現代テクニカルギタリストの系譜 音楽とともに味わいたい「技巧と音響」
Rolling Stone Japan / 2025年1月14日 17時30分
アンプロセスド(UNPROCESSED)の初来日公演が遂に開催される。2020年2月に予定されていた来日ツアーが諸事情で中止、2024年6月に決まった東京公演もメンバーの重病からアジアツアー自体が延期に。それが、2025年の2月28日(金)の東京に加えて3月2日(日)には大阪でも開催されることが決まった。
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リーダーのマニュエル・ガードナー・フェルナンデス(Gt&Vo)は、2010年代後半からSNS経由で大きな人気を博してきた現代テクニカルギタリストの筆頭格で、そうした超絶技巧をメロディアスなメタルコアに落とし込んだ最新アルバム『...And Everything In Between』は、テクニカルさとキャッチーさの両面において、ロックミュージックの限界を押し広げる傑作になった。同作の収録曲がメインになるだろう今回の来日公演は、そうした革新的なサウンドを浴びることができる絶好の機会となる。音楽的にも近いところにいるポリフィア(Polyphia)やマーシン(Marcin)、そしてローナ・ショア(Lorna Shore)の日本ツアーが連日完売になる今の状況なら、アンプロセスドのような音楽を潜在的に求めている人も多いはず。本稿では、以上のような音楽性とその系譜について、簡単にまとめておきたいと思う。
先に述べた「現代テクニカルギタリスト」とは、Ichika Nitoやポリフィアのティム・ヘンソンのように、インスタグラムやYouTubeの演奏動画でジャンルを越えた注目を集めてきたプレイヤーを指す。アニマルズ・アズ・リーダーズ(Animals As Leaders)のようなジェント系譜のインストバンド、ヴェイル・オブ・マヤ(Veil Of Maya)やボーン・オブ・オシリス(Born Of Osiris)のようなデスコアといったメタル方面の技術を軸としつつ、クラシックギターやフラメンコギター、現代ジャズの手法も取り込んだプレイスタイルは、速く美しいメロディと華麗なパフォーマンス(指弾きも多用)を兼ね備えたもので、高度で複雑なのに一目見るだけで惹き込まれる魅力がある。こうした演奏動画は、一般的なリスナーにもテクニカルなギタリストにも衝撃を与え、Instagram Guitarists(またはGuitar Instagram Influencers)とも呼ばれる名手を多数生み出した。マーシンやマテウス・アサト(Mateus Asato)、アンプロセスドのマニュエルがその代表格で、マニュエルはIchikaに影響を受けてInstagramへの投稿を開始。マーシンも、Ichikaやポリフィアのティム・ヘンソン(Gt)に憧れていたことが後の共演につながったのだという。
この投稿をInstagramで見る Manuel Gardner Fernandes(@manuel.gardner.fernandes)がシェアした投稿
こうしたギタリストのプレイが人気を博している理由はいくつも考えられるが、なかでも大きいのが、技術があるからこそ表現可能な美しさが示されていることではないかと思われる。例えばポリフィアは、2022年にリリースした傑作『Remember That You Will Die』で、ネオソウルやエモラップ、オルタナティブR&Bなどの手法を巧みに取り込み、近年のポピュラー音楽一般に大幅に接近していたのだが、そこではテクニカルな要素もまったく損なわれておらず、速く複雑なシーケンスを弾きまくれるプレイヤーでなければ思いつかない、やろうとは思わないだろう変則フレーズを端々に仕込んでいた。これはライブの場でさらに活きる部分で、2024年5月末のFOX_FESTでは、メカニカルな超絶技巧が醸し出すサーカス的な楽しさと、そうした技術精度の高さがあるからこそ可能になるゆったりしたグルーヴ表現とが絶妙に融合し、唯一無二の個性として映えていた。メタル的な技巧を極めたら最高級のビートミュージックに到達する、みたいなことは一昔前まではとても考えられなかったのだが、2010年代以降は様々なやり方でそれを実現するバンドが増え、ポリフィアをはじめとする現代テクニカルギターの名手たちにより、ポピュラー音楽の領域に明確に踏み込む傑作が生まれている。アンプロセスドの『...And Everything In Between』は、その流れを推し進めつつメタルならではの重低音をも強化したものだと言えるだろう。
