「影響を受けたものの存在を隠さずに表現する」Cody·Lee(李)が語る音楽ルーツとライフスタイル
Rolling Stone Japan / 2024年11月16日 12時0分
音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。台湾での初ライブからわずか1年でワンマンライブを実施するなど(チケットはソールドアウト)、海外でも精力的に活動を続ける東京発のCody・Lee(李)。個性豊かな4人が語る音楽ルーツとライフスタイルとは。
Coffee & Cigarettes 53 | Cody·Lee(李)
Cody・Lee( 李) がメジャーからの2ndアルバム『最後の初恋』を6月にリリースした。前作『心拍数とラヴレター、それと優しさ』から2年ぶり、新体制になって初のアルバムとなる本作は、これまで以上にバラエティに富んだ意欲作。フジファブリックやティーンエイジ・ファンクラブ、ナンバーガール、モーモールルギャバンなど、自分たちが影響を受けているアーティストをあえてわかりやすくオマージュしたり、隠し味的に散りばめたり、ある意味サンプリングのような曲作りをしているところに個人的には魅力を感じている。
「自分たちが好きなものをミックスしていくというのは、ある意味ではヒップホップの影響が大きいと思います」
そう話すのは高橋響(Vo, Gt) 。「ヒップホップって、サンプリング元を開示するじゃないですか。リリックの中も固有名詞がたくさん出てきて、その人自身の生き様を表現している。Cody・Lee(李) もそうだと思っていて、自分たちの生活がそのまま歌になっていく。だからこそ、影響を受けたものの存在を隠さずに表現することが、自然な流れなんだろうなと最近気づきました」
そんな彼らがシンパシーを覚えるアーティストについて尋ねると、やはり上がってくる名前は過去の作品からの影響を受けつつも、それを自分たちの色として昇華している面々だ。
「僕は海外のアーティストに影響を受けることが多いです」とニシマケイ(Ba, Cho)は言う。「例えばボーイジーニス。3人それぞれがソロで発表していた作品も大好きでしたが、その才能が混ざり合った1stアルバムは衝撃的でした。早速グラミーを獲ったのも頷けますね。それからブラック・カントリー・ニュー・ロードも好き。曲以外の部分、ジャケットやMVなどで見せる独自の価値観に自分も影響を受けています。彼らの音楽にはしっかりとバックグラウンドが見えるところが素晴らしいですね」と語る。「betcover!! もすごいなと思います。組曲みたいに曲が変化していく感じがあって、特に柳瀬二郎くんが映画のサントラを参考にしているっていうのが面白くて。セクションごとに情景が変わっていくような曲構成は、自分の感覚ともリンクするものがあります。同世代のアーティストで、こんな感覚を持つのは初めてかもしれないですね」(高橋)
「僕は同世代のアーティストの音楽はあまり聴かなくて、逆に今はアイアン・メイデンとか、もっとハードロックに寄った音楽を聴いていますね」そう話すのは力毅(Gt, Cho)。「ハードロックのアーティストたちは、ファッションと音楽の両方にしっかりと美学を持っていて、それが自分にも通じるところがあるんです」
ところで、本作のジャケットは國安ユウキを起用。瞳の大きな女性がこちらを上目遣いでじっと見つめるそのイラストは、キュートでありながらどこか官能的だ。
「今回のアルバムはインディーズ時代に出した『生活のニュース』(2020年:自主レーベル「sakuramachirecords」より初の全国流通盤フルアルバム)のブラッシュアップ版のようなテーマを持たせたくて。その『生活のニュース』のジャケットもイラストだったので、國安さんにそのイラストをアレンジして描いてほしいと依頼しました。ほくろの位置なども一緒なんですよね。僕は単に可愛いだけの絵にはあまり魅力を感じなくて。日常の中にあるエッチなこととか、赤裸々に描いている國安さんの作風がCody・Lee(李) の楽曲と、すごく親和性が高いと思ったんです」
そんなCody・Lee(李) のメンバーは、原汰輝(Dr,Cho)を除く3人が喫煙者。タバコへの思いを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「僕の場合、作業の合間に一服することが多いですね。例えば曲を作っているとき、一旦手を止めてタバコを吸いながら曲を聴き直すとか。その間に次にやることをボーッと考えるなど、気持ちが一旦リセットされるしリラックスもできるんです。おそらく一服タイムをあえて作らないと、延々に作業を続けてしまうと思うんですよ。そうするとどうしても視野が狭くなってしまう。ある意味、自分がやっていることを俯瞰して見るための時間なのかもしれないですね」(高橋)
