1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

ジャズ新世代がファッションにこだわる理由とは? ジュリアス・ロドリゲスが語る大物ラッパーからの学び

Rolling Stone Japan / 2025年1月16日 18時5分

2024年12月、丸の内コットンクラブにて(Photo by Tsuneo Koga)

近年のジャズは20代のミュージシャンがシーンを席巻している。サマラ・ジョイ、イマニュエル・ウィルキンス、ジョエル・ロスの活躍はもはや説明不要だし、ジュリアス・ロドリゲス(Julius Rodriguez)もその一人と言っていいだろう。

名門ヴァーヴからデビューした才能は、リアン・ラ・ハヴァス、カッサ・オーバーオール、コーシャス・クレイに起用されるだけでなく、在学中からエイサップ・ロッキーのツアーにも同行した。近年はミシェル・ンデゲオチェロの作品に欠かせない存在になりつつある。

ピアニストとしての技術や作編曲家としての完成度は言うまでもないが、ドラマーとしても高い技術を持っていて、自身の作品ではドラムも叩き、時にはベースやギターまでをも演奏する。今年12月の来日公演では、ア・トライブ・コールド・クエストやエリックB&ラキムなどのサンプリングソースとしてヒップホップ文脈でもお馴染みのボブ・ジェイムス「Nautilus」を、敢えてヒップホップのフィーリングとは異なる速いテンポにアレンジし、「サンプリングソースをああいうテンポで演奏すると新鮮だよね」と語ったりするように新世代らしい感性も備えている。

最新アルバム『Evergreen』や影響源について掘り下げた前回のインタビューを踏まえて、今回は彼の感性のあり方やジャズの捉え方について話を振った。ロバート・グラスパーよりも20歳下の1998年生まれ。Z世代の彼がどんな価値観を持っているのか知ることは、今のシーンを知るための手掛かりになると思ったからだ。語り口はゆったりと穏やかではあるのだが、クールなファッションへのこだわりが伝わってくるし、そこに座っているだけで存在感がある。その佇まいも含めて新鮮さを感じた取材だった。


2024年12月、丸の内コットンクラブにて(Photo by Tsuneo Koga)



ジャズを学べば最先端の音楽が理解できる

―そもそもジャズを演奏するきっかけは何だったのでしょうか。

ジュリアス:音楽にはいつも興味があったのと、父親がジャズの大ファンだったことだね。父がジャズを教えてくれた時、譜面に書かれた音を演奏するクラシックとは対照的に、全く新しい表現方法が存在することを知ったんだ。ジャズは即興で自分の音を紡いでいくことができて、そういう面にとても惹かれたんだよ。

―お父さんがジャズのコレクションを持っていて、家では常に音楽がかかっていた感じですか?

ジュリアス:そうだね。僕はデューク・エリントン、ルイ・アームストロングやセロニアス・モンクを聴いて育ったんだ。父がiPodを持っていたからそれで音楽を聴いていて、そこに入っていたのが今言ったアーティスト達ってことだね。


ジュリアス、デューク・エリントンの演奏で知られる「A列車で行こう」を演奏(2022年)

―演奏したのはジャズとクラシックのどちらが先ですか?

ジュリアス:クラシックだね。教会のゴスペルがスタートだった。チャーチ・ミュージックを聴き、クラシックの演奏を学び、音楽理論の勉強を始めたんだ。自分がどんな音楽を求めているかわかったのはそれからだね。


当時13歳のジュリアスがベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏(2013年)

―クラシックからジャズへ移るターニングポイントになった人はいますか?

ジュリアス:特にのめり込んだのはセロニアス・モンクだけど、ジャズには色々な種類があるからね。ともかく、最初はセロニアス・モンクかデューク・エリントン。そしてジャズ・フュージョンを聴いた初めての経験がチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーのライブだった。それが大きなターニングポイントだね。電子楽器や、ロックの楽器を使ってあんな風に音楽を演奏できるなんてそれまで考えもしなかったから。


当時17歳のジュリアスがセロニアス・モンク「I Mean You」を演奏(2017年)

―リターン・トゥ・フォーエヴァーを聴きに行ったのは何歳ですか?
 
