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シーナ&ロケッツ、アルファ時代の名盤を考察 YMOとの関係、ロックが持つ自由な精神

Rolling Stone Japan / 2025年1月29日 12時0分

シーナ&ロケッツ

シーナ&ロケッツ(以下、シナロケ)がアルファミュージック時代にリリースしたアルバム『真空パック』、『チャンネル・グー』、『ピンナップ・ベイビー・ブルース』、海外デビューアルバム『SHEENA AND THE ROKKETS』、さらに鮎川誠(Gt.Vo)のソロアルバム『クール・ソロ』、シーナ(Vo)のソロアルバム『いつだってビューティフル』が、2025年最新リマスター音源による高品質Blu-spec CD2仕様で2025年1月29日に発売される。

関連記事:アルファレコードが求めた精神の自由 村井邦彦と共に振り返る

シーナ&ロケッツは、1970年から福岡で活動していたブルース・ロックバンド・サンハウスのギタリストとしてメジャーデビューしていた鮎川が、サンハウス解散後にシーナと共に上京して1978年に結成したロックバンド。後にメンバーの変遷はあるが、結成当時からしばらくは浅田孟(Ba)、川嶋一秀(Dr)のリズム隊と共に活動した。

そんなシナロケの音楽をイメージしてみると、鮎川のエッヂの効いたギターを核にしたサウンドにシーナのしゃがれた強烈なボーカルが乗った、ブルース由来の王道ロックンロールにパンキッシュなビートを加えたライブバンドの印象が強い。それも間違ってはいないものの、そんなイメージを抱いている人にこそ今回発売される6作品を聴いてみてほしい。初期のアルバムには、同じくアルファミュージックに所属したYMOとの関係からテクノ・ニューウェイヴの影響が色濃く出ており、シナロケがいかに斬新な音源制作を行っていたかがわかるはず。

シナロケが1978年に行われたエルヴィス・コステロの来日公演のオープニング・アクト務めた際、高橋幸宏と再会したことをきっかけに鮎川がYMOのライブに参加するなどして交流が生まれ、1979年3月に”鮎川誠&シーナロケット”名義で1stアルバム『SHEENA & THE ROKKETS #1』(エルボンレコード)を発表した後、YMOらが所属するアルファレコードに移籍。1977年11月に設立されたばかりの若いレコード会社で、次々とアルバムを創り上げていく。今回リリースされる傑作揃いのアルバムたちを改めて紹介しよう。

『真空パック』(1979年10月25日)



1979年発売の2ndアルバムであり代表作の1つ。YMOの3人が演奏、楽曲提供で全面的に参加しており、細野晴臣がアルバムのプロデュースを手掛けている。鮎川が2曲で参加したYMOの『Solid State Survivor』のちょうど一カ月後にリリースされており、併せて聴くといかに当時の両バンドのクリエイティビティが相互作用となって作品が生み出されていたかがよくわかる。

後まで続くライブの定番オープニング「BATMAN THEME」でドア幕を開け、細野・高橋幸宏が参加する「YOU MAY DREAM」へ。ザ・ロネッツ「Be My Baby」を思わせる始まり、A~Fm#~Dと続く「STAND BY ME」的な王道ポップス展開で油断させておいてから唐突に上昇していくサビメロ、甘酸っぱくもド迫力なシーナのボーカルとバンドの一体感。冒頭のこの流れはアルバムの成功を約束していると共に、バンドの魅力がまさに真空パックされている。シーケンスとブルースが融合した「レイジー・クレイジー・ブルース」は、確かにテクノ、ロック、パンク、ニューウェイヴというムーブメントがあったのだな、と時代の空気を教えてくれる。アルバム後半のJBやザ・キンクスのカバーでバンドの嗜好がむき出しになっているところも面白い。

『チャンネル・グー』(1980年10月21日)



細野と高橋が共同プロデュースしたYMOとのコラボ2作目。シャッフルビートにスライドギターが絡む「アイ・スパイ」、鮎川がしゃがれ声でボーカルを取るストレートなロックンロール「デッド・ギター」等、前作に比べるとより生身のバンド感が強調されている印象だ。ラモーンズ「I Wanna Be Your Boyfriend」をスカ・チューンにアレンジした「マイ・ボーイフレンド」、C.C.R.「スージー・Q」といったカバー曲も、ひと手間加えたオリジナリティを出している。そんな中、YMO作曲・糸井重里作詞によるシーナの「浮かびのピーチガール」はキュートすぎて異色にすら感じるが、続く「たいくつな世界」では野太いボーカルを聴かせており、バンドの極端な二面性が露わになっているのもこの時期ならではなのかもしれない。高橋が作曲、シーナが作詞を手掛けたヒット曲「ベイビー・メイビー」も収録。「YOU MAY DREAM」路線の親しみやすいポップスにはホッと癒される。



『ピンナップ・ベイビー・ブルース』(1981年9月5日)



