グラス・アニマルズが語る、迷える人たちに捧げる「希望」の音楽
Rolling Stone Japan / 2025年1月28日 17時30分
コロナ禍にリリースされた3rdアルバム『Dreamland』とシングル「Heat Waves」が世界中で大成功を収めたイギリスのバンド、グラス・アニマルズ。「Heat Waves」はSpotifyで約30億回再生を記録し、全米チャートで5週連続1位を獲得。そんな彼らが2024年リリースの最新アルバム『I Love You So F***ing Much』を引っ提げて、2025年2月に初来日公演を行う。『I Love You So F***ing Much』は、バンドの中心人物デイヴ・ベイリーの単独作詞、作曲、プロデュースによるアルバムで、彼にとってこれまでで最もパーソナルなアルバムとなった。デイヴ・ベイリーに来日前にインタビューを行った。
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ー今回初来日となるわけですが、日本の音楽、文化などで興味あるものはありますか?
デイヴ・ベイリー 日本に行くのは本当に楽しみなんだ! 実は日本の音楽や文化をもっと体験したくて、1週間早めに日本に行く予定だ。日本発のアートやデザイン、服、食べ物、音楽はどれも素晴らしいから、それを直接体感できるのが待ちきれないんだ。特にビンテージの服や音楽機材、楽器、食べ物は大好きで。何かおすすめがあれば、是非DMしてほしい!
ー「Heat Waves」は日本でも非常に人気のある楽曲ですが、大ヒットとなることは予想していましたか? この曲は徐々に人気を集めましたが、何故多くの人々の心に響いたと思いますか? この曲の生まれた背景についても教えてください。
デイヴ・ベイリー この曲は非常に個人的なもので、ベッドルームにギターを持ち込んで一人で作ったものだ。長いコード進行でストーリーを語るようなものを作りたいといのがきっかけになった。そのコード進行を作っている時に友達のことを思い出して、そのまま歌い始めたら歌詞がすっと出てきたんだ。そこからシンセとドラムを加えて、全体が完成するまで1時間ちょっとしかかからなかったね。この曲は思い出をテーマにした懐かしい曲で、パンデミック中に生まれたものだ。その時は新しい思い出を作ることができず、みんなが過去の思い出に癒しを求めていた時期だったので、そういった部分が共感を呼んだのかもしれない。この曲はとても正直な曲だし、おそらくその時点で書いた中で一番正直なものだと思う。それが人々の心に響いた理由かもしれないね。
ーこの曲はパンデミック中にリリースされ、大ヒットしましたが、成功を実感することはありましたか? この時期、どのような考えやインスピレーションが音楽制作につながったのでしょうか?
デイヴ・ベイリー 成功を実感することは本当になかったね……。非常にゆっくりとしたプロセスだったから。この曲は2020年のリリースで、チャートに上り始めるまでに2年以上かかったんだ。それでも、当時はまだコロナ禍でロックダウン中だったので、現実の中で成功を感じることはできなくて、ただメールで数字を見るだけしかなくて。本当に非現実的な感じだった。この現実からの距離感は、間違いなく新しいアルバムにも影響を与えていると思う。
ー今回のツアーは「Tour of Earth」というタイトルで、ポスターやフライヤーには宇宙と「You Are Here」というフレーズが書かれ、映画のポスターを思わせるデザインになっています。広大な宇宙と人間の存在というテーマは、最新アルバム『I Love You So F**ing Much』にも通じるものがあります。このアイデアはどのように生まれましたか? これは前の質問と関係がありますか?
デイヴ・ベイリー 完全に前の質問と関係があるよ! パンデミックの影響や成功を実感できない状況があったことで、自分の頭の中にいくつもの存在論的な疑問が渦巻いていたんだ。成功とは本当に現実のものなのか? そもそも何が現実なのか? それにはどのような意味があるのか?といった感じで、ちょっとした存在の危機を感じていた。そして、宇宙というのはそういう存在の危機を考えるのにピッタリの舞台だと思ったんだ。宇宙は無限で、自分がとても小さく感じられる場所だからね。アルバムを聴く人にも、まずはそういう感覚を持って入ってもらいたかった。それでいて、アルバムを聴き終えた時には逆の感覚を得てほしいと思っていて。つまりは、自分の目の前には本当に意味のある大切なものがたくさんあるというのを感じてもらえたらうれしいんだ。
ー日本公演ではどんなステージやセットリストを考えていますか? 他の国でのライブ映像を観たのですが、ステージに巨大なUFOや岩が配置され、まるで宇宙がテーマのような印象を受けました。
デイヴ・ベイリー 日本にもできるだけ多くのものを持っていきたいけれど、宇宙船は飛行機に乗らないかもしれないなあ!
