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ケンドリック・ラマー驚きの新作『GNX』知っておくべき6つのポイント

Rolling Stone Japan / 2024年11月23日 10時50分

Photo by pgLang

ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が通算6作目となるニューアルバム『GNX』を突如リリースした。このサプライズアルバムは、チャート首位を獲得したヒット曲「Not Like Us」以来、ケンドリック初の公式リリースとなる。

何の前触れもなくーー彼にはそれが許されているーーケンドリック・ラマーは11月22日の午後(現地時間)、最新アルバム『GNX』をリリースした。このタイトルは、アートワークにも登場する1987年型ビュイックから取られたもので、それはケンドリックが生まれた年でもある。今年最大のヒット曲を放ったラッパーであり、トロント出身の某ラッパーの永続的な失墜の原因を作ったかもしれないケンドリックは、今作でもこれまでと同様に細部までこだわり、今後数日間にわたってファンが分析するべき数々のイースターエッグを散りばめている。

『GNX』がケンドリックの故郷ロサンゼルスへのラブレターであることは一聴しただけで明らかだ。この都市特有のGファンクがアルバム全体に浸透している。このアルバムは、強力なディス・トラック「Not Like Us」の生みの親であるマスタードに加えて、世界屈指のポップアルバムを手がけてきたジャック・アントノフなど、厳選されたコラボレーターたちによって制作された。ケンドリックは両方の感性のバランスをうまく取って、LAのユニークなサウンドに焦点を当てた、メインストリームのリスナーにアピールする曲を作り上げている。

ケンドリックの第59回スーパーボウル・ハーフタイムショー出演(2025年2月9日、ニューオーリンズのシーザーズ・スーパードームにて開催)に関するコメントへの反応や、ドレイクとの継続中の確執など、『GNX』について解明すべきことはたくさんある。ケンドリック・ラマーのサプライズアルバムから重要なポイントをまとめてみた。



1)ジャック・アントノフのプロデュース

今年初め、ジャック・アントノフとケンドリック・ラマーは、ドレイクとの確執をめぐる2曲目のディス・トラックで「6:16 in LA」で、コラボレーターとしての可能性を試した。アントノフは、テイラー・スウィフトの『THE TORTURED POETS DEPARTMENT』と自身のバンド、ブリーチャーズのセルフタイトル・アルバムのリリース直後に、このトラックで共同プロデューサーとして登場した。彼は、TDEの長年のコラボレーターであるSounwaveとともにこのトラックを制作している。そして今、彼らの名前は『GNX』の12曲中11曲で並んでクレジットされている。Sounwaveとアントノフは、アルバム全体で、Mustard、M-Tech、そしてケンドリック自身などとプロデュースのクレジットを共有している。

主にポップ・プロデューサーとして活動するアントノフ(今年はサブリナ・カーペンター『Short n Sweet』に携わった)は、『GNX』で新たな境地を開拓している。「dodger blue」は、彼の特徴的なサウンドを最も感じられる楽曲で、同時に再会を祝うものでもある。この曲では、サム・デュー(Sam Dew)がソングライターとしてクレジットされている。2019年、アントノフ、Sounwave、デューの3人はコラボレーション・プロジェクト、Red Hearseを立ち上げた。このトリオは1枚のアルバムを一緒に作り上げたあと、2022年にテイラー・スウィフト『Midnights』のシングル「Lavender Haze」で再結集した。また、Sounwaveとアントノフは、デュー抜きで「Karma」をコライト/共同プロデュースしている。




Sounwaveは2022年、「僕とジャックは、お互いが取り組んでいるプロジェクトについて常に情報を共有している。1年のうち少なくとも1週間は、目標を定めずただ創作活動に専念するんだ」と本誌に語っている。ケンドリックが何を求めているのか、誰よりも理解しているのがSounwaveだ。彼らのクリエイティブなパートナーシップは、ケンドリックが初期のミックステープをリリースしていた15年以上前にさかのぼる。「ケンドリックについて語るなら、Sounwaveについても語らなければならない」と、TDE社長のテレンス・「パンチ」・ヘンダーソンは2018年に本誌に語った。「ケンドリックは頭の中にあるアイデアを半分だけ口にし、Sounwaveがそれを完成させる。たとえ彼自身がビートを作っていなくても、ケンドリックに必要なものを付け加えるので、彼はすべてを結びつける接着剤のような存在だ」。— L.P.