ジュリアス:たしか……9歳の頃かな。

―若い(笑)。

ジュリアス:その時のエピソードがおもしろいんだ(笑)。そのショーに行く前は、家にあったチック・コリアのCDはボビー・マクファーリンとのデュオの1枚だけだった。僕はバカな子供だったから「あんなの退屈だよ。あれと同じようなピアノソロをわざわざ聴きに行きたくない」って言ってた。でもチケットはあったから、渋々行ったんだよね。そしたら、ギターにアル・ディ・メオラ、(ベースに)スタンリー・クラーク、(ドラムが)レニー・ホワイト……すべてが輝いて見えた。ソロピアノを聴くつもりで行ってそんなのを見たから、子供の頃の経験の中ではとくに印象深い瞬間だったね。

―あなたが退屈に感じたチックとボビーのデュオ作には、ジャズとクラシック、色々なジャンルが混在していますよね。

ジュリアス:そうだね。成長するにつれてあのCDが好きになったよ。ジャズは全く異なるスタイルの音楽をいろんな場面に散りばめることができて、ジャズ……アフリカン・アメリカン・ミュージック……呼び方はともかく、全てがひとつの中に収まるんだ。



―あなたの世代だと、子供の頃からロバート・グラスパーのようなジャズとヒップホップが混在した音楽が当たり前にあったと思います。そういった音楽が自分が演奏するジャズと繋がりがあると気がついたのはいつですか?

ジュリアス:大きな繋がりの1人はロイ・ハーグローヴ。RHファクターのアルバムだね。ロイの音楽は自身の活動だけじゃなくてディアンジェロとの作品に至るまですごく流行ったし、それらが音楽カルチャーの中で彼の世界を確立させたと思う。それにロイはビバップ、ハードバップといったストレート・アヘッドも演奏するし、R&Bやファンク、他のどんなスタイルも演奏できる。ロバート・グラスパーも同じだよね。ジャズ・ピアニストだけど、全く異なるアーティストとツアーをしているし、彼のアルバムにもそういう特色がある。『Double Booked』にはとても刺激を受けた。『Black Radio』がリリースされた時には、全てのジャズ・シーンの話題をさらったよね。

―ロイを初めて聴いたのはいつですか?

ジュリアス:12歳かな?

―では『Double Booked』を聴いたのは何歳くらいですか?

ジュリアス:2008年か2009年だね(※ジュリアスは当時10〜11歳)。その頃、コミュニティバンドで演奏をしたり、レッスンを受けていたんだけど、それを手伝ってくれている大学生もいてね。授業ではデューク・エリントンやチャールス・ミンガスを勉強するんだけど、その大学生たちが「おい、クールなやつ聴きたくないか? 今やってるのは一旦置いといてこれ聴いてみな」って。今起きてる新しい音楽のことはそうやって知ったんだ。



―”ジャズ”と呼ばれている音楽は多様でいろんな要素を含んでいますけど、子供の頃ってジャズのことをどう認識していましたか?

ジュリアス:子供の頃から進んだ理解力があったのかもしれないけど、単純におもしろかったからもっと知りたかったし、それが何なのかということは気にしていなかった。「これは違う、同じじゃない」ではなくて「これはかっこいいし、いい感じだな」ってようにね。もっと知りたい。もっと聴きたい。もっと演奏したいってね。

―単純に「いい感じの音楽」と捉えていた?

ジュリアス:そうだね。それが全てだし、それこそジャズが人気だった理由だよ。(ジャズは)ソーシャル・ミュージックだったんだ。表現していて楽しいから演奏するし、聴く人も心地よくなれた。だからこそ、文化や世界が変わったときには、音楽も変わる必要がある。僕たちが1950年代と同じファッションをしないのと同じように、音楽も当時と同じように演奏すべきではないんだ。


2024年12月、丸の内コットンクラブにて(Photo by Tsuneo Koga)

―そのような広がりのある、ジャンルに捉われない考え方を早くから持ち合わせていたなか、ジュリアードでジャズを勉強しようと思ったのはなぜでしょう?

ジュリアス:それは……ジュリアードで学べる最先端の音楽がジャズだったからかな(笑)。

―なるほど(笑)。

ジュリアス:それとジャズという音楽、カルチャーに深く関わることが、音楽の多様性に繋がると理解していたんだ。ハーモニーを聴けるようになったり、音楽理論を理解するための重要なものとしてもね。うまく説明ができないんだけど、ジャズは常に時代の先を行く音楽だと思う。ある一定のレベルでジャズを演奏する方法を知っていると、「次に来ること」への準備ができているとも言えるんじゃいかなって思うよ。次に起こることを予想するとき、その前に何があったか振り返るものだよね。コードやリズムを理解しているからこそ、新しいものに対して僕はより簡単に対応できるんだ。

