ヤングスキニーかやゆー、承認欲求と下心を語る
Rolling Stone Japan / 2024年12月27日 17時30分
奔放なキャラクターで新世代のロックアイコンとなりつつあるヤングスキニー・かやゆーが、多彩なゲストとの対談を通じて飾らないパーソナリティとその奥にチラつく鋭い目線を垣間見せる連載企画「かやゆー放談」が始動。記念すべき第1回の相手は、約74万人のフォロワーを抱えるTikTokクリエイター・まさみ。ギターロックシーンの新星として注目を集めるバンド・セカンドバッカーのドラマーでもあり、今年4月には「BAR まさみ」をオープンさせ自身もカウンターに立つ。SNSネイティブな表現者としてのシンパシー、それぞれのファンとの関係性など、渋谷に店を構えるBAR まさみにて、大親友2人のトークはNGワード上等で大いに弾んだ。
【写真を見る】かやゆーとまさみ
※この記事は2024年9月25日に発売された「Rolling Stone Japan vol.28」に掲載されたものです。
2人を繋ぐ「面白さへの嗅覚」
ープライベートでも交流の深いお二人ですが、そもそも出会いのきっかけは?
かやゆー 高校生くらいの時からまさみの存在は知ってたんですよ。TikTokでよく動画が流れてきてて。ただ、なんとなくイケイケ系なのかなっていう先入観で苦手意識を持ってた(笑)。で、2年前に「本当はね、」の音源をまさみがTikTokで使ってくれて、スタッフと「まさみくんをライブに招待してみれば?」っていう話になったんです。渋谷CLUB QUATTROでのワンマン(2022年10月に開催された『保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー』東京公演)に来てくれて、楽屋で挨拶したのが初対面でした。
まさみ 僕もヤングスキニーの曲は前から聴いてたけど、それよりもかやゆーの人間性の方が気になってた。嫌な噂がめっちゃあったから(笑)。怖いもの見たさじゃないけど、どういう考え方なのか知りたかった。だから、その後すぐに飲みに行こうって誘って。
かやゆー 初めて飲みに行ったときは、俺が炎上してる話とかを大声でするから本当にやめてくれって感じでした(笑)。でも、そこから距離が縮まるまでは本当に一瞬だった。ここまで性格合う人もなかなかいないってくらい。
まさみ 僕、ヤバいやつがめっちゃ好きだから。かやゆーと会って話した時に、コイツは本当にヤバいやつだと思って。言い方悪いけど、マジで犯罪者予備軍(笑)。でも、悪意があるわけじゃなくて、純粋に女の子が好きなんだよね。しかもそれをクリエイティブに昇華できるから、すごい才能なんじゃないかと思った。
@kayayuuuuuuu 初めて一緒に遊んだんだけど、本当はね、約束の直前まで行くのめんどくさくてドタキャンしようか迷った #だはははははははは #本当はね @まさみ ♬ Hontowane, - ヤングスキニー
ー2人のSNSには、ともにディズニーリゾートを楽しんでいる様子などがアップされていますね。それとガールズバーにも……。
かやゆー 1年くらい前だよね。あの時期はヤバかった。かやゆーがかやゆーしてた時代で。まあ、まさみから夜の世界を教わったようなもんだからね。
まさみ いや、そんなことはないよ。むしろ長所を伸ばしてあげただけ(笑)。
ーかやゆーさんが新連載第1回の対談相手にまさみさんを指名した理由は?
かやゆー 仲の良いバンドマンはいっぱいいるけど、それじゃ他のインタビューと話す内容が変わらないなと思ったんで。まさみはバンドだけじゃなく、他にも色んなことをやってる。どんなことを話すのかも気になったし、今回お願いしてみました。でも、この企画の最終目標はFRUITS ZIPPERと対談することです! こうやって目標として言い続ければ、もしかしたら本人たちの目に届くかもしれないし、「これだけ名前出してくれたら私たちも出ざるを得ないか」っていう状況を作り上げて。
まさみ 狡猾だな(笑)。
ーお二人がお互いに共感を覚えるポイントはありますか?