2)リル・ウェインとスーパーボウル論争に言及

多くの人が、次回のスーパーボウルのハーフタイムショーにはケンドリック・ラマーがふさわしいと考えていた。ケンドリックは、数多くのヒット曲を持つチャート上位のアーティストである。しかし、ニッキー・ミナージュやバードマンなど一部の人は、開催地ニューオーリンズの象徴であるリル・ウェインが選ばれるべきだと主張していた。ウェイン本人も、NFLと提携している友人のジェイ・Zから指名されなかったことに失望感を表明し、自身が主催するLil' Weezyana Festの観客に向かって、自分が出演の機会を「奪われた」とまで語った。ケンドリックは「wacced out murals」でこの論争に言及している。「『Tha Carter III』をよく聴いていた。ロールスロイスのチェーンを誇らしげに持っていた / 皮肉なことに、自分の努力がリル・ウェインを失望させてしまったんだ」。ケンドリックは常にウェインを尊敬しており、2016年に引退しないよう(酔った勢いで)懇願したこともある。しかし、時にはアイドルがライバルになってしまうこともある。— A.G.





3)折衷的かつグルーヴィーな楽曲

様々な点において、『GNX』は感情、アイデア、サウンドの集合体であり、サンプリングや引用のかなり新鮮なリストからも、そのことがよく分かる。「squabble up」は、デビー・デブによる80年代フリースタイル・クラシック「When I Hear Music」を用いている。「heart pt. 6」では90年代に全盛期を迎えたガールズグループ、SWVの「Use Your Heart」のスウィートなサンプルを使用。同曲はもともと70年代のファンクグループ、BTエクスプレスの「If It Dont Turn You On (You Oughta Leave It Alone)」をサンプリングしている。また「luther」では、ルーサー・ヴァンドロスとシェリル・リンによる1982年バージョンの「If This World Were Mine」を用いている。原曲はマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルによるもの。— M.C.








4)LAのムジカ・メキシカーナ・シーンの影響

『GNX』のオープナー「wacced out murals」は、ロサンゼルスを拠点に活躍するマリアッチ歌手、Deyra Barreraの心に響くボーカルで幕を開ける。本誌の取材に応じた彼女は、自分のボーカルがアルバムに収録されたことにまだショックを受けている様子だった。彼女の歌声は、2パックへのトリビュートソング「reincarnated」やアルバムのエンディングを飾る「gloria」も含まれている。「すべてがあっという間の出来事で、鳥肌が立った。魔法みたい。泣きたくなった」と彼女は語った。ケンドリックは、マリアッチのソンブレロをかぶった「Not Like Us」や「Family Matters」のMVなど、LAのメキシコ系ルーツを称賛することを決して躊躇しない。 — T.M.



2パックへのトリビュート

5)ケンドリックとMustardの再タッグ

ケンドリック・ラマーが「Not Like Us」をリリースした際、K Dotとトラックを制作したMustardの相性は、世界の秩序を再編成させるほど強力なものであった。『GNX』の注目曲「hey now」と「tv off」で、両者は再びタッグを組み、ラッパーとプロデューサーの世代を超えた最強コンビとなる可能性を示している。どちらの曲でも、2人の相乗効果は際立っている。Mustardは弾むようにスウィングするベースで、ケンドリックが自由に暴れ回れる完璧な空間をプロデュースしている。特に「tv off」は、「Not Like Us」のスピリチュアルな続編といった趣きがあり、おそらく同じような持続力をもつだろう。– J.I.






6)2パックへのトリビュート曲「reincarnated」

ケンドリックは、2パックを最も影響を受けたアーティストとして常に尊敬してきた。2015年の「Mortal Man」では彼と”会話”し、『GNX』では「reincarnated」で2パックの音楽的存在感を表現することを決意した。この曲でケンドリックは、故人がギター奏者やチットリン・サーキットの歌手として過ごした過去の人生を比喩的に探求している。この曲は、2パックが最後に残した楽曲のひとつである、映画『ギャングシティ』サウンドトラックに収録されたジョニー・J制作のシングル「Made Niggaz」を引用したもの。この曲は、1996年の2パックへのオマージュのように感じられる。この年、2パックは実存主義の叙事詩というべきアルバム『Makaveli』をリリースしている。

この時期の2パックの音楽は、彼の歌声に浸透する復讐心と怒りに特徴づけられていた。 マイクを握る姿は常に力強かったが、1996年にはかつての友人たちからの裏切りに苦しめられ、その歌声は辛辣を極めた。ケンドリックは「reincarnated」の最初の数小節から、そのエネルギーを見事に再現している。冒頭2つのヴァースで、彼は不気味なほど、低音と高音のトーン、倍速の韻律、そして内部韻を強調することで、2パックのシーソーのような表現を反映している(「音楽の才能に恵まれていた私は、ギターを素晴らしいレベルで演奏した」)。長年にわたり、多くのアーティストが、追い詰められた状況での対立を舞台に、自身の解釈による2パックの遺産を表現しようと競い合ってきたが、ケンドリックはただひたすら素晴らしいラッパーであることで彼を体現することを決めた。「2パックはリリシストではなかった」という議論はこれにて終了だ。— A.G.




From Rolling Stone US.

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