―でもその後、ジュリアードを退学したわけですよね。

ジュリアス:そうだね(笑)。ジャズと先進的な音楽の話に戻るけど、捕まえようとしたり、要約や制度化しようとすると、音楽の大事な部分を失ってしまうんだ。それはフレッシュであるべきだと思う。定義したり、枠組みを用意したり、型にはめてしまうと、それはもう先進的な音楽ではなくなり、むしろ歴史的な、保存すべきもののようになってしまう。僕はそういうものではなく、息づいている、今を生きている音楽をやりたいんだ。

あと、僕はキャリア形成に関しては他の学生たちより先に取り組んでいた。ギグを得て、ツアーであちこちへ行き演奏をしていたしね。それを学業と両立することができなかった。ツアーやプロとしての演奏の機会を得たことで学業が大変になるという話は、ジュリアードだけではなく多くの学校でよく聞く。僕もどうするか選ばないといけなかった。そして僕は、自分に開かれた可能性を抑えるのではなく、前に進む道を選択したんだ。

エイサップ・ロッキーから学んだ「見せ方」

―在学中からギグにたくさん参加してきたと思います。その中でも際立って印象的な出来事はありますか? 恐らくそれが理由で退学を決断したのだと思うのですが。

ジュリアス:カーメン・ランディのバンドに加入したことだね。彼女は素晴らしいジャズシンガーで、ツアーで色んな場所に行くから、僕は期末テストを受けられなかったんだよ。カーメンとのツアー以外にも、キーヨン・ハロルドや、ダミアン・スニードとも共演した。ダミアンはジャズやゴスペルを歌うアーティストなんだけど、かなりたくさん仕事をした。残念ながら断らざるを得なかった仕事もたくさんあった。僕は授業を理由にギグを断るような人にはなりたくなかったんだよね。でも、ジュリアードを辞めることになった一番のきっかけは、エイサップ・ロッキーとツアーをやることになったことかな。

―まず、カーメン・ランディとの共演からどんなことを学びましたか? 彼女は若手を育てることにも定評がありますよね。

ジュリアス:彼女について特筆すべきは、信じられないほど素晴らしいソングライターでコンポーザーだということ。それに彼女は「歌手」という枠を超えて一人の「ミュージシャン」として歌う。管楽器奏者やギタリストが、バンドと音楽に入り込むのと同じように歌うんだ。それに加えて、彼女の音楽とアイデアは素晴らしい想像力に溢れている。しかも、そのアイデアが具体的なものになりすぎていなくて、共演するミュージシャンが自分らしさを表現できるスペースがある。カーメンが書いた曲は表現力豊かなカーメン自身の音楽でありながら、演奏者の特徴も表現できるんだ。アート・ブレイキーやベティ・カーターのような、その人がそこにいるだけでバンドを全く異なるサウンドにしてしまう人たちに似ていると僕は思うよ。


ジュリアスが参加した、カーメン・ランディのライブ映像(2022年)

―それとは全く異なる種類の経験だと思いますが、エイサップ・ロッキーとのツアーはどうでしたか?

ジュリアス:おもしろかったよ。音楽のビジネス面のことをより学べたと思うし、彼の音楽にもだんだんと馴染むことができたから。実はそれ以前に、彼の音楽を一度も聴いたことがなかったんだけど、ショーに行って観衆がどんな反応をしているかを目の当たりにして(その凄さを)理解した。彼はツアー先ではショーをやるだけじゃないんだ。彼はポップアップショップを開き、スニーカーやTシャツを売る。そしてショーをやって、夜にはクラブイベントにも出演する。

彼はファッションの世界でも非常に有名で、音楽以外のことでも自分の個性、そして創造性を発揮する方法がわかっている。今の時代において、アーティストとして、それはとても重要な事だと思う。音楽だけではなく、自分のルックスやカルチャー、どんな場所でも自分が自分であると証明できることは重要だ。例えば、エイサップ・ロッキーのファンは、みんな彼のその時の好みに影響されて服装を選んだりするんだよね。Air Force 1は彼のおかげで魅力が再認識された。彼の存在はスニーカーの人気を復活させた要因にもなったんだ。だから彼の音楽について考えるとなれば、ファッションや彼の全てを含めて考える必要がある。

僕はそれと同じことがジャズでもできると思っている。かつてジャズは「クールな音楽」として知られていたからね。マイルス・デイヴィスも独自のスタイルを持っていて、そのスタイルを音楽と共に進化させていった。つまり「完全なアーティストになる」ということ、それが全てだよ。