かやゆー 面白いことが好きなところ。面白ければ何でもいいっていう。
まさみ クリエイター気質なところだよね。「これめっちゃ面白い!」っていうことが起きたときに、動画を回す人と回さない人に分かれると思うんですけど、僕らは回すタイプ。ここから面白いことが起こるんじゃないかっていう嗅覚がお互いにある気がする。
かやゆー まさみのその嗅覚は本当に冴えてるからね。いらないところまで動画に撮ってる。どんだけ酔っ払ってても。
まさみ 出すか出さないかは別としてね。
ー逆に、お互いの「ここは真似できないな」と思うところは?
まさみ 僕は周りの環境によって変わっちゃう方だけど、かやゆーはめっちゃ芯があるなって思う。やりたいことも、話してる内容も最初に会った時から変わってない。どんなに炎上してもブレないし、リスナーにも媚びない。その姿勢は良いなって思います。
かやゆー 俺は手を出しちゃいけない女の子とそうじゃない女の子がわからないけど、まさみはその分別がめっちゃ付く。女の子に限らず、人の本質をすぐ見抜けるタイプだよね。危ない人を見極めるの得意でしょ。
まさみ 得意!
かやゆー 羨ましいっすね。今の彼女も、付き合う前にまさみに「どう思う?」って相談して一緒に飲みに行ったし。
楽曲制作とTikTok動画に通ずるもの
ーSNSが活動のきっかけになっていることは、2人の大きな共通点ですよね。SNSがなかったら、現在のような活動を行なっていなかったかも?
かやゆー 俺は承認欲求がめっちゃ強いから、都度都度お客さんのリアクションを求めるし、見てないツイートはないってぐらいエゴサしてるんで。そういう意味でいうと、SNSがないとやる気もあまり湧かなかったりするのかもしれない。少なくとも、大きなモチベーションにはなってますね。
まさみ 僕は小学生のころから動画を撮るのがめちゃくちゃ好きで、LINEのタイムラインとかインスタの鍵アカとかに毎日アップしてたんですよ。で、「外に出してみれば?」って友達に言われたのをきっかけに公開してみたらバズって今に至るんで。SNSがない世界の自分は想像できないですね。
かやゆー 俺、SNSでただ踊るだけの動画とか好きじゃなかったし、最初は弾き語りの映像しか上げてなかったんだけど、まさみと出会って自由に面白いことを投稿すればいいんだって気付いたんだよね。だからまさみに影響されて色々真似もしたし。でも、最近は全然SNS動かしてない。
まさみ 確かに。
かやゆー 前にまさみが言ってたけど、人って幸せになるとマジでSNS更新とかやる気起きないんだよね。俺、最近色んなことが順調に進んでて。彼女もできたから、他の女の子にモテたいとも思わないし。やっぱりそういう下心が原動力になってたんだなって改めて思った。
ーまさみさんから見て、かやゆーさんは恋人が出来て変わったと思いますか?
まさみ 思いますね、本当に。獣から人になった(笑)。居酒屋に行ったら、箸とかおしぼりを渡してくれるんですよね。「コイツ、人を思いやれるようになってる!」みたいな。なんかちょっと寂しい(笑)。
かやゆー 今までは自分中心で生きてきたけど、彼女に優しさがなさすぎるって怒られてから、徐々に変わってきましたね。
まさみ こうやって人って成長するんだなあ。
ー恋人がいて満たされている時とそうでない時で、楽曲制作へのモチベーションは変わりますか?
かやゆー 変わりますね。モテたい欲がなくなったんで。あと、曲が湧いてくるタイミングってだいたいどうでもいい女の子とセックスした時だから、それがなくなると曲の生まれ方も変わってくるし。
ー承認欲求や下心がエンジンになっていたという点では、かやゆーさんにとってTikTokで動画を発信するのと曲を作るのってそう変わらないのかも。
かやゆー そうそう、同じなんですよ。
ー一方でヤングスキニーの直近のリリースは「プレイボーイシンドローム」「大人の都合マジうぜえ」「死ぬまでに俺がやりたいこと」とノイジーでパンキッシュな作品が続いていますよね。恋人が出来てからの方が、衝動をぶちまけているような。
かやゆー 彼女の尻に敷かれることで、色々なことにウザさを感じることもあって……。
まさみ ストレス溜まってるんだ(笑)。
かやゆー ストレスを発散したいのかもしれない(笑)。でも、そういうショートチューンを作ってる大きなきっかけは、夏フェスとかでもっと盛り上がれる曲があってもいいのかなって思ったことで。バンドを始めたてのころはコロナ禍で制限も多かったからバラードやミドルテンポの曲が中心でよかったんだけど、制限が緩和されていく中で色んなバンドと対バンして、熱いライブをしている景色がカッコいいなと感じるようになってきたから。
ー繊細なバンドのパブリックイメージに対する反抗というわけではなく、自然な憧れから現在の方向性になったと。
かやゆー 別に路線変更したいと思ったわけではないですね。今の髪型も、彼女との約束を破った罰として切っただけだし。
ー今って、ミュージシャンも自分自身の発信力が強く求められるじゃないですか。そういったネットでの発信が必要なかった時代への憧れはありますか?
