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Hedigan'sの特異な個性を考察、Suchmos・YONCE擁するロックバンドが音楽シーンに与える衝撃

Rolling Stone Japan / 2024年11月26日 19時0分

Hedigan’s

Suchmosのフロントマン、河西”YONCE”洋介を擁する5人組・Hedigansがファーストアルバム『Chance』を11月20日に発表した。多くの音楽ファンが歓喜したSuchmosの再始動アナウンスから約10日後、アルバムの正式なリリース告知と、彼らとしては初となる全国ワンマンツアーの開催を発表したHedigansは、今後Suchmosとはまた違った形で音楽シーンに大きなインパクトを残すであろう存在だ。本稿では改めてHedigansを紹介するとともに、その特異な個性について書いてみたい。

結成のきっかけはYONCEが参加し、2023年3月に発表されたThe Street Slidersのトリビュート盤。The Street Slidersは1980年に結成された日本のロックシーンにおける生きる伝説であり、そのデビュー40周年を記念して企画されたトリビュートにThe Birthdayやザ・クロマニヨンズらとともに名前を連ねているという時点で、YONCEのロックボーカリストとしての存在感が浮き彫りになるわけだが、YONCEが歌う「愛の痛手が一晩中」のレコーディングに参加したのが現在のHedigansのメンバー。アコースティックな質感が印象的な原曲に対し、YONCEのバージョンでは7分40秒に及ぶ熱量高いセッションを聴かせていて、この手応えから本格的なバンド結成へと至っている。

ドラムはYONCEとともにOLD JOEのメンバーとしても活動する大内岳。OLD JOEはSuchmos結成以前の2008年から活動していたYONCEにとっての原点的なバンドであり、The Street Slidersのトリビュートに参加するにあたって、YONCEがまず声をかけたのも大内だったという。大内は他にもGlimpse Group、AKOGARE、Burgundy、LAIKA DAY DREAM、The90zといったバンドにも参加し、「愛の痛手が一晩中」で聴くことのできる熱量の高いプレイと、様々な音楽に対応する柔軟性とを併せ持ったドラマー。なお、OLD JOEとしては今年6月に10年ぶりの新作『Dessssert』を発表してもいる。

そのOLD JOEと盟友関係にあるバンド・Gliderでも活動しているのが、ギター・栗田将治とキーボード・栗田祐輔の栗田兄弟。2011年に結成されたGliderは1960〜1970年代のビンテージなブリティッシュロックを基盤としつつ、キャリアの後期においては録音芸術としてのロックを追求してきた。YONCEとは奇しくも今年再結成を発表した兄弟バンドの先輩・Oasisへの愛情を共有してもいるだろう。なお、将治は現在ソロ・プロジェクトMerchant名義でも活動していて、ほぼ全ての楽器を自ら演奏し、多重録音で作品を作っているが、そこには祐輔も作詞で参加している。

そしてもう一人、やはり彼らと同年代で、かねてより交流があったのがベースの本村拓磨。現在は先日カクバリズムから新曲を発表したゆうらん船のメンバーとしても活動しているが、以前まではGateballersやカネコアヤノのサポートでも活躍し、NOT WONK・加藤修平のソロ・プロジェクトであるSADFRANKにドラマーの石若駿らとともに参加するなど、インディシーンにおいて際立つ活動を続けてきた。つまり、HedigansとはYONCEを軸とした10年来の友人たちが、様々なキャリアを経て集結したバンドであり、それぞれが音楽を続けることの困難さを経験しながら、それでも強い覚悟を持って、友人としての距離感を崩すことなく、「自由に好きなことをやる」を信条とするバンドなのである。

そんなバンドのスタンスはこれまで発表してきた作品にしっかりと内包されていて、ビンテージなロックンロール、インディフォーク、サイケデリックロックを基調としながら、そこに大胆なポストプロダクションも施された楽曲からは、彼らの持つ実験精神と反骨精神がまざまざと感じられる。今年2月に発表されたEP『2000JPY』におけるリファレンスについてのメンバーの発言も、WILCO、The Smile、Velvet Underground、デヴィッド・ボウイなど実に様々だ。また、録音においてはGliderの拠点である埼玉県本庄市にあるstudio digが使われていることもポイントで、エンジニアも彼らと同世代であるテリーが担当。studio digはもともと1977年創業という長い歴史を持つ老舗の音楽スタジオであり、そこに現代的な感性を持つ30代前半のミュージシャンが集まることによって、モダンビンテージなHedigansの質感が生まれている。YONCEが神奈川県茅ヶ崎市の出身であることを思えば、都心から少し離れたその環境も、彼らのカウンター的な立ち位置とのリンクがあると言えるかもしれない。



『2000JPY』以降に発表された楽曲はさらにバラエティ豊かで、「Oshare」は大内がThe Whoのキース・ムーンばりのドラミングを聴かせ、The Stooges級の推進力を感じさせるガレージロックだし、そこから一転して「カーテンコール」はこれまでのHedigansの中では最もポップスに接近したナンバー。「グレー」はファンキーかつダンサブルなサウンドでまたも新境地を見せたが、Suchmosのアシッドジャズ的なグルーヴとは異なる、鋭角なポストパンクサウンドにHedigansらしさを感じる。そして、アルバムからのリード曲となったのが、バンジョーやマンドリンを用いたオールディーズ風の「再生」で、彼らが音楽の歴史と接続しながらも今という時代を「再生」させていくバンドであることを改めて印象付ける。〈打ち合わせはもう十分だ 上手くやってもつまらないのさ〉という歌詞も、バンドのスタンスを実によく表していると言えるだろう。