エイサップ・ロッキー、2018年撮影。写真左で鍵盤を弾いているのがジュリアスと思われる(Photo by Tim Mosenfelder/Getty Images)

―今回、あなたが率いるバンドのメンバーもおしゃれでかっこいいですよね。

ジュリアス:同世代で似たような考えを持った人たちと一緒に演奏ができてラッキーだよ。僕のビジョンを理解しサポートしてくれているだけでなく、彼らのビジョンの一部として僕のことも見てくれているんだ。とにかく最高だね。

―音楽だけでなく、見せ方にも気を配ってることに関しては、あなたが参加していたオニキス・コレクティヴからの影響も大きいのでは? 彼らもSupremeとコラボしたり、ファッションと深く影響し合っていましたよね。

ジュリアス:その通りだね。彼らはニューヨークのアンダー・グラウンド・シーンに深く関わっていたから。そして、その音楽に影響を与えていたものの多くは、ルックスとファッションだ。彼らがたくさんのチャンスを得て、色んな人と仕事できたのは、彼らが「こう見られるべきだ」と強く意識していからだと思う。自分の作品に対して真剣であることと同じくらい、そういうことにも気を配るべきだと思ってるよ。


オニキス・コレクティヴ、Boiler Room Londonのライブセット(2018年)

―そもそもマイルス・デイヴィスやディジー・ガレスピーのような先人も、自身のファッションに意識的な人たちでした。その意味ではジャズから失われていたものが、あなたたちの世代により徐々に戻ってきているように僕は感じています。イマニュエル・ウィルキンスもファッション、そしてアートに気を配っています。そういったマインドが若い世代を中心に戻ってきている理由についてどう思いますか?

ジュリアス:物事が進化してきていて、本当に大事なことは何かということにみんなが気がついてきているからじゃないかな。どの時代も音楽は常に素晴らしいんだけど、それだけでは再び人気が集まるわけじゃない。これまでも(音楽以外の)他の要素が加わりながら音楽が作られてきた。だから、音楽には他の何かが必要なんだ。

今は上向きの波が来ていると思う。みんなが自分のしていることや、聞いているものだけではなく、それ以上のものに気を配るようになっているという点でね。人間としてこの世界で生きていくことは、全ての感性を使った体験だ。だからこそ、いろんな感性が必要なんだよ。もし一つが欠けたら、その他の感覚が敏感になるみたいに、互いに影響し合っているから。目で見たり、耳で聞くこと、それらは味わえないし、匂いを感じることもできないけど、全ては繋がっている。それに気が付く人が増えれば増えるほど、(僕ら音楽家も)そういうことにより注意を向けるようになるんだよ。全てをより良くするには、それぞれが自分の役割を果たすべきだし、一人も欠けてはいけないんだ。

音楽を超えたカルチャーと人間性を伝えたい

―あなたと同世代のイマニュエル・ウィルキンスは現代アートのシアスター・ゲイツと繋がりがあり、そこからインスピレーションを受けて音楽を作っていると語っていました。あなたも音楽以外でインスピレーションを受けているアーティストがいるんじゃないですか?

ジュリアス:僕が大きな影響を受けているのはフォトグラファーだね。写真が大好きで、フォトグラファーと仕事をする機会があるときは気分が上がる。特に好きなのは最新アルバム『Evergreen』で一緒に仕事をした伝説的なフォトグラファー、アティバ・ジェファーソン。彼はスポーツ界、特にスケートボード界で有名なんだけど、ジャズの大ファンなんだ。ジャズの歴史にも詳しいし、現在のシーンのこともよく知っているから、彼とのコラボレーションはとても特別なものだったよ。

あとはビジュアル・アートやファッションデザイナーからも影響を受けていて、ウェールズ・ボナーも大好きだ。エイサップ・ロッキーと仕事をした時もたくさんのスタイリストと関わり、音楽とアートが一つになっていくのを見ることができて、とても刺激になったよ。でも、こだわりは全然ないんだ。何に対しても常にオープンでいるだけだよ。

―アティバ・ジェファーソンのどんな部分が好きなのか、詳しく教えてもらえますか?