ミッキー・カーティスがプロデュース、糸井重里が3曲で作詞と、70年代の矢沢永吉人脈がスライドしてきたような座組による4thアルバム。「プロポーズ」「ピンナップ・ベイビー・ブルース」と続けてサックスが加わるウェットなアレンジによる楽曲は好みが分かれそうだが、表題曲で鮎川がいつになく泣きのギターを聴かせているのは味わい深い。6曲目「ハートに火をつけて」からはライブテイクが収録されている。なんといっても聴きどころは、鮎川が歌うザ・ローリング・ストーンズ「(I Can't Get No) Satisfaction)」のカバーだろう。コードワークとオリジナルの単音フレーズ、ロックンロールリフを織り交ぜつつルーズに歌う鮎川をガッツリ支える川嶋と浅田のタイトなリズムも心地良い。痛快なロックサウンドによる、デビュー以来もっともバンドの”素”に近い1曲といえる。

『SHEENA AND THE ROKKETS』(1981年9月17日)



1981年にアメリカ「A&Mレコード」より『SHEENA & THE ROKKETS IN USA』のタイトルで全世界同時発売されたアルバム。ジャケットの4人が最高にカッコイイ。「YOU MAY DREAM」「ベイビー・メイビー」「STIFF LIPS」といった『真空パック』『チャンネル・グー』から抜粋した曲たちをロサンゼルスのウィザード・スタジオと日本の音響スタジオで再レコーディングしており、「LAZY CRAZY BLUES」を除く10曲9曲が英語詞で歌われている。クイーンの作品にも携わったイギリスのプロデューサー&エンジニア、ロビン・ジェフリー・ケーブルが全曲リミックスしており、ソリッド且つぶ厚い音で迫って来るバンドサウンドは圧巻。とくにザ・キンクス「YOU REALLY GOT ME」のカバーはスリリングで興奮させられる。英語詞になったことでの発見もあり、「YOU MAY DREAM」のサビフレーズは”YOU MAY”と”ゆめ、ユメ、ユメ”がかかった日本語詞がいかに曲の魅力に繋がっていたのかを再認識できる。この曲に関しては、絶対日本語詞の方が素敵。ちなみに今作が日本で初めてCD化されたのは1998年のことで、これについて鮎川はライナーノーツ掲載の当時のインタビューで「A&Mレコードからアルバムが出たことは、僕らの最大の勲章のひとつ」と、日本で聴いてもらえることの喜びを語っている。



『クール・ソロ』(1982年2月21日)



1981年10月17日に『ピンナップ・ベイビー・ブルース』発売記念として日比谷野音で行われた初の野外ワンマライブ〈Pinup Live Show〉から、鮎川のボーカル曲のみを収録した、初のソロアルバム。シナロケの「JUKEBOXER」に始まり、サンハウス時代の「どぶねずみ」、「ビールス・カプセル」、シーナとのハーモニーが微笑ましい「アイラブユー」、躍動感がたまらない「ブーン・ブーン」等、この時点の鮎川のベスト選曲になっている。朴訥な筑後弁で喋っているときのあの感じが出た歌い回しが、バンドのドライブ感と相まって独特なタイム感を生んでいる。これまたジャケットが最高で、鮎川の象徴的なアートワークとなった。

『いつだってビューティフル』(1982年12月26日)



シーナ初のソロアルバム。ロケッツの3人はもちろん、プロデュースを手掛けた細野晴臣をはじめ、高橋幸宏、立花ハジメ、白井良明、矢口博康ら豪華ミュージシャンがバックアップしており、シナロケで聴かせるロック、パンク、モータウン調のポップスとは一線を画したテクノ/ニューウェイヴに寄った楽曲が並んでいる。「ボン・トン・ルーレ」、「ワイ ワイ ワイ」等、無機質なビートとシンセによる装飾の中から顔を覗かせるシーナの歌声は、過度に感情表現を露わにしていない感じで、今でいうボーカロイドにも近いニュアンスすら感じさせる。混沌とした「ヘルプ・ミー」からデジタルポップ「シャネルの5番のオン・ザ・ロック」で締めくくる、爽やかな余韻のある1枚。



ロックンロールをベースにしながらも型に囚われないアルバムたちは、ロックが持つ自由な精神を存分に体現している。シーナ、鮎川共に惜しくもこの世を去ってしまったものの、メジャー・インディーの分け隔てなく長年に渡り行ってきた精力的なライブは、音楽ファンのみならず多くの仲間・後輩に支持され、今も愛されている。まさに「ミュージシャンズ・ミュージシャン」と呼ばれるに相応しいアーティストだ。

また、鮎川は世の中にインターネットが普及する前からパソコンを始めており、どんなバンドよりも早くオフィシャル・ウェブサイト「Rokket Web」を立ち上げて1998年AMDアワードでBestMusicComposer賞を受賞するなど、時代の変化にも敏感な人物でもあった。そんな好奇心旺盛で柔軟な姿勢による音源制作と、瞬間の興奮のために爆発するライブステージをパッケージした今回の6作品は、鮎川の命日である1月29日にリリースされる。フロントマン亡き今も、シナロケの音楽はこうして今も生き続けている。

<リリース情報>

『真空パック』(シーナ&ロケッツ)
『チャンネル・グー』(シーナ&ロケッツ)
『ピンナップ・ベイビー・ブルース』(シーナ&ロケッツ)
『SHEENA AND THE ROKKETS』(シーナ&ロケッツ)
『クール・ソロ』(鮎川誠)
『いつだってビューティフル』(シーナ)
発売:2025年1月29日(水)
価格:全タイトル 2750円(税込)
発売:ソニー・ミュージックレーベルズ

特設ページ https://www.110107.com/s/oto/page/sheena_and_the_rokkets?ima=5142

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