一気に腑に落ちたことを思い出す。そこから休む間もなく、「WOKE UP」へとスムーズに転換する。ヘヴィなビートと個性的なラップ/ボーカルスキルに焦点を当てる歌割りによって、それぞれのメンバーがソロを取るたびにALPHAZの叫び声が上がる。ハードなラップとキレの強いダンスを軽快にこなすバランス感覚が、まさに「地球外生命隊」のような不思議さを醸し出す。特にラストに向けて、まるで分子レベルでプログラミングされているかのような寸分の狂いのない動きと、動きの大きいダンスに圧倒されたまま、デビュー曲「Tippy Toes」のアイコニックなイントロが始まる。デビュー時のMVやダンプラ動画では若さやスタイリッシュさが印象的だったが、本会場では成熟した妖艶さとミステリアスさ、説得力、とまるで7人で世界を征服しにきたかのようなするような勢いで会場がどよめく。最大の見せ場である、ビートドロップ後のウィスパーの部分では大歓声が上がり、デビュー当時の彼女たちと今まさに世界ツアーでアメリカの観客を沸かせている彼女たちを脳内で並べて感慨深さに浸ってしまう。

リアルな人生の物語、長い道のりの記録

ここまでの流れが、「強さのXG」のストーリー展開だ。まるで鎧のように確固たるスキルと自身みなぎるアティチュードで会場を制覇した段階で、さらにここからは「リアルなXG」の物語が繰り広げられる。近未来的な映像が流れ、「SHOOTING STAR」のMVやオーディションや育成の時の映像、そしてメンバーの覚悟の言葉やXGALXのCEO / Executive ProducerでもあるJAKOPS(SIMON)氏の音楽を届ける想いなどが映像で流れる。7人それぞれのXGALXの出会いがまるで宇宙人による誘拐資料のように映し出され、それぞれの名前が登場するたびに愛と尊敬が詰まった歓声が上がる。

ここでSIMON氏がステージに立ち、いったん静まった中で両腕を掲げ、ステージの空気を支配する彼にスポットが当たる。ALPHAZの中で名物となっている「PDタイム」のはじまりだ。ジャズやR&Bなど、彼とメンバーにとって音楽的ルーツである楽曲に踊り、2000年代R&Bの名曲であるMarioの「Let Me Love You」が流れると、シンガロングが発生。日本で見たステージでは固定的な位置で楽曲をプレイして盛り上げていたSIMON氏も、サンフランシスコ公演では「September」に合わせてステージ上で踊ったりと観客を盛り上げ、背後にはメンバーたちの過去の幼い映像がノスタルジックに流れる。これはまさに「XGの人生」が映し出されているのであり、彼女たちを選び、アーティストとして育ててきたSIMON氏によるオーディエンスへのプレゼンテーションでもあるのだ。このステージに至るまでたくさんの苦しみや悲しみ、喜びや驚きがあって、彼女たちを応援し続けるALPHAZとともに何回りも大きく成長してきた。ここであえて「素のXG」を見せることは、XGというプロジェクト全体が背負っている覚悟を垣間見ることにもなる。


2024年10月18日、NYのマディソン・スクエア・ガーデンにて撮影

アレサ・フランクリンの「One Step Ahead」、そしてそれをサンプリングしたJIDの「Surround Sound」のトラックが流れ、着物とパールの衣装をまとい顔全体にスタッズが施されたようなメイクのビジュアルのCOCONAが登場する。そのユニークなルックス、そして唯一無二のスキルがいかにアメリカのALPHAZを虜にしているのかーーつまり、「アジア系女性としての革命」を起こしているのか、彼女が登場するたびに沸き起こる大きな歓声を聞けばわかるだろう。ラップラインそれぞれまったく系統が違いながらも、神話の女神のようなに、一人ずつ大きなステージを支配していく。続いてエネルギーと若いカリスマ性溢れるMAYAが元気に会場を楽しませ、アメリカンなノリでバウンスを煽る。次に、普段のシャイさを一切感じさせないDIVAのアティチュードと大きな羽を纏ったHARVEYが登場。独特な声と宇宙人のような佇まいとともに、曲ごとにクルクルと変わる表情の豊かさが印象的だ。ラップ陣ラストは、まるで漫画か宝塚から飛び出してきたかのように、バラを一輪持ったJURINが優雅にステージを舞い、セクシーかつクールなその風格で会場を狂わせる。”I know you can go louder !!”と観客を煽りながら、四人で「Trampoline」を踊りながら披露し、会場はまるでダンスパーティーのように揺れる。