ジュリアス:説明が難しいから、彼の作品を見せるよ。そしたらわかると思う。彼の写真で見たことありそうなのを見せてあげるよ。これはどう?(スマホの画面を見せて)コービー・ブライアントと、娘のジジだ。



―いいですね。

ジュリアス:彼の写真はそのカルチャーの大事な瞬間を捉えている。アーティストとしての彼の緻密なレンズを通して見ていることが、写真から伝わってくるんだ。さっき自分のバンドに選んだミュージシャン達について話したけど、彼らにもユニークな音楽性を持っていてほしいんだ。その他のアートでも同じで、例えばフォトグラファーであれば、自分はこういうスタイルでこんな人物だ、というものを持っていてほしい。さっき見せた写真のように誰の作品かわかるようなね。しかも彼は撮影するカルチャーに対して、協力し敬意を払っている。だから僕はアティバの写真に惹かれるし、一緒に仕事をするようになったんだ。


アティバ・ジェファーソンが撮影したジュリアス

―様々なアートに目を配っていて、その中心に音楽がある。そういう意味では、およそ100年前のアフリカン・アメリカンの人たちが起こしたハーレム・ルネサンスに興味があったりしますか?

ジュリアス:もちろん。今アフリカン・アメリカン文化として知られていることの基礎になったものが出現した時代で、とても重要な役割を持っている。歴史について学ぶことは、ある事柄がなぜそうなっているか、なぜそう感じるのか理解するのに役立つ。あのルネサンスも復活してきているように感じるよ。ハーレムに限った話ではなく、その価値観や、なぜルネサンスが起きたのかという点においてね。だから、僕やイマニュエルのような人たちがそれを楽しみ、そのことについて話をするんだ。じゃあ、なぜルネサンスが再び起きるのか。それは、人々がその価値を再認識し、人生や人間性の一部だと気づき始めているからだと思うよ。

―その時代の音楽を聞いたり、研究したりしていますか?

ジュリアス:そこだけにフォーカスしているわけではないけど、基本的な素養を持つのに役立っているのは明らかだし、そもそもアートとして優れているよね。良いアートだし、学ぶべきレッスンだよ。だから研究したりするし、楽しむ為に聴くこともある。あの頃なぜあれだけ人気だったかというと、みんなが楽しんでいたからなんだ。そして、僕たちが今もそれについて話す理由は、同じように楽しんでいるからなんだよ。

―その文脈で好きなアーティストをあげると誰でしょうか?

ジュリアス:デューク・エリントンが一番だね。ラングストン・ヒューズと彼の詩にもハマっているし、最近はジェイムズ・ボールドウィンもたくさん読んだ。ここでもやっぱり音楽以外のことが大事だ。画家のロメール・ベアデンも好きだよ。そういうこと全てが、カルチャーを様々な面から包み込んでいるんだ。


2024年12月、丸の内コットンクラブにて(Photo by Tsuneo Koga)

―今日の話を聞いていて、あなたの伝えたいことは音楽だけではなくて、それよりもさらに大きな「カルチャー」なのかなと思ったのですがどうですか?

ジュリアス:僕の言葉で言えば、人間性を理解することだね。たしかに僕は音楽をやっているけど、様々な教訓や価値観、アイデアは音楽以外の事にも当てはめることができる。音それ自体がどんな音楽かを教えてくれたり、その人自身がどんな人であるかを教えてくれるようにね。普遍的な知恵や価値観、アイデアは音楽だけにとどまらない。音楽はそれを伝える手段だけど、伝え方が正しかったら、音楽を超えていくんだ。

―そんなあなたにとって、包括的な存在という意味でのロールモデルになっている人物は?

ジュリアス:スティーヴィー・ワンダー。

―即答でしたね。

ジュリアス:彼は世界を変えたからね。この世で一番包括的なアーティストは彼だと思う。スティーヴィーの曲を流せばみんな知っているし、踊れるし、楽しむことができる。言うまでもないけど、彼の音楽が持つ力は人々の考え方や心までも変えることができるんだ。アメリカにはマーティン・ルーサー・キングJrの祝日があるけど、それもスティーヴィー・ワンダーのおかげだ。彼がキング牧師の誕生日を祝日にしようとキャンペーンを行ったからね。それが「Happy Birthday」という曲。音楽をひとつのツールとして使った彼のやり方が、僕の思う音楽のあり方なんだ。

―確かにあなたの最新アルバムからはスティーヴィー・ワンダーを感じますね。

ジュリアス:(肩のタトゥーを見せて)彼はマイ・メンだからね!

【関連記事】ジャズの伝統を継ぎつつ「今の音楽」を作る ジュリアス・ロドリゲスが語る新世代の感性





ジュリアス・ロドリゲス
『Evergreen』
発売中
再生・購入:https://Julius-Rodriguez.lnk.to/Evergreen

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください