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WONK “Shades of” Tour東京公演レポ 特設センターステージで見せた親密さと実験精神

Rolling Stone Japan / 2025年1月15日 18時0分

Photo by Takahiro Kihara

昨年11月に2年ぶりのアルバム『Shades of』をリリースした4人組バンドWONKが、1月12日に東京・Shibuya O-EASTでライブを行った。アルバムを引っさげた全国ツアー『WONK ”Shades of” Tour』は、昨年12月22日の大阪・Yogibo META VALLEY公演を皮切りにスタート。本日の公演は、年をまたいでのツアー2公演目となる。ツアータイトルが示すように、ライブではインタールード的な「Voice_03.10.2023」を除くアルバム全曲を、ほぼ曲順通りに披露。途中、朋友であるMELRAW(安藤康平/Sax)も参加し、バンド結成10周年の第二章を盛大に祝った。

※以下、セットリストのネタバレあり

【写真ギャラリー】WONK ”Shades of” Tour東京公演ライブ写真(全13件)


Photo by Takahiro Kihara

会場に一歩足を踏み入れると、まずその独創的なセットに目を奪われる。O-EASTのフロア中央に楽器やアンプが並べられた特設ステージがあり、オーディエンスはその周囲をぐるりと囲む形だ。さらに、普段はステージとして使われる場所もフロアとして開放され、2階席から見下ろすとまるでコロシアムを彷彿とさせる。その非日常的な空間は、ライブへの期待感をさらに高めてくれる。

まずはオープニングアクトのS.A.R.がセカンドステージに登場。J・ディラやディアンジェロのDNAを受け継ぎつつも、日本の「わびさび」をベースにしたようなストイックなサウンドスケープを展開し、会場の空気を徐々に温めていく。今年1月に配信リリースされた「Side by Side」を挟みつつ、最後は気鋭のトランペット奏者・寺久保伶矢を迎え、トライバルなパーカッションが鳴り響くラテンファンク「Cannonball」を演奏。初見のWONKファンたちにも強烈なインプレッションを与えた。



S.A.R.

しばしの休憩を経て、いよいよWONKの登場。特設ステージにメンバーの長塚健斗(Vo)、荒田洸(Dr)、江﨑文武(Key)、井上幹(Ba)が現れると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。正方形のステージ四角に、長塚から時計回りに江﨑、井上、そして荒田という並びで円陣を組むように向かい合っている。冒頭で「コロシアム」と書いたが、4人がリハーサルスタジオでセッションしている様子に立ち会っているような、そんな親密な雰囲気も同時に漂う。


Photo by Takahiro Kihara

まずはアルバム『Shades of』の冒頭を飾る「Fragments」から、この日のライブはスタート。江﨑の厳かなピアノに導かれ、長塚のシルクのような歌声が静かに、そしてゆっくりと会場を包み込んでいく。続く「Essence」は、シンセによるシーケンスフレーズを軸に、江﨑のピアノと井上のギターが絡み合うゴスペル風味の曲。ソウルミュージックをベースとしながら、どこか郷愁を誘うメロディを、長塚が情感たっぷりに歌い上げ、それに呼応するかのように荒田のドラムがシンプルなビートを刻む。まるで夜明け前の「闇」が少しずつ開けていくように、バンドの演奏もエンディングに向かって熱を帯び、トーキングモジュレーターを用いた井上の激しいギターソロで締めくくると、まるで堰を切ったような大歓声が湧き上がった。


東京公演より「Essence」

「どうもWONKです。みなさん、最後までよろしく」そう長塚が短く挨拶し、ステージを囲むオーディエンスに手を振る。 レコーディングではKieferをゲストに迎えたジャジーな「Fleeting Fantasy」を繰り出す頃には、会場の空気もすっかりリラックスムードに。しかしながら、曲が進むにつれ荒田が変則的なビートをハイハットで刻み、そのシンプルでゆったりとしたアンサンブルに程よい緊張感を散りばめていく。

「今年でWONKは結成12年目。今日は、その最初のライブです。2025年が上手くいくかどうかは、この『走り出し』にかかってますからね」長塚がそう言い、フロアを温かな笑いで包んだ後は「Life Like This」を披露。レコーディングでは久保田利伸をゲストボーカルにフィーチャーしたアルバム先行シングルだ。今回、井上はベースとギターのダブルネックを導入。この曲でもイントロのギターフレーズと、レイドバックした荒田のドラムに絡むベースフレーズを巧みに弾き分けていた。特に後半のサビではルート音をあえて避け、楽曲に独特の浮遊感をもたらせていたのが印象的だった。