次にボーカルラインのドキュメンタリー映像が流れ、まだ発声が不安定だったり歌に自信のないメンバーたちの姿が初々しく映る。歌への執念とこだわり、SIMON氏の練習への熱心さ、発音や発声へのこだわりと長い訓練の道のりの記録だ。「理想の人になるために課題に取り組みたい」という10代の頃のメンバーの言葉や、「いっぱいいい音楽があるから好きなのを見つけて欲しい」というSIMON氏の言葉は、音楽を愛する人だからこそ生まれる覚悟と優しさなのではないだろうか。


2024年10月5日、ラスベガスのThe Theater at Virgin Hotelsにて撮影

このイントロダクションを経て、ボーカルラインのソロタイムが始まる。JURIAは黒のキラキラのDIVA風衣装で登場、マライア・キャリーもカバーしたハリー・ニルソンの名バラード「Without You」を心地よく、そして哀愁深く歌い上げる。その美しいロングトーンと感情の込められた落ち着いた貫禄に対して、Xで「まるで2回離婚を経験しているかのよう」というコメントもついていた。音楽好きのアメリカの若者なら開始2秒で曲を当てられるイントロが流れ、HINATAの登場とともに「まさかこの曲を!?」というどよめきが流れた。テイラー・スウィフトのキュートな不朽の名曲、「You Belong With Me」を若干はにかみながらも力強く歌うHINATAと、この曲とともに青春を過ごしたALPHAZたちが生み出した一体感は、まさに鳥肌ものだ。興奮冷めやらぬまま、次はキーシャ・コール「Love」のイントロのギター音が流れたが、CHISAの歌い出しがほとんど聞こえないほどに会場のシンガロングが盛り上がった。前述の通り、ベイエリア出身のキーシャ・コールはこのショーに集まっている人々にとって特に親しみの深い存在だ。チャレンジングな曲であるにもかかわらず、軽快に、そして美しく歌いこなすCHISAの歌唱力だからこそ実現した、「音楽と愛の結晶」が実った奇跡の瞬間だった。

ボーカルラインの3人が揃い、アメリカツアーで名物となっているデスティニーズ・チャイルドの「Say My Name」をダンスカバー込みで披露。R&Bやヒップホップの音楽のみならず歴史、そして文化にリスペクトを深くもつXGだからこそ実現できる、「コピー」だけではない、パフォーマンスとしてのアートでありエンターテインメントであると会場の人々は実感しただろう。揃ったダンス、アティチュードや表現の緩急、全てがまさにR&Bスーパースターそのものでありながらも、ALPHAZたちとこの喜びを共有できることが楽しくて仕方がないことが伝わる満面の笑みがさらに幸せな気分にさせてくれる。


2024年10月14日、シュガーランドのSmart Financial Centreにて撮影

再び7人が揃い、「LEFT RIGHT」のリミックス音源とともにロングコートを着たメンバーが一人ずつ登場し、スタンドマイクを用いた振り付けで踊る。まるで影分身のように一致するダンスを披露しながらも、客の目をよく見ていることが特に印象的だった。去年の冬、日本のショーケースで見た時よりも何倍も大きく、音楽に体を委ねて動かし、コートもまるで小道具のように使いこなした。様々なダンススタイルを取り入れて世界観を演出し、一貫して「音楽の豊かさ」を伝えてくれる。落ち着いたテンポのまま、しっとりとしたバラード「WINTER WITHOUT YOU」を美しいハーモニーで歌い上げる。「さっきまであんなに激しくラップしていたのに!?」と驚く暇も与えないのが、XGのショーの醍醐味である。前日まで30度越えの真夏日だったことを忘れさせるほど観客も合唱し、その姿を見て笑顔になるメンバーがさらに微笑ましい。続いて、がん研究のためにマライア・キャリーやビヨンセ等がチャリティ企画として参加した「JUST STAND UP」をカバーし、「音楽が持つメッセージ性」を伝える。ここで初めてリラックスした表情を見せ、出だしの「強さ」とは対極的なあどけなさが垣間見える。

笑顔と笑いが絶えないMCタイムでは、メンバー同士で「サンフランシスコでは何がしたい?」「ゴールデンゲートブリッジに行きたい!(HINATA)」「みんな『フルハウス』大好き!(全員でテーマソングを歌いだす)」と英語でご当地トークを繰り広げたのちに、ライブ名物の「カラオケタイム」でアカペラで歌やラップを披露。軽々とアカペラでソロ曲を歌ってるのに信じられないくらい上手というギャップに、観客がどよめいたり絶叫が起きる。同時に、友達とカラオケ大会をしているようなゆるい雰囲気もあり、この実力を備えながらも人間としてカジュアルに接し続けられるところが、まさにXGのグローバルな魅力なのだと感じた。