彼らの「覚悟を持って、自由に好きなことをやる」という精神性が音源以上に伝わるのがライブの現場だと言えよう。僕は今年彼らのライブを3回見ていて、2月にROTH BART BARONを招いて渋谷クアトロで開催された東名阪ツアーの東京公演、5月の「VIVA LA ROCK」、7月の「FUJI ROCK FESTIVAL」と、回数を重ねるたびにそのサウンドがスケールを増すとともに、よりエクスペリメンタルな進化も果たしているのが印象的。「LOVE(XL)」ではWILCOの「Via Chicago」ばりにノイズが掻き鳴らされ、「説教くさいおっさんのルンバ」はダブアレンジでFishmansばりのサイケなロングトリップが展開され、音源ではエディットが施されている「敗北の作法」もライブでは生演奏で、プログレバンドにも通じる凄みを見せる。往年のロックギタリストのような魅せるソロでオーディエンスを沸かせる栗田将治、ニコニコと楽しそうに体を揺らす本村拓磨はステージ映えも抜群で、メンバー5人のバランスもいいし、ラストに演奏されることの多い「論理はロンリー」では最後に轟音が鳴らされ、毎回高揚感に包まれるのも特別な体験だ。



そして、やはりそのステージの中央に位置するYONCEの存在感が格別であり、間違いなくバンドの軸になっている。カウンター的な側面も持ち合わせながら、それでも最終的にはHedigansに王道感を感じるのは、これまでに名前が挙がったような王道と革新を併せ持つバンドたちへの愛情を共有していることはもちろん、その中心にYONCEがいるということが何よりも大きい。そもそもSuchmosが日本を代表するバンドになったのは、アシッドジャズやネオソウルを内包した音楽性が時代とマッチしたからというよりも、そこにある種の異物として存在した稀代のロックボーカリスト・YONCEがいたからこその化学反応によって成し得た達成だったと言えるはず。歌詞では混沌とする社会を皮肉交じりに描きながら、それでも根底には愛を見つめる眼差しがあり、より深みを増したボーカルには聴き手を包み込むようなムードがある。「再生」の〈明日また会いましょう 愛の歌 口ずさみましょう〉という一節は、まさにその象徴だ。そんなYONCEの精神性を長く共有しながら、それぞれの山を登ってきたロンリーソウルたち。それこそがHedigansなのである。


<リリース情報>

Hedigan's
1st Album『Chance』
11月20日配信リリース
配信リンク:https://fcls.lnk.to/Chance
=収録曲=
1. 地球(仮)
2. マンション
3. その後...
4. グレー
5. 再生
6. Mission Sofa feat.井上真也
7. But It Goes On
8. O'share
9. カーテンコール
10. ふしぎ

■CD
2025年1月15日リリース
品番:KSCL 3566~7
価格:3950円(in tax)
CD購入リンク:https://Hedigans.lnk.to/Chance
DISC 1
1. 地球(仮)
2. マンション
3. その後...
4. グレー
5. 再生
6. Mission Sofa feat.井上真也
7. But It Goes On
8. O'share
9. カーテンコール
10. ふしぎ

DISC 2
Live at SPACE SHOWER MUSIC Presents ”EPOCHS Music & Art Collective 2023”
1. 夏テリー
2. LOVE(XL)
3. サルスベリ
4. 説教くさいおっさんのルンバ
5. 敗北の作法
6. 論理はロンリー

<ライブ情報>

Hedigans ”TOUR Chance”2025
2025年1月25日(土)横浜BAYHALL(神奈川)
2025年2月1日(土)BEAT STATION(福岡)
2025年2月9日(日)熊谷HR(埼玉)
2025年2月11日(火・祝)仙台Darwin(宮城)
2025年2月15日(土)名古屋CLUB QUATTRO(愛知)
2025年2月16日(日)心斎橋BIG CAT(大阪)
2025年2月23日(日)cube garden(北海道)
2025年3月2日(日)Zepp Shinjuku(東京)

チケット受付URL:https://w.pia.jp/t/hedigans-tour25/

スタンディング:前売り¥5500/当日6000(ドリンク代別)
U-18チケット:¥3500
※U-18チケット注意事項
・当日券なし
・入場時に生年月日の確認を実施いたしますので必ず身分証をご持参下さいませ。
・身分証を忘れた場合、チケット代の差額¥2,000をその場にていただきます。

主催:HOT STUFF PROMOTION / BEA / NORTH ROAD MUSIC / JAILHOUSE / 清水音泉 / WESS
企画制作:SPACE SHOWER MUSIC / BIAS & RELAX adv.

Twitter:https://twitter.com/hedigans_japan
Instagram:https://www.instagram.com/hedigans

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