かやゆー いや、俺が昔を羨ましく感じるのは、どんだけ悪いことをしても盗撮されて晒される心配がなかったっていうことだけ(笑)。嫌なことが見えちゃったりもするけど、それよりもメリットの方が大きいから、スマホやSNSがない時代が良かったとは思わないです。バズを考えるのは難しいですけどね。まさみと2人で「めっちゃ面白いじゃん!」とか言いながら撮った動画こそ伸びない。
まさみ ガールズバーの前で、かやゆーが店員さんにモテるために腕立て伏せする動画とかね。全然伸びないし、冷静に見ると確かにあんまり面白くない(笑)。
かやゆー そうそう。音楽も、ただ良い曲ってだけじゃバズらなかったりするから。
まさみ でも、マジで絶対バズる方法っていうのがあるよ。それは、バズるまでやめないこと。
ー確かに、発信し続けていればヒットする可能性が生まれ続けますもんね。TikTokで数々の動画をバズらせてきたまさみさんの立場から考えてみて、バンドマンが楽曲をバズらせるためにはどうしたらいいと思いますか?
まさみ 一番は余計なこだわりを捨てることかも。TikTokで、1割の自分のファンに向けて動画を作っても伸びないんですよね。そうじゃなくて、9割の大衆に向けて作るのがめっちゃ大事で。だから音楽でも、こだわりすぎずに耳に馴染みやすいコードや、ノリやすい四つ打ちのビートとかを取り入れるとか。音楽として良いものを作りたいっていう気持ちは大事ですけど、活動を続けるためにはある程度譲歩しないといけない。僕自身もバンドでは、「ここのコードはもうちょっとシンプルにしてほしい」「ここの歌詞はちょっと削りたい」とかを伝えてます。
かやゆー 戦略的に考えてたわけではないけど、ヤングスキニーは活動の初期に万人に受けるような曲を作ったおかげで、今は好きな音楽をやれてるんだと思う。ある程度ファンが付いてくれれば、どんな曲を出しても一定数の人は聴いてくれるから。
それぞれのファンとの距離のはかり方
ーまさみさんは、BAR まさみをオープンしたことでファンとの距離感に変化があったのではないでしょうか。
まさみ バーを始めてから、僕のリスナーって良い子が多いんだなってわかった気がします。お店でミスがあったりしても、「全然大丈夫だよ」って感じで、優しくしてくれる。失敗しても守ってくれる人たちだなと思います。
@masamidrums 大盛況だったBARまさみ!!復活しました!!!!!暇な時遊び来て!! ♬ 初恋キラー - 乃紫(noa)
かやゆー いいね、羨ましい。
まさみ 勝手なイメージだけど、ヤングスキニーのリスナーなのにかやゆーのことは嫌いっていう人もいそうだよね。
かやゆー うん、バンドが好きだけど俺のことは好きじゃないっていう。俺がバーをやったとしたらそういう人は来ないだろうけど、バンドのライブはそうもいかないしね。で、俺が間違った発言や行動をすると、プロフィール欄にヤングスキニーの名前を書いてるヤツがわざわざ拡散する(笑)。俺はね、まさみみたいにお店の営業は絶対できない。どのファンにも優しく接することはできないから。
ーとはいえヤングスキニーも、作品やライブだけではなく、生配信やコンテンツ更新を通してファンとの距離感を近く保ってる印象があります。
かやゆー そうですね。ただ配信でもライブハウスでも、やっぱり一定のラインは引かれますから。そのラインが曖昧な状態でお客さんと接するのは絶対無理だなと思う。
まさみ 確かに、かやゆーは自分のリスナーをどこかで嫌ってるイメージがある。
かやゆー 別に悪い意味じゃないんだけど、基本的にファンの人に好かれようと思っていないんだよね。音楽を楽しんでることが伝わってこない人も結構いたりするし。そういうファンを見ると、ライブやっててもつまんないなって思っちゃう。仕事だって割り切ればいいのかもしれないけど、俺は自分自身が楽しみたくて音楽やってるから、それをはっきりファンに伝えることもある。言い返されてイライラすることもあるけど、何も言わないで嫌な思いをするよりは言っといた方がいいかなって。何度も炎上してていまさら好感度も気にしてないから。
まさみ それで結果的にちょうどいい塩梅になってるんだと思う。ファンもかやゆーが間違ったことしたらダメって言うし、かやゆーもファンにダメって言える。そういう関係も良いんじゃない? こっちは新婚夫婦、そっちは熟年夫婦みたいな。
かやゆー 知らんけど(笑)。まさみは元々TikTokで活動してて、それからバンドを組んだじゃん。そうなると、ライブハウスの楽しみ方を全然知らないお客さんも来るわけで、大変じゃない?