多様な人々を肯定するXGの世界観

ここからは昨年リリースされたファーストミニアルバム『NEW DNA』の世界へと突入。「HESONOO」で繋がった7つの地球外生命体が長い冬眠から目覚め、美しい「生まれ変わり」の物語が始まる。「X-GENE」で会場を再び覚醒させ、まるで銀河を駆け抜ける宇宙船にALPHAZを乗せるようなコンセプトで空気を変える。勢いそのまま、サイケデリックなクィアダンスクラブへとテレポートするかのように「TGIF」でALPHAZを踊らせ、その夜一番の盛り上がりを見せた。「他と違う」ことを美しいと捉え、異端児であることを受け入れ、その「違い」を際立たせるヘアメイクで日本でも話題を集めているXGだが、まさにその「どんな自分でも良いという肯定感」を爆上げしてくれるのがこの曲だ。

ここからはどんどん「爽やかなXG」の見せ場へと突入。自信みなぎる「MASCARA」では、まさに「私たちはこれをやるために生まれてきた」と主張するような清々しさ、そして「SOMETHING AINT RIGHT」や「PUPPET SHOW」では「音楽は楽しい!」ということを体と音楽で溢れんばかりに体現する。否が応でも踊らせるポップなダンストラックは、アメリカのツアーで特に映えることを、ALPHAZの会場が割れるほどに大きな声援によって驚くほどに突きつけられた。そしてXGのベースにある「音楽を楽しむ、音楽は楽しいと伝える」能力の高さを引き出すのは観客次第だとも、改めて実感した。お客さんの「XGと一緒に楽しみたい」「XGの人生を全力で応援したい」というハッピーで自由なヴァイブスが、この日の彼女たちのパワーにも確実に影響を与えていたと思う。


2024年10月8日、サンフランシスコのBill Graham Civic Auditoriumにて撮影

アンコールを求め「XG」を連呼する声援をPAブースで感慨深く眺めつつ、関係者に挨拶をして回るSIMON氏はまさに「見守る父」の姿だった。アンコールではボルテージがMAXに上がる「NEW DANCE」と「LEFT RIGHT」を披露し、通路は踊っている観客で溢れかえる。「ありがとうございました!」と最後に日本語で感謝をのべ、深々とお辞儀をする姿もSNSで「日本の文化の素晴らしさ」として讃えられた。人間として愛されるメンバー、そしてトレンドに左右されず愛される音楽をファーストに、XGというプロジェクトを慎重に続けてきているからこそ、どこの国へ行っても音楽という共通言語を用いて「感動」と「勇気」を届けられるのだと、ひしひしと実感した。約1年前、韓国での取材で「自分たちの音楽、そして音楽の素晴らしさを世界中の人々に伝えたい!」と意気込んでくれた彼女たちは、今こうして夢を確実に実現させている。そしてその姿は、また新たに誰かに元気を与えるだろう。

人種的にもアイデンティティ的にも多様な人が集うベイエリアでの公演だからこそ、XGが提示する「自由に自分を楽しむ」世界観が、独特のポジティブな反応を起こしていたと思う。どれだけみんなが叫び、踊っても、周りの人のことがほとんど気にならなかったし、XGの物語と音楽に没頭できる、間違いなく素晴らしいショーだった。ベースにあるスキルが桁違いに高いし、楽曲がどれも音楽的に最強であり、もちろんどこに行っても(特にアメリカでは)戦える。しかし同時に、アジア系カルチャーへの愛情がこれほどに深く、そしてしっかりと確立されている場所では、こんなにも純度が高く共感されるものなのかと驚く瞬間も多々あった。世界がどんどん多様化し、音楽の選択肢も広がっていく中で、XGは「音楽への愛」を中心に持ち続けさえすれば、世界中で愛され続け、革命を起こしつ続けるだろう。

【写真ギャラリー】XGワールドツアー「The first HOWL」北米公演(記事未掲載カットあり)


2024年10月8日、サンフランシスコのBill Graham Civic Auditoriumにて撮影



XG
2nd Mini Album『AWE』
2024年11月8日リリース
特設サイト:https://xgalx.com/xg/xg-2ndminialbum/

【本日10/25放送】
MUSIC STATION
XGが最新曲「IYKYK」をTV初披露
2024年10月25日(金)21:00~
詳細:https://www.tv-asahi.co.jp/music/

XG公式サイト:http://xgalx.com/xg/

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