1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

a子が2025年第一弾シングル「朝が近い夜」で示す両義性、ミステリアスなオーラの根源

Rolling Stone Japan / 2025年1月28日 20時0分

a⼦

シンガーソングライターのa子が、2025年の幕開けを飾るニューシングル「朝が近い夜」を1月15日に配信リリースした。ポニーキャニオン内IRORI Recordsからのメジャーデビュー、『SXSW 2024』出演や台湾・韓国でのライブ、Forbes JAPANによる次世代を担う30才未満の30人『30 UNDER 30』への選出など、全方向に話題を振り撒き続け2024年を駆け抜けた彼女は、約2カ月ぶりの新曲となる本作でその特異性をよりビビッドに浮かび上がらせている。



2020年から本格的なキャリアをスタートさせたa子。自身で楽曲をプロデュースするソロアーティストでありつつ、バンドメンバーや映像作家、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイクらからなる12人のクリエイティブチーム・londogを率い、視覚と聴覚の両面からDIY方式で独自の表現を追求してきた。

そのエッジィな感性はメジャーデビュー前から注目を集め、2022年8月にリリースした「太陽」はテレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』にて佐藤千亜妃が年間マイベスト10曲に選出。佐藤とは彼女の楽曲「melt into you feat.a子」でも共演し、その他にもVaundy、SCANDAL、君島大空、清竜人といったアーティストたちから支持を受けた。

2023年6月のシングル「あたしの全部を愛せない」は、現時点での代表曲と言っていいだろう。自身初のドラマタイアップ曲としてドラマ24『初恋、ざらり』のOPテーマに起用された同楽曲は、ささくれ立ったオルタナ的ギタートーンを劇中で描かれる不器用な恋愛模様に固く結び付ける。MVのYouTube再生回数は、2025年1月16日現在で約150万回に達しようとしている。



顔出しをしていないわけでもなく、むしろ各メディアのインタビューに積極的に応じ、自身のルーツや作品のリファレンスを明け透けに語ることを厭わないa子だが、しかしその佇まいは実にミステリアスだ。繊細に編み上げられた楽曲に魅了され繰り返し再生ボタンをタップするものの、未だその実像を掴めずにいる。この、我々とa子を隔てる曖昧な距離感とはいったい何なのだろうか。何かを見透かしたようにカメラを見つめるアーティスト写真の印象や「a子」という匿名的な名前だけではどうにも説明しきれないその神秘性について、今作「朝が近い夜」から考えたい。


Photo by Goku Noguchi

a子は本楽曲で、ハウスやシティポップを基調とした都会的なサウンドに乗り、ユーフォリックな過去の記憶に浸りながら、その甘美さに胸を痛める。これまでのディスコグラフィーにおいても、ダンスミュージックのエッセンスは積極的に注入されてきた。ガラージの要素を取り入れたメジャーデビューシングル「惑星」や、オリエンタル・ドラムンベースな「samurai」、本楽曲のプロトタイプとも言えるハウス的4つ打ちが印象的な「racy」などはその好例だ。







そして、「朝が近い夜」の音像はさらにギアを上げてフロアライクな方向性に突き進む。ミックスを担当したNathan Boddyは、Nia Archives『Silence is Loud』、PinkPantheress『Heaven Knows』、そしてNewJeans『Super Shy』などを手がけてきた。シーンの最先端を走るエンジニアによって、軽やかに踊れる世界標準のサウンドメイクを実現させている。

一方で、アレンジのキモとなっているのはあくまでオーガニックなグルーヴだ。現在もライブでは多くの曲でギターを構えるa子の音楽的興味は、やはり土台にバンドがある。ファンクネスを感じさせるベースラインとカッティングギターが、無機質なビートと融け合う。このミクスチャー感覚が、a子の纏う分類不可能なムードを作り上げる一因なのではないだろうか(同時に、意図せずともそのアンサンブルはデスクトップ上で展開されながらバンド的カタルシスを志向するボーカロイド以降のJ-POPと共振している)。

そして、彼女のオリジナリティを語るのに欠かせないのがそのウィスパーボイスだ。Melanie MartinezやBillie Eilishなどから受けた影響を咀嚼し辿り着いたそのスタイルは、自身の声質への苦手意識を克服するための手段だったという。Billieの歌唱法が生々しいASMR的音響快楽を生み出すものならば、a子のそれはむしろ現実から遠く離れるための逃げ道である。

「朝が近い夜」でも、彼女の歌声はリスナーをここではないどこかへと連れ去る。しかし、ラストサビ前のブリッジ的パートだけが、1stアルバム『GENE』のラストを飾る「ボーダーライン」でも披露した地声に近い歌唱で紡がれるのがミソだ。突如としてハッキリとした輪郭で綴られるのは、夢のような夢から覚めた後の「望んでるから失望するみたい」という虚脱感。a子は新たに、歌声を変幻させることで現実との距離感を伸縮させ、ストーリーテリングの説得力を増幅させるという新たな表現手法を獲得したのだ。



有機と無機、現実と理想、夜と朝。真逆なようで隣り合わせの何かと何かのあわい。そこに立つことで、近くに寄り添ってくれているようでどこか遠くへと消え去ってしまいそうな、両義的なオーラを放つ。「朝が近い夜」は、そんなa子の類を見ない存在感を多角的に突き詰め、2025年の、そしてその先の可能性を大いに拡げる一曲だ。


Photo by Goku Noguchi


「朝が近い夜」
a子
IRORI Records
配信中
https://lnk.to/ako_Twilight

a⼦ LIVE TOUR 2025 "LOVE PROPHET"

3/2(日)
東京・EX THEATER ROPPONGI
開場 17:00 / 開演18:00

https://linktr.ee/ako_LOVEPROPHET

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください