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人間椅子、「バンド生活三十五年 怪奇と幻想」ツアーファイナルで烈しく大団円

Rolling Stone Japan / 2024年11月20日 8時0分

人間椅子(Photo by 西槇太一)

人間椅子が11月18日、東京・Zepp DiverCityにて、秋のワンマンツアー「バンド生活三十五年 怪奇と幻想」のファイナルを迎えた。オフィシャルレポートを掲載する。

【画像】人間椅子、ツアーファイナルの様子(全8枚)

10月末より全8公演開催のこのツアーは、各地で大盛況。全国のファンの前でデビュー35年のロック・バンドの神髄がふんだんに披露されてきた。そんなめでたい千秋楽といえども、いつも通り、ステージ上には必要最小限の機材のみという潔さ。メンバーの登場を今か今かと待ちわびるオーディエンスの背中からは独特の緊張感が漂っている。

定刻の午後7時ちょうどに客電が落ち、雰囲気たっぷりのSE「新青年まえがき」が鳴ると、場内の熱気は急上昇。割れんばかりの手拍子と歓声に導かれながら、和嶋慎治(G&Vo)、鈴木研一(B&Vo)、ナカジマノブ(Dr&Vo)の3名がステージに歩み出る。

まずは挨拶代わりの猟奇的な「鉄格子黙示録」で人間椅子の世界へと誘うと、続く「暁の断頭台」の迫力の重低音がフロアを塗りつぶしていく。今宵の彼らも演奏・歌唱ともに息ピッタリ。楽曲は徹底的にヘヴィにもかかわらず、その轟音を浴びれば立ちどころに元気になってくるのだから、不思議だ。

35周年記念ツアーゆえ、今夜は「あれ? こんな曲あったっけ?」や「この曲、懐かしい!」を軸とした趣向になるとメンバーは予告。鈴木が冗談交じりに「もう二度とやらない曲も入ってるかも」とこぼす場面などが微笑ましかった。

「愛の言葉を数えよう」では和嶋がジミヘンばりの歯ギターを披露したり、「埋葬蟲の唄」では3人が統率のとれた変態的フレーズを連発したりと、オーディエンスは目と耳が忙しい。序盤からレア曲が惜しみなく披露されたわけだが、次の曲のイントロが鳴る度にフロアからは歓声ともため息ともつかないような声が飛び交うのが印象的だった。極めつけは和嶋が高校時代に作った「夢女」だろう。オリジナル・アルバム未収録で、先頃リリースされた映像作品『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』に貴重映像として収録された楽曲が目の前で再現されると、この瞬間に立ち会えた観客は感無量になっていた。そこから不気味な大曲「芋虫」へと連結し、ある種の絶頂へと至る技も見事だった。



ショウの中盤は「恐怖の大王」や「水没都市」といった人間椅子にしか描けないような美しいヘヴィネスでファンを魅了。現実離れした轟音に文学的な歌詞が乗るさまが痛快なのだ。今夜のセットリストは、このバンドが紡ぐ光と闇のコントラストを存分に伝える内容だったと思う。この時点で、オーディエンスは相当お腹いっぱいだったはずである。

人間椅子がワールドワイドに注目される一因ともなった「無情のスキャット」が高らかに響きわたると、いよいよライブも終盤へ。ナカジマが有り余る元気をこれでもかと見せつける「赤と黒」で場内の一体感は更に増した。人間椅子初期の楽曲「天国に結ぶ恋」で和の情緒豊かに世界を構築すると、最後は定番中の定番「針の山」でド派手に本編を締め括った。



当然、オーディエンスは日本が世界に誇るロック・バンドの音楽をまだまだ味わいたいと願う。その声に応えて、3人が再び姿を現わした。和嶋は今年ギブソン社より提供されたというエクスプローラーを、鈴木は同社提供のグラバー・ベースを構えていて、新鮮な構図だ。ここで即興的にBLACK SABBATHの「Paranoid」のミニ・セッションが始まると、場内は興奮状態に。いかなる時もサービス精神を忘れないのが人間椅子である。

まずは「神経症 I LOVE YOU」で軽快にフロアの熱気を操れば、続く「地獄風景」で拳を突き上げ、体を揺らす観客が続出。ラストの土着的かつ劇的な「どっとはらい」が本ツアーのタイトル〈怪奇と幻想〉に相応しい余韻を生んだ頃、時計の針は午後9時20分をさしていた。

この35年間、人間椅子が数々の苦難を乗り越え、絶えず進化してきたことが証明されたライブだった。痒いところに手が届くようなレア曲満載の内容ではあったが、レア曲をレア曲と感じさせない点に彼らの熟練の技術と心意気を感じた。人間椅子には、これからもありのままのヘヴィネスを貫いてほしい。その先に見える景色はきっと晴れやかなものとなるに違いない。そう確信した、貴重な一夜だった。

メンバーがMCで述べていたように、来年はオリジナル・アルバムの制作期間に入るそうだ。日本が誇る爆音ロック・バンドの未来が待ち遠しい。

TEXT BY 志村つくね
PHOTO BY 西槇太一


<リリース情報>

人間椅子
New Blu-ray & DVD『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』
発売日:11月13日(水)
品番:TKXA-1146(Blu-ray) / TKBA-1411(DVD)
価格:7500円(Blu-ray) / 6500円(DVD)
映像①
2024年春のワンマンツアー
「バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~」EX THEATER ROPPONGI 2024/04/24
1. 幸福のねじ
2. 爆弾行進曲
3. 品川心中
4. あやかしの鼓
5. マダム・エドワルダ
6. 蟲
7. 命売ります
8. 太陽黒点
9. 死出の旅路の物語
10. 悪魔の手毬唄
11. 深淵
12. 地獄小僧
13. 宇宙電撃隊
14. 針の山
15. 蛞蝓体操
16. 無情のスキャット
17. なまはげ

映像②
バンド生活三十五年記念~ブートレッグ過去映像集~
1. 人面瘡  [新宿ヘッドパワー 1988]
2. 人間失格  [下北沢屋根裏 1989]
3. 陰獣  [下北沢屋根裏 1989]
4. アルンハイムの泉  [MZA有明 1989]
5. 夢女  [MZA有明 1989]
6. 猿面冠者  [博多DRUM Be-1 1989]
7. 盗人讃歌  [渋谷エッグマン 1991/12] 
8. 独裁者最後の夢  [大宮フリークス 1992]
9. どだればち  [弘前スペースデネガ 1995/11/22]
10. 三十歳  [弘前スペースデネガ 1995/11/22]
11. 無限の住人  [新宿日清パワーステーション 1996/10/08]
12. 辻斬り小唄無宿編  [弘前文化センター 1996/10/10]
13. エキサイト  [新宿日清パワーステーション 1998/04/05]
14. 人間椅子倶楽部  [渋谷ON AIR WEST 1999/07/24]
15. 神経症 I Love You  [渋谷ON AIR WEST 1999/07/24]
16. 埋葬蟲の唄  [渋谷ON AIR WEST 1999/07/25]
17. ロックンロール特急  [新宿ロフト 2007/07/19]
18. 猿の船団  [仙台マカナ 2007/09/07]
19. 肥満天使  [名古屋ell.SIZE 2008/03/07]
20. 夜が哭く  [原宿アストロホール 2008/12/19]
21. 黒百合日記  [渋谷タワーレコード 2013/09/03]

※DVDはDISC1 / DISC2にて収録。
※Blu-rayは2層1枚。
 
人間椅子オフィシャルHP:https://ningen-isu.com/

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