ー宇宙を舞台にしたSFの小説や映画で、特に好きなものはありますか? hal9000000がSoundCloudやYouTubeに登場しますが、『2001年宇宙の旅』は好きですか?
デイヴ・ベイリー 『2001年宇宙の旅』は大好きだし、このアルバムにも大きな影響を与えている。他にも『ブレードランナー』、『バーバレラ』、『インターステラー』、『メッセージ』、『素晴らしき哉、人生!』(そうそう、僕はこれをSF映画だと言いたい!)、『ストーカー』などの映画も影響を与えている。テレビでは『マニアック』、『セヴェランス』、古い『ドクター・フー』も好きだ。本の方では、「銀河ヒッチハイク・ガイド」、「スローターハウス5」、「Cosmic View」などが好きだね。
ー最新アルバム『I Love You So F**ing Much』の制作はどのように始まりましたか? アルバムで最初に出来た曲はどれでしょうか?
デイヴ・ベイリー たぶん最初に作った曲は「Creatures in Heaven」か「I Can't Make You Fall in Love Again」だったと思う。
ー『I Love You So F**ing Much』には個人的な曲が多いと思いましたが、コロナ禍の状況、バンドの成功、今の時代の人間、自身の人生との関連など、いろいろな背景があると思いました。曲の持つヴァイブスや歌詞のテーマなどはどのように作っていきましたか?
デイヴ・ベイリー アルバムを作る前に、まず宣言書のような書類を作るんだ。そこにはテーマやストーリー、歌詞のアイデア、キーとなるリファレンスやイメージ、アートワークのアイデア、レコーディングのコンセプトや音楽的なアイデア……アルバムに関するすべてのことが書かれている。これがあると、全体のコンセプトの中に欠けている部分を見つけることができるんだ。僕はどの曲にも異なるメッセージを持たせて、他の曲とかぶることのないようにしたいと思っている。お互いの曲がかぶらないようにすることで、同じ内容を繰り返さないようにしている。でも、このコンセプトでの制作はかなり集中力を要するもので、存在の危機からの旅立ちというテーマが大きな役割を果たすことになった。僕は数週間、山の中の家に閉じ込もってこの宣言書を作り、その後アルバム全体を書き上げた。山の中ではちょっと宇宙にいるような感覚もあって、まさに完璧な場所だったよ。
ー音楽的にはどのようなものを追求しましたか? 前のアルバム『Dreamland』を継承しながらも、ツアー・ポスターに見られるように、宇宙や昔の映画を感じさせるものがあります。サウンドの鳴り、コードワーク、楽器の使い方など、こだわったところがあれば教えてください。
デイヴ・ベイリー このアルバムでは、曲の中で語られるストーリーを強調するような音を使いたかった。曲は存在に関する旅で、どれも大きな問いから始まり、その答えを探求している。だから、宇宙的な音を使うのが上手くいったんだ。ただ、アルバムが冷たい感じにならないように、レトロな音をたくさん使って、完全にレトロフューチャーな感じにした。『ブレードランナー』、『バーバレラ』、昔の『トワイライトゾーン』のサウンドトラックで使われていたような、古いシンセサイザーやギターのペダルをたくさん手に入れて、それを使ってアルバムのすべての音を作った。非常にアナログ的な作り方になったね。歌詞の中には、映画、本、テレビ番組へのリファレンスがたくさんある。コード進行については、コード自体が一つの旅のようになってほしかった。各曲のセクションごとにコードが大きく変わっていくんだ。ヴァースでは問いかけ、プリコーラスでは啓示を得て、コーラスではもっとクライマックス的な感じになるんだ。
「混乱したり、迷子になったりするのは全然悪いことじゃない」
ーこのアルバムを聴いて感じたのは「希望」でした。このアルバムの制作プロセスは個人的にはどのようなものになりましたか? また、アルバムが完成した時、何を思いましたか? そこで何かしらの結論を自分の中で出せましたか?
デイヴ・ベイリー まさにその通りの感情だと思うね。僕は大きな問いに対する答えを探していたんだけれど、曲を書いていくうちにどんどん希望を感じるようになった。そこでたどり着いた結論は、混乱したり、迷子になったりするのは全然悪いことじゃないということ。むしろそれはとてもワクワクすることで、どうアプローチするのかが大切なんだ。時には物事が圧倒的に感じられることもあるけれど、実際に大切なのは、あなたのすぐそばにあるもので、愛するものだけだということ。これは忘れがちなことなんだけれどね。
ー特に「Lost in the Ocean」という曲では、宇宙から地球に帰ってきた後に何か大切なことに気づくというような感覚を感じました。アルバムの中で、あなたの個人的なお気に入りの曲について教えてもらえますか?