まさみ 確かにそうだね。でも、もしリスナーが上手く楽しめてなかったら、その方法を伝えられてなかった自分の責任だなって思っちゃうかも。バンドがめちゃくちゃ良い演奏をして良い曲を歌ってれば、自然とノリもわかってくると思うし。
かやゆー ちょっと話は変わるんだけど、ライブやってて一番嫌なのが、ファンが義務みたいに拳を上げることなんだよね。上げたくないなら上げなくていいっていつも言ってるんだけど、「サビになったら周りに合わせて上げなきゃ」みたいな。その人たちも嫌々やってるわけじゃないし、悪気があるわけでもないし、本当に音楽が好きなんだろうから、どうやって解決すればいいのかわからなくて難しい。まさみは、バンドをやる上での悩みってなんかないの?
まさみ ボーカルのこうへい(セカンドバッカーのGt&Vo)がもっとグイグイ引っ張ってほしい。やっぱりバンドの顔だし、「俺たちはこうやっていきたい!」みたいな主張がもっとあると良いんだけど。
ーかやゆーさんにはその推進力を感じる?
まさみ 感じますね。そのためのコミュニケーション能力もあると思う。
かやゆー でも俺には音楽的な知識が全然ないから、イメージがあっても上手く言葉にできないし。ギターのフレーズをこうしたいっていうのも、ゴンちゃん(ゴンザレス:Gt)とこれまで続けてきた信頼関係があるからこそ汲み取ってくれてるからさ。セカンドバッカーはもう組んでから1年経った?
まさみ ちょうど1年くらいかな。
かやゆー だんだん「あ、セカンドバッカ―の曲だな」って思わせるような芯が確立できてきてるよね。
ー2組の対バンが実現する日が待ち遠しいですね。
まさみ やりたい。「仲良すぎるからこそ、すぐに対バンしたらただのなれ合いになっちゃうから、セカンドバッカーが大きくなってから実現した方が熱いよね」って話も、結成前からしてたし。
かやゆー お互いのカッコいいところを合わせて一つのライブを作り上げられるようになったら、一緒にやりたいなと思ってます。
Photo by Mitsuru Nishimura
撮影協力:BAR まさみ
東京都渋谷区道玄坂1丁目7-10 道玄坂一丁目ビル 新大宗渋谷5F
ヤングスキニー
嘘だらけで矛盾だらけの日常を歌う、東京発の4人組ロックバンド。2020年8月、かやゆー(Vo&Gt)を中心に結成。2024年10月9日に2ndフルアルバム『BOY & GIRLS』をリリースし、初のホールツアー 『”老いてもヤングスキニーツアー vol.5” ~サブタイトルもう思い付きま編~』 完遂。2025年2月4日、東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで「第二回ヤンスキ漢祭」を開催する。
セカンドバッカー
TikTokクリエイターとしても人気を集めるこうへい(Gt & Vo)、まさみ(Dr)によって結成された”あなたを支えるバンド”。2023年3月に活動を開始し、一年余りで『JAPAN JAM 2024』への出演。2025年4月〜5月、初の東名阪ワンマンツアー「恋より好きより愛していてよツアー」を開催する。
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