アンプロセスドのメインソングライターであるマニュエルは、「テクニカルでありながら曲そのものにフォーカスした人物として記憶されたい」と言う。「速いギターのビデオではなく、曲で遺産を残したいんだ。僕にとっては歌が中心。もし100年後に、僕らの曲のために涙を流す人がいたら、それは遺産だ。それが100万人だろうと10人だろうと関係ない」と。そうした志向は、2019年の出世作『Artificial Void』(収録曲の「Abandoned」がブレイクのきっかけとなった)、そしてインディロックに接近した2022年の『Gold』を通して様々に探求され、そこで得た成果を網羅しコンパクトに洗練した『...And Everything In Between』に結びついた。とにかく曲が良く、サウンドも凄まじい。その上で細部の作り込みも奥深いために、聴き込むほどに味が増す。このアルバムは、メタルの領域に限らず2023年を代表する傑作の一つだと言える。
その『...And Everything In Between』からどれか一曲聴いてみるなら、最初にシングルカットされた「Thrash」が良いだろう。
ジェイムス・ブレイクにも通ずるダブステップ的な重低音に手数の多い変則リフが絡むサウンドは、楽器演奏の出音自体にも音響処理にも驚異的な個性がある。そして、そうした序盤の展開から自然に雪崩れ込むブレイクダウン(公式MVでは2:10~2:43あたり)がとにかく凄まじい! アニマルズ・アズ・リーダーズをさらに発展させたような超高速スラップ(スラップそのものではなくそれ風の音色かも?)を延々続け、そこに遅くゆったりしたスネアドラムが絡む構成は、メタルはもちろん音楽全体の歴史を見渡しても、これまでほとんどなかったものだろう。そうしたアイデアがオルタナティブR&B的な曲調のもとでうまくまとめられ、仄暗い官能を醸し出しているのもたまらない。ポリフィアのティム・ヘンソンとスコット・ルペイジ(Gt)が客演した「Die on the Cross of the Martyr」など、他の曲も同様だ。こうした技巧と音響、そしてキャッチーな楽曲の魅力が、ライブの場でどう具現化されることになるか。目の当たりにできるのが本当に楽しみだ。
なお、アンプロセスドとして行われるライブとは別に、東京公演の翌日となる3月1日(土)と大阪公演の同日である3月2日(月)には、マニュエル・ガードナー・フェルナンデスとレオン・ファイファー(Dr)によるマスタークラスが開催される。これは、Q&Aを通してメンバーが参加者全体にレクチャーをする(壇上に参加者をあげてレッスンするのではない)形式で、協賛のIbanezやTamaの新製品を紹介するコーナーもあるとのこと。また、ミート&グリートとして、メンバーとの写真撮影およびサイン入りポスターの特典もつく。SNS経由で広い支持を集めてきたプレイヤーとしての魅力や人柄は、バンドとしての公演よりもこちらのほうが見えてきやすいかもしれない。興味を惹かれた方はぜひ参加することをおすすめする。
UNPROCESSED JAPAN 2025
●TOKYO●
2月28日(金)
SHINJUKU ANTI-KNOCK
O.A. SLOTHREAT
ALL STANDING
OPEN 18:00 START 19:00
整理番号順 ¥7,000
販売中 https://t.livepocket.jp/e/helltokyo
3月1日(土)
MASTER CLASS /MEET&GREET TOKYO
MUSIC LAND KEY SHIBUYA
START 18:00
整理番号順 座席¥6,000
販売中 https://t.livepocket.jp/e/masterclass_unprocessed
特典:写真撮影 サイン入りポスタープレゼント
●OSAKA●
3月2日(日)
ANIMA
ALL STANDING
OPEN 16:00 START 17:00
整理番号順¥7,000
販売中 https://t.livepocket.jp/e/qpfmw
MASTER CLASS/MEET&GREET OSAKA
ANIMA
START 19:00
整理番号順 座席¥6,000
販売中 https://t.livepocket.jp/e/je7rm
特典:写真撮影 サイン入りポスタープレゼント
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