デイヴ・ベイリー よくわかってくれたね(笑)。「Lost in the Ocean」は僕のお気に入りなんだ! 長くて冷たい旅の終わりに、温かいハグをもらったような感じなんだよね。
ーグラス・アニマルズの音楽には様々な要素があり、ジャンルの境界線を超えた音楽だと思います。子供時代に聴いた音楽、イギリスとアメリカで過ごした経験などの影響はありますか?
デイヴ・ベイリー 僕はアメリカとイギリスの両方に住むことができて、とてもラッキーだったと思う。インターネットの時代に生まれたことも本当にラッキーだった。世界中の様々な文化や音楽に触れることができたからね。いろんなところから少しずつ吸収したんだ。そうそう、何よりもアメリカとイギリスではライブ・ミュージックを直接体験できたんだ。アメリカではヒップホップが多くて、ドクター・ドレー、ミッシー・エリオット、N.E.R.D、ティンバランドなどで、イギリスではダンス・ミュージックやギター・ミュージックが多かったね。例えば、ブリアル、フォー・テット、ジョイ・オービソン、ブロック・パーティ、LCDサウンドシステムなどだね。
ー以前、Joey Bada$$、デンゼル・カリーといったアメリカ人のラッパーたちと曲を出していますが、ヒップホップという音楽についてはどのように思っていますか?
デイヴ・ベイリー ヒップホップ・アーティストは常に音楽制作における限界を押し広げているよね。ジャンルを超えることに恐れを持たず、ルールを破ったり、新しいことに挑戦したりすることにワクワクしている。非常にエキサイティングだと思うよ。
ー『I Love You So F**ing Much』は4枚目のアルバムですが、バンドの結成から今に至るまでの音楽の旅はどのようなものでしたか?
デイヴ・ベイリー ステージ上でずいぶんと落ち着けるようになったと思う。僕たちは元々パフォーマーというよりも、実際はかなりの恥ずかしがり屋なんだけど、今では本当に楽しめるようになった。レコーディングや曲作りに関しても、以前は他人がどう思うのかを気にしたり、歌詞が過剰すぎるとか、変すぎるんじゃないかとか心配していたんだけれど、今ではそれを受け入れられるようになった。でもそういったことが僕たちらしさを作っているんじゃないかな。
ー最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
デイヴ・ベイリー 日本に行くのが本当に楽しみで、初めてのヘッドライン・ショーができるのがうれしい! 遅くなってしまって申し訳なかったけれど、日本に行った際には必ずお返しをするよ。それと、食べ物や美術館、バーなどのおすすめがあれば是非教えてほしい! みんなに会えるのを楽しみにしているよ。
Human Musical Group Sensations GLASS ANIMALS: TOUR OF EARTH
GLASS ANIMALS
2025年2月19日(水)
横浜:KT Zepp Yokohama
開場 18:00 / 開演 19:00
お問い合わせ:ライブネーション・ジャパン LIVENATION.CO.JP
▼チケット料金(税込)
VIPチケット(TOUR OF EARTH VIP PACKAGE):23,800円
スタンディング:7,800円
2F指定席:8,800円
※未就学児(6歳未満)入場不可・6歳以上チケット必要
※別途1ドリンク代必要
【VIPチケット特典】
TOUR OF EARTH VIP PACKAGE
・入場チケット(スタンディング) 1枚
・グラス・アニマルズ特製ツアーTシャツ 1枚
・VIP限定グッズ
・VIPラミネートパス
・会場優先入場
・物販優先レーン(物販がある場合)
【VIPチケット注意事項】
※特典内容は予告なく変更される可能性があります。
※場内への入場順は、VIPチケット”TOUR OF EARTH VIP PACKAGE”、一般のお客様の順となります。
※特典の特製Tシャツ、限定グッズ、VIPラミネートパスは公演当日に会場にてお受け取りください。
※特典のラミネートパスは記念品です。会場、バックステージへの入場はお断りいたします。
※急遽特典内容が変更となる場合もございますので、予めご了承ください。その際、チケット料金の一部もしくは全額の返金はいたしませんので予めご了承ください。
※海外で販売されているVIPパッケージと内容が一部異なる場合があります。予めご了承ください。
▼公演ホームページ
https://www.livenation.co.jp/glassanimals-2025
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