Photo by Takahiro Kihara


Photo by Takahiro Kihara

ショートディレイをかけ臨場感を増した、長塚のアカペラで始まった「Skyward」。ステージの周囲から立ち上る光の柱は、リズムに合わせて脈打つように動き、まるで音楽そのものが形を持ったかのような壮麗な光景を作り出す。その中で始まった江﨑のピアノソロは、繊細かつ大胆にフレーズを紡ぎ出し、やがて荒田とのスリリングなソロバトルへと突入する。江﨑の鍵盤が滑るようなフレーズを繰り出し、荒田がそれに荒々しいドラムプレイで応じる。互いの音がぶつかり合うようなその攻防は、気を許せば一瞬にして崩壊しそうな緊張感を漂わせる。そんな2人のやり取りを、固唾を呑んで見守るオーディエンス。そして一瞬の静寂のあと再び「Skyward」のサビを長塚が歌い上げると、会場は大歓声に包まれた。


Photo by Takahiro Kihara

この日最初のピークを迎えた会場は、続く「Here I Am」のクラシカルなピアノで一気にチルアウト。ラッパーのJinmenusagiをフィーチャーしたこの曲は、アルバムでもそれまでの流れを落ち着かせ、物語を新たな章へと導く役割を担っていた。続く「Signal」は、2020年にリリースされたSF仕立ての壮大なコンセプトアルバム『EYES』収録曲であり、この日のセットリストでは唯一『Shade of』以外からのセレクトとなる。アンビエントな導入から、音源のアレンジを大幅に変えたプログレッシブな展開へ。クライマックスでは長塚が抜けるようなハイトーンボイスを響かせ、楽器の一部となってアンサンブルに彩りを加えた。

MELRAWも登場して大円団へ

長塚が自身のボーカルをディレイで変調させ、荒田のドラムとまるで会話をしているかのようなスキャットを披露した「Endless Grey」を経て「Passione」では、真っ赤な照明の下で漆黒のグルーヴを展開。それに応え、ステージを取り囲んだオーディエンスが一斉にハンズアップする光景は壮観だった。

「ここで、これまで幾度となくバンドを支えてくれたゲストを紹介します」と長塚が声を上げ、MELRAWをステージへと呼び込む。トライバルなリズムとスリリングなコード進行、そして長塚のたおやかなボーカルが絡み合う、アルバムの世界観を象徴するようなこの楽曲に、MELRAWのサックスがさらなる深みと躍動感を与えていく。体を弓のようにしならせ、サックスから放たれる旋律は、まるで魂そのものを音に変えているかのよう。その音色は観客の感情に直接触れるようで、一音ごとにステージとフロアの一体感が高まっていく。


Photo by Takahiro Kihara


Photo by Takahiro Kihara

会場が最高潮の熱気に包まれたあと、4人は「Miracle Mantra」でその空気を穏やかに鎮め、そのノスタルジックな旋律でオーディエンスの心にそっと火を灯す。そしてアルバムでも最後を飾る「One Voice」を披露。「今も世界中で困っている人たちがたくさんいます。そんな人たちへの祈りも込めてみんなで一緒に歌いましょう」と長塚が言い、「You'll be right, alright / Everything's gonna be alright」と全員でシンガロング。この日のステージを豊かに締めくくった。

卓越した演奏力に裏打ちされた、鉄壁のアンサンブルと先鋭的な実験精神。その一方で、懐かしさや親しみやすさを常に内包するWONKの音楽性を存分に味わえる一夜だった。なお、ツアーはこの後、3月8日の宮城県・仙台MACANAまで続く予定。3月末には台湾の大型フェス「大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL」への出演を控えるなど、この勢いは国内外へと広がりそうだ。


Photo by Takahiro Kihara



WONK "Shades of" Tour東京公演(配信)
アーカイブ配信:2025年1月19日(日) 23:59まで
>>>詳細・チケット購入はこちら

WONK ”Shades of” Tour
札幌公演 2025年2月1日(土)札幌SPiCE
福岡公演 2025年2月7日(金)BEAT STATION
名古屋公演 2025年2月11日(火・祝)Shangri-La
金沢公演 2025年3月2日(日)GOLD CREEK
仙台公演 2025年3月8日(土)MACANA
詳細:https://www.wonk.tokyo/live/wonk-shade-of-tour


WONK
『Shades of』
再生・購入:https://virginmusic.lnk.to/Shades_of
特設サイト:https://shadesof.tokyo/

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