「休みの日になると僕は、朝から出かけて一日中歩き回っていることが多くて。深呼吸を忘れているなと感じる瞬間があるんですよね。そんな時に一服すると、呼吸を意識し直すような感覚があります。ちなみに、普段は手巻きのタバコを愛用しています。映画でもよくタバコを巻いているシーンとかあるじゃないですか。かっこいいなと思う。おそらく自分は、紙に巻く手間も含めて楽しんでいるんだと思います」(力毅)
「僕も2人と同じように、区切り的な感じで吸うことが多いですね。コーヒーやお酒を飲みながら吸うのも好きだし、一日の始まりと終わりにも欠かせない。常に身の回りにある感じですね。おそらくメンバーの中で一番多く吸っていると思います」(ニシマ)
そんな喫煙者3人に囲まれている原は、どんな気持ちでいるのだろう。例えばバンドでのリハの休憩中、自分以外のメンバーが喫煙ルームへ行ってしまうこともあると思うのだが。
「めちゃめちゃありますし、なんならついて行く時もありますよ。『なんで来たの?』みたいな感じで扱われるけど」と原が自虐的に言うと、その場が笑いに包まれる。「喫煙ルームならではの会話ってあると思うんですよ。『あの曲の、あの部分だけどさ』みたいな会話が3人だけでされていたりしたら、やっぱり寂しいじゃないですか(笑)」
そう話す原の嗜好品はコーヒー。好きが高じてコーヒーショップで今も働いているという。「お酒を飲んだり食事をしたりするのも大好きです。自炊よりも外食派。お店そのものが好きなんですよ。店員としてお客さんと会話をするのも、お客さんとして店員と話すのもどちらも好きで、そういう空間を求めて色々開拓しています。最近、地元で見つけたお店はワインと日本酒を置いていて、居酒屋メニューとビストロメニューのバランスが絶妙だし、内装も素敵で本当に気に入っていますね」
話題はそこから各々のライフスタイルへ。特に力毅の、ファッションへのこだわりは並々ならものがあった。
「ほとんどコレクション感覚ですね。着こなしに関して参考にしているのは雑誌が多いかな。古い年代のものを見て、当の流行りをどう今の時代に取り入れるか?とか文脈を汲み取って着こなすのが好きなんです。なので雑誌も自分の生まれ年のバックナンバーを探したり、地方へ行ったときには偶然の出会いを求めて地元の古着屋や古本屋へ行ったりしていますね」
そんな彼らに、今後挑戦してみたいことを聞いてみた。
「僕はぬか漬けをやってみたいんですよ。ただ、あれって毎日ちゃんとぬか床をかき混ぜなきゃダメなんですよね。長期でツアーへ行く時とか心配だな……(笑)」(原)
「僕は古物商取得に挑戦中です。音楽を通じて入ってくるお客さんも、自分のファッションを見て興味を持つお客さんも、どちらも楽しんでもらえるようなことができたらいいなと考えています。ちょっと先走った話かもしれませんが、一応書類も揃えたところです」(力毅)
「富士山に行こうかと思っています。来年30歳になるんですけど、その前に一度は行っておきたいですよね、日本で一番高いところだし」(ニシマ)「僕は車の免許ですね。家が都心からちょっと遠いので車は必須なのですが、気が進まない……家にこもっているのが一番好きなんですよ。ちなみに昨日は一週間以上ぶりに外出しました(笑)。こもって曲を作ったりデザインをやったり、彼女と過ごしたりしている時が一番幸せなんですよね」(高橋)
音楽性もライフスタイルもバラバラな4人。だからこそCody・Lee(李)の生み出す楽曲は、多彩でユニークなものになっているのだろう。11月からは海外ツアーを控えている彼らが、そこで吸収したことを活動にどう活かしていくのか。今後も楽しみだ。
(2024年9月25日発売 Rolling Stone Japan vol.28掲載)
Cody·Lee(李)
2018年、大学の友人同士で結成。2020年にリリースしたアルバム「生活のニュース」リード曲「我愛你」のミュージックビデオが台湾・アメリカを中心に世界中で話題を呼び、現在までに1000万再生を突破。今年6月12日にメジャー2ndアルバム『最後の初恋』をリリースした。
Cody・Lee(李) Major 2nd Album Release TOUR 「I want to be a flower」
2024/11/17 EX THEATER ROPPONGI
開場/開演 16:00 / 17:00
料金 スタンディング:4,000円(税込+1Drink代)
指定席:4,500円(税込+1Drink代)
問い合わせ先:HOT STUFF PROMOTION
050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
https://eplus.jp/sf/detail/3354240001?P6=001&P1=0402&P59=1
『最後の初恋』
Cody·Lee(李)
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